角部屋は人気があります。両側に窓が取れて、隣の生活音が片側だけ。売り出すときも「角部屋です」と大きく書かれます。
では、実際にいくら高く売れているのか。当社が独自に集計した成約データで測りました。2024年1月から2026年8月30日までに成約した中古マンション110,459件のうち、角部屋かどうかが分かる95,253件を使います。成約とは、売り出しの金額ではなく、実際に取引が成立した金額のことです。
結論から書きます。生の数字では11.6%高い。ところが、同じ建物の同じ階で比べると、差はほとんど消えました。
まず、そのまま比べてみます
角部屋とそうでない部屋を、何も手を加えずに並べます。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。部屋の広さが違っても比べられるように、この数字を使います。
| 件数 | ㎡単価 | 広さ | 築年数 | 東京都の割合 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 角部屋でない | 76,592件 | 66.6万円 | 65.8㎡ | 24年 | 51.3% |
| 角部屋 | 18,661件 | 74.3万円 | 67.6㎡ | 24年 | 60.4% |
角部屋は74.3万円、そうでない部屋は66.6万円。角部屋のほうが11.6%高いという結果になります。今回の集計で成約価格の真ん中は4,080万円でしたから、金額にすると約473万円です。
「やはり角部屋は強い」と思われたかもしれません。ただ、右端の列を見てください。角部屋の60.4%は東京都の物件です。角部屋でない部屋は51.3%。角部屋のほうが、値段の高い地域に偏っています。
ここまでのまとめ:そのまま比べると角部屋は11.6%高いが、地域の偏りが混ざっています。
同じ建物の、同じ階で比べます
地域の差を消すには、同じ建物の中で比べるのがいちばん確実です。さらに階もそろえます。階が上がるほど単価は上がるので、そこも合わせないと答えがずれるからです。
同じマンションの、同じ階で、角部屋と角でない部屋がどちらも売れたケースを集めました。3,290組が見つかりました。角部屋が3,485件、角でない部屋が4,392件です。
結果です。角部屋のほうがわずか0.3%高いだけでした。4,080万円の部屋なら約12万円です。
しかも、角部屋のほうが高かったのは50.9%。ほぼ半々です。11.6%あったはずの差は、条件をそろえた瞬間にほとんど消えました。
ここまでのまとめ:同じ建物の同じ階で比べると、角部屋の上乗せは0.3%でした。
別の方法でも、答えは同じでした
一つの測り方だけでは心配なので、二つの方法で確かめました。
一つめは、同じ建物で5件以上の成約があったマンションで、その建物の真ん中の単価を100として並べる方法です。角部屋は100.5、角でない部屋は100.0でした。差は0.5ポイントです。
二つめは、同じ建物の中で、階の差と広さの差を計算で差し引く方法です。ここでも角部屋と角でない部屋の差は0.12ポイントにとどまりました。
三つの方法とも、0.1%から0.5%のあいだです。ばらつきの範囲を考えると、実質的には差なしと見るべき大きさです。
ここまでのまとめ:三つの測り方すべてで、角部屋の上乗せは1%未満でした。
なぜ生の数字では11.6%も差が出たのか
差の正体は、建物と地域の違いです。
都県ごとに分けて、もう一度生の㎡単価を比べます。東京都は角でない部屋95.4万円に対して角部屋97.8万円。差は2.5%です。神奈川県は52.0万円と52.9万円で1.7%。全体で見たときの11.6%と比べて、ぐっと小さくなります。
つまり11.6%の大半は、角部屋が東京都に多いことから生まれていました。角部屋そのものの力ではありません。
もう一つ理由があります。角部屋は建物の端にあるぶん、そもそも広めに作られることが多い。今回の集計でも角部屋は67.6㎡、角でない部屋は65.8㎡でした。角部屋の価格が高く見えるのは、部屋が広いからという面もあります。㎡単価で比べると、この分は消えます。
ここまでのまとめ:11.6%の差は、角部屋が高い地域に多いことから生まれていました。
それでも角部屋に価値がないわけではありません
誤解のないように書いておきます。角部屋が住みやすいことと、高く売れることは別の話です。
今回の集計で分かったのは「㎡単価に上乗せされていない」ということだけです。窓が多い、風が通る、隣が片側だけ。こうした良さは確かにあります。ただ、買主はそこに追加のお金を払っていませんでした。
そして角部屋は全体の19.6%を占めます。5部屋に1部屋です。珍しくはありません。珍しくないものに、大きな値段は付きにくい。集計の結果は、そういうことだと思います。
ここまでのまとめ:角部屋は5部屋に1部屋あります。住みやすさと売値は別です。
売るときに、どう使えばよいか
- 角部屋を理由に、同じ建物の同じ階より数百万円高い値付けをすると売れ残ります。上乗せは1%未満です
- 角部屋でなくても、そのぶん安く見積もる必要はありません。差は測れないほど小さいものでした
- 比べる相手は「同じ建物の、同じくらいの階」です。他のマンションの角部屋と比べても意味がありません
- 角部屋の良さは、金額より問い合わせの入りやすさに効きます。広告の書き方で活かしてください
ご自分の建物で、どの部屋がいくらで売れたかはマンション棟別の相場データで確認できます。角部屋かどうかより、同じ建物の実際の成約を見るほうが、金額はずっと正確に見えてきます。
まとめ
- そのまま比べると角部屋は11.6%高い。4,080万円なら約473万円
- 同じ建物の同じ階で比べると0.3%。3,290組で測定し、角部屋が高かったのは50.9%
- 別の二つの方法でも0.5ポイントと0.12ポイント。三つとも1%未満
- 11.6%の差は、角部屋が東京都に多いことから生まれていた。東京都だけで比べると2.5%
- 角部屋は全体の19.6%。住みやすさは別として、値段には上乗せされていない