「借地権って売れるの?」「売るとしたら、どんな書類を用意すればいいの?」と疑問に感じている方は多いと思います。借地権(しゃくちけん)とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利のことです。土地そのものは自分のものではありませんが、この権利は売ることができます。ただし、通常の不動産売却と違い、地主(土地の持ち主)の承諾が必要だったり、用意する書類の種類が多かったりと、手続きが複雑に感じられるのも事実です。この記事では、借地権を売却する際に必要な書類を「どの段階で」「何を」「どこで取得するか」という流れに沿って、わかりやすく解説します。
借地権の売却、あなたはどのケースですか?

まず、自分がどのような状況で借地権を売ろうとしているかを確認しましょう。状況によって、必要な書類や手続きの流れが少し変わってきます。
「相続した実家が借地の上に建っていて、自分は住まない」というケースは、相続関連の書類が追加で必要になる場合があります。「住み替えのために今の家を売りたい」というケースは、比較的スタンダードな流れで進みます。「離婚や経済的な事情で早めに売りたい」という場合も、基本の流れは同じですが、地主との交渉を早めに始めることが大切です。
どのケースであっても、借地権の売却には地主の承諾が必ず必要です。これが通常の不動産売却と最も大きく異なる点です。地主の承諾なしに売却を進めることはできません。まずこの点を押さえておいてください。
ここまでのまとめ: 借地権は売れるが、地主の承諾が前提条件になる。
査定・媒介契約の段階で用意する書類

不動産会社に査定を依頼し、売却の依頼(媒介契約)を結ぶ段階で必要になる書類があります。センチュリー21中央プロパティーの情報によると、この段階では主に次の書類を用意することが求められます。
最初に必要なのは「土地賃貸借契約書」です。これは、あなたと地主の間で結んだ「土地を借りる契約書」のことです。原契約書(最初に結んだもの)と、更新のたびに作成した更新契約書の両方を用意します。もし手元にない場合は、地主や当時仲介した不動産会社に写しを依頼しましょう。
次に「地代や更新料の支払い証明」です。毎月の地代(土地の賃料)をきちんと払ってきたことを示す書類で、通帳の記録や領収書がこれにあたります。買主や金融機関が「この借地権は問題なく維持されてきたか」を確認するために使われます。
さらに「建物の固定資産税納税通知書・評価証明書」「建物の図面・建築確認済証・検査済証」「土地の測量図・境界確認書」「本人確認書類(運転免許証など)」「住民票」も必要です。建物の図面や建築確認済証は、建物を建てたときに市区町村から交付されたものです。紛失している場合は、市区町村の建築指導課などで確認できることがあります。
ここまでのまとめ: 査定の段階では、契約書・支払い証明・建物関係書類・本人確認書類を揃える。
売買契約・地主承諾の段階で必要になる書類
買主が決まり、いよいよ売買契約を結ぶ段階では、さらに追加の書類が必要になります。同じくセンチュリー21中央プロパティーの情報によると、この段階で必要な書類は次のとおりです。
最も重要なのが「借地権譲渡承諾書」です。これは、地主が「この借地権を第三者に譲渡することを認める」と書面で示したものです。国土交通省が公開している賃借権譲渡承諾書のひな形(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/teishaku/tc01-030.html)によると、地主が承諾する場合は承諾書に必要事項を記載し、1通を借地人(あなた)に返還し、1通を地主が保管する形式が一般的です。この承諾書がなければ売買契約は成立しませんので、地主との交渉は早めに始めることが大切です。
次に「建物の登記済権利証(または登記識別情報)」が必要です。これは、建物があなたのものであることを証明する書類です。登記済権利証は昔の書類で、現在は「登記識別情報」という12桁の番号が記載された書類に変わっています。どちらも法務局で取得した書類ですが、紛失した場合は司法書士に相談する必要があります。
また「実印と印鑑証明書」も必要です。実印とは、市区町村に登録した判子のことで、印鑑証明書はその実印が本物であることを証明する書類です。印鑑証明書は市区町村の窓口やコンビニで取得できます。さらに「物件状況等報告書・設備表」として、建物の状態や設備の状況を買主に伝える書類も作成します。これは不動産会社が書式を用意してくれることがほとんどです。
ここまでのまとめ: 売買契約には地主の承諾書・権利証・実印・印鑑証明書が必要になる。
地主が承諾してくれない場合の「借地非訟」という手続き
地主が借地権の譲渡を認めてくれない場合、「借地非訟(しゃくちひしょう)」という裁判所への申立て手続きを使うことがあります。借地非訟とは、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める手続きです。借地借家法に基づくもので、地主に不利にならない場合に利用できます。
借地非訟の申立てには、一般的に土地・建物に関する登記事項証明書、賃貸借契約書、買主の住民票(個人の場合)または登記事項証明書(法人の場合)、さらに資力を証明する書面などが必要とされています。ただし、具体的な添付書類については、申立てを予定している裁判所に事前に確認することをおすすめします。
ただし、借地非訟は時間と費用がかかる手続きです。一般的には、まず地主と誠実に話し合いを重ねることが先決です。地主への事前相談では、譲渡の可否だけでなく、承諾料の金額や支払い時期、買主の条件、地代の扱いなどを整理して相談すると話がまとまりやすくなります。地主が「自分で買い取りたい」という意向を持っている場合もあるため、その点も確認しておくとよいでしょう。
ここまでのまとめ: 地主が承諾しない場合は借地非訟という裁判所の手続きがあるが、まず話し合いが先決。
売却後の確定申告で必要になる書類
借地権を売って利益が出た場合、翌年に確定申告が必要になります。国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm)によると、借地権は譲渡所得の対象資産に含まれるため、売却益は「譲渡所得」として税金がかかります。
確定申告では、申告書のほかに「譲渡所得の内訳書」を作成して提出します。また、国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/06.htm)によると、登記事項証明書については、その写しや「不動産番号等の記載のある書類」で代替できる場合もあります。
さらに、国税庁の情報(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/09/04.htm)によると、借地権譲渡契約書は「土地の賃借権の譲渡に関する契約書」として印紙税の課税文書に該当します。つまり、売買契約書に印紙を貼る必要があります。印紙の金額は契約金額によって変わりますので、不動産会社や税理士に確認しましょう。
確定申告の手続きは複雑に感じるかもしれませんが、不動産会社が売却時に「譲渡所得の計算に必要な書類」をまとめてくれることが多いです。不安な場合は税理士に相談することをおすすめします。
ここまでのまとめ: 売却益には税金がかかるため、確定申告用の書類も売却後に準備が必要。
まとめ
借地権の売却は、通常の不動産売却よりも用意する書類が多く、地主との交渉という独自のステップがあります。大きな流れとしては、「査定・媒介契約の段階」「売買契約・地主承諾の段階」「確定申告の段階」の3つに分けて書類を準備していくと整理しやすくなります。
特に重要なのは、地主への相談を早めに始めることです。承諾書の取得に時間がかかると、売却全体のスケジュールが遅れてしまいます。また、土地賃貸借契約書など手元にない書類は、早めに確認・再取得の手続きを始めておくと安心です。
書類の準備や地主交渉に不安を感じる場合は、借地権の売却実績がある不動産会社に相談することが、スムーズに進める一番の近道です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら進めていきましょう。
ご自身の借地権がいくらで売れるかは、実際の成約データをもとに確認するのが最も確実です。
参考文献・出典
- センチュリー21中央プロパティー「借地権売却の必要書類は?入手方法・費用・紛失時の対処法と手続きをスムーズに進めるコツ」 — https://www.century21-sell.jp/reading/21186/
- 大阪地方裁判所「第4 借地非訟事件」 — https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/kentiku/1_4_syakuchihishouziken/Vcms4_00000529.html
- 国税庁「借地権譲渡契約書」 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/09/04.htm
- 国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
- 国税庁「A4-1 申告手続き(譲渡所得関係 申告書添付書類)」 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joto/annai/1647_01.htm
- 国税庁「〔申告書の提出〕」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/06.htm
- 国土交通省「(1)賃借権譲渡承諾書(例)」 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/teishaku/tc01-030.html
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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