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役員報酬の社会保険、いくらから加入?2026年度の判断基準と保険料の目安

「役員報酬をいくら以上に設定すれば社会保険に加入しなければならないのか」という疑問を持つ方は、法人化を検討している個人事業主や、新たに会社を設立した経営者の方に多く見られます。実は、社会保険の加入判断は「月いくら以上なら加入」という単純な金額基準ではなく、報酬の実態によって総合的に判断されます。この記事では、役員報酬と社会保険の関係を初心者にも分かりやすく解説し、2026年度の保険料の目安まで具体的にお伝えします。

法人化したら社会保険への加入は原則必須

法人化したら社会保険への加入は原則必須のイメージ

まず押さえておきたいのは、法人を設立して役員報酬を受け取る場合、従業員の人数に関わらず社会保険への加入手続きが必要になるという点です。「従業員を5人以上雇っていないから加入しなくてよい」と誤解している方も多いのですが、これは個人事業主に適用されるルールであり、法人には当てはまりません。

日本年金機構の公式情報によると、法人化して役員報酬を受け取る場合、事業主本人を含めて常時雇用される者が1人以上いれば、社会保険の加入手続きが必要とされています(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/jigyonushi/houjinka.html)。つまり、社長一人だけの一人会社であっても、役員報酬を受け取っているなら加入義務が生じるのです。

ただし、例外もあります。無報酬の役員しかいない法人は、健康保険・厚生年金保険の新規適用を受けることができないとされています(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/kanyuichiran.html)。報酬を受け取っていることが、社会保険加入の前提条件になっているわけです。

「月いくら以上なら加入」という基準は存在しない

「月いくら以上なら加入」という基準は存在しないのイメージ

多くの方が気になる「いくらから加入義務が生じるのか」という点について、実は法定の最低加入額は設けられていません。これは非常に重要なポイントです。

厚生労働省の通達によると、役員の被保険者資格は「労務の対償として報酬を受けているかどうか」を原則として判断するとされています(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9843&dataType=1&pageNo=1)。つまり、報酬の金額の多寡よりも、その報酬が実際の業務の対価として支払われているかどうかが問われるのです。

日本年金機構の疑義照会回答でも、「最低金額を設定し、その金額を下回る場合は加入できないとするのは妥当ではない」と明記されています(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf)。したがって、役員報酬が低額であることだけを理由に「加入できない」とは整理されていません。

一方で、役員報酬が1円など極端に低い場合は、金額だけでなく、報酬決定の経緯や兼業状況、実際の業務内容まで調査したうえで判断されます。低額報酬を設定することで社会保険加入を回避しようとするケースには、実態に即した厳格な審査が行われると考えておくべきでしょう。

非常勤役員・名目的役員は加入対象外になることも

役員であれば必ず加入しなければならないかというと、そうとも言い切れません。実態に基づく総合判断が行われるため、役員の関与の度合いによっては加入対象外と判断されるケースもあります。

厚生労働省の通達では、役員の被保険者資格の判断基準として「経営参画を内容とする経常的な労務提供であるか」「報酬がその対価として経常的に支払われているか」という2点が示されています(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9843&dataType=1&pageNo=1)。この基準に照らすと、会議に出席するだけ、あるいは求められたときに意見を述べる立場にとどまっている非常勤・名目的役員は、加入対象外と判断されうるとされています。

また、代表者が定期的に出勤していないだけでは、被保険者資格がないとは直ちに判断されないとも示されています(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf)。出勤の有無だけで機械的に判断されるわけではなく、業務への関与の実態が重視されるのです。非常勤役員の加入可否については、議事録や業務内容、報酬決定の経緯など複数の要素を踏まえた個別判断が必要になるため、不明な点は年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

短時間労働者には月額8.8万円という基準がある

「月いくら以上なら加入」という金額基準が存在しないと説明しましたが、一点だけ例外があります。それは、パートやアルバイトなどの短時間労働者に適用される加入要件です。

日本年金機構の公式情報によると、短時間労働者が社会保険に加入するための要件のひとつとして「所定内賃金が月額8.8万円以上であること」が明示されています(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)。この月額8.8万円という数字はインターネット上でよく目にしますが、あくまでも短時間労働者に対する基準であり、役員には直接適用されません。役員の加入判断は前述のとおり、報酬の実態による総合判断が原則です。

この点を混同してしまうと、「役員報酬を8.8万円未満に設定すれば社会保険に加入しなくてよい」という誤った理解につながります。役員と短時間労働者では判断基準が異なることをしっかり理解しておきましょう。

2026年度の保険料の目安を知っておこう

社会保険に加入した場合、実際にどのくらいの保険料がかかるのかを把握しておくことは、資金計画を立てるうえで欠かせません。保険料は標準報酬月額をもとに計算されます。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、事業主と被保険者が折半して負担します(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html)。標準報酬月額は1等級(8.8万円)から32等級(65万円)まで設定されています。たとえば、標準報酬月額が8.8万円の場合、厚生年金保険料の全額は16,104円で、本人負担分(折半額)は8,052円となります(協会けんぽ東京支部 2026年度料額表 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r8/ippan/R8_13tokyo.pdf)。

健康保険料については、全国健康保険協会(協会けんぽ)の2026年度の平均保険料率は9.9%とされています(全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/)。ただし、保険料率は都道府県によって異なります。東京支部の2026年度料額表では、標準報酬月額58,000円の場合、健康保険料の全額は5,713円で、本人負担分は2,856.5円となっています(協会けんぽ東京支部 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r8/ippan/R8_13tokyo.pdf)。なお、組合健保に加入している企業では保険料率や付加給付の内容が異なるため、詳細は加入している健康保険組合にご確認ください。

また、標準報酬月額の計算に含まれる報酬は基本給だけではありません。通勤手当や住宅手当、年4回以上支給される賞与なども含まれる点に注意が必要です(日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html)。役員報酬の設計を行う際は、これらの手当も含めた総額で保険料を試算することが大切です。

まとめ

役員報酬と社会保険の関係は、「月いくら以上なら加入」という単純な金額基準ではなく、報酬が実際の業務の対価として支払われているかどうかという実態で判断されます。法人化して役員報酬を受け取る場合は、一人会社であっても原則として社会保険への加入が必要です。一方、名目的な非常勤役員は加入対象外となる場合もあり、個別の実態に応じた判断が求められます。

保険料の負担は決して小さくありませんが、厚生年金や健康保険には老後の年金増額や傷病手当金など、さまざまなメリットもあります。自社の状況に合った判断を行うためにも、まずは最寄りの年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。正しい知識を持って、安心して事業を進めていきましょう。

参考文献・出典

  • 日本年金機構「法人化した場合の社会保険加入について(FAQ)」 — https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/jigyonushi/houjinka.html
  • 日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧」 — https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/kanyuichiran.html
  • 厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて〔厚生年金保険法〕」 — https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9843&dataType=1&pageNo=1
  • 日本年金機構「適用事業所と被保険者」 — https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
  • 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 — https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html
  • 全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」 — https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/
  • 全国健康保険協会東京支部「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」 — https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r8/ippan/R8_13tokyo.pdf
  • 日本年金機構「2社から役員報酬を受ける場合の社会保険加入について(FAQ)」 — https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/jigyonushi/niijokinmu.html
  • 日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」 — https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf
  • 日本年金機構「75歳以上の役員が新たに法人を設立した場合の社会保険手続きについて(FAQ)」 — https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/jigyonushi/70hiyosha.html

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