不動産物件購入・売却

売出価格と成約価格は、実際どれくらい違うのか|首都圏11万件の実測

マンションを売ろうと考えたとき、いちばん気になるのは「いくらで売れるのか」だと思います。多くの方はまず、広告サイトで似た部屋の価格を調べます。ただ、そこに並んでいる金額には注意が必要です。あれは売り出しの価格であって、実際に売れた価格ではありません。売主が「この値段で売りたい」と決めて出した数字です。買主がその金額で納得した、という証拠ではないのです。

では、この二つはどれくらい違うのでしょうか。当社が独自に集計した首都圏の成約データで数えてみました。2024年1月から2026年8月までに成約した中古マンション、111,921件が対象です。結果は、売出価格と成約価格の差が平均7.0%、中央値で4.5%でした。4,000万円で売り出した部屋なら、180万円ほど下がって決まったという計算になります。しかも、一度も価格を下げずに売れた部屋は、全体の4分の1しかありませんでした。

まず、数字を見てみます

集計した111,921件の全体像です。ここでいう「差」とは、最初に売り出した価格と、最後に売れた価格の開きのことです。売出価格に対して何%かで表しています。

  • 売出価格と成約価格の差:平均7.0%・中央値4.5%
  • 途中で値下げをして売れた部屋:71.6%
  • 売り出した価格のまま売れた部屋:23.7%
  • 途中で価格を上げて売れた部屋:4.7%
  • 売り出してから売れるまでの日数:中央値91日(およそ3か月)

「平均」と「中央値」で数字が違うのが、気になるかもしれません。中央値とは、全部を順番に並べたときに、ちょうど真ん中に来る数字のことです。平均のほうは、大きく値下げした一部の部屋に引っぱられて大きくなります。ですから、ふつうの売主の実感に近いのは、中央値の4.5%のほうです。

金額に直すと、こうなります。3,000万円で売り出したなら、約135万円。4,000万円なら、約180万円。5,000万円なら、約225万円。平均の7.0%で計算すると、3,000万円の部屋で210万円です。小さな額ではありません。

ここで一つ、大事なことをお伝えします。この差は「買主に値切られた額」ではありません。買主との交渉で最後に動くのは、たいてい数十万円です。それよりも前に、売主自身が広告の価格を下げている。そのほうが金額としては大きいのです。つまり差の正体は、値引き交渉ではありません。最初の値付けのズレです。

ここまでのまとめ:売出価格と成約価格は平均7.0%違う。その差の大半は、値切られた分ではなく、自分で下げた分です。

あなたはいま、どの段階にいますか

この先の読み方は、いまどの段階にいるかで変わります。ご自分に近いものを探してみてください。

  • まだ売り出していない——この記事がいちばん役に立つ段階です。最初の値付けを決める前に読むか、決めた後に読むか。それだけで、結果が数百万円変わることがあります。
  • 売り出して1か月以内。まだ内見が入らない——内見とは、買いたい人が実際に部屋を見に来ることです。この段階でやることは、値付けが相場からどれくらい離れているかを確かめることです。あわてて下げる前に、まず差の大きさを測ってください。
  • 売り出して3か月以上たった——集計では、ここまで来た部屋の最終的な差は、中央値6.3%に広がります(次の表)。この段階では「いくら下げるか」より「いつまでに決めるか」を先に決めたほうが、結果が良くなります。
  • 売るかどうか、まだ決めていない——手元にいくら残るかを知る段階です。計算に使う数字は、売出価格ではなく成約価格です。ここを間違えると、住み替えや返済の計画がずれます。

どの段階でも、共通することが一つあります。判断の土台に置く数字は、「いま広告に出ている価格」ではなく「実際に売れた価格」だということです。ここから先は、なぜその二つがずれるのかを見ていきます。

ここまでのまとめ:段階によってやることは違いますが、見るべき数字はどの段階でも「売れた価格」です。

差が開くのは、時間がたってから

同じ集計を、売り出してから売れるまでにかかった日数で分けてみます。すると、はっきりした傾向が出てきました。

売り出しから売れるまでの日数件数の割合売出価格との差(中央値)同(平均)
30日以内18.3%0.0%3.4%
31〜60日18.8%1.8%4.3%
61〜90日12.9%3.9%5.9%
91〜180日23.3%6.3%7.8%
181〜365日17.9%9.2%10.1%
365日超8.9%12.3%13.4%
2024年1月〜2026年8月に成約した首都圏の中古マンション111,921件(当社独自集計)

30日以内に決まった部屋は、中央値で見ると一円も下げていません。反対に、1年を超えた部屋は12.3%下がっています。4,000万円の部屋なら、約490万円です。日数で見ても同じことが言えます。値下げをして売れた部屋は、売れるまで中央値115日かかりました。一度も下げずに売れた部屋は中央値44日です。2.6倍の開きがあります。

この表を見て「長く待つと下がるのか」と思われるかもしれません。順番は逆です。最初の値付けが高い。だから問い合わせが来ない。仕方なく下げる。この流れで起きています。しかも、下げるまでには時間がかかります。その間に「ずっと売れ残っている部屋」という印象がついてしまいます。だから、さらに下げることになるのです。

つまり、あなたの場合はこう考えてみてください。売り出した直後の2〜3週間は、その部屋にとって一度きりの見せ場です。広告サイトの新着に載ります。希望条件を登録している買主に、お知らせが届きます。前から探していた人が、まとめて見に来ます。お店でいえば、開店直後の行列のようなものです。ここで反応が取れないと、あとは毎日新しく出てくる部屋の後ろに、静かに並んでいくだけになります。

ここまでのまとめ:時間がたつから下がるのではありません。高く出したから売れず、売れないから下げることになるのです。

価格帯によっても、差の出方は変わります

もう一つ、売出価格の高さによる違いも見ておきます。

売出価格件数差(中央値)値下げした割合売れるまでの日数(中央値)
3,000万円未満36,790件7.7%75.0%101日
3,000〜5,000万円30,130件4.7%73.5%94日
5,000〜8,000万円25,794件2.9%67.8%81日
8,000万〜1.2億円10,899件2.3%63.5%76日
1.2億円以上8,308件4.2%71.8%95日
同じ集計を、売出価格の帯ごとに分けたもの(当社独自集計)

いちばん下がりやすいのは、3,000万円未満の帯です。中央値で7.7%。2,500万円の部屋なら、190万円ほど下がった計算になります。反対にいちばん下がりにくいのは、8,000万円から1.2億円の帯で2.3%でした。地域で分けると、東京23区の差は中央値3.4%。それ以外の首都圏は5.5%です。

理由はそれほど難しくありません。買いたい人が多く、似た部屋がたくさん出ている場所ほど、値段の見当がつきやすい。だから売出価格が相場から離れにくいのです。逆に、比べる相手が少ない部屋は「いくらで出せばいいのか」が分かりません。その結果、差が開きます。

つまり、あなたの場合は「自分の部屋と比べられる似た部屋が、近所にどれくらいあるか」を数えてみてください。同じマンションで毎年何部屋も売りに出ているなら、値段の目安は取りやすい状況です。何年も1件も出ていないなら、値付けは慎重に調べる必要があります。

ここまでのまとめ:比べる相手が少ない部屋ほど、値付けを外しやすく、差が開きます。

なぜ、売出価格は高めになりやすいのか

ここは仕組みの話です。少していねいに説明します。理由は大きく三つあります。

一つめ。査定額は「予想」であって「約束」ではありません。査定額とは、不動産会社が「たぶんこの値段で売れるだろう」と見込んだ金額のことです。買主はまだ現れていません。ですから、それは予想でしかありません。そして予想には幅があります。「3,800万円から4,200万円くらい」といった具合です。この幅の上のほうを伝えるか、真ん中を伝えるか。それは会社の判断にまかされています。

二つめ。売主は、査定額で会社を選びがちです。何社かに査定を頼めば、金額を並べて比べます。当たり前のことです。そして、高い金額を出した会社に任せたくなります。これも自然な気持ちです。ただ、この選ばれ方が続くかぎり、会社としては幅の上のほうを言ったほうが得になります。特定の会社が不誠実だ、という話ではありません。売主と会社の間にある、仕組みの問題です。

たとえば、3社に査定を頼んだとします。A社は4,500万円、B社は4,100万円、C社は4,000万円。ここでA社を選ぶ方が多いはずです。ですが、A社の4,500万円で本当に売れるという保証は、どこにもありません。

三つめ。売主ご自身の事情です。住宅ローンの残り(残債といいます)。次に買う家の予算。自分が買ったときの価格。どれも「この金額は下回りたくない」という気持ちのもとになります。相場とは関係のない数字です。それでも、値付けには強く効きます。

この三つが重なると、売出価格は静かに相場の上へ押し上げられていきます。あとは、先ほどの表のとおりです。上に置いた分だけ、時間がかかる。時間がかかった分だけ、最後に下げることになる。

「高めに出しておいて、反応を見ながら下げればいい」。よく聞く考え方です。一見すると、合理的に思えます。ただ、この方法には代金があります。最初の数週間という一度きりの見せ場を、高すぎる価格で使い切ってしまうことです。

ここまでのまとめ:高くなりやすいのは、査定額が予想であること・高い会社が選ばれやすいこと・売主の事情、この三つが重なるためです。

では、いくらで売り出せばよいのか

ここからは、実際に値段を決めるときの基準です。五つあります。

1. 売り出し中の価格ではなく、売れた価格を見る。同じマンションの別の部屋が5,000万円で出ていたとします。ですが、それは「まだ売れていない価格」です。見るべきなのは、その建物で実際に売れた価格のほうです。建物ごとの成約価格はマンション棟別の相場データで確認できます。

2. 比べる順番を守る。いちばん強い材料は、同じ建物・同じ間取り・近い階の成約です。それが無ければ、同じ駅。それも無ければ、同じ路線の隣の駅まで広げます。いきなり「同じ区」で比べてはいけません。駅からの距離も築年数もバラバラの部屋が混ざり、目安がぼやけるからです。駅ごとの相場は駅別の中古マンション相場データで見られます。

3. 下げるときの「置き場所」を、先に決めておく。買主は、3,000万円・3,500万円・4,000万円といった区切りで検索します。ですから3,980万円と4,050万円では、見てもらえる人の数が変わります。4,000万円以下で探している人には、4,050万円の部屋は表示されないからです。下げるなら、この区切りを一つまたぐように下げます。50万円ずつ何度も下げるより、一度でまたぐほうが反応は出ます。

4. 締め切りから逆算する。住み替えの引き渡し日。相続税の申告期限。転勤の時期。締め切りがあるなら、先に日程を引いておきます。売れるまでの日数は中央値91日、およそ3か月です。契約から引き渡しまでに、さらに1〜2か月かかります。「あと1か月しかない」と気づいてから下げる価格は、最初から適正に置いた価格より、必ず低くなります。

5. 高く出すなら、期間を区切る。相場より上で試すこと自体は、選択肢としてあります。ただし条件があります。「3週間で問い合わせが3件なければ、○○円に下げる」。これを、売り出す前に決めておくことです。決めずに始めると、下げる判断が毎回先送りになります。

ここまでのまとめ:売れた価格を、同じ建物→同じ駅→隣の駅の順に見る。下げ幅と締め切りは、売り出す前に決めておく。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っているため、判断の材料は「いま出ている売出価格」ではなく「実際に売れた価格」に置いています。この記事で使った成約データも、日々の査定でそのまま使っているものです。AIによる査定も、売出価格ではなく成約価格をもとに作っています。売出価格をもとにすると、ここまで説明した「相場より上に置かれやすい」という偏りを、そのまま覚えてしまうためです。加えて、月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただいており、そこで価格が実際にどう動いたかも合わせて見ています。

次の一歩

ここまでは、全体の傾向の話でした。ただ、実際に売るときに必要なのは、平均でも中央値でもありません。「自分の部屋はいくらか」という、一つの数字です。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額を、その場で確認できます。この記事の下にご案内がありますので、必要な方はそちらからどうぞ。

次の記事では、その査定額がどうやって決まっているのかを説明します。どんな材料を使い、どこで差がつくのか。中身を開けてお見せします。「なぜこの金額なのか」が分かると、出された査定額をご自分で確かめられるようになります。

まとめ

  • 首都圏の中古マンション111,921件で、売出価格と成約価格の差は平均7.0%・中央値4.5%。4,000万円の部屋なら180万円ほど
  • 値下げをして売れた部屋は71.6%。売り出した価格のまま決まったのは23.7%だけ
  • 30日以内に決まった部屋は中央値0%、1年を超えると12.3%。差の正体は値引き交渉ではなく、最初の値付け
  • 3,000万円未満の帯と、比べる相手が少ないエリアほど、差が開きやすい
  • 値付けは「売れた価格」から。同じ建物→同じ駅→隣の駅の順に比べ、下げ幅と締め切りは売り出す前に決めておく
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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