土地を売ろうとすると、必ず出てくるのが測量の話です。「境界を確定してください」と言われて、見積もりを見たら60万円。ここで手が止まる方は多いと思います。本当に必要なのか。もっと安く済ませられないのか。この記事では、どこまでやればよいのかを、順番に整理します。
先に、時間の話をします。当社が独自に集計した東京・神奈川・千葉の土地の成約33,532件(直近3年)では、売り出してから決まるまでが中央値71日でした。4件に1件は30日以内に決まっています。一方、隣の家と境界を確認する測量は、ふつう2か月から4か月かかります。売れる速さより、測量のほうが遅いのです。だから順番が問題になります。
まず、数字を見てみます
- 土地が売れるまでの日数:中央値71日(4件に1件は30日以内、4件に1件は179日超)
- 90日以内に決まった割合:56.8%
- 売れた土地の広さ:中央値145.3㎡(約44坪)
- 前の道路が私道(個人の持ち物の道)だった土地:17.8%
- 私道の負担があると書かれていた物件:6.9%
もう一つ、面白い数字があります。売り出し情報の備考欄に「境界」という言葉が出てくる割合を数えました。土地では18,758件のうち23件。中古戸建では22,870件のうち40件。どちらも1%に届きません。
つまり、広告の段階では境界の話はほとんど書かれていません。書かれていないから問題がない、ということではありません。話が出てくるのは、買主が決まって契約の準備に入ってからです。そこで初めて「境界標はありますか」「確定測量図はありますか」と聞かれます。
面積によっても日数は違います。集計では、80㎡より小さい土地は48日、120〜200㎡は80日でした。広い土地ほど時間がかかります。買える人が減るからです。測量の準備にかけられる時間も、その分だけ変わってきます。
ここまでのまとめ:土地は71日で売れます。境界の話は、売れた後に始まります。だから先に準備するかどうかが分かれ目になります。
測量には、3つの段階があります
「測量」とひとことで言っても、中身がまったく違います。ここを分けて理解すると、見積もりの意味が分かります。
1. 現況測量
いま見えているブロック塀や境界の杭をもとに、土地の形と広さを測るだけのものです。隣の人の立ち会いはありません。図面はできますが、「隣もこの線でいいと認めた」という証拠にはなりません。費用は20万円から40万円ほど、期間は2週間前後が目安です。
2. 確定測量(隣の家との境界を確定する)
隣の土地の持ち主に立ち会ってもらい、「ここが境界です」と互いに確認して、書面に署名と押印をもらいます。これで初めて、境界が確定します。費用は40万円から80万円ほど。期間は2か月から3か月が目安です。
時間がかかる理由は、測る作業そのものではありません。隣の方と日程を合わせ、説明し、納得してもらうまでに時間がかかるのです。
3. 道路との境界も確定する(官民査定)
前の道路が公道の場合、その道路の持ち主は市区町村や都県です。相手が役所になると、申請して、順番を待って、立ち会ってもらう流れになります。ここが一番時間を食います。申請から終わるまで3か月から6か月かかることもあります。費用は全部あわせて60万円から100万円ほどになります。
145㎡の土地が3,000万円で売れるとして、60万円は2%にあたります。安くはありませんが、売り値が2%変わることを考えれば、判断すべきは金額そのものではなく「やらないと売れないかどうか」です。
ここまでのまとめ:測量は3段階。値段の差は、隣の人と役所を巻き込むかどうかで決まります。
どこまでやるかは、4つで決まります
全部の土地に確定測量が必要なわけではありません。次の4つを見てください。
1. 境界の杭が、全部そろっているか
土地の角に、金属のプレートやコンクリートの杭が入っていることがあります。これが境界標です。全部の角にそろっていて、以前の測量図とも合っているなら、あらためて測る必要は小さくなります。
反対に、杭が抜けている、道路の工事で動いた、そもそも見当たらない。この場合は測ることになります。まずは自宅の権利証や、亡くなった親の書類の束を探してみてください。古い測量図が出てくることがあります。法務局にも「地積測量図」が保管されていることがあり、こちらは数百円で取れます。ただし、古い土地では作られていないことのほうが多いのが実情です。
2. 隣が誰か
ここが一番効きます。隣が普通の個人のお宅で、長く住んでいて、話ができる関係なら、確定測量はすんなり進みます。
難しくなるのは次の場合です。隣が空き家で持ち主と連絡が取れない。隣が相続の途中で、誰が持ち主か決まっていない。隣がマンションで、立ち会いに管理組合の決議が要る。前の道路が私道で、持ち主が10人以上いる。集計では、17.8%の土地が私道に接していました。この場合、全員に判をもらうことになります。
ですから、隣がどういう状況かを先に把握してください。それだけで、期間の見当がつきます。
3. どう売るか(公簿か、実測か)
契約のしかたに2種類あります。登記に書いてある面積でそのまま売る方法と、実際に測った面積で売る方法です。前者を公簿売買、後者を実測売買と呼びます。
公簿売買なら、測らなくても契約はできます。ただし、登記の面積は明治時代の測量がもとになっていることがあり、実際より狭かったり広かったりします。狭かった場合、買主は「話が違う」となります。広かった場合、売主が損をします。150㎡だと思っていた土地が実際は140㎡だった、というのは実際に起きます。1㎡25万円なら250万円の差です。
4. 買うのが誰か
買主が個人で、そのまま家を建てて住むだけなら、境界標がそろっていれば足りることがあります。買主が建物を建てて売る会社なら、話は別です。土地を分けたり、建築の確認を取ったりするために、確定測量図が必ず要ります。
ですから、どちらに売るつもりかを先に決めると、測量の範囲も決まります。順番はこうです。売る相手を想定する。必要な測量が決まる。費用と期間が決まる。
ここまでのまとめ:杭の有無、隣が誰か、契約のしかた、買う相手。この4つで必要な測量が決まります。
費用は、誰が持つのか
よく聞かれる質問です。測量の費用は、原則として売主が持ちます。境界を明らかにして引き渡すのが売主の役目とされているためです。
ただし、実際にはもう一つやり方があります。「境界が確定していない状態のまま売る」という選び方です。この場合、買主はそのぶんを引いた金額を出してきます。引かれる額は、測量費用より少し大きくなるのがふつうです。まとまらなかったときの手間も含めて見積もるからです。
どちらが得かは、隣との関係で決まります。話ができる隣なら、自分で測ったほうが安く済みます。連絡が取れない隣がいるなら、そのまま売って引かれたほうが早いこともあります。時間もお金のうちです。
それから、隣の方が「立ち会わない」と言うこともあります。仲が悪いわけではなく、判を押すこと自体に慎重な方は珍しくありません。この場合、法務局に境界を判断してもらう制度があります。時間は半年から1年ほどかかりますが、裁判よりはずっと軽い手続きです。
ここまでのまとめ:測量費用は売主持ちが原則。ただし、やらずに値段で調整する道もあります。
越境という、もう一つの話
境界とセットで出てくるのが越境です。境界の線を、何かが越えている状態を指します。よくあるのは次の3つです。
- 隣のブロック塀が、こちら側に少し入っている
- 庭の木の枝が、隣にはみ出している
- 屋根や雨どいが、境界を越えて出ている
越境があるからといって、売れないわけではありません。実務では、いますぐ壊すのではなく、「建て替えのときに直します」という覚書を隣の方と交わします。書面が1枚あるだけで、買主は安心します。
ただし、この覚書をもらうには隣の方の協力が要ります。境界の立ち会いと同じタイミングでお願いするのが効率的です。売れてから慌てて頼むと、断られることがあります。
ここまでのまとめ:越境は直さなくても構いません。書面にしておけば足ります。ただし隣の協力が要ります。
当社では、こう見ています
当社は買取と仲介の両方を行っているため、境界が決まっていない土地を買う側の判断も、日常的に行っています。買う側に立つときは、境界が確定していない土地には、確定にかかる費用と、まとまらなかった場合の予備費を見込んだうえで金額を出します。ですから売主の方には、先に測量をするか、その分を値段に織り込んで売り出すか、どちらかを選んでいただく形になります。実務では、隣の方と話ができる関係が残っているうちに立ち会いを済ませておくほうが、結果として安く早く終わることが多いと見ています。
次の一歩
順番を書いておきます。まず、土地の角に杭があるかを歩いて見てください。次に、古い測量図が家の書類の中にないかを探してください。この2つが済んでから、測量が必要かどうかの相談をすると、話が早く進みます。
そのうえで、その土地がいくらで売れるのかも知っておいてください。測量に60万円かけるかどうかは、土地が1,000万円なのか5,000万円なのかで判断が変わるからです。市区ごとの成約価格・値下げ幅・売れるまでの日数は土地・戸建ての相場データベースにまとめてあります。金額の目安をつかんでから、測量の見積もりを見てください。
ご自分の土地でいくらになるかを知りたい方は、この記事の下のご案内からご相談ください。境界の状態をうかがったうえで、測量をしてから売る場合と、しないで売る場合の両方を並べてお出しします。
まとめ
- 土地は中央値71日で売れる一方、確定測量には2〜4か月かかる。準備は売り出しより前に始める
- 売り出し情報の備考に「境界」が出てくるのは1%未満。話が出るのは買主が決まってから
- 測量は3段階。現況測量20〜40万円、隣との確定測量40〜80万円、道路まで含めると60〜100万円が目安
- 必要な範囲は、杭の有無・隣が誰か・契約のしかた・買う相手の4つで決まる。私道に接した土地は17.8%あり、この場合は人数が増える
- 越境は直さなくてよい。覚書を1枚交わしておけば足りる。隣の協力が得られるうちに済ませる
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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