不動産物件購入・売却

買取と仲介、どちらが手元に多く残るのか|差額と時間で比べる

マンションの売り方には、大きく二つあります。買いたい人を探してもらう「仲介」と、不動産会社にそのまま買ってもらう「買取」です。買取は早いけれど安い、とよく言われます。では、いくら安いのでしょうか。そして、どこから先は仲介より得になるのでしょうか。

この記事では、その分かれ目を数字で見ていきます。使うのは、当社が独自に集計した首都圏の成約データです。2024年1月から2026年8月までに成約した中古マンション110,887件が対象です。

買い取った部屋は、いくらで売り直されているか

買取価格そのものは、契約書の中の話なので表には出てきません。ただ、買い取られた部屋がそのあとどうなったかは追えます。不動産会社が売主になっている部屋は、買い取って売り直している部屋だからです。

同じ建物の中の真ん中の㎡単価を100として、比べました。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。同じ建物で比べているので、立地や築年数の差は入りません。

売主件数㎡単価(同じ建物の真ん中を100)売れるまでの日数
個人(ふつうの売主)38,078件100.0中央値84日
不動産会社(買い取って売り直した部屋)3,825件107.1中央値169日
同じ建物で5件以上の成約があった部屋(当社が独自に集計)

不動産会社が売主の部屋は、同じ建物の真ん中より7.1%高い単価で売れています。そして、売れるまでに169日かかっています。個人の売主の2倍です。中央値とは、全部を順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。

ここから、買取の仕組みが見えてきます。不動産会社は、安く買って、時間をかけて、高く売り直しています。その7.1%と169日ぶんの費用が、あなたに提示される買取価格から、あらかじめ引かれているということです。引かれているのは会社の利益だけではありません。リフォーム費用、その間の固定資産税や管理費、広告費、そして「売れ残るかもしれない」という危険を引き受ける代金も入っています。

ですから、買取価格が仲介の相場より低いのは、買いたたかれているからとは限りません。会社が引き受けたぶんの代金だと考えると、比べ方が変わってきます。

ここまでのまとめ:買い取られた部屋は、同じ建物の真ん中より7.1%高く、169日かけて売り直されています。

あなたはどのケースですか

買取が向くかどうかは、部屋の条件ではなく、あなたの事情で決まります。近いものを探してみてください。

  • いつ売れてもよい——仲介が有利です。時間を使える人は、その時間ぶんの代金を自分で受け取れます。
  • 引き渡す日が決まっている——住み替えの決済日、相続税の申告期限、転勤。日付が動かせないなら、買取を選択肢に入れる意味があります。
  • 近所や親族に知られたくない——買取なら広告を出しません。仲介では、広告に出さない売り方もありますが、そのぶん買主は減ります。
  • すでに売り出していて、半年以上売れていない——このケースがいちばん判断が難しいところです。あとで詳しく書きます。

ここまでのまとめ:買取が向くかどうかは、部屋の良し悪しではなく、あなたの時間の余裕で決まります。

分かれ目を計算してみます

仲介で売った場合、手元に残る金額は「売れると思っている価格」ではありません。実際には、次の三つが引かれます。

  • 売り出してから成約までの値下げ。集計では71.5%の部屋が値下げをしており、下げ幅は中央値4.49%でした
  • 仲介手数料。4,000万円で売れた場合、およそ139万円(消費税込み)です
  • 売れるまでの持ち出し。管理費と修繕積立金の合計は、集計では月に約25,200円が真ん中でした。住宅ローンが残っていれば、その返済も続きます

たとえば、4,000万円で売り出すとします。中央値どおりに進んだ場合、成約は約3,820万円です。ここから仲介手数料が約133万円。売れるまでは中央値91日、引き渡しまでさらに1〜2か月かかるので、その間の管理費などが約13万円。印紙代や住宅ローンの抵当権を消す費用が約4万円。合わせて約150万円が引かれ、手元に残るのはおおよそ3,670万円になります。

この3,670万円が、買取価格と比べる相手です。買取なら仲介手数料はかかりません。売却期間もほぼゼロです。ですから、買取価格が3,670万円に近ければ近いほど、買取が有利になります。逆に、買取価格がこれより大きく低いなら、その差は「時間を短くするために払う金額」です。それが自分にとって払う価値のある額かどうか、という問いになります。

ここまでのまとめ:比べる相手は売り出し価格ではありません。値下げと手数料を引いたあとの金額です。

時間がたつと、仲介の有利さは減っていきます

「とりあえず仲介で出してみて、売れなければ買取にすればいい」。よく聞く考え方です。ただ、この順番には注意が必要です。売れない期間が長くなるほど、仲介で最後に決まる価格が下がっていくからです。

売り出しから成約までの日数件数の割合売出価格からの下げ幅(中央値)
90日以内50.1%1.75%
91〜180日23.3%6.25%
181〜365日17.7%9.17%
365日超8.9%12.50%
2024年1月〜2026年8月に成約した首都圏の中古マンション(当社が独自に集計)

1年を超えた部屋は、売り出した価格から12.5%下がって決まっています。4,000万円で出した部屋なら、約500万円です。しかもその間、管理費や返済を払い続けています。1年なら管理費などだけで約30万円です。

つまり、あなたの場合はこう考えてみてください。仲介と買取の差は、待つほど縮みます。半年たっても反応がない部屋を、さらに半年待って売る。そのとき手元に残る額は、最初に買取を選んだ場合と、そう変わらないことがあります。「いつまで待つか」を先に決めておくと、この比較がしやすくなります。

ここまでのまとめ:1年待った部屋は12.5%下がっています。待つこと自体に費用がかかります。

判断するときの五つの基準

実際に決めるときは、次の順番で見てください。

1. 引き渡しの締め切りがあるかどうか

これが最初です。日付が動かせないなら、仲介で粘れる期間は自動的に決まります。売れるまで中央値91日、引き渡しまでさらに1〜2か月。合わせて5か月ほどは見ておく必要があります。

2. 手数料を引いたあとの仲介価格と比べる

売り出し価格と比べてはいけません。値下げと手数料を引いた金額と比べます。この比べ方をしないと、買取は必ず安く見えます。

3. その部屋に買主がどれくらいいるかを見る

同じ建物や同じ駅で、似た部屋が年に何件も売れているなら、仲介で買主は見つかります。何年も1件も出ていないなら、待っても買主が現れる保証はありません。買主が少ない部屋ほど、買取との差は小さくなります。

4. 手のかかる事情があるかどうか

賃貸中である、相続の名義が複数人にまたがっている、大きな修繕が近い、室内に荷物が残っている。こうした事情は、仲介では買主が敬遠します。買取ならそのまま引き取ってもらえることが多く、差が縮みます。

5. 買取価格は複数社に聞く

買取価格は、その会社が売り直すときにいくらで売れると見ているかで決まります。得意なエリアや間取りが会社ごとに違うので、金額もそろいません。1社の金額だけで「買取は安い」と判断するのは早いです。

ここまでのまとめ:締め切り、比べる相手、買主の数、事情の複雑さ、複数社。この五つで決まります。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っています。ですから、どちらかに寄せる理由がありません。ご相談をいただいたときは、まず成約データから「仲介で売った場合に手元に残る見込み額」を出し、その横に買取価格を並べてお見せしています。買取価格は、当社が売り直すときの見込みから逆算して決めており、その見込みには同じ成約データを使っています。月に500件ほどの売却のご相談やお持ち込みがあり、実際に仲介を選ばれる方も、買取を選ばれる方も、どちらもいらっしゃいます。

次の一歩

比べるには、まず仲介で売った場合の金額が必要です。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、成約価格をもとにした金額をその場で確認できます。この記事の下にご案内がありますので、必要な方はそちらからどうぞ。その金額から手数料と値下げ分を引けば、買取価格と並べる準備ができます。

建物ごとに年何件くらい売れているかは、マンション棟別の相場データで確認できます。買主の多い部屋か少ない部屋かの見当がつきます。

まとめ

  • 買い取られた部屋は、同じ建物の真ん中より7.1%高い単価で、169日かけて売り直されている
  • 買取価格と比べるのは売り出し価格ではない。値下げ(中央値4.49%)と手数料を引いたあとの金額
  • 4,000万円で売り出した場合、手元に残る見込みはおおよそ3,670万円
  • 1年を超えた部屋は12.5%下がって決まっている。待つほど仲介の有利さは減る
  • 締め切りの有無、買主の数、事情の複雑さで決める。買取価格は複数社に聞く
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

プロフィール詳細 →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所