「親からお金をもらったけど、贈与税の申告って必要なの?」「110万円以内なら何もしなくていいって聞いたけど、本当に大丈夫?」そんな疑問を持つ方は少なくありません。贈与税のルールは複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解すれば、自分のケースに当てはめて判断できるようになります。この記事では、110万円という基準の正しい意味から、超えたときの申告手続き、さらに申告が必要になる特殊なケースまで、国税庁の情報をもとにわかりやすく解説します。
110万円の基準は「もらった側の年間合計額」で判断する

贈与税の110万円ルールを正しく理解するうえで、まず押さえておきたいのは「誰の、いつからいつまでの合計額か」という点です。この基準を誤解していると、知らないうちに申告漏れになってしまう危険があります。
国税庁の情報によると、暦年課税では毎年1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額で贈与税を計算します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)。つまり、年をまたいで贈与を分けることには意味がありますが、同じ年内に複数回に分けてもらっても合算されます。また、複数の人から贈与を受けた場合も、すべてを足し合わせた総額で判断します。
たとえば、父から60万円、母から70万円を同じ年にもらった場合、合計は130万円となり、110万円を超えるため申告が必要になります。「1人ひとりからの金額が110万円以下だから大丈夫」という考え方は誤りです。あくまでも「もらった側(受贈者)が、その年に受け取った財産の総額」で判断することを忘れないでください。
この基礎控除額110万円を超えた部分に対して、一般税率または特例税率が適用されます。たとえば、年間の受贈総額が111万円だった場合、課税対象となるのは110万円を差し引いた1万円だけです。国税庁の情報では、基礎控除後200万円以下の部分には一般税率・特例税率ともに10%が適用されるため、この場合の税額は1,000円となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)。少額でも申告義務は発生するため、注意が必要です。
110万円を超えたときの申告手続きと期限

実際に110万円を超える贈与を受けた場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。ここでは申告の流れと期限を整理します。
国税庁によると、贈与税の申告と納税は原則として財産をもらった人(受贈者)が行い、期限はもらった年の翌年2月1日から3月15日までです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4429.htm)。たとえば2025年中に贈与を受けた場合、令和7年分の申告受付期間は2026年2月2日(月)から2026年3月16日(月)までとなっています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/09.htm)。この期限を過ぎると、ペナルティが発生するため注意が必要です。
申告書の種類は、贈与の内容によって異なります。暦年課税のみを申告する場合は第一表を使用し、相続時精算課税を申告する場合は第一表と第二表が必要です。住宅取得等資金の非課税特例を使う場合はさらに第一表の二も必要になります。また、申告書を提出する際にはマイナンバーの記載と本人確認書類の提示または写しの添付も求められます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/09.htm)。
申告期限を守ることは非常に重要です。国税庁の情報によると、申告期限までに申告しなかった場合や実際にもらった額より少ない額で申告した場合には、本来の税金のほかに加算税がかかります。さらに、納税が期限に遅れた場合は延滞税も発生します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4429.htm)。「少額だから大丈夫だろう」と放置せず、きちんと期限内に手続きを済ませることが大切です。
「申告不要」と思いがちな落とし穴に注意
贈与税がかからないケースや申告不要と思われがちな場面でも、実は申告が必要なケースがあります。この点を正しく理解しておくことで、思わぬトラブルを防げます。
まず、生活費や教育費の受け取りについてです。扶養義務者から生活費や教育費として受け取った財産は、原則として贈与税がかかりません。しかし、国税庁によると、これは「必要の都度、直接これらに充てるためのもの」に限られます。受け取ったお金を預金したり、株式や不動産の購入資金に回したりした場合には贈与税の対象になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm)。「生活費として受け取ったから申告不要」と安易に判断するのは危険です。
次に、特例を使う場合の申告義務についてです。婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円の配偶者控除が受けられる特例があります。しかし、この特例は自動的に適用されるわけではなく、贈与税の申告書に戸籍謄本や登記事項証明書などの書類を添付して申告することが必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm)。控除額の範囲内であっても、申告しなければ特例は受けられません。
住宅取得等資金の非課税特例も同様です。直系尊属から住宅取得のための資金を贈与された場合の非課税特例は、全額が非課税枠内であっても自動適用ではなく、翌年2月1日から3月15日までに申告書と必要書類を提出する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508_qa.htm)。また、この特例はあくまでも「金銭の贈与」が対象であり、不動産そのものの贈与には適用されない点も覚えておきましょう。
相続時精算課税を選んだ場合の110万円ルール
相続時精算課税という制度を選択した場合、110万円の扱いが暦年課税とは少し異なります。この違いを理解しておくことで、より柔軟な贈与計画が立てられます。
相続時精算課税は、一定の要件を満たす親や祖父母から子や孫への贈与に適用できる制度です。この制度を選択した場合、その年の相続時精算課税適用財産の合計額が110万円を超えると贈与税の申告が必要になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)。一方、すでに相続時精算課税を選択済みで、翌年以後の同じ特定贈与者からの贈与が110万円以下であり、他に対象となる贈与もない場合には、その年の贈与税申告は不要になる場合があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_qa.htm)。
相続時精算課税を初めて選択する際には、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を、戸籍謄本などの一定書類とともに提出する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm)。この届出を忘れると制度を選択したことにならないため、手続きのタイミングには十分注意してください。
なお、相続時精算課税を選択すると、その後は同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことができません。制度の選択は慎重に行う必要があり、自分の状況に合っているかどうかを事前に確認することが重要です。不明な点は、国税局の電話相談センター(案内番号「3」で贈与税・財産評価の相談が可能)や所轄の税務署での面接相談を活用することをおすすめします(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/)。
不動産の贈与を受けたときの評価と申告
現金ではなく不動産を贈与された場合、贈与税の計算には「評価額」が使われます。この評価の仕組みを知っておくことで、思わぬ高額な税負担を避けられます。
国税庁によると、土地の評価方法には路線価方式と倍率方式があり、家屋は固定資産税評価額で評価します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm)。一般的に不動産の評価額は市場価格より低くなることが多いため、現金で同額を贈与するよりも税負担が軽くなるケースがあります。ただし、評価額が110万円を超えれば申告が必要になることに変わりはありません。
一方、注意が必要なのは負担付贈与や個人間の対価を伴う取引です。このような場合には、通常の路線価・倍率評価ではなく、通常の取引価額に相当する金額で評価する扱いがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm)。たとえば、住宅ローンが残っている不動産を贈与する場合などがこれに該当します。評価方法が変わると税額も大きく変わるため、専門家への相談も検討してみてください。
まとめ
贈与税の申告が不要かどうかは、「もらった側が1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下かどうか」で判断します。複数の人からもらった場合も、同じ人から複数回もらった場合も、すべて合算して考えることが基本です。110万円を超えた場合は、翌年2月1日から3月15日までに申告と納税を行う必要があります。また、特例を活用する場合は、たとえ税額がゼロでも申告が必要なケースがあることを忘れないでください。贈与税のルールは個別の事情によって判断が変わることも多いため、不安な場合は税務署や国税局の電話相談センターに相談することをおすすめします。正しい知識を持って、安心して贈与の手続きを進めましょう。
参考文献・出典
- 国税庁「贈与税の申告をされる方へ|令和7年分 確定申告特集」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/zouyozei.htm
- 国税庁「No.4429 贈与税の申告と納税」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4429.htm
- 国税庁「〖贈与税の申告等〗」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/09.htm
- 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- 国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
- 国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
- 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
- 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択(Q&A)」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_qa.htm
- 国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(Q&A)」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508_qa.htm
- 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
- 国税庁「国税に関するご相談について」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/