不動産の税金

空き家3000万円特別控除の要件と2027年末の期限を確認

親から受け継いだ実家が空き家になってしまい、売却を検討しているものの「税金がどれくらいかかるのか」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。そのような方にぜひ知っておいていただきたいのが、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」という制度です。この特例を使えば、相続した空き家を売却した際の利益から最大3,000万円を差し引くことができ、税負担を大きく抑えられる可能性があります。ただし、適用を受けるためにはいくつかの厳格な要件を満たす必要があり、期限内に手続きを進めることも欠かせません。この記事では、制度の基本的な仕組みから具体的な要件、注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

制度の基本的な仕組みと控除額

制度の基本的な仕組みと控除額のイメージ

まず押さえておきたいのは、この特例が「誰でも使える」ものではなく、相続という特定の場面に限定された制度だという点です。国税庁の情報によると、相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋(亡くなった方が住んでいた家)またはその敷地等を一定の要件のもとで譲渡した場合に、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。

控除額については、令和6年1月1日以後の譲渡から注意が必要な変更があります。家屋や敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除の上限額は2,000万円に引き下げられます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。相続人が2人以下であれば従来どおり最高3,000万円が適用されます。複数の相続人がいる場合は、それぞれが個別に特例を申請することになりますが、控除額の上限は一人あたりの金額として設定されているため、事前に相続人の人数を確認しておくことが重要です。

この特例は、空き家問題の深刻化を背景に設けられた制度です。相続によって生じた空き家が放置されることを防ぎ、適切に流通・活用されるよう促すことを目的としています。そのため、要件の多くは「本当に空き家だったか」「適切な状態で売却されたか」という観点から設計されています。

対象となる家屋の3つの要件

対象となる家屋の3つの要件のイメージ

対象となる家屋には、国税庁が定める3つの要件があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。第一に、昭和56年5月31日以前に建築されたこと。第二に、区分所有建物登記がされている建物でないこと(マンションのような区分所有建物は対象外)。第三に、相続開始の直前において被相続人以外の居住者がいないことです。

3つ目の要件、つまり「被相続人が一人で住んでいたこと」が条件になっているのには理由があります。この特例はあくまで「被相続人が居住していた家が空き家になること」を防ぐための制度です。もし相続開始の直前に他の家族も同居していた場合、その家族がそのまま住み続けることができるため、空き家になるリスクは低くなります。制度の趣旨から考えると、「一人暮らしの親が亡くなって誰も住まなくなった家」を対象にすることが合理的であり、同居者がいた場合は対象外とされているのです。

また、売却者側の要件として重要なのが、家屋と敷地の両方を相続または遺贈で取得していることです(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/29.htm)。たとえば、家屋は相続で取得したものの、敷地はもともと相続人自身が所有していたというケースでは、この特例の対象にはなりません。家屋と敷地がセットで相続されていることが前提となっています。

被相続人が老人ホームに入所していた場合

実は、被相続人が相続開始直前に老人ホームなどに入所していて、家屋に住んでいなかった場合でも、一定の要件を満たせば特例の対象になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm)。高齢化が進む現代では、亡くなる前に施設へ移っていたというケースは珍しくないため、この点は多くの方に関係する重要な情報です。

この場合に必要となる「特定事由」とは、介護保険法に基づく要介護認定または要支援認定を受けた被相続人が一定の施設に入所したことなどが含まれます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm)。ただし、施設入所後から相続開始直前まで、家屋が物品の保管などに使われていたこと、そして事業・貸付け・他人の居住に使われていないことが必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm)。

つまり、親が施設に移った後も家屋を誰かに貸したり、事業用途に使ったりしていた場合は対象外となります。施設入所後の家屋の使われ方が、特例の適用可否を左右する重要なポイントになるため、相続が発生した際には早めに状況を整理しておくことをおすすめします。

売却の期限と耐震・取壊しの要件

いつまでに売ればよいかという点については、2つの期限があります。国土交通省の資料によると、①相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ②制度全体の適用期限である令和9年(2027年)12月31日まで、という条件を両方満たす必要があります(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html)。たとえば2024年に相続が発生した場合、3年後の年末は2027年12月31日となり、制度の期限とも一致します。一方、2022年に相続が発生していれば、3年後の年末は2025年12月31日となるため、すでに期限が迫っている可能性があります。

売却の方法については、大きく3つのパターンに整理できます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。一つ目は、家屋を耐震リフォームしたうえで敷地とともに売却するパターン。二つ目は、家屋を全部取り壊した後に土地だけを売却するパターン。三つ目は、令和6年1月1日以後の譲渡であれば、売却時点では未改修・未除却でも、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却工事を完了させれば対象になるパターンです(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001715180.pdf)。

どのパターンを選ぶかは、物件の状態や買主との交渉によって異なります。重要なのは、相続から売却までの間、家屋や土地を事業・貸付け・居住の用に供していないことです。また、「土地の引渡し後に建物を取り壊す」という特約付きの売買契約は、「家屋を取り壊した後の譲渡」には当たらないため特例の対象外となる点にも注意が必要です(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html)。

他の特例との併用と1億円の上限

この特例を使う際に見落としがちなのが、他の特例との関係です。「相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例(措法39条)」などとは重ねて適用を受けることができません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf)。どちらの特例がより有利かは個別の事情によって異なるため、税務署や税理士に相談のうえ判断することをおすすめします。

また、譲渡価額が1億円以下であることも要件の一つです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf)。この1億円の判定は、一体として利用していた部分を分割して売却した場合や、他の相続人が売却した分も合算して行われます。さらに、いったん特例の適用を受けた後でも、その後の売却分を合算して1億円を超えた場合は、売却日から4か月以内に修正申告と納税が必要になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。

親族への売却については、特別の関係がある人への譲渡は対象外とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。生計を一にする親族、売却後に同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれるため、家族間での売買を検討している場合は事前に確認が必要です。

申告に必要な書類と相談窓口

特例の適用を受けるためには、確定申告の際に一定の書類を添付する必要があります。国税庁の情報によると、最低限必要なものとして、譲渡所得の内訳書、売却した資産の登記事項証明書等、そして「被相続人居住用家屋等確認書」があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。家屋を売却するパターンでは、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しも必要です。

「被相続人居住用家屋等確認書」は、家屋が空き家であったことを確認するための書類で、物件所在地の市区町村に申請して交付を受けます。大阪市の手引きによると、申請に必要な基本書類として、被相続人の除票住民票、相続人全員の住民票、不動産売買契約書のコピー、登記事項証明書などが挙げられています(大阪市 https://www.city.osaka.lg.jp/naniwa/cmsfiles/contents/0000591/591627/R6.1.1.pdf)。ただし、自治体によって必要書類や手続きの詳細が異なる場合があるため、物件所在地の市区町村に直接確認することが大切です。

なお、この確認書はあくまで「空き家であったことを確認する書類」であり、特別控除の適用が確約されるものではありません(北九州市 https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/28100011.html)。税務上の判断や申告については、所轄の税務署または国税庁の電話相談センターに相談することをおすすめします(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/)。

まとめ

空き家の3,000万円特別控除は、相続した実家の売却にかかる税負担を大きく軽減できる制度です。ただし、対象となる家屋の建築年や構造、相続開始直前の居住状況、売却の方法、譲渡価額など、複数の要件を同時に満たす必要があります。また、制度の適用期限は令和9年(2027年)12月31日であり、相続開始から3年以内という個別の期限もあるため、早めに状況を確認することが重要です。相続人の人数によって控除上限額が変わる点や、他の特例との併用ができない点も見落とさないようにしましょう。具体的な事情が絡む場合は、税務署や税理士への相談を積極的に活用してください。

参考文献・出典

  • 国税庁 – No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国税庁 – No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm
  • 国税庁 – 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた(土地や建物をお売りになった場合) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf
  • 国税庁 – 被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地等をそれぞれ別の相続等により取得した場合 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/29.htm
  • 国土交通省 – 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)について — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001715180.pdf
  • 国土交通省 – 住宅:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
  • 大阪市 – 空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除「被相続人居住用家屋等確認書」の交付申請の手引き — https://www.city.osaka.lg.jp/naniwa/cmsfiles/contents/0000591/591627/R6.1.1.pdf
  • 北九州市 – 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) — https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/28100011.html
  • 国税庁 – 国税に関するご相談について — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/

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