不動産物件購入・売却

オーナーチェンジはいくら安いのか|5,003棟で測った割引率と、その割引が戻る条件

オーナーチェンジは安い、とよく言われます。ではいくら安いのか。当社が独自に集計した中古マンションの成約データで数えました。広さも築年数も違う部屋を並べても比較になりませんから、同じマンションの中に入居中の成約と空室の成約が両方あるケースだけを取り出し、建物ごとに1㎡あたり成約単価の中央値を突き合わせています。対象は5,003棟、入居中8,267件と空室35,818件です。結果は中央値で9.7%低く、5,003棟のうち71.8%で入居中のほうが低い。売り出しから成約までの日数は、中央値で43日長くかかっていました。

ここまでは、売る側から見た話としてすでに整理してあります。この記事で扱うのは買う側です。9.7%という数字は平均像であって、そのまま持ち歩ける数字ではありません。割引の幅は築年数で5倍近く、エリアで7倍近く変わります。そして買うときに引かれた分が戻るかどうかは、出口の取り方で決まります。

割引の幅は、築年数で5倍近く変わる

同じ集計を築年数帯で割ると、傾向がはっきり出ます。

築年数単価の差入居中が安かった建物
築0〜9年−3.2%61.5%
築10〜19年−7.9%71.0%
築20〜29年−11.8%76.3%
築30〜39年−12.7%76.1%
築40年以上−15.6%75.8%

築浅の入居中はほとんど割り引かれていません。築0〜9年では差が3.2%にとどまり、入居中のほうが安かった建物も61.5%と、五分に近づきます。築が浅い住戸は、退去後に実需で売れる見込みが立つため、投資として買う人の値付けだけで価格が決まらないからです。逆に築40年以上では15.6%まで開きます。実際に住むために買う人の候補が事実上いなくなり、利回りで判断する人だけが買い手になる。「オーナーチェンジだから安い」は、築年数が進んでいる場合にだけ強く当てはまります

広さでも同じ理屈が働きます。15〜25㎡未満は4.7%、25〜40㎡未満は7.7%、40〜60㎡未満で9.1%、60〜80㎡未満で8.0%、80㎡以上で7.9%。いちばん狭い帯で差が小さいのは、その帯の買主がもともとほぼ全員投資目的で、入居中でも空室でも買い手の顔ぶれが変わらないためです。差が開くのは、実需と投資の両方が候補になる帯です。割引が生まれるのは、入居中であることによって買い手の母集団が縮む場合だけだと考えると、築年数と広さの両方の傾向が同じ説明で通ります。

エリアの差は、築年数の差より大きい

建物が20棟以上そろった58エリアで同じ集計をすると、いちばん大きい越谷市が18.2%、さいたま市大宮区が17.6%、八王子市が15.5%。反対側は川崎市中原区が2.7%、横浜市神奈川区が3.1%、三鷹市が4.3%です。上下で6.7倍の開きがあります。

差が大きいエリアには共通点があります。実需で住みたい人が一定数いる住宅地でありながら、投資として持たれている住戸も混ざっている場所です。入居中というだけで実需の買い手が外れるので、そのぶん価格が落ちます。逆に差が小さいエリアは、もともと投資用として回っている住戸の比率が高く、入居中かどうかで買い手が変わりません。港区8.5%・千代田区8.3%・中央区10.7%と、都心3区がとくに大きくならないのも同じ理由です。割引を狙うなら、都心に近いかどうかではなく、実需と投資が混在している場所を見ることになります。市区別の全表はオーナーチェンジの割引率データにあります。

割引は年々広がっている

同じ集計を成約年ごとに分けると、2019年の4.4%から2022年6.7%、2025年10.0%、2026年は13.8%まで広がっています。同時に、成約全体に占める入居中の割合も2018年の7.8%から2025年11.4%へ増えました。売りに出る数が増え、そのぶん値引きの幅も開いているという形です。2026年は年の途中までの集計なので単年で断定はできませんが、向きは一貫しています。

供給が増えた理由はひとつではありません。ワンルーム投資が広く売られた世代の物件が築30年を越えてきたこと、金利の局面が変わったこと、相続で受け継いだ住戸をそのまま売るケースが増えたこと。どれが主因かはこのデータからは分かりません。買う側にとって意味があるのは、原因の特定ではなく、選べる幅が広がっているという事実のほうです。

割引は、利回りに直せば見積もれる

家賃が変わらないまま価格だけ下がるなら、表面利回りは1÷(1−割引率)の倍率で上がります。5%安く買えれば1.053倍、10%で1.111倍、16%で1.190倍。表面4.50%の住戸なら、それぞれ4.74%・5.00%・5.36%です。10%の割引が0.50ポイントの上乗せになる、という換算になります。

ただしこの計算は「家賃が変わらないまま」が前提です。実務ではここが最初の落とし穴になります。契約書に書かれている家賃は、その入居者が入った時点の相場です。長く住んでいる方ほど、いまの募集相場との差が開いている可能性があります。買う前に、同じ駅・同じ間取り・近い築年数でいま実際にいくらで決まっているかを調べ、その家賃に置き換えて利回りを出し直してください。実際の成約家賃は駅別・間取り別の家賃相場で確認できます。置き換えた結果が下がるなら、提示された利回りは買った瞬間から実現しません。

もうひとつ引くべきものが維持費です。表面利回りは管理費と修繕積立金を引く前の数字で、築が進むほど修繕積立金は上がります。築古の高い表面利回りは、引き算のあとで見え方が変わることが珍しくありません。築年数と広さごとの水準は管理費・修繕積立金の相場で確かめられます。

その割引が戻るかどうかは、出口で決まる

ここがこの記事の本題です。安く買えたかどうかは、売るところまで見ないと確かめられません。そこで、同じ建物・同じ広さ・同じ階・同じ間取りの住戸が2回売買された組み合わせを突き合わせ、1㎡単価が1年あたり何%動いたかを、買ったときと売ったときの状態別に数えました。保有3〜5年の結果です。

買い方と売り方単価の変化年率件数
入居中で買って空室で売る+23.3%+5.55%625
空室で買って空室で売る+15.2%+3.69%15,645
入居中で買って入居中で売る+12.9%+3.09%330
空室で買って入居中で売る+10.2%+2.43%1,012

入居中で買って空室にしてから売った住戸は年率5.55%、空室で買って空室で売った住戸の3.69%を1.86ポイント上回りました。保有1〜3年でも6.97%対3.82%、保有5〜10年でも4.31%対3.56%。3つの保有期間すべてで同じ向きです。買うときに引かれた分は、退去して空室で売る段になって戻っている、と読めます。

一方、入居中で買って入居中のまま売った住戸は年率3.09%で、空室→空室を0.60ポイント下回りました。割引を回収できるのは空室で売った場合だけで、入居中のまま次に渡すなら、その割引は戻ってきません。入居中で買うという判断は、値引きを取る判断ではなく、退去が起きるまで待てる資金と時間を持っているかどうかの判断だ、ということになります。

この表には読み方の注意が2つあります。ひとつは、これが実際に退去が起きた住戸だけを数えた結果だということです。退去の時期はこちらでは選べません。普通の賃貸借契約は貸主の都合で終わらせられませんから、「いつでも空室にできる」前提で計算してはいけません。もうひとつは、集計期間が相場の上昇局面と重なっていることです。4通りすべてがプラスなのはそのためで、比べる意味があるのは水準ではなく差のほうです。

あなたはどのケースでしょうか

  • 築古の区分を利回りで買う——割引がいちばん効く帯です。ただし出口も同じ帯で、次に買うのも利回りで判断する人になります。空室にして実需へ売る道が本当にあるかを、退去後の想定成約価格で先に確かめてください。
  • 築浅の入居中を割安だと思って買う——差は3.2%しかありません。この帯で「オーナーチェンジだから安いはず」と考えると、割引ではなく相場で買うことになります。
  • 入居中のまま持ち続けて次も入居中で売る——年率で見ると空室→空室を下回ります。この持ち方を選ぶなら、値上がりではなく賃料収入だけで採算が合うかを基準にしてください。
  • 区分を数戸持っていて、一棟に組み替えたい——一棟は入居中か空室かの二択ではなく稼働率という連続した数字で見られ、評価も収益還元と積算の2面になります。区分の割引の感覚はそのままでは通用しません。

当社では、こう見ています

当社には月に500件ほど、売却のご相談や物件のお持ち込みがあります。入居中の区分についてご相談をいただいたときは、契約書に書かれた家賃をそのまま使わず、次の募集でいくらで決まるかに置き換えて利回りを出し直します。そのうえで、入居中のまま売った場合と空室にしてから売った場合の両方の金額をお出しします。どちらが有利かは物件で変わるので、片方だけでは判断材料になりません。この記事で使った成約データと家賃データは、その計算にそのまま使っているものです。

次の一歩

買おうとしているエリアの割引率、築年数帯ごとの幅、出口の実測はオーナーチェンジの割引率データにまとめてあります。58エリアの全表と、保有期間別の出口の数字が入っています。お持ちの住戸が入居中でいくら、空室でいくらになるかは、マンション名・専有面積・階といまの家賃が分かれば両方お出しできます。一棟の収益物件を売る側で検討されている方は、一棟・収益物件の簡易査定から、レントロールをお預かりして収益還元と積算の両方でお出しします。

まとめ

  • 同じマンションの中で比べると、入居中の1㎡成約単価は中央値で9.7%低い。5,003棟のうち71.8%で低く、売れるまで43日長い
  • 割引は築0〜9年の3.2%から築40年以上の15.6%まで、築年数で5倍近く変わる。エリア間では6.7倍の開きがある
  • 割引は年々広がっている。2019年4.4%から2026年13.8%。成約に占める入居中の割合も7.8%から11.4%へ増えた
  • 10%の割引は表面利回りを1.111倍にする。ただし家賃を次の募集相場に置き換え、維持費を引いてから計算すること
  • 入居中で買って空室で売った住戸は年率5.55%で、空室→空室の3.69%を上回った。入居中のまま売ると3.09%で下回る。割引は出口で回収する前提の値引き
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

プロフィール詳細 →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所