「令和8年度の納税通知書を見たら、去年より固定資産税が高くなっていた」という声が、不動産オーナーの間で増えています。ところが令和8年度は評価替えの年ではありません。それなのに、なぜ税額が上がるのでしょうか。実は、この現象には固定資産税に特有の仕組みが深く関係しています。
本記事では、2026年(令和8年度)に固定資産税が上昇した理由を基礎から丁寧に解説します。あわせて、投資家が押さえておくべき住宅用地の特例や各種軽減制度、そして今すぐ取れる対策を、公的機関の情報をもとにお伝えします。仕組みを正しく理解しておけば、突然の税負担増にも慌てずに対応できるようになります。
固定資産税の評価替えは3年に一度のサイクルで行われる
固定資産税は、毎年1月1日現在の土地や建物の所有者に対して課される地方税です。総務省や各自治体の説明によると、1月1日を「賦課期日」と呼び、その日の所有者にその年1年分の税額を納めてもらう仕組みになっています。したがって、年の途中で売却しても、その年分は1月1日時点の所有者が負担します。
この税額を決める基準となるのが「固定資産税評価額」です。土地については路線価や取引事例、建物については建築費や経年劣化を考慮して算定されます。不動産の価値は時間とともに変わるため、評価額も定期的に見直す必要があります。この見直しを「評価替え」と呼び、原則として3年に一度行われます。
直近では令和6年度(2024年度)に評価替えが実施され、次回は令和9年度(2027年度)に予定されています。評価替えが行われる年を「基準年度」と呼び、その後の2年間は「据置年度」として原則評価額が据え置かれます。越谷市の解説によれば、令和8年度は第3年度、つまり据置年度にあたるため、地目の変換や増改築など特別な事情がある場合を除き、令和6年度の価格が据え置かれています。
ここで重要なのは、「据置年度なのに税額が変わることがある」という点です。評価額が据え置かれるなら税額も変わらないはずだと思われるかもしれませんが、実際には据置年度でも税額が上がるケースがあります。これが「評価替えの年でもないのに固定資産税が上がった」という疑問の正体なのです。
2026年に固定資産税が上がった本当の理由
令和8年度に全国一律で固定資産税が上がったことを示す公的統計は確認できません。むしろ、上昇の原因は物件ごとの個別事情や、全国共通の制度である「負担調整措置」にあると考えるのが実務的です。ここでは、その代表的な要因を整理します。
据置年度でも税額が上がる「負担調整措置」の仕組み
まず押さえたいのが「負担調整措置」です。これは、評価額が上がっても税額が一気に跳ね上がらないよう、緩やかに引き上げていく制度です。財務省の令和6年度税制改正の大綱によると、宅地等および農地の負担調整措置については、令和6年度から令和8年度までの間、現行の仕組みを継続するとされています。
ポイントは「負担水準」という考え方です。負担水準とは、前年度の課税標準額が当年度の評価額に対してどの程度の割合になっているかを示す指標です。東京都主税局の解説によれば、負担調整措置により、現在負担水準が低い土地は徐々に課税標準額が引き上げられ、その上昇は負担水準が100%に達するまで続きます。そのため、価格が下落しても税負担が上昇する場合があるのです。
つまり、過去の評価替えで評価額が上がった土地では、令和8年度のような据置年度でも課税標準額がじわじわと引き上げられていきます。評価額そのものは据え置かれていても、課税標準額が調整されることで税額は変動しうるわけです。これが「評価替えじゃない年なのに固定資産税が上がった」という現象の中心的な理由といえます。
据置年度でも価格が見直される個別のケース
もう一つの要因が、物件ごとの個別事情です。据置年度であっても、一定の場合には価格そのものが見直されます。横浜市の資料によると、分筆・合筆・地目の変換で区画形質が変化した土地や、家屋の増改築・一部取壊し、新築家屋の新規登録などがあれば、税額の基礎となる価格が個別に再評価されます。
また、地価が下落した場合の修正もあります。越谷市の説明では、令和8年度でも地価の下落が認められる地域では、直近の地価調査価格を参考に評価額へ修正率を乗じて価格を求めています。逆に言えば、こうした個別要因や負担調整によって、据置年度でも税額は上下しうるということです。ご自身の物件でどの要因が働いているかは、課税明細書で確認するのが確実です。
住宅用地の特例が投資家の税負担を大きく左右する
賃貸物件を保有する投資家にとって、税負担を最も大きく左右するのが「住宅用地の特例」です。この特例が適用されているかどうかで、土地の税額は何倍も変わってきます。
横浜市の資料によると、住宅やアパート等の敷地では、200平方メートル以下の部分が「小規模住宅用地」として価格の6分の1に、200平方メートルを超える部分が「一般住宅用地」として価格の3分の1に軽減されます。アパートやマンションの場合は、戸数に200平方メートルを掛けた面積までが小規模住宅用地の扱いとなり、住宅用地特例が及ぶ範囲は家屋床面積の10倍までとされています。
この特例には注意点もあります。1月1日時点で新たに住宅を建てる予定、または建築中の土地は、原則として住宅用地に該当しません。ただし、住宅の建替えのために家屋を建築中で、一定の要件を満たす場合は例外的に住宅用地として扱われます。建替えや新築を検討している投資家は、賦課期日をまたぐタイミングに気をつける必要があります。
さらに、空き家の管理にも注意が必要です。国土交通省によると、「管理不全空家」や「特定空家」への指導に従わず勧告を受けると、住宅用地特例が受けられなくなります。特例が外れれば土地の税負担は大幅に増えるため、保有物件を放置している場合は早めの対応が求められます。
新築住宅の減額と「元に戻る」タイミングに注意
新築物件を保有する投資家が誤解しやすいのが、新築住宅の減額措置です。横浜市の資料によると、この制度は120平方メートル相当分までの固定資産税を2分の1に軽減するもので、期間は一般の住宅で3年、3階建以上の準耐火・耐火住宅で5年とされています。
重要なのは、この減額期間が終わったときの受け止め方です。国土交通省は、減額期間の終了後は税額が「元に戻る」のであって、増税されるわけではないと明確に説明しています。とはいえ、投資家のキャッシュフロー上は、軽減が外れた年に税負担が実質的に大きくなるため、その時期を事前に把握しておくことが欠かせません。
減額の対象となるのは、令和13年3月31日までに新築された住宅で、一定の要件を満たすものです。床面積の要件には経過措置があり、令和8年4月以降は40平方メートル以上240平方メートル以下が基本とされています。原則として申告は不要ですが、認定長期優良住宅などは申告が必要になる場合があります。認定長期優良住宅の場合は、課税初年度の1月31日までに認定通知書の写しを添えて申告すれば、減額期間が一般住宅で5年、3階建以上の準耐火・耐火住宅で7年に延びます。
投資家が活用できる改修・修繕関連の軽減制度
保有物件の価値を維持しながら税負担を抑える手段として、改修や修繕にともなう減額制度も知っておきたいところです。ただし制度ごとに要件や貸家住宅の可否が異なるため、活用前に所在自治体への確認をおすすめします。
横浜市の資料によると、一定の耐震改修工事を令和13年3月31日までに行い、工事完了日から3か月以内に申告すると、翌年度の固定資産税および都市計画税が2分の1減額されます。申告には、申告書に加えて耐震基準への適合を証する書類などが必要です。旧耐震の物件を保有している投資家にとっては、耐震性の向上と税負担軽減を同時に狙える制度といえます。
また、一定の要件を満たすマンションでは、長寿命化に資する大規模修繕工事についての減額制度もあります。横浜市の説明では、令和9年3月31日までに対象工事が行われ、完了日から3か月以内に必要書類を提出すれば、工事完了の翌年度分の固定資産税が2分の1減額されます。区分所有のマンションを扱う投資家は、管理組合の修繕計画とあわせて確認しておくとよいでしょう。
固定資産税は経費計上と記帳のルールにも注意
固定資産税は不動産投資の重要な経費ですが、その扱いには一定のルールがあります。国税庁によると、個人の不動産所得では、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。自宅兼賃貸のような家事関連費については、業務遂行上直接必要であったことが明確に区分できる金額に限られる点に注意が必要です。
物件購入時に売主へ支払う固定資産税等の清算金にも独特の扱いがあります。国税庁の見解では、この清算金は買主のその年の必要経費ではなく、購入代価の一部として取得価額に算入され、減価償却を通じて費用化されます。つまり、支払った年に全額を経費にできるわけではありません。この点を誤解していると収支計画がずれてしまいます。
加えて、不動産所得の費用は、項目ごとに取引の年月日・事由・支払先・金額を記帳する必要があります。日頃から課税明細書や領収書を整理し、正しく帳簿づけしておくことが、税務上のトラブルを避ける基本となります。
投資家が今すぐ取るべき固定資産税対策
ここまでの内容を踏まえ、税負担の上昇リスクに備えて投資家が実践できる対策を整理します。まず取り組みたいのは、毎年届く書類の確認です。
納税通知書と課税明細書を毎年チェックする
納税通知書には課税明細書が添付されています。横浜市の説明によると、これは各資産の所在・面積・価格・課税標準額などを個々の資産ごとに知らせる大切な書類です。前年度の明細書と見比べて、大きな変動がないか、住宅用地特例が正しく適用されているかを確認しましょう。特例が外れていれば土地の税負担が跳ね上がるため、賃貸物件のオーナーは特に注意して見る必要があります。
また、多くの自治体には「縦覧」という制度があります。これは縦覧帳簿を見ることで、自分の資産の価格と他の資産の価格を比較し、評価が適正かどうかを無料で確認できる仕組みです。周辺と比べて自分の物件の評価が高すぎないか、客観的に検討する手がかりになります。
次回評価替えに向けた税額シミュレーションを行う
令和9年度の評価替えに備えて、将来の税額を試算しておくことも大切です。現在の評価額をベースに、負担水準がまだ100%に達していない土地では今後も課税標準額が上がりうる点を織り込んで、収支への影響を見積もっておきましょう。新築減額の終了時期がある物件は、その年に税額が元に戻ることも計算に入れておくと安心です。
シミュレーションの結果、キャッシュフローの悪化が見込まれるなら、家賃の見直しや経費削減、物件の入れ替えなどを早めに検討できます。判断に迷う場合は、税理士や不動産の専門家に相談し、専門的な視点からアドバイスを受けるのも効果的です。
評価額や課税内容に疑問があるときの手続き
評価額そのものに納得できない場合は、「固定資産評価審査委員会」への審査の申出という手段があります。横浜市の資料によると、令和8年度の価格に不服があるときは、4月1日以降、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して3か月以内に申出ができます。ただし据置年度のため、新規価格や増改築、地目変換、地価下落修正など一定の場合に限られる点は理解しておきましょう。
一方、評価額以外の内容、たとえば非課税・減免・住宅用地の認定などに不服がある場合は、手続き先が異なります。東京都主税局の説明では、こうした価格以外の課税内容については、行政不服審査法に基づく審査請求を行うことになります。申し立ての内容によって窓口が違うため、まずは自治体の担当窓口に相談するのが確実です。
なお、災害にあったときや生活扶助を受けているときなど、納付が困難な事情がある場合には、状況に応じて固定資産税・都市計画税の減免を受けられることがあります。横浜市の資料によれば、減免を受けるには減免申請書の提出が必要です。制度の有無や基準は自治体によって差があるため、所在自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。
まとめ
令和8年度は評価替えの年ではありません。それでも固定資産税が上がる主な理由は、負担水準が低い土地で課税標準額が段階的に引き上げられる「負担調整措置」にあります。この措置は令和6年度から令和8年度まで継続されており、評価額が据え置かれていても税額が変動しうる仕組みになっています。
投資家として重要なのは、課税明細書を毎年確認し、住宅用地の特例が正しく適用されているかをチェックすることです。あわせて、新築減額の終了時期や、耐震改修・大規模修繕にともなう軽減制度も把握しておきたいところです。制度の詳細や減免の基準は自治体ごとに差があるため、個別の判断は所在自治体の公式サイトや専門家への相談を通じて、正確な情報にもとづいて進めていきましょう。
参考文献・出典
- 財務省 令和6年度税制改正の大綱 – https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/06taikou_02.htm
- 東京都主税局 固定資産税(土地)の負担調整制度 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/jyutaku
- 国土交通省 新築住宅に係る税額の減額措置 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000021.html
- 国土交通省 空き家対策特設サイト – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁 賃貸用アパート購入時の固定資産税等清算金の取扱い – https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/29.htm
- 横浜市 固定資産税・都市計画税のあらまし – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/koho/zeimu/aramashi.html
- 東京都固定資産評価審査委員会 – https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/basic/hyoukashinsa