不動産物件購入・売却

リフォームで戻ってくるのは、いくらなのか|同じ部屋の売買1,021組で測る

リフォームすれば高く売れる。これは、集計しても本当でした。ではいくら高く売れるのか。ここから先が、あまり語られていません。

「何パーセント高い」という言い方には落とし穴があります。工事の見積もりは円で届きます。パーセントでは比べられません。そこで今回は、上がる分を円で数えました。

使ったのは、当社が独自に集めている首都圏の成約データです。2024年1月から2026年8月までに売買が成立した中古マンション111,159件が対象になります。

同じ部屋が、二度売れている

いちばん確かな数え方から始めます。同じ建物・同じ階・同じ広さの部屋が、二度売れている記録を探しました。

一度目は、個人が仲介で手放したとき。二度目は、その部屋がリフォーム済として不動産会社の名前で売り出されたとき。この組み合わせが1,021組見つかりました。

同じ部屋の、二度の売買中央値
個人が手放した価格3,100万円
直したうえで売り直された価格4,380万円
+1,240万円(+37.8%)
手放してから売り出しまでの日数102日
2024年1月〜2026年8月に二度成約した同一住戸1,021組(当社が独自に集計)

1,240万円の差がついています。ただし、この1,240万円がリフォームの値段だと考えるのは間違いです。ここには、買い取るときに引かれた分も、会社の経費も利益も、その間の相場の動きも、全部が混ざっています。

ここまでのまとめ:同じ部屋が手放されてから直されて売り直されるまで、中央値で102日、1,240万円上がっていました。

直さずに売り直しただけでも、560万円上がっていた

そこで、比べる相手を用意しました。同じように個人から不動産会社に渡り、リフォームされないまま売り直された部屋です。311組ありました。

こちらの差は+560万円、率にして+23.7%でした。何も直していないのに、これだけ上がっています。つまり、先ほどの1,240万円のうち相当な部分は、リフォームとは関係のない部分だということになります。

リフォームの取り分を知りたいなら、この二つを引き算します。

引き算すると、どの価格帯でもおよそ500万円

手放したときの価格で四つに分けて、両方を並べました。

手放したときの価格直して売り直した場合直さず売り直した場合差=リフォームの分
2,000万円未満(322組/149組)+654万円+150万円+504万円
2,000〜3,999万円(320組/89組)+1,215万円+690万円+525万円
4,000〜5,999万円(148組/31組)+1,563万円+1,100万円+463万円
6,000万円以上(231組/42組)+2,500万円+2,394万円+106万円
同一住戸で二度成約した1,332組。件数は「直した組/直さない組」(当社が独自に集計)

いちばん右の列を見てください。504万円、525万円、463万円。ほぼ動きません。1,100万円の部屋でも、4,700万円の部屋でも、リフォームで乗る金額は同じくらいでした。

これは大事なところです。リフォームの上乗せは、部屋の値段に比例しません。高い部屋ほど大きく乗る、ということはありませんでした。キッチンも浴室も、高い部屋だから高い物を入れるわけではないからです。

6,000万円以上の行だけ、様子が違います。+106万円。ほとんど乗っていません。この価格帯の部屋は、もともと築年数が浅く、直すところが少ないためだと考えられます。

なお、部屋の取り違えを防ぐため、間取りも一致すること・広さの差が0.05㎡以内であること・その階に同じ広さの部屋が二つ以上ないことまで条件を足して数え直しました。567組に減りますが、差は+37.3%で変わりません。価格帯ごとの引き算も+456万円/+505万円/+395万円と、ほぼ同じ結果でした。

ここまでのまとめ:リフォームで価格に乗るのは、部屋の値段によらずおよそ500万円。6,000万円以上ではほとんど乗りませんでした。

まったく別の数え方でも、同じ金額になった

一つの数え方だけでは心もとないので、別の道でも測りました。

一つめは、同じ建物のなかで比べる方法です。建物ごとに、リフォームしていない部屋の㎡単価の真ん中を出します。リフォーム済の部屋がそこから何円ぶん上にあるかを数えます。同じ建物どうしなので、立地も築年数も同じ条件になります。

二つめは、同じ駅・同じ築年数の帯のなかで比べる方法です。同じ建物に比較できる部屋がない場合も拾えるので、件数が増えます。

数え方リフォーム済の件数上乗せ額(中央値)
同じ建物の、直していない部屋との差2,901件+540万円
同じ駅・同じ築年帯との差6,501件+504万円
同じ部屋の往復(6,000万円未満)790組+463〜525万円
2024年1月〜2026年8月の成約(当社が独自に集計)

三つの数え方が、460万円から540万円のあいだに収まりました。リフォームで戻ってくるのは、およそ500万円。これが今回の答えです。

ここまでのまとめ:三つの独立した数え方が、いずれもおよそ500万円を指しました。

ただし、半分近くは500万円に届いていない

500万円は真ん中の値です。ばらつきを見ておきます。同じ建物で比べた2,901件を、上乗せ額の小さい順に並べました。

下から数えた位置上乗せ額
下から10%のところ-222万円
下から25%のところ+116万円
真ん中+540万円
上から25%のところ+1,130万円
上から10%のところ+2,208万円
同じ建物の直していない部屋と比べたリフォーム済2,901件(当社が独自に集計)

4件に1件は、上乗せが116万円以下でした。そして18.6%は、同じ建物で直していない部屋の相場を下回って売れています。リフォーム済でも、です。

築年数で分けると、この傾向はさらにはっきりします。

築年数件数上乗せが500万円未満相場を下回った上乗せ額(中央値)
20年未満607件46.5%22.4%+618万円
20〜29年743件32.8%11.4%+853万円
30〜39年340件51.5%18.5%+480万円
40〜49年664件50.8%20.6%+479万円
50年以上547件64.0%21.8%+340万円
同じ建物の直していない部屋と比べたリフォーム済2,901件(当社が独自に集計)

築50年以上では、3件に2件が上乗せ500万円未満でした。古い部屋ほど「直せば見違える」と思われがちですが、価格に乗る額はいちばん小さくなっています。

ここまでのまとめ:上乗せ500万円は真ん中の値です。4件に1件は116万円以下、18.6%はむしろ相場割れでした。

上乗せから、さらに引かれるもの

540万円がそのまま手元に増えるわけでもありません。二つ引かれます。

一つめは、時間です。リフォーム済の部屋は売れるまで中央値174日。直していない部屋は82日でした。92日ぶん長くかかります。その間も管理費と修繕積立金は出ていきます。集計では合計の真ん中が月26,040円でしたから、92日でおよそ8万円です。

二つめは、仲介手数料です。価格が540万円上がれば、手数料もそのぶん増えます。540万円×3%に消費税を足して、およそ17.8万円。

540万円から8万円と17.8万円を引いて、およそ514万円。工事の見積もりが510万円を超えていたら、上乗せでは戻りません。真ん中の場合の話です。

ここには、工事の期間中の管理費も、住宅ローンが残っている場合の返済も入っていません。入れれば、戻る額はさらに小さくなります。

ここまでのまとめ:時間の費用と手数料の増加を引くと、手元に残る上限はおよそ514万円でした。

では、どうするか

判断の材料は二つです。工事の見積もり額と、上乗せの見込み額。この二つを並べるだけです。

  • 見積もりが500万円を大きく超える——やめたほうが手元に残ります
  • 6,000万円以上で売れそうな部屋——上乗せはほとんど乗りませんでした
  • 築50年以上——上乗せの中央値は340万円。工事費が上回りやすい範囲です
  • 壊れているものがある——これは直します。リフォームではなく修理です
  • 92日ぶん長く待てない事情がある——時間の費用が先に効いてきます

ただし、この並べ方には順番があります。工事の見積もりは、頼めば出てきます。難しいのは、もう一方です。直さずに売った場合、いまいくらなのか。これが分からないと、比べる相手がありません。

そして、この「素の値段」は、工事を始めたあとでは二度と測れません。順番として、査定が先です。マンション名・専有面積・階が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額を中古マンションの査定で確認できます。そこに工事の見積もりを並べれば、判断はほぼ機械的に済みます。

リフォームすべきかどうかの考え方そのものは、売る前にリフォームすべきかのほうで整理しています。この記事は、その金額の部分を測ったものです。

まとめ

  • 個人が手放した部屋が直されて売り直されるまで、中央値102日で+1,240万円。ただしこれはリフォームの値段ではない
  • 直さずに売り直しただけでも+560万円。引き算すると、リフォームの分はおよそ500万円
  • 上乗せ額は部屋の値段に比例しない。2,000万円未満でも4,000万円台でも、500万円前後で同じ
  • 6,000万円以上では+106万円。ほとんど乗らない
  • 4件に1件は上乗せ116万円以下。18.6%は相場を下回って成約している
  • 時間の費用と手数料を引くと、手元に残る上限はおよそ514万円
  • 比べる相手は「直さずに売った場合の金額」。工事を始める前にしか測れない
詳しいガイド査定額を決める要素リフォームによる上乗せがおよそ500万円という実額で見えてくると、査定額を左右する他の要素もどれくらいの重みを持つのか気になります。駅からの距離や階、広さが価格をどれだけ動かすのかを、次に実測値で確かめられます。売却ガイド一覧を見る →

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