不動産物件購入・売却

最初の売出価格をどう置くか|強気に出した物件は下げ幅が1.5ポイント深い

最初にいくらで出すか。一棟の売却で、売主が自分の意思で決められる数少ない変数がこれです。高く置いて様子を見る、という進め方は一見すると損がないように見えます。実際には、初値の置き方はその後の値下げの回数と幅を通じて、最終的な着地に効いてきます。当社が独自に集計した売出情報で、2026年6月に新しく出た全国の一棟15,063件を追いました。3か月のあいだに値下げに至ったのは1,731件、11.5%です。

値下げは3週間から1か月で来る

値下げした物件について、売り出してから最初の改定までの日数を見ます。

区分最初の値下げまでの日数
下位4分の1の水準10日
中央値24日
上位4分の1の水準44日
2026年6月に売り出された一棟15,063件のうち値下げした1,731件(当社が独自に集計)

4分の1は10日以内に下げています。売り出して1週間ちょっとです。この速さは、市場の反応を見て判断したというより、出した瞬間に高すぎることが分かっていたと読むほうが自然です。実務では、初値を決める段階で担当者が「この価格では反応が薄い」と分かっていながら、売主の希望に合わせて出すことがあります。その場合の値下げは想定内の手順であって、市場からの新しい情報ではありません。

一度下げると、そこで止まらない

値下げの回数ごとに、初値からの累積の下げ幅を出しました。

値下げの回数件数累積の下げ幅(中央値)
1回8,202件6.9%
2回1,420件14.1%
3回383件26.0%
4回以上217件30.2%
全国の一棟・約3か月の価格改定(当社が独自に集計)

1回で終われば6.9%。2回になると14.1%で、1回のときの倍を超えます。3回では26.0%です。回数が増えるほど、1回あたりの下げ幅まで大きくなっています。少しずつ下げて様子を見る進め方は、下げ幅の合計を小さくしません。むしろ増えています。

理由は買い手側の見え方にあります。掲載期間が長い物件、価格が何度も動いている物件は、それ自体が「売れ残っている」という情報として読まれます。値下げの履歴は、次の買い手への値引き余地の予告になります。刻んで下げるほど、次はもっと下がると期待されます。

相場より強気に出した物件は、下げ幅が大きい

では「強気」とはどのくらいのことを指すのか。当社の集計から、母数が30件以上ある182の市区について相場の表面利回りを出し、個々の物件の表面利回りをその相場と比べました。利回りが相場より低いということは、同じ賃料に対して価格を高く置いているということです。

初値の置き方件数3か月で値下げした割合値下げ幅の中央値
相場より15%以上低い利回り(強気)4,851件9.5%6.2%
相場よりやや低い利回り7,588件9.2%5.1%
相場よりやや高い利回り5,992件8.2%4.5%
相場より15%以上高い利回り(控えめ)6,590件9.2%4.7%
市区の相場利回りと比べた初値の位置(当社が独自に集計)

強気に出した物件の値下げ幅は6.2%で、控えめに出した物件の4.7%より1.5ポイント大きい。値下げに至る割合の差は1.3ポイントと小さいので、強気に出しても「下げる確率」はさほど変わらず、「下げるときの幅」が大きくなるという関係です。市場は初値の高さを覚えていないので、高く出した分がそのまま上乗せで残ることはありません。

注意しておくと、これは「安く出せ」という話ではありません。控えめに出した層の値下げ幅4.7%は、やや高い利回りで出した層の4.5%より大きい。安く出しすぎた物件も、それはそれで買い手から警戒され、条件を詰められています。差し引きで見て、相場のやや上に置くあたりが最も動きが小さい。

同じエリア・同じ築年でも、利回りは2割ひらく

相場に合わせると言っても、相場の幅そのものが広い点は押さえておく必要があります。市区と築年帯を揃えて母数30件以上のグループを作ると45グループになり、その中で表面利回りの上位4分の1の水準は下位4分の1の水準の1.21倍でした。中央値の水準で見ると、下位4分の1が5.87%、中央値6.32%、上位4分の1が6.94%です。

条件を揃えても、利回りは2割ひらきます。この幅は駅からの距離、間取り、土地の形、接道といった個別の事情で埋まります。だから初値は「相場の中央値ぴったり」に置くのではなく、自分の物件がこの幅のどのあたりにいるかを先に判断してから決めることになります。

当社では、こう見ています

初値のご相談では、三つの数字を並べます。エリアの相場利回りで割り戻した収益価格。路線価をもとにした積算。そして同じ条件の物件がいまいくらで出ているかです。この三つが揃うと、置ける価格の上限がどこにあるかが見えます。上限を超えた価格で出したい場合は、下げるときの幅が大きくなること、値下げの履歴が残ることを前提にした進め方をご提案します。高く出すこと自体が悪いわけではなく、その代償を知ったうえで選んでいるかどうかの問題です。

次の一歩

初値を決める前に、収益還元と積算の二つの価格を先に出しておいてください。多くの物件では収益価格のほうが高く出ます。その差がどれくらいあるかで、価格を高めに置いたときに買い手のどちら側の目線から外れるのかが分かります。積算から離れすぎれば融資が伸びず、収益価格から離れすぎれば利回りで選ばれません。

所在地と構造・築年数・満室想定年収を置けば、その二つの価格が同時に出ます。値下げの回数を1回で終わらせる価格がどのあたりかを考える材料になります。一棟の簡易査定はこちら(お名前やご連絡先の入力は必要ありません)。

まとめ

  • 2026年6月に売り出された一棟15,063件のうち、3か月で値下げに至ったのは11.5%。最初の値下げまでの日数は中央値24日、4分の1は10日以内
  • 累積の下げ幅は値下げ1回で6.9%、2回で14.1%、3回で26.0%、4回以上で30.2%。刻んで下げても合計は小さくならない
  • 相場より15%以上低い利回りで出した物件の値下げ幅は6.2%。控えめに出した物件の4.7%より1.5ポイント大きい
  • 値下げに至る割合は初値の置き方でほとんど変わらない。変わるのは下げるときの幅
  • 市区と築年帯を揃えても表面利回りは上下4分の1で1.21倍ひらく。相場の1点ではなく、幅のどこにいるかで決める
詳しいガイドレントロールの読まれ方強気な価格で出すほど値下げが深くなるとすれば、そもそも買い手は何を見て妥当な価格を判断しているのかが気になってくる。レントロールがどう読み替えられているかを知っておくと、最初の値付けの根拠にしやすい。売却ガイド一覧を見る →

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