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小規模宅地等の特例|3区分の要件と330㎡・400㎡の使い方

相続で土地を受け継いだとき、「相続税が思ったより高くて払えるか不安」と感じる方は少なくありません。そのような方にとって、小規模宅地等の特例は相続税を大幅に減らせる可能性がある重要な制度です。ただし、この特例には細かい要件があり、「どの土地が対象になるのか」「自分は使えるのか」と迷う方も多いのが実情です。この記事では、国税庁が公表している令和8年4月1日現在の法令等に基づき、居住用・事業用・貸付用の3区分ごとに減額割合と面積上限の違いを整理し、同居していなかった相続人が使える条件や、申告期限までに遺産分割が完了していない場合の対応まで、初心者にも分かりやすく解説します。

小規模宅地等の特例とは何か

小規模宅地等の特例とは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、この特例が「相続した土地の評価額そのものを下げる」制度だという点です。相続税は財産の評価額に対してかかるため、評価額が下がれば税額も大きく減ります。国税庁の資料(令和8年4月1日現在の法令等に基づいて作成)によると、相続や遺贈で取得した宅地等のうち、相続開始直前に被相続人等の事業用または居住用であった一定の土地について、一定面積まで相続税の課税価格を減額できる制度です。

ただし、すべての土地が対象になるわけではありません。同じく国税庁の資料によると、対象となる「宅地等」は建物または構築物の敷地の用に供されている土地等に限られ、農地・採草放牧地や棚卸資産等は対象外とされています。また、一つの土地の中に事業用・居住用以外の用途に使われていた部分がある場合、その部分は特例の対象外となり、事業または居住に使われていた部分だけが対象になります。

この特例を使うには、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)。書類の準備は意外と手間がかかるため、早めに確認しておくことをおすすめします。

居住用・事業用・貸付用で何が違うのか

居住用・事業用・貸付用で何が違うのかのイメージ

特例の対象となる宅地等は大きく3つの区分に分かれており、それぞれ減額割合と面積の上限が異なります。国税庁の資料(令和8年4月1日現在の法令等に基づいて作成)によると、区分ごとの基本的な数値は以下のとおりです。

  • 特定居住用宅地等:330㎡まで、80%減額
  • 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等:400㎡まで、80%減額
  • 貸付事業用宅地等:200㎡まで、50%減額

居住用と事業用はどちらも80%という高い減額率ですが、面積上限が異なります。一方、貸付事業用は面積上限が200㎡と最も狭く、減額率も50%にとどまります。この差は、自宅や生業の場を守るという制度の趣旨を反映したものといえます。

また、貸付事業用宅地等と他の区分を組み合わせる場合、限度面積は単純に合算できず、国税庁が示す按分式で判定する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)。複数の土地に特例を適用しようとする場合は、専門家に計算を依頼することを強くおすすめします。

各区分の取得者要件と申告期限の重要性

区分ごとに、誰がその土地を取得したかによって使える条件が変わります。ここが特例の中でも最も複雑な部分です。

特定居住用宅地等については、被相続人の配偶者が取得する場合は取得者ごとの要件がなく、最もシンプルに使えます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)。被相続人と同居していた親族が取得する場合は、相続開始直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ土地を相続開始時から申告期限まで保有することが必要です。

特定事業用宅地等では、取得者がその事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限まで事業を続け、土地も申告期限まで保有することが求められます(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf)。なお、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業はこの区分の対象外で、貸付事業用宅地等として別に扱われます。

特定同族会社事業用宅地等は、相続開始直前に被相続人および親族等が発行済株式等の50%超を保有する法人の事業用宅地が対象です。取得者は申告期限においてその法人の役員であり、土地を申告期限まで保有していることが必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf)。

貸付事業用宅地等については、事業的規模でない不動産貸付けでも対象になり得ますが、相当の対価を得て継続的に行う貸付けに限られます。使用貸借(無償での貸し付け)は対象外となるため、親族に無償で貸している土地は特例を使えない点に注意が必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124_qa.htm)。

同居していなかった相続人でも使える「家なき子」とは

「被相続人と同居していなかったから特例は使えない」と思っている方もいるかもしれませんが、一定の条件を満たせば同居していない親族でも特定居住用宅地等の特例を受けられる場合があります。これが一般に「家なき子」と呼ばれる類型です。

国税庁の資料(令和8年4月1日現在の法令等に基づいて作成)によると、この類型では複数の要件をすべて満たす必要があります。主な条件として、被相続人に配偶者がいないこと、相続開始直前に被相続人宅に住んでいた相続人がいないこと、過去3年以内に自己・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に居住していないこと、現在住んでいる家屋を過去に所有していないこと、そして申告期限まで土地を保有することなどが挙げられます(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf)。

また、単身赴任中の相続人についても、配偶者らが住む家屋がその人の生活の拠点といえる場合には、申告期限までその人の居住用として扱われ、特定居住用宅地等に該当し得るとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/14.htm)。さらに、被相続人が老人ホーム等へ入所していた場合でも、一定の介護・障害事由によるものであり、その後に事業用や第三者の新たな居住用へ変わっていなければ、居住用宅地として扱える余地があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf)。

なお、「居住の用に供されていた」かどうかは、住民票だけでなく、その建物が生活の拠点だったかで判断されます。国税庁の資料(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成)によると、仮住まいや節税目的のみの一時入居、保養目的の建物は否定されやすいとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/05.htm)。実態を伴わない入居では特例は認められないため、形式だけ整えようとすることは避けてください。

申告期限前に売却すると特例が使えなくなる理由

「相続した土地をすぐに売りたい」と考える方もいるかもしれませんが、各区分の要件を振り返ると、取得者は「申告期限まで土地を保有していること」が必須条件として定められています(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf)。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)前に土地を売却すると、この保有要件を満たせず特例が使えなくなります。これは居住用・事業用・貸付用のいずれの区分でも共通するルールです。申告期限の翌日以降であれば売却しても特例の適用には影響しませんが、申告期限前の売却は特例の適用を失う直接の原因となります。

また、遺産分割が申告期限までに完了していない場合も注意が必要です。国税庁によると、未分割のまま申告する場合は小規模宅地等の特例を原則使えませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書とともに提出し、3年以内に実際に分割が完了した場合は、更正の請求等で特例を使える余地があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208_qa.htm)。申告期限までに分割できない見込みであれば、申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくことが重要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2327.htm)。

まとめ

小規模宅地等の特例は、居住用(330㎡・80%減)、事業用(400㎡・80%減)、貸付用(200㎡・50%減)の3区分で要件と減額内容が異なります。配偶者は要件なしで使えますが、同居親族や家なき子には細かい条件があり、使用貸借の土地や申告期限前の売却では特例が使えなくなる点も見落とせません。この特例は相続税を大きく左右する制度であるため、早めに専門家(税理士)に相談し、必要書類の準備と遺産分割の方針を固めることが大切です。個別の事情によって適用可否が変わることも多いため、最新情報は国税庁の公式サイトや国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901、平日8時30分〜17時)でご確認ください。

参考文献・出典

  • 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
  • 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例 Q&A — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124_qa.htm
  • 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm
  • 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)小規模宅地等の特例(16〜22ページ) — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf
  • 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)主な提出書類(73〜75ページ) — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata07.pdf
  • 国税庁 小規模宅地等の特例の対象となる「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/05.htm
  • 国税庁 単身赴任中の相続人が取得した被相続人の居住用宅地等についての小規模宅地等の特例 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/14.htm
  • 国税庁 B1-5 申告期限後3年以内の分割見込書の届出手続 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2327.htm
  • 国税庁 B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/1585-01.htm
  • 国税庁 税についての相談窓口 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shirabekata/9200.htm
  • 国税庁 〔措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》関係〕 — https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/sochiho/080708/69_4/01.htm

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