不動産物件購入・売却

マンションの「囲い込み」は、どうすれば気づけるのか

マンションの売却でよく耳にする言葉に「囲い込み」があります。売却を任された会社が、他社から「その部屋を買いたいお客様がいます」と連絡を受けても、断ってしまうことをいいます。自分の会社で買主も見つければ、手数料を売主と買主の両方から受け取れるからです。

売主にとっては、買主の候補が減るだけです。ですから、気づけるなら気づきたい。そこでよく紹介されるのが「他社のサイトに自分の部屋が出ているか調べる」という方法です。ところが、当社が集計してみると、この見分け方は当てになりませんでした。

「1社しか出していない」は、悪い印ではなかった

使ったのは、当社が独自に集計した首都圏の成約データです。2024年1月から2026年8月までに成約した中古マンション110,887件について、その部屋を広告に出していた不動産会社が何社あったかを数えました。

広告を出していた会社の数件数売れるまでの日数(中央値)売出価格からの下げ幅(中央値)
1社6,122件27日2.17%
2社7,389件58日3.23%
3社22,364件65日3.35%
4社25,094件78日4.68%
5社6,827件128日5.25%
6社以上20,502件222日7.73%
2024年1月〜2026年8月に成約した首都圏の中古マンション(当社が独自に集計)

予想と逆ではないでしょうか。1社しか広告を出していない部屋は、中央値27日で売れています。6社以上が出していた部屋は222日かかっています。中央値とは、全部を順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。

理由は、順番を考えると分かります。広告を出す会社の数は、時間がたつほど増えていくのです。売り出した直後は、任された1社が広告を出します。売れないまま何か月も過ぎると、他社も情報を載せ始めます。つまり会社の数は「売れ残った長さ」を映しているのであって、売主が受けている扱いを映しているわけではありません。

実際、売れるまでの日数で分けると、こうなります。

売れるまでの日数件数広告を出していた会社の数(中央値)1社以下だった割合
30日以内16,811件3社25.0%
31〜60日16,868件3社9.3%
61〜90日11,488件4社6.3%
91〜180日20,731件4社3.6%
181〜365日15,877件5社2.0%
365日超8,036件8社0.9%
同じ集計を売却期間で分けたもの(当社が独自に集計)

30日以内に売れた部屋の4分の1は、広告を出していたのが1社以下でした。1年を超えた部屋では、それが0.9%しかありません。会社の数は、時間とともに増えていく数字なのです。

ですから「他社のサイトに出ていないから囲い込まれている」とは言えません。売り出したばかりなら、1社しか出していないのが普通です。この見分け方では、囲い込みも、単に売れているだけの状態も、区別がつきません。

ここまでのまとめ:広告の会社数は「売れ残った長さ」の目印です。囲い込みの目印ではありません。

あなたはいま、どの状況ですか

  • まだ会社を決めていない——いちばん良い段階です。契約の前に確認することを決めておけば、あとで疑う場面が減ります。
  • 売り出して1か月以内——まだ判断できません。この時期に反応が薄いのは、価格が原因のことが多いです。
  • 2〜3か月たったが内見が0件——ここが分かれ目です。内見とは、買いたい人が実際に部屋を見に来ることです。価格の問題か、情報が回っていない問題か。切り分ける方法を後で書きます。
  • 半年以上動きがない——価格と流通の両方を疑う段階です。会社を替えるかどうかも含めて考えることになります。

ここまでのまとめ:売り出して1か月では判断できません。疑うのは2〜3か月たってからです。

では、何を見れば分かるのか

ネットの表示ではなく、会社の行動で見ます。五つあります。どれも売主の権利として、当たり前に確認できることばかりです。

1. 登録した証明書を受け取る

不動産会社どうしが物件情報を共有する、全国共通の登録システムがあります。1社だけに売却を任せる契約(専任媒介、専属専任媒介といいます)を結んだ場合、会社はこのシステムに物件を登録する義務があります。期限も法律で決まっています。専任媒介なら契約から7日以内、専属専任媒介なら5日以内です。

登録すると、会社には登録済証が発行されます。これを売主に渡すことも義務です。ですから、契約から1週間たっても登録済証が届かないなら、それは確認すべき合図です。「まだですか」と一言聞くだけで構いません。

2. 販売活動の報告を、書面でもらう

これも法律で決まっています。専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、売主に活動を報告する義務があります。電話だけで済まされているなら、書面かメールでお願いしてください。

大事なのは、報告に何が書いてあるかです。「広告を出しました」「問い合わせがありました」だけでは中身が分かりません。次の三つを、毎回入れてもらってください。

  • この2週間で、他社の営業担当から何件の問い合わせがあったか
  • そのうち、実際に内見の案内をしたのは何件か
  • 案内できなかったものがあるなら、その理由

囲い込みが起きているなら、この3行目に無理が出ます。断る理由を毎回書くのは難しいからです。逆に、他社からの問い合わせが本当にゼロなら、それは囲い込みではなく価格の問題です。どちらなのかが、この3行で分かれます。

3. 登録の状態を確かめる

先ほどの登録システムには、その物件が「公開中」なのか「交渉中」なのかという状態が表示されます。ここが「交渉中」になっていると、他社は案内をあきらめます。実際には交渉していないのに交渉中にしておけば、問い合わせは止まります。

売主は、いまどの状態になっているかを聞けます。「公開中のままですよね」と確認してください。もし交渉中になっているなら、誰との交渉なのか、いつからなのかを聞きます。答えがはっきりしないなら、そこが問題です。

4. 内見0件が3週間続いたら、切り分ける

売り出してから3週間は、その部屋にとって一度きりの見せ場です。新着として表示され、前から探していた人がまとめて見に来ます。この3週間で内見が1件も入らないなら、原因は二つに絞られます。価格が相場から離れているか、情報が他社に回っていないかです。

切り分け方は簡単です。まず、同じ建物や同じ駅で実際に売れた価格と、自分の売出価格を並べます。10%以上高いなら、まず価格が原因です。相場どおりなのに問い合わせが0件なら、流通のほうを疑う番になります。

5. 一般媒介という選び方

複数の会社に同時に売却を任せる契約を、一般媒介といいます。囲い込みは起きにくくなります。どこか1社が抱え込んでも、他社が動けるからです。

ただし、いいことばかりではありません。一般媒介では、会社に登録の義務も報告の義務もありません。どこか1社が売ってしまえば他社は無報酬なので、費用のかかる広告は後回しにされがちです。結果として、どの会社も本気で動かないという状態になることがあります。

ですので、一般媒介は「囲い込み対策」として自動的に正解になるわけではありません。大事なのは契約の種類より、報告の中身です。

ここまでのまとめ:登録済証・報告の中身・登録の状態。この三つを聞けば、ネットを見るより早く分かります。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っています。売主から売却を任されたときは、他社からの問い合わせ件数と、そのうち案内した件数を、そのまま報告に書いてお渡ししています。断った件があれば、その理由も書きます。また、月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただくなかで、「2か月動かない」というご相談の多くは、囲い込みではなく最初の値付けが原因でした。ですから、まず価格のほうから確かめるようにしています。

次の一歩

切り分けの最初の一手は、自分の売出価格が相場からどれくらい離れているかを知ることです。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額をその場で確認できます。この記事の下にご案内がありますので、必要な方はそちらからどうぞ。

建物ごとの成約価格はマンション棟別の相場データで、駅ごとの相場は駅別の中古マンション相場データでも確認できます。まずこの二つと自分の価格を並べてみてください。

まとめ

  • 「他社サイトに出ていない=囲い込み」は当てにならない。1社だけの部屋は中央値27日で売れており、6社以上の部屋は222日かかっている
  • 広告を出す会社の数は時間とともに増える。30日以内に売れた部屋の25.0%は1社以下だった
  • 見るべきは行動。登録済証を受け取る、報告を書面でもらう、登録の状態を確かめる
  • 報告には「他社からの問い合わせ件数」「案内した件数」「案内しなかった理由」を毎回入れてもらう
  • 内見0件が3週間続いたら、まず価格が相場から10%以上離れていないかを確かめる
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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