不動産の税金

借地権を売却したときの税金、3つの計算ステップで把握する

「借地権を売りたいけれど、税金がどれくらいかかるのか全然わからない」という方は多いと思います。借地権(しゃくちけん)とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利のことです。土地そのものではありませんが、売ると税金がかかります。しかも計算の仕組みが少し複雑で、知らないまま進めると申告漏れや損をするリスクがあります。この記事では、借地権を売ったときにかかる税金の種類・計算の流れ・使える控除を、初めての方でも理解できるよう順を追って説明します。最後まで読めば「自分の場合はいくらくらい税金がかかるのか」をざっくり把握できるようになります。

借地権を売ると、どんな税金がかかるのか

借地権を売ると、どんな税金がかかるのかのイメージ

まず押さえておきたいのは、借地権を売ったときにかかる主な税金は「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」だという点です。譲渡所得税とは、資産を売って利益が出たときにかかる税金のことです。

国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、借地権は「譲渡所得の対象となる資産」に明確に含まれています。つまり、土地や建物と同じように、売って儲けが出れば課税されます。一方で、借地権の売却は消費税の対象外です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6931.htm)。消費税を心配している方は、その点はご安心ください。

また、売買契約書を作るときには「印紙税(いんしぜい)」もかかります。借地権の譲渡契約書は、国税庁の情報(令和7年8月1日現在法令等)によると「土地の賃借権の譲渡に関する契約書」として扱われ、売買金額に応じた印紙を貼る必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/09/04.htm)。印紙税の金額は記載された売買金額で決まり、後で返ってくる保証金や敷金は金額に含まれません。

ここまでのまとめ: 借地権を売ると「譲渡所得税」と「印紙税」がかかり、消費税はかかりません。

税金の計算は3ステップで考える

税金の計算は3ステップで考えるのイメージ

税額を計算するときは、次の3つのステップで考えると整理しやすくなります。難しい言葉が出てきますが、一つひとつ説明しますので安心してください。

ステップ1は「課税譲渡所得金額」を出すことです。 国税庁(令和7年4月1日現在法令等)によると、計算式は「収入金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額」です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm)。収入金額とは売れた金額のことです。なお、買主から受け取る固定資産税の精算金がある場合は、それも売却金額に含めて計算します。

取得費(しゅとくひ)とは、もともとその借地権を手に入れたときにかかった費用のことです。購入代金・購入手数料・設備費・改良費などが含まれます。建物がある場合は、建物の取得費から「減価償却費相当額(げんかしょうきゃくひそうとうがく)」、つまり年月とともに価値が下がった分を差し引いた金額を使います(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm)。

譲渡費用(じょうとひよう)とは、売るためにかかった費用です。仲介手数料や売買契約書の印紙代のほか、地主に支払う「名義書換料(なまえかきかえりょう)」も譲渡費用に含められます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)。借地権を売るときは地主の承諾が必要で、その際に支払う承諾料・名義書換料は費用として認められるため、忘れずに計上しましょう。ただし、修繕費や固定資産税などの維持管理費は譲渡費用にはなりません。

ここまでのまとめ: 課税対象の利益は「売値 −(取得費+名義書換料などの費用)− 控除額」で計算します。

税率は「何年持っていたか」で大きく変わる

ステップ2は、税率を確認することです。税率は「売った年の1月1日時点で、その借地権を5年超持っていたかどうか」で決まります。

5年を超えて持っていた場合は「長期譲渡所得(ちょうきじょうとしょとく)」となり、所得税15%・住民税5%が基本税率です。5年以下の場合は「短期譲渡所得(たんきじょうとしょとく)」となり、所得税30%・住民税9%と、税率がほぼ2倍になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。さらに、令和19年まで「復興特別所得税」として所得税額の2.1%が上乗せされます。

たとえば、課税譲渡所得が1,000万円で長期の場合、所得税は約153万円(15%+復興特別所得税2.1%分)、住民税は50万円、合計で約203万円の税負担になります。短期の場合は所得税が約306万円、住民税が90万円と、負担がぐっと重くなります。売却のタイミングを5年超になるよう調整できるなら、税負担は大きく変わります。

なお、借地契約を更新した場合でも、それが単なる期間の更新にすぎないときは、更新前から持っていた期間も通算して所有期間を計算できるという考え方があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/05/12.htm)。ただし、個別の事情によって判断が変わる可能性があるため、詳細は税務署や税理士にご確認ください。

ここまでのまとめ: 5年超保有なら税率は約20%、5年以下なら約39%と倍近い差があります。

3,000万円控除など、使える特例を確認する

ステップ3は、特別控除や軽減税率の特例が使えるかを確認することです。要件を満たせば税負担を大幅に減らせます。

まず代表的なのが「居住用財産の3,000万円特別控除」です。自分が住んでいた家屋(または住まなくなってから3年目の年末までに売る家屋)とともに借地権を売る場合、課税譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。たとえば課税譲渡所得が2,500万円であれば、控除後はゼロになり、所得税・住民税ともにかかりません。

ただし、この特例にはいくつかの注意点があります。前年・前々年にも同じ特例を使っていると適用できません。また、親族など特別な関係にある人への売却も対象外です。さらに、この特例を使った年の前後に新居を購入して住宅ローン控除を受けようとすると、住宅ローン控除が使えなくなる場合があります。どちらが有利かは個別の状況によるため、事前に試算することをおすすめします。

もう一つ、所有期間が10年を超えるマイホームの場合は「軽減税率の特例」も使えます。課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は税率10%、6,000万円を超える部分は15%と、通常の長期税率よりさらに低くなります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)。この特例は3,000万円特別控除と重ねて使うことができます。

ここまでのまとめ: 住んでいた家屋と一緒に売るなら、3,000万円控除や軽減税率の特例で税負担を大幅に減らせる可能性があります。

地主の承諾と確定申告の手続き

税金の計算と並んで、実務上の手続きも確認しておきましょう。借地権を売るときは、税金以外にも押さえるべき点があります。

借地契約が土地の賃貸借契約の場合、建物を売るときは土地の賃借権も一緒に移転するため、原則として地主(土地の所有者)の承諾が必要です(民法612条)。地主が承諾してくれない場合は、裁判所に「土地賃借権譲渡許可」の申し立てをすることができます。その場合、地主には優先的に買い取る「介入権」があります(東京地方裁判所 https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html)。売却をスムーズに進めるためにも、早めに地主と話し合いの場を設けることが大切です。

確定申告については、売却した年の翌年2月16日から3月15日までが申告期間です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm)。3月15日が土日の場合は翌日が期限になります。申告書は通常の確定申告書に加えて「申告書第三表(分離課税用)」と「譲渡所得の内訳書〔土地・建物用〕」を作成して提出します。3,000万円特別控除を使う場合は、この内訳書の添付が必須です。住民票の住所と売却物件の所在地が異なる場合は、戸籍の附票など追加書類が必要になることもあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。

書類の準備や計算に不安がある場合は、所轄の税務署で面接相談を受け付けています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm)。複雑な事情がある場合は、税理士への相談も選択肢の一つです。

ここまでのまとめ: 地主の承諾を早めに取り、翌年3月15日までに確定申告を忘れずに行いましょう。

まとめ

借地権を売ったときの税金は、「課税譲渡所得の計算→税率の確認→特例の適用」という3つのステップで整理できます。名義書換料などの費用をきちんと計上すること、5年超の保有かどうかで税率が大きく変わること、そして居住用であれば3,000万円控除や軽減税率の特例が使える可能性があることが、特に重要なポイントです。手続き面では地主の承諾と確定申告の期限を忘れないようにしましょう。税金の計算は個別の事情によって変わる部分が多いため、不明点は税務署や税理士に相談することをおすすめします。

ご自身の借地権がいくらで売れるかは、実際の成約データをもとに確認するのが最も確実な方法です。

参考文献・出典

  • 国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  • 国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
  • 国税庁 No.3252 取得費となるもの — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
  • 国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
  • 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  • 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
  • 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
  • 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
  • 国税庁 No.6931 消費税等と譲渡所得 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6931.htm
  • 国税庁 No.7101 不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7101.htm
  • 国税庁 借地権譲渡契約書(質疑事例) — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/09/04.htm
  • 国税庁 借地権の譲渡所得の計算(質疑事例) — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/05/12.htm
  • 国税庁 No.2020 確定申告 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm
  • 国税庁 国税に関するご相談について — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm
  • 東京地方裁判所 第1 借地非訟とは — https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html

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