旧耐震のアパートを購入したいけれど、「ローンが組めるのか不安」という方は多いのではないでしょうか。確かに旧耐震基準の物件は、金融機関の審査で不利になりやすいというイメージがあります。しかし実際には、すべての金融機関が一律に断るわけではなく、条件次第で融資を受けられるケースも存在します。この記事では、旧耐震アパートローンの基本的な仕組みから、融資を受けやすくするためのポイント、さらに具体的な金融機関の特徴まで、初心者にもわかりやすく解説します。物件選びや資金計画で悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
旧耐震基準とは何か、なぜ融資が難しいのか

まず押さえておきたいのは、「旧耐震基準」という言葉の定義です。実務上は昭和56年5月31日以前の基準で建てられた建物を指し、それ以降に建てられた「新耐震基準」の物件と区別されます(国土交通省)。この日付は不動産投資の世界では非常に重要な基準となっており、金融機関の審査でも真っ先に確認される項目のひとつです。
では、なぜ旧耐震の物件は融資が難しくなりやすいのでしょうか。その背景には、法定耐用年数という概念があります。国税庁の耐用年数表によると、木造・合成樹脂造の住宅用は22年、鉄筋コンクリート造の住宅用は47年と定められています。旧耐震の物件はすでに築40年以上が経過しているケースも多く、木造であれば法定耐用年数をとっくに超えていることになります。
金融庁が2019年3月に公表した調査結果によると、多くの金融機関が融資期間を法定耐用年数以内または経済耐用年数以内に設定しています。つまり、旧耐震の築古物件では融資期間が極端に短くなりやすく、月々の返済額が大きくなるため、収支が合わなくなるケースが出てきます。これが「旧耐震は借りにくい」と言われる主な理由です。
重要なのは、これが「制度として禁止されている」わけではなく、あくまで各金融機関の審査運用によるものだという点です。一部の金融機関では、法定耐用年数を大幅に超えた融資期間を許容しているケースもあり、旧耐震だからといって一律に諦める必要はありません。
金融機関ごとの対応の違いを知る

旧耐震アパートローンを検討する際に最も大切なのは、金融機関によって対応が大きく異なるという現実を理解することです。たとえば、Wealth Agentの比較情報によると、静岡銀行は旧耐震物件への融資を「融資不可」としている一方、オリックス銀行は構造・築年数によって一部制限はあるものの個別審査型の対応をとっています。同じ物件でも、どの金融機関に相談するかで結果が変わることは珍しくありません。
オリックス銀行の公式情報によると、不動産投資ローンの借入金額は一定の範囲内、借入期間は一定の期間内で設定されています。さらに注目すべきは、同行の公開事例として、法定耐用年数22年の木造アパートに対して期間35年の融資を実行したケースが紹介されている点です。これは、法定耐用年数を超えた融資も条件次第で可能であることを示す具体的な例といえます。
地方銀行の例として、北海道銀行のアパートローンでは、中古物件の融資期間の計算式が公開されています。RC造の場合は「47年-築後経過年数×0.8」以内、木造の場合は「25年-築後経過年数×0.8」以内という基準が設けられています(北海道銀行)。この計算式に当てはめると、旧耐震・築古の物件ほど融資期間が短くなることが数値として確認できます。一方で、融資額は350万円以上10億円以内と幅広く設定されており、物件の収益性が高ければ検討の余地はあります。
日本生命のニッセイアパートローンは、借入金額が原則2億円以内、借入期間が原則30年以内で、2026年8月時点の基本金利は長期貸付基準金利連動型で3.35%、短期貸付基準金利連動型で3.325%となっています。ただし、このローンは「土地をお持ちの方」が基本対象であるため、既存の旧耐震アパートの購入には向かない場合もあります。金融機関ごとに対象となる資金使途が異なる点も、事前に確認が必要です。
旧耐震でも融資を通すための実践的なポイント
実は、旧耐震物件でも融資を受けられた事例は存在します。INVASEが2026年5月に公開した事例によると、SRC造・築45年のファミリー向けマンションで、借入金額約1,000万円・金利2%台後半・期間16年という条件で融資が実行されています。このケースで重要だったのは、SRC造という構造の堅牢性と、ファミリー層を中心とした安定した実需性を丁寧に説明したことでした。
つまり、旧耐震で融資を通すためには、物件の「強み」を金融機関に対して明確に伝えることが鍵になります。具体的には、耐震診断の結果や過去の修繕履歴、現在の入居状況を示すレントロール(賃料収入一覧)、そして将来の出口戦略(売却時の想定価格など)を整理して提示することが有効とされています。金融機関は融資の回収可能性を重視するため、物件の収益性と安全性を数字で示すことが説得力につながります。
また、融資を申し込む金融機関の選び方も重要です。Wealth Agentの比較情報によると、スルガ銀行は長期融資で中古物件に有利とされており、L&Fアセットファイナンスは築古や難物件にも強い特徴があるとされています。ただし、これらはあくまで二次情報であり、実際の条件は個別審査によって異なります。申し込み前には必ず公式サイトや支店窓口で最新情報を確認することが不可欠です。
さらに、複数の金融機関に同時並行で相談することも有効な戦略です。旧耐震の可否を公式ページに明示していない金融機関も多く、担当者への事前打診によって初めて条件が判明するケースも少なくありません。一行に断られても、別の金融機関では通るということは十分にあり得ます。
耐震改修という選択肢と住宅金融支援機構の融資制度
旧耐震アパートを購入後、または所有している場合に検討したいのが耐震改修です。耐震性能を向上させることで、物件の資産価値が上がるだけでなく、その後の融資条件が改善される可能性もあります。住宅金融支援機構では、賃貸住宅の耐震改修を目的としたリフォーム融資を提供しており、敷地面積や床面積の制限がないため幅広い賃貸住宅に対応しています(住宅金融支援機構)。
住宅金融支援機構の賃貸住宅リフォーム融資(耐震改修)の適用金利は、2026年8月1日からの適用として公表されており、返済期間によって異なります。民間の不動産投資ローンと比較すると、かなり低い金利水準であることがわかります。耐震改修にかかるコストを抑えながら物件の価値を高めたい方にとって、有力な選択肢のひとつといえるでしょう。
さらに大規模な改修を検討する場合は、住宅金融支援機構の「長期耐用耐震改修」融資も選択肢に入ります。個人・法人ともに申し込みが可能で、対象事業費の100%以内まで融資を受けられます(住宅金融支援機構)。長期にわたって安定した収益を確保したい場合には、こうした公的融資制度の活用も視野に入れてみてください。
まとめ
旧耐震アパートローンは、すべての金融機関で借りられないわけではありません。確かに審査のハードルは高く、融資期間が短くなりやすいという現実はありますが、物件の構造・収益性・耐震改修の有無などによって状況は大きく変わります。重要なのは、複数の金融機関に相談し、物件の強みを丁寧に説明することです。また、住宅金融支援機構の耐震改修融資のような公的制度も組み合わせることで、選択肢が広がります。まずは一行に絞らず、幅広く情報収集することから始めてみましょう。最新の融資条件は各金融機関の公式サイトや窓口で必ずご確認ください。
参考文献・出典
- 国土交通省「リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000249.html
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
- 金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(2019年3月28日) — https://www.fsa.go.jp/news/30/20190328.PDF
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅リフォーム融資(耐震改修)」 — https://www.jhf.go.jp/kanri/chintaireform_taishin/index.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅リフォーム融資・サービス付き高齢者向け賃貸住宅購入融資金利」 — https://www.jhf.go.jp/loan/kinri/chintaireform.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅リフォーム融資(長期耐用耐震改修)のご案内」 — https://www.jhf.go.jp/files/a/public/jhf/400346988.pdf
- オリックス銀行「不動産投資ローン」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/?id=51040201307
- 北海道銀行「アパートローン」 — https://www.hokkaidobank.co.jp/loan/apartment/
- 日本生命「ニッセイアパートローン 金利情報」 — https://www.nissay.co.jp/kojin/shohin/loan/apart/kinri.html
- INVASE「旧耐震である築45年のファミリー区分マンションで借り入れを実現した事例」 — https://investment.mogecheck.jp/media/case82-investment-loan-borrowing
- Wealth Agent「主要14銀行の不動産投資ローン比較」 — https://www.agent-hp.com/real-estate-investment-loan-comparison/