不動産物件購入・売却

未公開物件の相談が集まる理由|広告を出さずに売るときの判断基準

不動産を売るとき、ふつうは広告を出します。写真を撮り、間取り図を作り、価格を載せて、誰でも見られる状態にする。買い手を広く探すのですから、当然のやり方です。当社の集計では、中古マンションが売り出しから決まるまでの日数は中央値で91日。およそ3か月、家の情報は人目にさらされ続けます。

この3か月が、どうしても受け入れられない売主の方がいます。理由は人それぞれです。ただ、その方たちが「では売るのをやめよう」と考えるかというと、そうでもありません。売る必要はある。けれど広告には出したくない。この二つが同時に成り立つとき、話は広告に出さないまま買い手を探すという形に向かいます。いわゆる未公開の相談です。こうした未公開の物件情報・売却相談は、当社にも月におよそ500件寄せられています。

広告に出したくない事情は、だいたい決まっています

実務で伺う理由は、そう多くありません。おおむね次のどれかに収まります。

  • 入居中の賃貸物件で、入居者に売却を知られたくない。広告が出れば、まず住んでいる方が気づきます
  • 相続や離婚など、家庭の事情が絡んでいる。近所や親族に知られたくない
  • 会社の資産で、取引先や従業員に動きを察知されたくない
  • 買い替えの最中で、先に売却が決まると住むところが無くなる。動かせる時期が限られている
  • 過去に広告を出して売れ残った。同じ物件がまた出ていると分かるのを避けたい
  • 返済の事情があり、期限までに現金化する必要がある。時間の余裕がない

どれも、めずらしい話ではありません。売主本人が「秘密にしたい」のではなく、広告を出すこと自体が別の問題を起こすという状況です。ここを取り違えると、話が前に進みません。

ここまでのまとめ:未公開を望む方の多くは、隠したいのではありません。広告が別の不都合を生むだけです。

未公開で売ると、何を失うのか

先に、いいことばかりではない点を書きます。広告に出さないというのは、買い手の候補を自分から減らすということです。広く出せば何十人も見に来たかもしれない物件を、数社、数人にだけ見せる。競争が起きにくくなりますから、価格は上がりにくくなります。

ですから、判断は単純です。広告を出したときに得られたはずの価格と、出さずに決めたときの価格。その差より、広告を出すことで起きる不都合のほうが大きいかどうか。それだけです。「未公開のほうが得」でも「広告のほうが得」でもありません。物件ではなく、事情によって決まります。

数字にすると考えやすくなります。たとえば、広告を出せば3か月かけて4,000万円で決まりそうな部屋があるとします。未公開なら2週間で3,800万円。差は200万円です。この200万円を、3か月の露出と「本当に3か月で決まるのか分からない」という不確かさと引き換えに取りにいくかどうか。そういう選択になります。入居者に知られると更新や退去の話がこじれる、という事情があるなら、200万円より大きな問題かもしれません。逆に、急ぐ理由が特に無いなら、広告を出したほうがまず得です。

注意しておきたいのは、この「未公開なら3,800万円」という金額のほうです。買い手が少ない状況で出てくる金額ですから、相手の言い値になりやすい。だからこそ、広告に出した場合の相場を先に知っておく必要があります。比べる基準が無いまま提示額だけを見ると、高いのか安いのか判断のしようがありません。

もう一つ、混同されやすい話があります。売主が望む未公開と、いわゆる「囲い込み」は別のものです。囲い込みは、仲介会社が自社で買主を見つけて手数料を両方から取るために、他社からの問い合わせを断る行為です。売主の希望ではなく、会社の都合で情報が止まっています。区別のしかたは簡単です。その未公開を望んだのが売主か、会社か。ここだけ確認すれば足ります。

ここまでのまとめ:未公開は買い手の数を減らす選択です。得か損かは事情で決まります。囲い込みとは別物です。

未公開の相談は、こういう形で回っています

広告に出ない物件が、どうやって買い手にたどり着くのか。表からは見えにくいので、実務の流れを書いておきます。

入口はおおむね三つです。一つめは、売主から直接のご相談。二つめは、税理士・司法書士・弁護士といった、家の事情を先に知る立場の方からのご紹介。三つめが、同業からの持ち込みです。

三つめが分かりにくいと思うので、少し説明します。仲介を専門にしている会社が売却の依頼を受けたとき、その物件が広告向きでないことがあります。入居者がいる。建物が古い。権利関係が整理されていない。時間が無い。こうした物件は、広告を出しても問い合わせが伸びません。かといって断れば、依頼してくれた売主に何も返せません。そこで、買取をしている会社に「この物件、いくらで買えますか」と聞きにきます。これが持ち込みです。

持ち込む側が見ているのは、金額だけではありません。返事が速いか、そして断るときも理由を言うかです。売主を待たせている以上、一週間後に「検討中です」と言われるのがいちばん困ります。だから、速く答える会社に話が集まります。金額を高く言う会社ではありません。

ここまでのまとめ:未公開の物件は、売主・専門家・同業の三つの入口から動いています。選ばれる基準は、金額より返事の速さです。

売主として、確かめておきたいこと

広告を出さずに売る話を進めるとき、確認しておくと後で困らない点を挙げます。

1つめ。何社に声をかけたのかを聞いてください。未公開は候補が減る選択ですから、せめて複数の買い手に当ててもらう必要があります。一社しか当てていないなら、それは未公開ではなく、ただの相対取引です。

2つめ。提示された金額の根拠を聞いてください。「このあたりの相場から」では足りません。どの建物の、いつの、どんな条件の事例を使ったのか。そこまで答えられる相手なら、金額もある程度は信用できます。

3つめ。買取なのか、仲介なのかをはっきりさせてください。買取はその会社が自分で買います。仲介は買い手を探してきます。手取りの計算も、決まるまでの時間も、まったく違います。同じ「未公開でやります」という言葉の中に、両方が混ざっていることがあります。

4つめ。いつまでに返事が来るのかを、先に決めてください。未公開の取引は期限があいまいになりがちです。「◯日までに可否を回答」と紙に書いてもらうだけで、話の速度が変わります。

5つめ。途中で広告に切り替える選択肢を残しておいてください。未公開で試して、条件が折り合わなければ広告に出す。この順番なら、失うものはほとんどありません。逆はできません。一度広告に出した物件を、未公開に戻すことはできないからです。売り出しの履歴は残りますし、見た人の記憶も消えません。順番を間違えないことが、この話ではいちばん効きます。

もう一点、細かいようで後から効くことがあります。未公開の話を進めている間、その物件を誰に見せたのかを記録しておいてください。数か月後に別のルートから同じ会社が出てきて、「以前に検討した」と言われることが実際にあります。誰にいつ資料を渡したかが分かっていれば、話が混乱しません。

ここまでのまとめ:複数に当てているか、金額の根拠は何か、買取か仲介か、期限はいつか、後から広告に切り替えられるか。この五つです。

当社では、こう見ています

当社に未公開のご相談やお持ち込みが集まるのは、条件が良いからではありません。返事が速いからです。自社で集計している成約価格をもとに、物件の情報がそろった時点でおおよその金額を出せます。そのため、買えるか買えないかの判断を、早い段階でお伝えできます。買取は自社の資金で買うので、社内で決められる範囲も広くなります。そして、見送るときは見送ると早くお伝えします。持ち込んでくださった方にとっては、あいまいな期待より、早い「無理です」のほうが役に立つからです。相場の見立てについては、マンション棟別の相場データ土地・戸建ての相場データで、判断に使っているものと同じ集計を公開しています。

次の一歩

広告を出さずに売れるかどうかは、物件と事情の両方を見ないと判断できません。ただ、金額の当たりだけなら先に付けられます。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、成約価格をもとにした金額をその場で確認できます。そのうえで「この金額なら、広告を出さずに決めたい」と思われたときに、ご相談いただくのが順番としては早いと思います。

売出価格と実際に決まる価格がどれだけ違うかは、売出価格と成約価格は、実際どれくらい違うのかにまとめてあります。広告に出す場合の相場観を先に持っておくと、未公開で提示された金額が高いのか安いのかを、自分で判断できるようになります。

まとめ

  • 広告を出せば、決まるまで中央値91日ほど人目にさらされます。それが困る事情は、めずらしくありません
  • 未公開は買い手の候補を減らす選択です。得か損かは物件ではなく事情で決まります
  • 売主が望む未公開と、会社の都合で情報を止める囲い込みは別のものです
  • 未公開の物件は、売主・専門家・同業の三つの入口から動きます。選ばれる基準は返事の速さです
  • 確認するのは五つ。複数に当てたか、金額の根拠、買取か仲介か、回答の期限、広告へ切り替えられるか
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

プロフィール詳細 →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所