1億円規模の不動産投資を検討しているとき、多くの方が「固定金利と変動金利、どちらを選べばいいのか」という壁にぶつかります。借入額が大きいだけに、金利の選択ひとつで総返済額が数百万円から数千万円単位で変わることもあり、慎重に判断したいところです。この記事では、固定金利と変動金利それぞれの特徴を整理したうえで、2026年8月時点で実際に公開されている主要金融機関のローン条件を比較しながら、1億円規模の不動産投資に適した金利選択の考え方をわかりやすく解説します。初心者の方でも理解できるよう、専門用語には丁寧に説明を加えていますので、ぜひ最後までお読みください。
固定金利と変動金利、そもそも何が違うのか

まず押さえておきたいのは、固定金利と変動金利の根本的な違いです。固定金利とは、借入時に決めた金利が返済期間中ずっと変わらないタイプを指します。一方、変動金利は市場の金利動向に応じて定期的に見直されるタイプで、一般的には半年ごとに金利が改定されます。
固定金利の最大のメリットは、返済額が最初から最後まで一定であることです。毎月いくら返済するかが明確なため、長期的な収支計画を立てやすく、金利上昇リスクを完全に排除できます。特に1億円という大きな借入額では、金利が1%上昇するだけで年間の利息負担が大幅に増えるため、この安心感は非常に大きいといえます。
変動金利は、一般的に固定金利よりも低い水準からスタートすることが多く、金利が上昇しない局面では総返済額を抑えられる可能性があります。しかし、将来の金利動向は誰にも予測できないため、返済計画が変わるリスクを常に抱えることになります。不動産投資ローンの場合、賃料収入から返済を行うビジネスモデルであるため、返済額の変動は収益計画全体に影響を及ぼします。
どちらが優れているかは一概にはいえず、投資家自身のリスク許容度や投資期間、物件の収益性によって最適解は異なります。重要なのは、それぞれの特性を正確に理解したうえで、自分の状況に合った選択をすることです。
2026年8月時点の主要金融機関ローン条件を比較する

実際にどのような条件でローンを組めるのか、2026年8月時点で公開されている主要金融機関の情報を確認してみましょう。金融機関によって金利タイプ、融資額の上限、諸費用などが大きく異なります。
固定金利を提供する代表的な機関として注目したいのが、住宅金融支援機構の賃貸住宅融資です。同機構が公開している2026年8月の参考金利によると、子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資(繰上返済制限制度利用あり)では、35年固定で年3.94%、15年固定で年3.19%という水準が示されています(住宅金融支援機構 https://www.jhf.go.jp/kinri/chintai.html)。返済期間は最長40年で、融資手数料・繰上返済手数料が不要という点も大きな特徴です。なお、同機構の返済額表は1,000万円当たりで示されているため、1億円の場合は10倍して計算する必要があります。
変動金利を中心に扱う金融機関では、AGビジネスサポートが固定金利型・変動金利型の両方を公開しており、いずれも年2.49%〜7.99%、融資額は100万円〜5億円、最長30年となっています(2025年3月時点、AGビジネスサポート https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html)。法人・個人事業主だけでなく、新たに不動産投資を始める方も融資対象に含まれている点は、初心者にとって心強いポイントです。
オリックス銀行の不動産投資ローンは、借入額2,000万円以上2億円以下という設定で、1億円規模の投資にも対応しています(オリックス銀行 https://www.orixbank.co.jp/personal/property/)。前年度税込年収500万円以上が原則要件で、取扱事務手数料は借入金額の2.20%以内です。また、団体信用生命保険(団信)への加入が必須で、加入金額の上限は1億円、一般団信であれば金利の上乗せはありません。
セゾンファンデックスは、団信なしで変動4.4%〜5.2%、団信ありで変動4.9%〜5.8%という水準を公開しています(2026年5月時点、セゾンファンデックス https://www.fundex.co.jp/personal/investment/)。融資額は500万円〜5億円、返済期間は5年〜30年で、事務手数料は融資金額の1.65%以内、調査料は0.55%以内です。
1億円借入時に金利差が生む影響を考える
1億円という借入額では、金利の差が返済総額に与える影響は非常に大きくなります。一般的な元利均等返済の仕組みで考えると、金利が1%異なるだけで、30年間の総返済額には数千万円規模の差が生じることがあります。これは不動産投資の収益性を根本から左右する要素です。
たとえば、変動金利で低い金利からスタートできたとしても、将来的に金利が上昇した場合、毎月の返済額が増加し、賃料収入との収支バランスが崩れるリスクがあります。1億円規模の投資では、わずかな金利上昇でも月々の返済負担が数万円単位で変わることがあるため、余裕を持ったキャッシュフロー計画が不可欠です。
一方、固定金利を選んだ場合は、返済額が変わらないため収支計画の精度が高まります。住宅金融支援機構の賃貸住宅融資のように、長期固定金利で手数料が不要な商品を活用できれば、コストを抑えながら安定した返済計画を組むことができます。ただし、固定金利は変動金利よりも初期の金利水準が高めに設定されることが多いため、金利上昇が起きなかった場合には変動金利よりも総返済額が多くなる可能性もあります。
重要なのは、金利の低さだけで判断しないことです。諸費用(事務手数料・調査料・繰上返済手数料など)も含めた実質的なコストを比較し、さらに空室リスクや修繕費用なども加味した保守的なシミュレーションを行うことが、1億円規模の投資では特に求められます。
金融機関選びで見落としがちな諸費用と団信の扱い
金利の比較と同様に重要なのが、諸費用と団体信用生命保険(団信)の扱いです。団信とは、借入者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険金で完済される仕組みです。不動産投資ローンでは、住宅ローンと異なり団信の扱いが金融機関によって大きく異なります。
オリックス銀行では団信加入が必須で、加入金額の上限は1億円、一般団信であれば金利上乗せなしという条件です。1億円の借入であれば上限内に収まるため、追加コストなく保障を受けられます。一方、SBJ銀行の不動産活用フリーローン「ナイスカバー」は団信を利用できない商品設計となっており(SBJ銀行 https://www.sbjbank.co.jp/individual/pdf/loan/freeloan/flyer.pdf)、その分の保障は別途生命保険で手当てする必要があります。
諸費用についても各社で差があります。スルガ銀行の投資用不動産ローンは取扱手数料が融資金額の0.55%で、5年以内の繰上返済には繰上返済額の2.0%の手数料が発生します(スルガ銀行 https://www.surugabank.co.jp/surugabank/prod/pdf/real_estate.pdf)。オリックス銀行は事務手数料が借入金額の2.20%以内と高めですが、商品の安定性や審査の柔軟性など総合的に判断する必要があります。
また、オリックス銀行では購入対象がZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)等の環境配慮型住宅であれば、適用利率から年0.05%の引き下げが融資期間中継続して受けられます(オリックス銀行 https://www.orixbank.co.jp/personal/property/zeh.html)。わずかな差に見えますが、1億円・長期返済では積み重なると無視できない金額になります。
固定か変動か、自分に合った選択をするための考え方
実は、固定金利と変動金利のどちらが正解かという問いに、万人共通の答えはありません。大切なのは、自分の投資スタイルとリスク許容度を正直に見極めることです。
安定した収益を最優先に考えるなら、固定金利が向いています。返済額が変わらないため、賃料収入から返済額を差し引いた手残り(キャッシュフロー)を長期にわたって安定させやすく、複数物件への展開や資産形成の計画も立てやすくなります。特に投資経験が浅い段階では、変動リスクを排除することで精神的な余裕も生まれます。
一方、ある程度の金融知識があり、金利動向を継続的にウォッチできる方や、短〜中期での売却を視野に入れている方には、変動金利も選択肢になります。ただし、1億円規模の借入では、金利が上昇した際の影響が大きいため、変動金利を選ぶ場合でも金利上昇を想定したストレステストを必ず行うことが必要です。たとえば、現在の金利から2〜3%上昇した場合でも収支がプラスを維持できるかを確認しておくと安心です。
また、金融機関によっては固定金利と変動金利を組み合わせた「固定金利期間特約付変動金利型」という商品も存在します。一定期間は固定金利で安定させ、その後変動金利に移行するタイプです。ただし、このような商品の中には、取扱を中止している金融機関もあるため、最新の取扱状況を各金融機関に直接確認することが重要です。
まとめ
1億円規模の不動産投資ローンにおける固定金利と変動金利の選択は、単純に金利の低さだけで決めるべきではありません。返済の安定性、諸費用、団信の扱い、そして自分自身のリスク許容度を総合的に判断することが成功への近道です。住宅金融支援機構の長期固定金利商品や、AGビジネスサポート・オリックス銀行・セゾンファンデックスなど、各社の条件を丁寧に比較検討してみてください。金利情報は随時更新されるため、必ず各金融機関の公式サイトや窓口で最新情報を確認することをお勧めします。まずは複数の金融機関に相談し、自分の属性や物件に合った最適なローンを見つけることが、長期的な不動産投資の成功につながります。
参考文献・出典
- オリックス銀行 不動産投資ローン — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/
- オリックス銀行 不動産投資ローン 商品説明書 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
- オリックス銀行 団体信用生命保険 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/group-credit-life-insurance.html
- オリックス銀行 手数料一覧 — https://www.orixbank.co.jp/personal/fee/
- オリックス銀行 環境配慮型住宅(ZEH等)へのローン特別優遇金利 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/zeh.html
- SBJ銀行 ローン金利 — https://www.sbjbank.co.jp/rates-fees/loan-rate/
- SBJ銀行 不動産活用フリーローン「ナイスカバー」商品詳細 — https://www.sbjbank.co.jp/individual/pdf/loan/freeloan/flyer.pdf
- AGビジネスサポート 不動産投資ローン — https://www.aiful-bf.co.jp/products/mortgage_loan/investment.html
- セゾンファンデックス 不動産投資ローン — https://www.fundex.co.jp/personal/investment/
- 住宅金融支援機構 賃貸住宅融資金利 — https://www.jhf.go.jp/kinri/chintai.html
- 住宅金融支援機構 賃貸住宅を建設する場合 令和8年8月の参考金利のお知らせ — https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf
- スルガ銀行 投資用不動産ローン 商品概要説明書 — https://www.surugabank.co.jp/surugabank/prod/pdf/real_estate.pdf
- Wealth Agent 主要14銀行の不動産投資ローン比較 — https://www.agent-hp.com/real-estate-investment-loan-comparison/