「この土地は再建築不可です」。不動産会社にそう言われて、意味が分からなかった、という方は少なくありません。かんたんに言うと、いま建っている家を壊すと、次の家を建てられない土地のことです。住んでいるぶんには何も起きません。ところが、売ろうとした途端に問題になります。
どれくらい違うのか、数字で見てみます。当社が独自に集計した売り出し情報のうち、「再建築不可」と明記されていた中古戸建は399件ありました。このうち土地の広さと価格がそろっている362件で、土地1㎡あたりの価格を見ると、同じ市区の中古戸建の中央値に対して0.47倍でした。土地の広さをそろえて比べても、およそ半分です。3,000万円で売れるはずの家なら、1,400万円ほどということになります。
まず、数字を見てみます
再建築できるかどうかは、前の道路で決まります。当社が集めた土地の売り出し情報のうち、接している道路の情報が書かれていたものを数えました。21,003件が対象です。
- 前の道路の幅が4mない土地:14.8%(うち2mもない土地が0.8%)
- ちょうど4mの土地:16.8%
- 4mより広い道路に面した土地:68.4%
- 前の道路が私道(個人の持ち物の道)だった土地:17.8%
- 「再建築不可」と書かれていた中古戸建:全体の1.45%
7軒に1軒の土地は、前の道路が4mありません。決してめずらしい話ではないのです。
価格にどう出ているかも見ました。道路の幅が4mない土地の1㎡あたりの価格は、同じ市区の土地の中央値の0.82倍でした。4mより広い道路に面した土地は1.03倍です。道路が4mあるかないかで、約2割の差がついています。3,000万円の土地なら、600万円ほどの違いです。
「再建築不可」と書かれた中古戸建の中身も見てみます。売り出し価格の中央値は1,040万円、土地は60.6㎡、建物は65.3㎡、建ってから54年でした。同じ集計で、再建築不可と書かれていない中古戸建は、2,498万円・132.2㎡・築29年でした。小さくて古い家に集中していることが分かります。だから0.47倍という数字は、条件の悪さがそのまま出た結果とも言えます。
ここまでのまとめ:道路の幅が4mない土地は7軒に1軒。価格は2割ほど低く、再建築できない家は半分近くまで下がります。
そもそも「再建築できない」とは何か
法律に、次のような決まりがあります。幅4m以上の道路に、2m以上接していない土地には、建物を建ててはいけない。これを接道義務といいます。火事のときに消防車が入れないと困る、という理由です。
この決まりができたのは1950年です。それより前に建った家は、そのまま建っていて構いません。ただし、壊して建て直すことはできません。だから「再建築不可」と呼ばれます。古い住宅地の奥や、細い路地の先に、こういう土地が残っています。
もう一つ、よく出てくるのが「セットバック」です。道路の幅が4mない場合、道路の中心から2m下がった線までを道路として空けることになります。その分、自分の土地は使えなくなります。たとえば道路の幅が3m、間口が10mの土地なら、0.5m×10m=5㎡が使えません。100㎡の土地なら、5%が消える計算です。
大事なのは、この二つが別物だということです。セットバックが必要なだけなら、家は建てられます。土地が少し減るだけです。再建築不可は、そもそも建てられません。混同して不安になっている方が、とても多いところです。
ここまでのまとめ:4mの道路に2m接していれば建てられます。足りないと、セットバックか再建築不可のどちらかになります。
あなたの土地は、どれに当たりますか
まず、ご自分の土地がどの状態かを確かめてください。役所の建築を担当する窓口で、住所を伝えれば教えてもらえます。無料です。「前面道路の種別と幅員を知りたい」と言えば通じます。
- 道路に2m以上接していない——再建築できません。この記事の後半が中心の話になります。
- 接してはいるが、道路の幅が4mない——多くはセットバックで建てられます。売るときは、下がる面積を先に計算しておいてください。
- 前の道路が私道である——集計では17.8%がこれでした。建てられるかどうかは、その私道が役所の認めた道かどうかで決まります。水道管を引くときに、私道の持ち主から承諾をもらう必要も出てきます。
- 旗のような形をしている——道路から細い通路が伸びて、奥に敷地がある形です。通路の幅が2mあるかどうかが分かれ目になります。1.8mだった、という例は実際にあります。
ここで一つ、注意があります。境界の石が動いていたり、そもそも無かったりすると、「2mある」と思っていたものが足りないことがあります。測ってみて初めて分かります。
ここまでのまとめ:役所で確かめれば、その日のうちに分かります。自己判断で決めないでください。
値段以外に、変わることが2つあります
再建築できない家を売るときに、値段よりも先に効いてくるのがこの2つです。
一つめは、住宅ローンです。再建築できない家には、銀行が住宅ローンを出しません。担保としての価値を認めないからです。買い手は現金で買える人に限られます。買い手の数が一気に減るので、値段が下がります。0.47倍という数字の正体は、ここです。
二つめは、火災保険です。建て直せない家は、燃えても建て直せません。保険の入り方が変わることがあります。買い手にとっては気になる点なので、聞かれたら答えられるようにしておいてください。
逆に言うと、この2つが問題にならない買い手を見つければ、値段は上がります。次の章の話につながります。
ここまでのまとめ:値段が下がる原因は、家の質ではなく、買える人が減ることにあります。
再建築できない土地の、売り方は4つあります
売れない、ということはありません。売り方が違うだけです。順に見ていきます。
1. 隣の家に買ってもらう
いちばん高く売れる可能性があるのが、この方法です。隣の土地と一つになれば、再建築できる土地に変わることがあります。道路に2m以上接する形になるからです。隣の方にとっては、自分の土地の価値が上がる買い物です。だから、市場の相場より高く買ってもらえることがあります。
逆のこともあります。隣の通路部分を少しだけ買わせてもらい、自分の土地を再建築できる形にしてから売る。どちらが得かは、隣がどんな土地かで決まります。地図を印刷して、自分の土地と隣の土地の形を並べて見てください。案外、その場で見当がつきます。
2. そのまま、現金で買う相手に売る
買い手は、貸家として運用する人か、リフォームして売り直す業者が中心になります。値段は下がりますが、確実に現金で決まるという良さがあります。
この道を選ぶときのコツは、最初から相場の半分あたりで出すことです。相場の値段で出して反応を待ち、少しずつ下げていく売り方は、この種の土地では効きません。買い手が最初から限られているので、価格が合わなければ誰も見に来ないからです。時間だけが過ぎます。
3. 建てられるようにしてから売る
道路の状況によっては、役所の許可を取って建てられるようにできる場合があります。法律に例外を認める条文があり、周りが広い空き地であるなど、避難に支障がないと認められれば通ります。ただし、地域ごとに基準が違い、時間もかかります。数か月から1年かかることもあります。
通るかどうかは、事前に役所で相談すれば見当がつきます。通る見込みがあるなら、やる価値は十分にあります。0.47倍が1.0倍に戻る話だからです。3,000万円の相場の土地なら、1,400万円が3,000万円になります。
4. 貸したまま、そのまま持つ
売らないという選択もあります。再建築できない家でも、住む人はいます。家賃は相場より下がりますが、土地の値段が半分になることと比べれば、悪い話ではありません。
ただし、建て替えができない以上、建物が寿命を迎えたら終わりです。何年持たせるつもりかを、先に決めておいてください。
ここまでのまとめ:隣に売る、現金の買い手に売る、建てられるようにする、貸す。この4つを、必ず並べて比べてください。
やってはいけないこと
一つだけ、強くお伝えしたいことがあります。再建築できないことを隠して売らないでください。あとから分かると、契約を取り消されたり、損害を求められたりします。売主は、知っている不利な事実を買主に伝える義務があります。
それから、更地にしてしまうことです。家を壊した瞬間に、その土地には二度と家が建ちません。「古い家があるから安いのだろう」と考えて解体すると、価値がさらに下がります。再建築できない土地では、建物を残しておくことに意味があります。
もう一つ。相場を調べるときに、周りの普通の土地の価格を見てしまうことです。同じ町でも、条件が違えば別の市場です。市区ごとの成約価格は土地・戸建ての相場データベースで見られますが、そこに出ている数字は道路条件に問題のない土地も含んだ全体の中央値です。ご自分の土地に当てはめるときは、この記事の倍率で下方向に調整してください。
当社では、こう見ています
当社は買取と仲介の両方を行っているため、再建築できない土地も日常的に扱っています。査定の順番は決まっていて、まず役所で道路の種類と幅を確かめ、次に境界を見て、最後に隣の土地の形を見ます。隣に買っていただける可能性があるかどうかで、出せる金額が変わるからです。実務では、この一手間を掛けるかどうかで結果が数百万円変わります。当社にはご相談が毎月500件ほど寄せられますが、そのなかには「再建築不可と言われて諦めていたが、隣地と一緒にすれば建てられた」という土地が毎月のように含まれています。
次の一歩
やることは二つです。一つは、役所の建築担当の窓口で、前の道路の種類と幅を聞くこと。もう一つは、隣の土地がどうなっているかを地図で見ることです。この二つが分かれば、4つの売り方のうちどれが現実的かが決まります。
そのうえで、いくらになるかを知りたい方は、この記事の下のご案内からご相談ください。道路と境界の状況をうかがえば、どの売り方でいくらになるかを比べてお出しできます。「再建築不可だから相談しても意味がない」ということはありません。むしろ、条件が特殊な土地ほど、比べる価値が出てきます。
まとめ
- 土地の売り出し情報21,003件のうち、前の道路が4mない土地は14.8%。私道に面した土地は17.8%
- 道路が4mない土地の1㎡単価は、同じ市区の中央値の0.82倍。4m超は1.03倍で、約2割の差
- 「再建築不可」と明記された中古戸建は、土地の広さをそろえても同じ市区の0.47倍だった
- セットバックと再建築不可は別の話。前者は建てられる、後者は建てられない
- 売り方は、隣に売る・現金の買い手に売る・建てられるようにする・貸す、の4つ。隠して売ることだけは避ける
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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