不動産物件購入・売却

表面利回り7%でも、当社が買取を見送る物件の共通点

一棟の収益物件を売ろうとするとき、あるいは持ち込まれた物件を検討するとき、まず目に入るのは表面利回りです。「7%あります」と言われれば、多くの方は良い数字だと感じると思います。ところが、実際に出回っている数字を数えると印象は変わります。当社が独自に集計した首都圏の一棟データ(売出中の11,991件、表面利回りの記載があるもの)では、表面利回り7%以上が全体の35.3%を占めていました。3件に1件です。珍しい水準ではありません。そして当社は、7%台の物件でも買取を見送ることがしばしばあります。この記事では、利回りという一つの数字の裏で何を見ているのかを、できるだけ具体的に書きます。

表面利回りは「掘り出し物」ではなく「築年数」を表している

同じ11,991件を、建物の建築年で分けて、それぞれの表面利回りの中央値を出すと次のようになります。

建築年件数表面利回りの中央値
2007年以降4,541件5.40%
1997〜2006年1,018件5.92%
1982〜1996年5,132件6.89%
1981年以前1,536件7.55%
首都圏で売り出されている一棟物件(当社独自集計)

利回りは、建築年に沿ってきれいに並びます。もう一段掘って、表面利回りが7%台の1,709件だけを取り出してみます。建築年の中央値は1990年。木造が46.7%、最寄り駅から徒歩10分を超えるものが49.9%でした。

つまり7%という数字は、多くの場合「安く出ている」のではなく、築年数と立地と構造を市場が織り込んだ結果です。同じ賃料でも建物が古ければ価格が下がり、価格が下がれば利回りは上がります。利回りが高いこと自体は、その物件が有利だという証拠にはなりません。ここを出発点にしないと、話がかみ合わなくなります。

あなたはどのケースでしょうか

この記事を読んでいる方は、だいたい次のどれかだと思います。

  • 売りたいが、査定額が想像より低かった——「利回り7%なのに、なぜこの金額なのか」が知りたい
  • 買取を打診したが断られた——理由の説明が「弊社の基準に合わず」で終わってしまった
  • 売るかどうかを決めかねている——今の利回りが維持できるのか自信がない

どのケースでも、必要なのは「買う側が何を引き算しているか」を知ることです。以下は当社が見送りに至るときの、代表的な五つの理由です。

見送りの理由1:レントロールの家賃が、いまの相場から離れている

表面利回りは「年間の想定賃料 ÷ 価格」で計算します。分子の賃料は、通常レントロールから作られます。レントロールとは、いま入居している方が実際に払っている家賃の一覧です。ここに落とし穴があります。10年前から住んでいる方の家賃は、10年前の相場だからです。

長期入居の部屋が多い建物は、レントロール上の利回りが高く出ます。ところがその入居者が退去した瞬間、次の募集は今の相場でしか決まりません。築年数も10年進んでいます。買う側は、レントロールの家賃を一戸ずつ現在の募集相場に置き換えて計算し直します。この置き換えで利回りが大きく落ちる物件は、見送りになりやすい代表例です。

売る側でこれを事前に確認する方法はあります。同じ駅・同じ間取り・近い築年数で、いま実際にいくらで決まっているかを見ることです。駅別・間取り別の成約家賃は東京・神奈川の家賃相場データで確認できます。自分の物件のレントロールと並べてみて、差が小さければ、その利回りは説明のつく数字です。

見送りの理由2:「リフォーム済み」が価格に率で乗っている

これは非常によくあります。「全戸リフォーム済み」「フルリノベーション」といった説明とともに、周辺相場より2割ほど高い価格がついている、というケースです。

当社の考え方はシンプルで、リフォームは絶対額で評価します。300万円かけた工事は300万円です。価格を1.2倍にする根拠にはなりません。1億円の物件が1.2億円になるなら、2,000万円の工事をしたことになります。ですが、そこまでの工事が実際に行われている物件は多くありません。率で乗せられた分は、買う側から見れば根拠のない上乗せです。

さらに、リフォームを前提にした売出価格には強い証拠が必要だと考えています。強い証拠とは、工事の内容・金額・実施時期が分かる書類のことです。見積書や請求書、工事写真があれば、絶対額として素直に価格に反映できます。逆に「きれいだから」という印象だけで上乗せされている場合、買う側はその分を引き算します。売る側にとっては、資料を残しておくことがそのまま価格になる、ということでもあります。

見送りの理由3:収益還元と積算のどちらか低い方で止まる

一棟の価格には、大きく二つの見方があります。一つは収益還元——その建物が生む賃料から逆算する見方。もう一つは積算——土地の価値と建物の再調達価格から積み上げる見方です。

この二つは、しばしば大きく食い違います。都心の駅近で土地が高ければ積算が上に出ますし、郊外の木造で賃料が高く取れていれば収益還元が上に出ます。ここで買う側が採るのは、高い方ではなく低い方です。理由は二つあります。一つは、逃げ場の問題です。高い方を採ると、その前提が一つ崩れただけで手が詰まります。もう一つは、融資の問題です。購入時に融資を使う場合、金融機関の評価もおおむね低い方に寄ります。積算が出ない物件は、次に売るときに買主の融資が付きにくくなります。

積算の土台になるのは土地です。市区ごとの土地の坪単価や、路線価と実際の成約価格の関係は土地・戸建ての相場データで確認できます。ご自身の物件の土地値がどのあたりにあるかを先に把握しておくと、提示された金額の意味が読み取りやすくなります。

見送りの理由4:比較している駅の範囲が狭い

「この駅の一棟はだいたい○%です」という説明を受けることがあります。ですが、一つの駅で年間に売買される一棟の件数は多くありません。数件しかない事例から相場を決めると、たまたま高く売れた1件に引きずられます。

当社では、原則として同じ路線の前後3駅まで広げて並べます。急行が停まるか、始発があるかといった違いは、そのうえで調整します。それでも件数が足りなければ、路線をまたいで似た性格の駅を足します。「その駅だけの相場」は、多くの場合、統計として成り立つ量がありません。売る側としても、隣の駅・その隣の駅で何がいくらで出ているかを見ておくと、提示された金額が高いのか低いのかを自分で判断できます。

見送りの理由5:出口が読めない

買取をする以上、当社はいつかその物件を売ります。ですから「次に誰が買えるのか」が読めない物件は、利回りが高くても入れません。

ここで効いてくるのが構造と築年数です。たとえば木造で築35年の物件を考えます。次に買う人が融資を使う場合、返済期間を長く取りにくくなります。返済期間が短ければ毎月の返済額は増え、手元に残る金額が減ります。すると、買える人が限られます。買える人が限られる物件は、売るときに時間がかかるか、価格を下げることになります。この「出口の狭さ」は、買う時点の利回りには表れません。だからこそ、先に見ておく必要があります。

先ほどの集計で、7%台の物件の46.7%が木造、建築年の中央値が1990年だったことを思い出してください。7%という数字の相当部分は、この出口の狭さの裏返しです。

数字で追ってみる(説明のための例)

ここまでの引き算がどう効くのか、数値例で追ってみます。以下は実在の物件ではなく、説明のために作った例です。

  • 売出価格 1億2,000万円、木造12戸、築34年、駅徒歩12分
  • レントロール上の年間賃料 840万円 → 表面利回り7.0%
  • 12戸のうち4戸が10年以上の長期入居。その4戸の家賃は現在の募集相場より月8,000円高い
  • 現在の相場に置き換えると年間賃料は 840万円 − 38.4万円 = 801.6万円 → 6.68%
  • 「全戸リフォーム済み」だが資料は無し。周辺の同条件と比べた上乗せ分を戻すと価格は1億1,400万円相当 → 実質7.03%(=上乗せを外して初めて7%に戻る)
  • 積算は土地7,200万円+建物残存分800万円で8,000万円。収益還元より低い

この例では、賃料の置き換えで0.3ポイント、リフォームの上乗せで実質600万円が動き、最後に積算が8,000万円で頭を押さえます。「7.0%」という最初の数字は、ここまで来ると判断材料としてほとんど残りません。見送りになるのは、こういう積み重ねの結果です。特定の一項目が致命的だという話ではありません。引き算を一つずつ入れていくと、最初の数字が残らない。見送りは、この形で起きます。

評価は「幅の下側」で置く

もう一つ、考え方として共有しておきたいことがあります。物件の評価額は一点では決まらず、必ず幅を持ちます。同じ条件でも、買主の資金計画や時期によって数百万円は動くからです。当社はこの幅の下側を採ります。強気の前提を積み上げた金額は、その前提が一つ外れただけで成立しなくなるためです。

これは売主の方にとっては、提示額が低く見える原因でもあります。ただ、幅の上側で買った物件は、売るときに苦労します。買った側が苦労する取引は、結局のところ売った側にも跳ね返ります。買取価格の説明を受けるときは、「その金額はどの前提で置かれているか」を聞いてみてください。前提が説明できる金額かどうかが、判断の助けになります。

当社では、こう見ています

当社には月に500件ほど、売却のご相談や物件のお持ち込みがあります。そのすべてについて、同じ手順を踏んでいます。レントロールを現在の募集相場に置き換える。収益還元と積算の両方を出す。同じ路線の前後3駅と並べる。この三つです。見送りになる物件のほうが多いのは事実ですが、それは物件が悪いという意味ではありません。当社が買える価格と、売主の方が希望される価格が離れているというだけのことです。そして、その差がどこから来ているのかは、上に書いた五つのどれかであることがほとんどです。

次の一歩

お持ちの物件で最初に確認していただきたいのは、レントロールと現在の募集相場の差です。ここが小さければ、表面利回りはそのまま説明のつく数字として通ります。差が大きい場合は、退去のたびに利回りが下がっていく状態なので、売るタイミングの判断材料になります。

実際の金額については、レントロール・登記簿・建物の概要が分かる資料をお預かりできれば、収益還元と積算の両方を出したうえで、どちらで頭が押さえられているかまで含めてご説明します。一棟物件のご相談窓口はこの記事の下にご案内があります。

まとめ

  • 首都圏で売り出されている一棟のうち、表面利回り7%以上は35.3%。利回りは築年数に沿って並ぶ
  • 見送りの理由は、①レントロールと相場の乖離 ②率で乗ったリフォーム上乗せ ③積算と収益還元の低い方 ④駅の比較範囲の狭さ ⑤出口の狭さ、の五つがほとんど
  • リフォームは絶対額で評価する。率での上乗せには工事内容・金額・時期の分かる資料が要る
  • 評価額は幅を持つ。前提が崩れたときに耐えられるよう、下側で置く
  • 売主側で最初にできる確認は、レントロールを現在の募集相場に置き換えてみること

見送られる側に回らないためには、表面利回りの一点ではなく、収益還元と積算の両方から出した価格の幅で自分の物件を見ておくことです。一棟の簡易査定はこちら(入力は所在地・築年・満室想定年収だけで、お名前やご連絡先は必要ありません)。

電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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