「上の階のほうが高く売れる」とよく言われます。では、いくら高いのでしょうか。1階違うと何万円変わるのか。この質問に数字で答えている記事は、ほとんど見当たりません。
そこで実際に測りました。当社が独自に集計した、2024年1月から2026年8月30日までに成約した中古マンション110,459件です。成約とは、売り出しの金額ではなく、買主が決まって実際に取引された金額のことです。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の43,160棟が含まれます。
先に結論です。1階上がるごとに0.59%
同じマンションの中だけで比べた結果、階が1つ上がるごとに㎡単価は0.59%高くなっていました。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。部屋の広さが違っても比べられるように、この数字を使います。
0.59%と言われても、大きいのか小さいのか分かりにくいと思います。金額に直します。今回の集計で、成約価格の真ん中は4,080万円でした。この部屋なら、1階ぶんの差はおよそ24万円です。
3階と5階なら約48万円。3階と13階なら約248万円。階が離れるほど差は積み上がります。
ここまでのまとめ:1階ぶんの差は0.59%、4,080万円の部屋なら約24万円です。
なぜ「同じマンションの中だけ」で比べたのか
階の効き方を測るとき、やってはいけない比べ方があります。世の中のマンション全部を集めて、10階の部屋と2階の部屋の平均を比べる、というやり方です。
これだと答えがずれます。10階の部屋があるのは、そもそも10階建て以上の大きな建物です。そういう建物は駅に近い場所に建ちやすく、新しいものが多い。つまり、階の差を測ったつもりで、立地と築年数の差を測ってしまいます。
そこで、同じ建物の中で売れた部屋どうしだけを比べました。同じ建物なら、立地も築年数も管理の状態も同じです。残る違いは部屋そのものだけになります。さらに、広い部屋ほど㎡単価が変わる分も差し引きました。この条件を満たしたのは91,142件、23,833棟です。
ここまでのまとめ:立地や築年数にだまされないよう、同じ建物の中だけで比べています。
実際のカーブを見てみます
平均の数字だけでは実感がわかないと思います。10階建てから14階建てのマンションだけを取り出して、階ごとの単価を並べました。その建物の真ん中の単価を100としています。
| 階 | 件数 | ㎡単価(建物の真ん中を100) |
|---|---|---|
| 1階 | 747件 | 95.8 |
| 2階 | 1,262件 | 97.3 |
| 3階 | 1,432件 | 99.6 |
| 4階 | 1,345件 | 99.5 |
| 5階 | 1,309件 | 100.4 |
| 6階 | 1,320件 | 101.8 |
| 7階 | 1,197件 | 102.3 |
| 8階 | 1,222件 | 102.7 |
| 9階 | 1,101件 | 103.6 |
| 10階 | 1,022件 | 104.2 |
| 11階 | 791件 | 105.5 |
| 12階 | 545件 | 105.0 |
| 13階 | 382件 | 104.7 |
| 14階 | 262件 | 106.0 |
下から上へ、きれいに上がっていきます。1階の95.8から14階の106.0まで、差は約10ポイントです。ただし段差は小さく、1階ぶんずつはわずかです。「3階か4階か」で悩む場面では、階よりも間取りや日当たりのほうが効いてきます。
ここまでのまとめ:階の効き方はなだらかで、1階ぶんずつの差は小さいものです。
1階だけは、はっきり安くなります
なだらかなカーブの中で、1階だけは別扱いです。1階の部屋と、2階以上の部屋が、どちらも売れた建物を3,720棟集めました。1階が5,076件、2階以上が16,849件です。
その結果、1階は2階以上より5.5%安く売れていました。4,080万円の部屋なら約224万円です。1階のほうが安かった建物は64.2%でした。逆に言えば、3棟に1棟は1階のほうが高い。専用の庭が付いていたり、部屋が広かったりする場合です。
ここまでのまとめ:1階は2階以上より5.5%安い。ただし3棟に1棟は逆です。
高い建物ほど、上と下の差は開きます
建物の高さによっても効き方が変わります。建物ごとに階の効き方を計算し、高さ別に並べました。
| 建物の高さ | 棟数 | 1階あたりの差 |
|---|---|---|
| 6〜9階建て | 246棟 | 1.26% |
| 10〜14階建て | 554棟 | 0.89% |
| 15〜19階建て | 251棟 | 0.77% |
| 20階建て以上 | 446棟 | 0.62% |
数字だけ見ると、高い建物ほど1階ぶんの差は小さく見えます。けれど階数が多いぶん、上と下の開きは大きくなります。
実際に測りました。15階建て以上のマンション554棟で、3階以下の部屋と、最上階から3階ぶんの部屋を比べます。低い部屋が1,105件、高い部屋が1,115件です。差は13.0%ありました。高いほうが上だった建物は80.1%です。
4,080万円なら約530万円の差です。同じ建物、同じ広さでも、下と上ではこれだけ違います。
ここまでのまとめ:高い建物では、低層と高層で13%ほど開きます。
建物によって、効き方はかなり違います
ここまで平均の話をしてきましたが、建物ごとのばらつきは大きいです。1,716棟それぞれで階の効き方を計算したところ、真ん中は1階あたり0.68%でした。しかし4棟に1棟は0.06%以下、上の4棟に1棟は1.41%以上です。
そして、階が上がるほど高くなっていた建物は76.2%にとどまりました。4棟に1棟は、上の階のほうがむしろ安いということです。眺望が開けていない、上階だけ間取りが古い、といった事情はいくらでもあります。
都県ごとの真ん中も出しました。東京都0.72%、神奈川県0.84%、千葉県0.51%、埼玉県0.55%です。大きな違いはありません。
ここまでのまとめ:階が効くかどうかは建物によります。4棟に1棟は逆でした。
1階は、売れるまでの時間も長くなります
階の影響は金額だけではありません。売れるまでの日数と、売り出してから成約までに下げた幅も並べました。
| 階 | 件数 | 売れるまでの日数 | 売り出しから下げた幅 |
|---|---|---|---|
| 1階 | 8,281件 | 109日 | 5.88% |
| 2〜3階 | 24,027件 | 93日 | 4.73% |
| 4〜5階 | 21,015件 | 92日 | 4.59% |
| 6〜9階 | 20,679件 | 83日 | 3.79% |
| 10〜14階 | 10,562件 | 83日 | 3.38% |
| 15〜19階 | 2,433件 | 81日 | 2.69% |
| 20階以上 | 4,098件 | 93日 | 2.93% |
1階は109日、6階から14階は83日。1か月近く違います。下げ幅も1階は5.88%で、10階以上の3%台より大きい。
金額の差が5.5%なのに対して、時間の差はもっとはっきり出ます。1階を売るときは、値付けを少し抑えて短く決めるほうが、結果として手元に残る金額は多くなりやすい。長引くあいだも管理費と修繕積立金は払い続けるからです。
ここまでのまとめ:1階は売れるまで1か月ほど長く、下げ幅も大きくなります。
ご自分の部屋に当てはめてみてください
使い方は簡単です。同じマンションで最近売れた部屋の㎡単価が分かれば、階の差だけを足し引きできます。
- 比べる相手が3階で、ご自分が8階なら、5階ぶん上。0.59%×5で約3%上乗せです
- 比べる相手が2階以上で、ご自分が1階なら、5.5%引いて考えます
- 15階建て以上の建物なら、階の差はもっと大きく見てかまいません
- ただし4棟に1棟は逆に動きます。同じ建物の実際の成約を見るのがいちばん確かです
建物ごとの成約価格はマンション棟別の相場データで確認できます。同じ建物のどの階がいくらで売れたかが分かれば、この記事の数字を当てはめる相手が見つかります。駅ごとの相場は駅別の中古マンション相場データのほうにまとめてあります。
まとめ
- 同じマンションの中で、階が1つ上がると㎡単価は0.59%高い。4,080万円の部屋なら約24万円
- 1階だけは別で、2階以上より5.5%安い。売れるまでも1か月ほど長い
- 15階建て以上では、低層と高層で13.0%開く。4,080万円なら約530万円
- ただし4棟に1棟は、上の階のほうが安かった。建物ごとの差は大きい
- 階で説明できるのは価格の一部です。同じ建物の実際の成約と突き合わせてください