不動産物件購入・売却

実家のマンションを相続したら|空き家のまま持つ費用と、売り時の実データ

親が住んでいたマンションを引き継いだ。荷物はまだそのままで、鍵だけ持っている。当面は困らないので、とりあえず置いてある。よくある形です。ただ、置いてある間も費用は出ていきます。しかも、その部屋は毎年少しずつ売りにくくなっていきます。

いくら出ていくのかを、実際の数字で見てみます。当社が独自に集計した首都圏の中古マンションのうち、広さ50〜80㎡・築30年以上の部屋では、管理費と修繕積立金の合計が月24,734円(中央値)でした。年に直すと約30万円です。ここに固定資産税が乗ります。誰も住んでいない部屋でも、年30万円ほどは出ていきます。

まず、数字を見てみます

実際に売れた部屋を、売れた時点の築年数で分けたものです。中央値とは、全部を順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。

売れた時の築年数件数1㎡あたり成約価格決まるまで1年を超えた値下げ幅
築10年未満22,752件107.4万円6,400万円89日6.4%4.8%
築10〜19年26,812件86.8万円5,480万円81日6.0%5.7%
築20〜29年27,857件66.1万円4,350万円88日7.5%7.7%
築30〜39年17,170件38.4万円2,050万円101日11.6%10.7%
築40〜49年18,336件41.0万円2,170万円100日11.8%11.2%
築50年以上9,791件31.4万円1,550万円104日13.0%12.5%
2023年9月〜2026年8月に成約した首都圏の中古マンション122,718件。値下げ幅は、値下げをして決まった部屋の下げ幅の中央値(当社が独自に集計)

読み取れることは三つあります。ひとつ、築30年を境に1㎡あたりの金額が大きく下がります。ふたつ、築30年を超えると、売れるまでに1年以上かかる部屋が倍近くに増えます。7%前後から12%前後へ。みっつ、値下げの幅も広がります。築10年未満なら4.8%ですが、築50年以上では12.5%です。

表を見ると、築40〜49年が築30〜39年より高くなっています。おかしく見えますが、理由があります。この年代には都心の便利な場所に建った古いマンションが多く含まれるためです。築年数だけで値段が決まるわけではありません。場所と広さのほうが強く効きます。ですから、この表は「自分の部屋の値段」ではなく「時間の流れ」を見るために使ってください。

ここまでのまとめ:築30年を超えると、値段が下がり、時間がかかり、下げ幅も広がります。

持っているだけで、いくら出ていくか

次に、費用の側を見ます。売り出し中の部屋の管理費と修繕積立金を、築年数で分けました。

築年数管理費+修繕積立金(月・中央値)年に直すと広さの中央値
築10年未満24,842円約30万円64.6㎡
築10〜19年28,870円約35万円68.5㎡
築20〜29年29,300円約35万円70.2㎡
築30〜39年25,230円約30万円60.1㎡
築40〜49年22,000円約26万円58.8㎡
築50年以上20,400円約24万円52.1㎡
直近1年に売り出されていた首都圏の中古マンション157,112件。全体の中央値は月25,400円(当社が独自に集計)

築40年以上で金額が下がって見えますが、これは部屋が狭いものが多いためです。広さをそろえて見ると、そうはなりません。50〜80㎡・築30年以上だけを取り出すと、月24,734円でした。

この金額は、これから増える方向に動きます。建物が古くなると、大規模な修繕にお金が要ります。積立が足りなければ、月々の積立金が値上げされます。持ち続ける判断をするなら、いまの金額ではなく、10年後の金額で考えたほうが安全です。

費用はほかにもあります。固定資産税と都市計画税。火災保険。誰も住んでいなくても、水道と電気は止めきれないことが多いです。年に何度か風を通しに行くなら、その交通費もかかります。合わせると、年間の持ち出しは40万円を超えることもあります。10年置けば400万円です。この金額は、最初の表で見た値下がりとは別に出ていきます。

それから、滞納にご注意ください。名義を変えないまま管理費を払い忘れていると、あとから請求が来ます。マンションの管理費と修繕積立金は、部屋を買った人に引き継がれる決まりです。滞納があると、売るときに買い手が嫌がります。値段にも響きます。

ここまでのまとめ:誰も住まなくても、月2〜3万円と固定資産税は出ていきます。そして増える方向に動きます。

あなたはいま、どの状況ですか

  • 家族の誰かが住む予定がある——いちばん迷いが少ない形です。ただし、誰が名義を持つかは早めに決めてください。住む人と名義人が違うと、あとで売るときに話がこじれます。
  • 貸そうか迷っている——次の節で金額を出します。判断の分かれ目は、家賃そのものではなく「引かれたあとにいくら残るか」です。
  • 売るつもりだが、いつがいいか分からない——築年数の階段を先に見てください。待って上がる部屋と、待つほど下がる部屋があります。
  • 相続人どうしで決まらない——このまま置いておくのがいちばん高くつきます。費用が出続けるうえ、話し合いが長引くほど関係者が増えます。

ここまでのまとめ:どの状況でも、まず「持ち続けた場合の年間の持ち出し」を数字にしてから比べます。

貸すと、いくら手元に残るのか

貸すという選択も現実的です。当社が独自に集計した東京都と神奈川県の賃貸データで、分譲マンションの部屋を貸したときの家賃を数えました。広さ50〜80㎡・築30年以上で決まった1,282件では、家賃の中央値が月15.0万円。4分の1は11.0万円以下、4分の1は20.0万円以上でした。募集を始めてから決まるまでは中央値49日です。

ここから引かれるものを順に数えます。以下は実在の部屋ではなく、仕組みを見るための計算例です。家賃15万円、管理費と修繕積立金が月2.5万円の部屋とします。

  • 家賃の年収入:15万円 × 12か月 = 180万円
  • 管理費と修繕積立金:△30万円(月2.5万円)
  • 管理を会社に任せる費用:△9万円(家賃の5%とした場合)
  • 固定資産税:△10万円(この記事での仮の金額です)
  • 入れ替わりの費用:△17.5万円(2年に一度、空室1か月分15万円と原状回復20万円がかかるとして、1年あたりに割ったもの)
  • 差し引き:約113万円(ここから所得税と住民税がかかります)

つまり、180万円の家賃のうち手元に残るのは6割ほどです。それでも、置いておくだけの状態と比べれば大きな差になります。空き家のままなら年30万円の持ち出し。貸せば年113万円の手取り。同じ部屋で、年140万円ほど違う計算です。

ただし、貸すと決めるときに三つ確かめてください。ひとつ、貸すために必要な工事の費用です。何十年も使った水回りは、そのままでは借り手がつきません。ふたつ、いずれ売るつもりなら、入居者がいる状態での売却は価格が下がりやすいことです。みっつ、名義が共有のままだと、貸す契約も全員の同意が要ることです。

ここまでのまとめ:家賃の6割ほどが手元に残ります。ただし工事費と、あとで売るときの不利を先に見ておいてください。

売るなら、どこが区切りになるか

「もう少し待てば上がるのでは」と考える方は多いです。判断の材料を三つ挙げます。

1つめ。最初の表のとおり、築30年を超えると売れるまでの時間と値下げ幅が広がります。待つことには、この分の代金がかかります。

2つめ。大規模な修繕の予定です。工事が終わったあとのほうが買い手は安心します。ただし、その前に積立金が値上げされることもあります。管理組合の議事録と長期修繕計画を見れば、どちらが先に来るかが分かります。

3つめ。特例の期限です。空き家になった実家を売るときの3,000万円の控除は、今のところ2027年12月31日までの売却が対象とされています。使えるかどうかで手取りが大きく変わります。要件は細かいので、空き家の3,000万円特別控除の要件で確かめてください。

手続きそのものの流れは相続したマンションを売却する手順にまとめてあります。この記事と合わせて読むと、順番が見えやすくなります。

ここまでのまとめ:待つかどうかは、値下がりの速さと、修繕の予定と、特例の期限の三つで決めます。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っており、月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただいています。相続でお預かりする部屋は、築30年を超えているものが多くなります。そこで最初に確かめるのは、価格よりも管理組合の状態です。修繕積立金がいくら貯まっているか、値上げの予定があるか、滞納がどれくらいあるか。ここが弱い建物は、買い手が住宅ローンを組みにくくなり、結果として価格に効きます。査定に使う数字も、いま広告に出ている売出価格ではなく、実際に売れた価格に置いています。

次の一歩

ここまでは全体の傾向でした。判断に必要なのは「その部屋はいくらか」という一つの数字です。マンション名と広さと部屋番号が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額をその場で確かめられます。この記事の下にご案内があります。売る・貸す・持つのどれを選ぶにしても、まずこの数字を置いてから比べてください。数字が一つ出るだけで、家族の話し合いは驚くほど早く進みます。

売ると決めたあとは、相続ならではのつまずきどころがいくつかあります。相続した物件を売るときに、つまずきやすい6つのところに、確かめる場所を並べてあります。とくに書類は、家を片づける前に読んでおいてください。

まとめ

  • 50〜80㎡・築30年以上の部屋は、管理費と修繕積立金だけで月24,734円。年約30万円が誰も住まなくても出ていく
  • 築30年を超えると1㎡あたりの金額が下がり、1年以上売れない部屋が7%前後から12%前後へ増える
  • 値下げ幅も広がる。築10年未満は4.8%、築50年以上は12.5%
  • 貸した場合の家賃は50〜80㎡・築30年以上で月15.0万円(中央値)。引かれるものを数えると手元に残るのは6割ほど
  • 売り時は、値下がりの速さ・大規模修繕の予定・特例の期限(2027年12月31日)の三つで決める
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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