不動産物件購入・売却

一棟売却の手取り|価格からいくら引かれるかを順に並べる

一棟を売ったとき、契約書に書かれた金額がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料、抵当権抹消、印紙、そして譲渡所得税。さらに、売り出してから決まるまでに価格を下げていれば、その分も引かれています。当社が独自に集計した売出中の一棟53,484件では、価格の中央値は6,800万円です。この金額を出発点に、何がいくら引かれるのかを順に並べます。

仲介手数料は価格の3.3〜3.5%

仲介手数料の上限は、売買価格の3%に6万円を加え、消費税を掛けた金額です。当社の集計での価格分布に当てはめると、実額は次のようになります。

価格の水準売買価格仲介手数料(上限・税込)価格に対する割合
下位4分の12,900万円約102万円3.53%
中央値6,800万円約231万円3.40%
上位4分の11億4,500万円約485万円3.34%
売出中の一棟53,484件の価格分布と手数料の実額(価格は当社が独自に集計)

種別で見ると、一棟アパートの価格中央値5,500万円で約188万円、一棟マンションの1億5,000万円で約502万円です。3億円なら約997万円になります。手数料は価格に比例するので、一棟では区分マンションと桁がひとつ違うことになります。ここを「率だから同じ」と考えていると、手取りの見積もりを外します。

価格から引かれるもの、手元から出ていくもの

売却にともなう費用は、性質で二つに分かれます。価格に比例するものと、金額が固定に近いものです。

項目目安性質
仲介手数料価格×3%+6万円+消費税比例
譲渡所得税・住民税所有5年超20.315% / 5年以下39.63%利益に比例
印紙税(売買契約書)数千円〜数万円価格帯で階段状
抵当権抹消の登録免許税不動産1個につき1,000円固定
司法書士報酬数万円程度ほぼ固定
繰上返済手数料金融機関ごと契約による
測量・境界確定数十万円必要な場合のみ
一棟売却で発生する主な費用(制度上の一般的な扱い)

実務で見落とされやすいのは抵当権抹消です。登録免許税そのものは不動産1個につき1,000円ですが、一棟の場合は土地の筆数と建物の棟数の合計で数えるので、土地が3筆に分かれていて建物が2棟なら5,000円になります。金額自体は小さいものの、筆が分かれていること自体が測量や境界確定の必要性につながることがあります。ここは金額より、事前に把握しているかどうかが効きます。

もうひとつ、建物部分の消費税です。売主が課税事業者であれば、建物の対価に消費税がかかります。個人でも、賃貸事業の課税売上によっては課税事業者になっている場合があります。買主との間で「税込か税抜か」が曖昧なまま進むと、決済の直前で数百万円の認識違いが出ます。

譲渡所得税は所有期間で倍近く違う

譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いて計算します。税率は所有期間で変わり、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。判定は「譲渡日から5年」ではなく「譲渡した年の1月1日時点」で行います。12月に5年を迎える物件をその年のうちに売ると、短期の税率が適用されます。

取得費で注意が要るのは、建物の減価償却です。保有中に経費として落とした償却費の累計は取得費から差し引かれます。長く持っていた物件ほど帳簿上の取得費は小さくなり、譲渡益は大きく出ます。長く持った物件ほど、売却時の課税所得は膨らみます。感覚としての「儲かっていない」と、計算上の譲渡益は一致しません。

いちばん大きい変数は値下げ

ここまでの費用は、いずれも価格が決まれば計算できます。手取りを最も大きく動かすのは、実は価格そのものです。当社が独自に集計した売出情報93,473件で、2026年5月末から8月末までの約3か月間の価格改定を追いました。

項目実測
この3か月で一度でも値下げした物件10,222件(10.9%)
値下げ幅の中央値7.4%
値下げ幅の上位4分の1の水準13.4%
1回の改定での値下げ額の中央値200万円
同・上位4分の1の水準500万円
約3か月の価格改定(当社が独自に集計)

中央値の7.4%は、6,800万円の物件なら503万円です。仲介手数料231万円の2倍を超えます。費用の内訳を詰めるより、初値の置き方と交渉の進め方のほうが手取りへの影響は大きい、ということです。

残債が消えるかどうかは積算で見当がつく

借入が残っている物件では、売却代金で残債を返せるかが最初の関門になります。目安になるのが担保評価です。当社の集計では、積算評価が売出価格に占める割合の中央値は49.4%で、積算が価格以上になる物件は8.9%しかありません。

買ったときの融資が積算の範囲に収まっていたなら、価格が積算を上回っている限り、売却で残債は消える計算になります。逆に、購入時に価格に対して高い割合で借りていて、その後の元金の減りが小さい物件は、売っても足りない可能性があります。この場合は金融機関との調整が先に必要で、価格の議論より前の話になります。

当社では、こう見ています

手取りのご相談では、価格の想定レンジを先に置き、そこから固定的な費用を引いて「残る金額の幅」を出します。1点の数字は出しません。幅で出すのは、値下げ幅の中央値が7.4%あるからです。上限だけを見て資金計画を組むと、実際に決まった価格で足りなくなります。譲渡所得の計算は取得時の資料が要るので、購入時の売買契約書と、これまでの償却の状況が分かる書類をお預かりできると精度が上がります。

次の一歩

手取りの計算は、価格の幅が決まらないと始まりません。順序としては、価格のレンジ、残債、固定費用、税金の順です。最初のレンジは、所在地と構造・築年数・満室想定年収があれば置けます。収益還元による価格と、路線価をもとにした積算の両方が出るので、上限と下限の見当がつきます。

そのレンジから、この記事の費用を順に引いていけば、手元に残る金額のおおよその幅が出ます。一棟の簡易査定はこちら(お名前やご連絡先の入力は必要ありません)。

まとめ

  • 売出中の一棟の価格中央値は6,800万円。仲介手数料の上限は約231万円で、価格に対して3.40%にあたる
  • 抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円。一棟では土地の筆数と建物の棟数の合計で数える
  • 譲渡所得の税率は譲渡した年の1月1日時点で所有5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%。減価償却の累計は取得費から引かれる
  • 3か月で値下げした物件は10.9%、幅の中央値は7.4%。6,800万円なら503万円で、仲介手数料の2倍を超える
  • 積算が価格に占める割合の中央値は49.4%。積算が価格以上になるのは8.9%で、残債が消えるかの目安になる
詳しいガイド入居中売却の価格差の実測手取りを削る最大の要因が値下げだとすれば、入居中のまま売ることでどれだけ価格が下がるのかも同じものさしで見ておきたい。築年数やエリアによって割引の幅がどう変わるかが分かれば、手取りの見積もりはさらに近づく。売却ガイド一覧を見る →

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