親が亡くなり、実家を相続したものの、自分はすでに別の家に住んでいる。そんな状況で「空き家をどうすればいいのか」と悩んでいる方は多いはずです。特に「売ったらどのくらい税金がかかるのか」「何か控除は使えるのか」という疑問は、売却を決断する前に必ず知っておきたい情報です。この記事では、相続した空き家を売るときにかかる税金の基本から、最大3,000万円を控除できる特例の使い方、申告に必要な書類まで、順を追って分かりやすく説明します。難しい専門用語はその都度かみ砕いて説明しますので、税金の知識がゼロでも安心して読み進めてください。
まず「自分はどのケースか」を確認する

空き家を相続したとき、選択肢は大きく3つあります。そのまま住む、貸す、売る、の3つです。この記事は「売る」を選んだ方、または売ることを検討している方に向けて書いています。
売る場合に最初に確認してほしいのは、「その家を相続後に使ったかどうか」です。実は、相続後に家を自分で住んだり、誰かに貸したりしていると、後で説明する大きな税金の控除が使えなくなります。まだ何もしていない方は、売却の方針が決まるまで、家を使わずそのままにしておくことが重要です。
次に確認したいのは、「家がいつ建てられたか」です。昭和56年5月31日以前に建てられた家かどうかで、使える特例が変わってきます。登記簿(とうきぼ:法務局が管理する不動産の公式記録)や建築確認済証で確認できます。
ここまでのまとめ: 相続後に家を使っていないか、建築年月日はいつかを最初に確認しましょう。
売ったときにかかる税金の基本的な仕組み

不動産を売ると「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」という税金がかかります。これは、売って得た利益に対してかかる税金です。利益がなければ税金もかかりません。
利益の計算式は、国税庁の説明によると「譲渡価額(売った金額)−(取得費+譲渡費用)−特別控除額」です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。取得費とは、もともとその家を買ったときの値段のことです。譲渡費用には、不動産会社に払う仲介手数料、測量費、売買契約書に貼る印紙代、建物を壊して土地を売る場合の解体費用などが含まれます。
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで変わります。国税庁の情報によると、5年超(長期)なら所得税15%・住民税5%、5年以下(短期)なら所得税30%・住民税9%です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。また、平成25年から令和19年まで、所得税に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされます。
相続した家の場合、所有期間の計算は「被相続人(亡くなった方)が買った日」から引き継ぎます。つまり、親が30年前に買った家なら、相続した翌日に売っても「長期」扱いになります。これは相続人にとって有利な点です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。
ここまでのまとめ: 税金は「売った利益」にかかり、親が買った日から5年超なら低い税率が適用されます。
最大3,000万円が控除できる「空き家特例」とは
相続した空き家を売るときに使える最も大きな節税策が、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。これは、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度で、うまく使えば税金がゼロになるケースもあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。
この特例が使えるのは、令和9年12月31日までの売却が対象です。対象となる家屋の主な要件は次のとおりです。昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、マンションのような区分所有建物(くぶんしょゆうたてもの:一棟のビルやマンションの一部屋を独立して所有する形式)でないこと、相続が始まる直前に、亡くなった方以外に住んでいた人がいないことです。また、相続後から売るまでの間に、その家や土地を自分で住んだり、誰かに貸したり、事業に使ったりしていないことも必要です。
売却金額にも上限があります。売却金額が1億円以下でなければ、この特例は使えません(国税庁 https://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/topics/joto_zoyo_r06/pdf/04.pdf)。また、売る相手は第三者でなければならず、配偶者や一定の親族、同族会社への売却では使えません。さらに、売却できる期限は「相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。たとえば2024年3月に相続が始まったなら、2027年12月31日が期限になります。
令和6年1月1日以降の売却では、相続人が3人以上いる場合、控除の上限が2,000万円に下がります。また、売却時点で家が古くて耐震基準を満たしていなくても、売却した年の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しを完了すれば、特例を使える余地があります。
ここまでのまとめ: 昭和56年5月以前築・1億円以下・相続後3年以内の売却なら、最大3,000万円の控除が狙えます。
取得費が分からないときと「取得費加算の特例」
古い家を相続した場合、親がいくらで買ったかを示す書類が見つからないことがよくあります。そのときは「概算取得費(がいさんしゅとくひ)」として、売った金額の5%を取得費として使うことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm)。たとえば3,000万円で売れた場合、150万円が取得費になります。取得費が低いほど利益が大きくなり税金も増えるため、できる限り購入時の書類を探すことをおすすめします。
一方、相続税を実際に支払った方には、別の節税策として「取得費加算の特例」があります。これは、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる制度です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)。要件は、相続や遺贈で取得した財産であること、その取得者に相続税が課税されていること、相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却することです。
ただし、空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例は、同時に使うことができません。どちらを使った方が税負担が少なくなるかは、物件の状況や相続税の金額によって異なります。税理士に相談して、どちらが有利かを試算してもらうことを強くおすすめします。
ここまでのまとめ: 取得費の書類がなければ売却額の5%で計算でき、相続税を払った方は別の特例も検討できます。
申告に必要な書類と手続きの流れ
特例を使うためには、売った翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告(かくていしんこく:1年間の所得と税金を自分で計算して税務署に報告する手続き)を行う必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm)。
申告に必要な主な書類は、譲渡所得の内訳書、登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ:法務局で取得できる不動産の公式証明書)、売買契約書のコピー、そして「被相続人居住用家屋等確認書(ひそうぞくにんきょじゅうようかおくとうかくにんしょ)」です。この確認書は、家屋が所在する市区町村の窓口で発行してもらいます(中野区の土地相場データ https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/machizukuri/jyutaku/akiya/akiyazeikoujyo.html)。必要に応じて、耐震基準適合証明書や建設住宅性能評価書のコピーも求められます。
確認書を申請するときには、相続後に家を使っていないことを証明する書類も必要です。電気・水道・ガスの使用中止を示す書類、空き家であることを示す広告書面、自治体が認める管理証明などが使われます(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001632832.pdf)。老人ホームに入居していた親の家を相続した場合は、介護保険被保険者証のコピーや施設入所契約書なども必要になります。
なお、1億円以下の判定は自分の売却分だけでなく、他の相続人が売却した分も合算して判断されます。後から合計が1億円を超えた場合は、売却日から4か月以内に修正申告と納税が必要になるため注意が必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。未登記の建物や住民票と登記の情報が一致しないケースなど、特殊な事情がある場合は、市区町村の窓口に事前に相談することをおすすめします(台東区 https://www.city.taito.lg.jp/kenchiku/jutaku/akiya/joutozeikoujo.html)。
ここまでのまとめ: 確認書は市区町村で取得し、翌年3月15日までに確定申告を済ませましょう。
まとめ
相続した空き家を売るときの税金は、正しい知識があれば大幅に抑えられる可能性があります。まず「昭和56年5月以前築かどうか」「相続後に使っていないか」「売却金額が1億円以下か」「相続から3年以内か」の4点を確認してください。これらを満たせば、最大3,000万円の控除が使える空き家特例の対象になります。取得費の書類が見つからない場合は概算取得費を使い、相続税を払った方は取得費加算の特例との比較も忘れずに行いましょう。申告書類の準備は早めに始め、不明点は税理士や市区町村の窓口に相談することが、後悔のない売却への近道です。
ご自身の物件がいくらになるかは、実際の成約データで見るのが早道です。
参考文献・出典
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
- 国税庁 相続した空き家を売却した場合の特例(令和6年分用)チェックシート — https://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/topics/joto_zoyo_r06/pdf/04.pdf
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国土交通省 被相続人居住用家屋等確認書 申請の手引き — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001632832.pdf
- 中野区 被相続人居住用家屋等確認書の発行 — https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/machizukuri/jyutaku/akiya/akiyazeikoujyo.html
- 台東区 「被相続人居住用家屋等確認書」の申請受付・交付 — https://www.city.taito.lg.jp/kenchiku/jutaku/akiya/joutozeikoujo.html
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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