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南向きは本当に高く売れるのか|生の数字では北向きのほうが高い

「南向きは高く売れる」。マンションの売買では、当たり前のように言われます。では、いくら高いのでしょうか。

当社が独自に集計した成約データで測りました。2024年1月から2026年8月30日までに成約した中古マンション110,459件です。成約とは、売り出しの金額ではなく、実際に取引が成立した金額のことです。このうち向きが分かる107,459件を使います。

先に結論を申し上げます。南向きの上乗せは、多くの方が思っているよりずっと小さいものでした。

生の数字を見ると、北向きのほうが高い

まず、何も手を加えずに向きごとの㎡単価を並べます。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。

向き件数㎡単価広さ築年数
2,548件120.9万円50.1㎡17年
北西4,143件112.0万円54.3㎡18年
北東4,100件108.8万円53.3㎡19年
西10,834件81.3万円63.6㎡20年
11,956件78.1万円62.9㎡21年
南西22,399件60.6万円68.5㎡25年
南東22,792件59.9万円68.3㎡26年
28,687件59.0万円70.0㎡27年
いずれも真ん中の値(当社が独自に集計)

並びが逆です。北向きの部屋は南向きの2.05倍の単価で売れています。北向き120.9万円に対して、南向きは59.0万円です。

もちろん、これは北向きが人気だという話ではありません。右の2列を見てください。北向きの部屋は50.1㎡で築17年。南向きは70.0㎡で築27年です。北向きの部屋は、都心の新しくて小さい部屋に偏っているのです。

単身者向けの小さな住戸を多く作るのは、都心の新しいマンションです。そういう建物では、北を向く部屋も普通に商品になります。土地が高い場所ほど、そうなります。つまりこの表が映しているのは、向きではなく立地と築年数です。

ここまでのまとめ:生の数字で向きを比べると、立地と築年数の差を見てしまいます。

同じ建物の、同じ階で比べます

そこで比べ方を変えました。同じマンションの、同じ階で、南向きの部屋と北向きの部屋がどちらも売れたケースだけを取り出します。

これなら立地も築年数も同じです。階も同じですから、高さによる差も消えます。残る違いは向きだけになります。この条件に当てはまったのは1,527組でした。南向き系が1,885件、北向き系が1,822件です。

結果です。南向き系のほうが2.5%高い。今回の集計で成約価格の真ん中は4,080万円でしたから、金額にすると約102万円です。

そして、南向きのほうが高かったのは55.9%にとどまりました。裏を返せば、44%の組では北向きのほうが高く売れています。ほとんど五分五分です。

ここまでのまとめ:同じ建物の同じ階で比べると、南向きの上乗せは2.5%でした。

8方位すべてを並べました

もう一つ、別の方法でも測りました。同じ建物の中だけで比べたうえで、階の差と広さの差を計算で差し引きます。91,142件が対象です。真南を含めた8つの向きを、すべて出しました。

向き件数上乗せ(同じ建物・同じ階・同じ広さに直したとき)
23,315件+0.30%
南東18,836件+0.17%
南西18,566件+0.04%
10,030件−0.15%
西9,122件−0.31%
北西3,522件−0.31%
北東3,441件−0.40%
2,139件−0.84%
同じ建物で2件以上の成約があったもの。㎡単価の差(当社が独自に集計)

順番はきれいです。南がいちばん上で、北がいちばん下。世間の感覚どおりです。

ただし幅を見てください。南の+0.30%から北の−0.84%まで、開きは1.14ポイントしかありません。4,080万円の部屋なら約47万円です。

二つの測り方で、南と北の差は47万円から102万円のあいだに収まりました。数百万円という単位ではありません。同じ集計で測った階の差は、15階建て以上の建物の低層と高層で13.0%、約530万円でした。向きは、階よりずっと小さい要素です。

ここまでのまとめ:南と北の差は1.1%から2.5%。金額にして47万円から102万円です。

なぜ「南向きは高い」と感じるのか

理由の一つは、南向きが多数派だからです。集計すると、南・南東・南西を合わせて68.7%。3部屋に2部屋が南を向いています。北・北東・北西は10.0%しかありません。

マンションは南向きに部屋を並べる設計が基本です。ですから、良い部屋の多くが南を向いている。「南向きの部屋は良い」という印象は、こうして作られます。向きが価格を押し上げているというより、条件の良い部屋がたまたま南に多いのです。

もう一つは、広告の言葉です。「南向き」は書きやすく、伝わりやすい。買主も気にします。ただ、気にすることと、余分にお金を払うことは違います。数字はそれを示しています。

ここまでのまとめ:南向きは全体の68.7%。多数派だから目立つのであって、割高なわけではありません。

売れるまでの時間は、向きで変わりません

金額のほかに、売れるまでの日数と、売り出しから成約までに下げた幅も見ました。

向き件数売れるまでの日数売り出しから下げた幅
28,679件95日5.03%
南東22,785件93日4.83%
南西22,392件95日4.78%
11,952件88日4.04%
西10,831件91日4.03%
北西4,143件90日3.68%
北東4,099件90日3.60%
2,548件96日4.28%
いずれも真ん中の値(当社が独自に集計)

日数は88日から96日のあいだで、ほとんど差がありません。南向きだから早く売れる、ということはありませんでした。

下げ幅はむしろ逆です。南向きは5.03%下げていて、北東の3.60%より大きい。売主が「南向きだから」と強気に値付けし、そのぶん後から下げている、という見方ができます。これは古い建物が南向きに多いことも影響していますから、断定はできません。ただ、南向きだから高く決まるという流れは見えませんでした。

ここまでのまとめ:向きで売れる速さは変わらず、南向きのほうが値下げ幅は大きくなっていました。

売るときに、どう考えればよいか

  • 南向きでも、上乗せは1%から2.5%です。4,080万円なら47万円から102万円。これを大きく超える見積もりには根拠を聞いてください
  • 北向きでも、下がるのは1%以下です。「北向きだから安くなる」と言われて大きく引かれる理由はありません
  • 階のほうがはるかに大きく効きます。同じ建物の低層と高層では13%違いました
  • 向きは広告での見え方には効きます。金額より、問い合わせの入りやすさで考えるほうが現実的です

ご自分の建物で実際にいくらで売れているかはマンション棟別の相場データで確認できます。駅ごとの相場は駅別の中古マンション相場データにまとめてあります。向きの1%を気にするより、こちらを見るほうが金額に近づけます。

まとめ

  • 生の数字では北向きが南向きの2.05倍。北向きは都心の新しい小さい部屋に偏っているため
  • 同じ建物の同じ階で比べると、南向きの上乗せは2.5%。1,527組で測定
  • 階と広さも差し引くと、南+0.30%、北−0.84%。開きは1.14ポイント
  • 4,080万円の部屋なら、南と北の差は47万円から102万円
  • 売れるまでの日数は向きで変わらない。値下げ幅はむしろ南向きのほうが大きい
詳しいガイド査定額の内訳を確かめる向きによる価格差が同じ建物の同じ階で比べると小さくなったように、査定額全体を動かす要素も駅からの距離や築年数、階や広さといった実測値で分解できる。受け取った査定額の根拠を確かめる記事に読み進めたい。売却ガイド一覧を見る →

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