不動産物件購入・売却

管理費と修繕積立金で手残りが消える部屋は、どこで見分けるか

区分マンションを一室貸している方から、こんな話をよく聞きます。「利回りは悪くないはずなのに、手元にお金が残らない」。原因のかなりの部分は、管理費と修繕積立金です。この二つは家賃と違って、こちらの都合で下げられません。しかも年数とともに上がっていきます。では実際、どれくらいの重さなのでしょうか。当社が独自に集計した首都圏の区分マンション160,498件では、管理費の中央値が12,200円、修繕積立金の中央値が12,510円。合わせて月25,090円でした。上位10%になると、合計40,940円です。

金額だけでは重いのか軽いのか分かりません。大事なのは、家賃に対して何%かです。そこで、同じマンションで実際に募集されている家賃と突き合わせてみました。50,150件で計算した結果、管理費と修繕積立金の合計が家賃に占める割合は、中央値で12.9%。上位25%で17.2%、上位10%では22.5%でした。

同じ12.9%でも、部屋によって中身がまったく違う

この比率を階級ごとに分けると、どんな部屋がどちら側にいるのかがはっきり出ます。

家賃に占める割合件数の割合広さ(中央値)築年数(中央値)月の負担想定家賃
10%未満24.5%59.6㎡9年23,585円280,868円
10〜15%39.9%57.8㎡19年26,390円214,131円
15〜20%19.9%42.6㎡35年22,150円129,000円
20〜25%9.6%34.7㎡37年20,650円93,047円
25%以上6.1%27.6㎡36年22,380円73,823円
2025年9月以降に売り出し・成約のあった区分マンションを、同じマンションの募集家賃と突き合わせたもの(当社が独自に集計)

注目していただきたいのは、月の負担額がどの階級でもほぼ変わらないことです。10%未満の部屋も、25%以上の部屋も、月2万円台。違うのは負担額ではなく、家賃のほうです。280,868円の家賃に対する2万3,000円は軽く、73,823円の家賃に対する2万2,000円は重い。それだけの話です。

ここから見分け方の基本が出てきます。管理費と修繕積立金は、部屋の広さと建物の規模でだいたい決まります。家賃は、立地と築年数と広さで決まります。この二つがずれる部屋、つまり負担額が家賃ほど下がらない部屋で、手残りが薄くなります。具体的には、狭い部屋と、築年数の進んだ部屋です。表のとおり、25%以上の階級は中央値で27.6㎡・築36年でした。

あなたの部屋は、どのあたりでしょうか

  • 比率が10%未満——広めで築年数が浅い部屋がここに入ります。負担は当面の心配ではありません。ただし修繕積立金がまだ低い時期でもあるので、これから上がる側です。
  • 比率が10〜20%——いちばん多い帯です。当面は回りますが、家賃が下がるか積立金が上がるかで、すぐ次の帯に移ります。年に一度は計算し直す価値があります。
  • 比率が20%を超えている——全体の15.7%です。狭い、築年数が進んでいる、家賃が下がってきた。この三つのどれかに当てはまっているはずです。持ち続けるか売るかを、数字で比べる段階に来ています。
  • いくらか把握していない——管理費と修繕積立金は、管理組合からの通知か、購入時の重要事項説明書に書かれています。改定されている場合もあるので、いまの金額を確かめるところからです。

修繕積立金は、築年数とともに上がる

もう一つ、時間の要素があります。修繕積立金は、新築のときに低く設定され、あとから段階的に引き上げられるのが一般的です。集計でも、はっきり出ました。

築年数件数管理費(中央値)修繕積立金(中央値)
築0〜9年22,205件14,862円8,800円
築10〜19年25,320件13,900円14,000円
築20〜29年34,478件13,020円15,720円
築30〜39年31,452件12,000円12,420円
築40年以上47,043件9,570円11,630円
2025年9月以降に売り出し・成約のあった区分マンション160,498件(当社が独自に集計)

築0〜9年の8,800円が、築20〜29年では15,720円。1.8倍です。1㎡あたりに直すと150円が239円になります。新築で買ったときの収支計画のまま20年持つと、この差だけ手残りが減っている計算になります。

実際の値上げ幅も追ってみました。同じマンションの同じ広さの部屋について、5年の間隔をあけて修繕積立金を比べたものが12,928組(9,938棟)あります。5年で上がったのが47.3%、ほぼ変わらないのが47.7%、下がったのが5.0%でした。そして上がった組の上げ幅は、中央値で49.9%。5年で1.5倍です。値上げは少しずつではなく、「据え置きが続いたあと、一度に大きく上げる」形で起きています。

手残りまで引き算してみる

ここから先は説明のための計算例です。実在の部屋ではありません。25%以上の階級の中央値に近い部屋を想定します。27㎡・築36年・家賃74,000円。管理費と修繕積立金の合計が22,000円だとします。

  • 年間の家賃収入:74,000円 × 12か月 = 888,000円
  • 管理費・修繕積立金:22,000円 × 12か月 = △264,000円
  • 賃貸管理の委託料(家賃の5%):△44,400円
  • 固定資産税・都市計画税:△60,000円
  • 空室と原状回復(2年に1回入れ替わり、空室1.2か月+原状回復15万円を1年あたりに直す):△119,400円
  • 残り:400,200円(月あたり33,350円)

家賃888,000円のうち、手元に残るのは400,200円。45%です。ここにローンの返済があれば、さらに引かれます。同じ計算を、比率が10%未満の部屋でやると残り方はまったく変わります。負担の比率が10ポイント違うということは、家賃の1割がそのまま消えるということです。

そして、この計算のうち増えていくのは修繕積立金だけではありません。原状回復の費用も、築年数とともに上がります。設備が寿命を迎えるからです。給湯器、エアコン、ガスコンロ。どれも10年から15年で交換の時期が来ます。1回あたり10万円から20万円。手残り40万円の部屋にとっては、決して小さくありません。

見分けるための四つの確認

お持ちの部屋、あるいは検討中の部屋について、確認する順番です。

1つめ。管理費と修繕積立金の合計を、いまの募集家賃で割ってください。15%を超えていたら、この記事でいう「重い側」です。20%を超えているなら、受け取る家賃の5分の1が、入居者がいてもいなくても毎月出ていく計算になります。

2つめ。修繕積立金を1㎡あたりに直してください。集計では築10年を過ぎた建物の中央値が1㎡あたり210円から240円でした。これを大きく下回っている築古の建物は、負担が軽いのではなく、積立が足りていない可能性があります。足りなければ、いずれ値上げか一時金の徴収になります。安いことが有利とは限りません。お持ちの部屋がある市区の水準は、市区別の管理費・修繕積立金の相場で築年数と広さ別に確かめられます。

3つめ。長期修繕計画と、これまでの改定の履歴を見てください。管理組合の総会資料に載っています。過去10年で一度も上げていない建物は、上げるべき時期が先送りされている場合があります。先ほどのとおり、値上げは一度に5割ということが実際に起きています。

4つめ。滞納の状況です。同じ総会資料に、管理費等の滞納額が出ています。滞納が多い建物は、修繕の実行が遅れます。修繕が遅れれば、建物の見た目と設備が落ち、家賃はさらに下がります。ここは家賃と負担の両方に効いてくる部分です。

なお、この四つで見えるのは「重いかどうか」であって、「売るべきかどうか」ではありません。重くても、立地がよく空室が出にくい部屋なら持ち続ける理由があります。逆に、比率が15%でも、家賃が下がり続けている部屋は先細りになります。負担の比率は、判断のための材料の一つです。

当社では、こう見ています

当社には月に500件ほど、売却のご相談や物件のお持ち込みがあります。区分の収益物件を見るときは、表面利回りではなく、管理費・修繕積立金・固定資産税・原状回復費・空室期間を引いたあとの金額で並べます。修繕積立金については、いまの金額だけでなく、1㎡あたりの水準が同じ築年数の建物と比べてどこにあるかも見ます。低すぎる建物は、将来の値上げを見込んで評価します。この記事で使った負担額と家賃のデータは、その計算にそのまま使っているものです。買う側がこの引き算をしている以上、売る側も同じ数字を先に持っておくほうが、話が早く進みます。

次の一歩

まず、いまの募集家賃の水準を確かめてください。負担の比率は分母である家賃で決まるので、家賃の見立てがずれていると比率もずれます。同じ駅・同じ間取り・近い築年数の実際の成約家賃は、駅別・間取り別の家賃相場データで確認できます。

比率が高いと分かった場合、次に必要なのは売却額の見当です。持ち続けたときに毎年残る金額と、いま売った場合の手取りを並べて、初めて比べられます。マンション名・専有面積・階が分かれば、成約価格をもとにした金額をその場で確認できます。この記事の下にご案内があります。

まとめ

  • 管理費と修繕積立金の合計は中央値25,090円。家賃に占める割合は中央値12.9%、上位10%で22.5%
  • 比率が高い部屋は負担が重いのではなく、家賃が低い。25%以上の階級は中央値27.6㎡・築36年
  • 修繕積立金は築0〜9年の8,800円が築20〜29年で15,720円。5年で上がった組の上げ幅は中央値49.9%
  • 1㎡あたり210〜240円を大きく下回る築古の建物は、安いのではなく積立不足の可能性がある
  • 確認するのは、家賃に対する比率・1㎡あたりの積立額・改定の履歴・滞納の状況の四つ
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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