不動産物件購入・売却

実家の土地と家を相続したら、まず何を調べるか|売り出す前に固める5つのこと

実家の土地と建物を引き継ぐことになった。売る気持ちはある。ただ、不動産会社に電話をする前に、何をそろえておけばいいのかが分かりません。実際、ここでつまずく方はとても多いです。売ると決めたのに、半年たっても売り出せない。理由はたいてい同じで、書類と調べ物が終わっていないからです。

その遅れには金額がつきます。当社が独自に集計した東京都・神奈川県・千葉県の成約データでは、売り出してから買い手が決まるまでが土地で中央値70日、中古戸建てで126日でした。ところが売り出しから1年を超えた戸建ては、最初の価格から中央値14.7%下がって決まっています。90日以内に決まったものは1.1%です。下がる原因は時間ではなく、準備不足のまま出したことです。

まず、数字を見てみます

売り出してから決まるまでの日数と、最初の価格からの下げ幅です。下げ幅は、一度も下げなかったものも含めた全体の中央値です。中央値とは、順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。

売り出しから決まるまで中古戸建ての下げ幅土地の下げ幅
90日以内1.1%3.0%
91〜180日6.0%7.7%
181〜365日10.8%11.3%
1年を超えた14.7%15.4%
2023年9月〜2026年8月に成約した東京都・神奈川県・千葉県の中古戸建て64,823件・土地33,437件(当社が独自に集計)

2,000万円の家で考えてみます。90日以内に決まれば、下げ幅は20万円ほどです。1年を超えると290万円になります。差は270万円。準備に3か月かけても、じゅうぶんお釣りが来る金額です。

もうひとつ、築年数で分けた数字も見ておきます。売れた時点で築30〜39年の戸建ては6,387件で、成約価格の中央値が2,350万円。築40〜49年は3,721件で1,703万円、築50年以上は2,394件で1,580万円でした。ここで面白いのは日数です。築30〜39年は98日かかるのに、築50年以上は45日で決まっています。古いほうが早いのです。

理由は単純です。築50年の家を買う人は、建物を使うつもりがありません。土地として見ています。土地の値段は分かりやすいので、話が早く進みます。逆に築30年台は「建物にいくら払うか」で買い手と売り手の考えがずれます。だから時間がかかります。

同じことは、土地と戸建ての比較にも出ています。90日以内に決まった割合は、土地が57.0%、中古戸建ては38.8%でした。土地のほうが早いのです。建物という「値段の付けにくいもの」が乗っていない分、買い手も迷いません。相続した実家をどう出すかを考えるとき、この差は覚えておいて損はありません。

ここまでのまとめ:準備不足のまま売り出すと、下げ幅が10%以上広がります。準備にかける3か月は、その保険です。

売り出す前に固めておく、5つのこと

順番があります。上から片づけてください。下から手をつけると、やり直しになります。

1. 誰が売主になれるかを確定する。まず、相続人が全員そろっているかを戸籍で確かめます。次に、誰がその土地を取るかを決め、名義を変えます。名義が亡くなった方のままでは売れません。ここが済んでいないと、買い手が見つかっても契約できないのです。名義を変える手続きには申請の期限も決まっています。

2. 土地の範囲を確かめる。境界の杭がそろっているか。塀や木が隣の土地にはみ出していないか。登記に書かれた面積と、実際に測った面積が合っているか。古い家ほど、ここがずれています。どこまで測るかは売り方によって変わります。測量と境界はどこまでやればよいのかで、段階と費用の考え方を説明しています。

3. その土地に、建て直せるかを確かめる。ここがいちばん大きな分かれ道です。家を建てるには、幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。接していなければ、今の家を壊しても新しい家は建てられません。値段は大きく下がります。判断と売り方は再建築できない土地・家はどう売ればよいのかにまとめてあります。

4. 建物の中身を確かめる。登記されていない増築がないか。物置や離れが後から建っていないか。あると、買い手が住宅ローンを使えないことがあります。それから残置物です。家具・仏壇・写真・書類。処分には費用も時間もかかります。3か月かかる家もあります。

5. 特別な土地でないかを確かめる。四つあります。借りている土地の上に家が建っている(借地)。畑や田んぼとして登記されている(農地)。前の道が、近所何軒かで持ち合っている私道である。山林や、離れた場所にある使っていない土地。どれも売り方が変わります。とくに借地と農地は、手続きの相手が増えます。

ここまでのまとめ:名義・境界・接道・建物・土地の種類。この5つが固まってから、売り方を考えます。

どれくらい時間がかかるか

「3か月かけて準備を」と書きましたが、内訳を出しておきます。何にどれだけかかるかが分かると、動き出しやすくなります。

  • 戸籍を集める——2週間から2か月。本籍が何度も移っている方だと、市区町村を順にたどるので長くかかります。ここは司法書士に任せられます。
  • 話し合いと書面づくり——読めません。1週間で終わる家もあれば、何年もかかる家もあります。ここがいちばん長くなります。
  • 名義の変更——書類がそろっていれば1〜2週間ほどです。
  • 測量——1〜3か月。隣との立ち会いが要るので、相手の都合に左右されます。冬と年度末は混みます。
  • 道路や建築の決まりを調べる——1〜2週間。役所の窓口で確かめます。ここは不動産会社が代わりに調べるのがふつうです。
  • 荷物の片づけ——1週間から3か月。仏壇や写真は、家族の気持ちの整理と一緒に進みます。急がせないほうがうまくいきます。

順番に一つずつやると、足し算になってしまいます。同時に進められるものは同時に進めてください。戸籍を集めながら、役所で道路を調べる。話し合いをしながら、測量の見積もりを取る。こうすると、3か月に収まります。

ここまでのまとめ:読めないのは話し合いだけです。ほかは同時に進めれば3か月に収まります。

あなたはいま、どの状態ですか

  • 権利証も測量図も、どこにあるか分からない——ここから始める方が大半です。まず固定資産税の通知書を探してください。そこに、その方が持っていた不動産が全部載っています。
  • 書類はあるが、境界の杭が見当たらない——測量が必要になる可能性が高い状態です。隣の家との関係がよければ、費用も期間も抑えられます。関係がこじれている場合は、早めに動いてください。
  • 前の道が狭い、または他人の土地を通っている——3番の確認を最優先にしてください。ここが変わると、値段の桁が変わります。
  • 5つとも問題ない——恵まれています。あとは売る・貸す・住むを比べるだけです。

ここまでのまとめ:分からないことが多いほど、先に調べる価値があります。分からないまま出すと、値段で払うことになります。

調べ物が終わったら、ようやく比べられます

5つが固まって、はじめて選択肢が並びます。売る、貸す、誰かが住む、そして何もしない。この四つです。

順番が逆になっている方をよく見かけます。まだ境界も接道も分からないのに、「いくらで売れますか」と聞いてしまう。答えは出せますが、幅が広くなります。「1,500万円から2,800万円のどこか」といった具合です。この幅では、家族で分け方を決められません。調べ物は、幅をせまくするための作業です。

建物を残すか壊すか、貸すのか売るのかといった比べ方は、別の記事にまとめてあります。売る・貸す・住むの3つを同じものさしで比べた相続した実家、売る・貸す・住むをどう決めるかが、この記事の続きにあたります。

ここまでのまとめ:調べ物は、価格の幅をせまくするための作業です。幅がせまくなると、家族の話し合いが動きます。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っており、月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただいています。土地や戸建てのご相談では、価格の前に必ず前面の道路を確かめます。幅と、誰の持ち物かと、接している長さです。ここで値段の前提が変わるためです。次に境界の状態、そのあとに建物という順番で見ます。相続でお持ち込みいただく戸建ては築30年を超えているものが多く、建物に値段が付かないことも珍しくありません。その場合は、土地としていくらかを先にお伝えしています。

次の一歩

調べ物には順番がありますが、金額の見当を先に付けておくと、どこまで手をかけるかを決めやすくなります。1,000万円の土地に80万円の測量をかけるかどうかは、金額を知らないと判断できません。住所と土地の広さが分かれば、実際に売れた価格をもとにした見当を確かめられます。この記事の下にご案内があります。

もし相続人が複数いるなら、その数字を持って集まってください。話し合いが止まる原因のほとんどは、感情ではなく情報の不足です。誰も金額を知らないまま「公平に分けよう」と話しても、決めようがありません。逆に、一つの数字が机の上に乗ると、話は驚くほど早く進みます。「この家は2,000万円。三人で分けるなら、こういう案がある」。そこまで来れば、あとは選ぶだけです。

最後に、ひとつだけ付け加えます。5つの確認を全部そろえてから動くのが理想ですが、そろわなくても相談はできます。分からないことがある状態で聞くのは、恥ずかしいことではありません。むしろ、何が分からないかを一緒に整理するところからが仕事です。

売ると決めたあとに気をつける場所は、相続した物件を売るときに、つまずきやすい6つのところにまとめました。片づけの前に読んでおくと、あとで効いてきます。

まとめ

  • 売り出しから1年を超えた戸建ては、最初の価格から中央値14.7%下がって決まる。90日以内なら1.1%
  • 2,000万円の家なら、その差は270万円ほど。準備に3か月かける価値がある
  • 売り出す前に固めるのは5つ。名義・土地の範囲・建て直せるか・建物の中身・特別な土地かどうか
  • いちばん大きいのは3番の接道。ここで値段の桁が変わることがある
  • 築50年以上の戸建ては45日で決まる。土地として見られるので話が早い。逆に築30年台は98日かかる
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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