不動産物件購入・売却

売る前にリフォームすべきか|費用は本当に戻ってくるのか

売る前にリフォームしたほうがいいのだろうか。中古マンションを売る方から、いちばんよくいただく質問のひとつです。きれいなほうが高く売れそうに思えます。実際、リフォーム済の部屋は高く売れています。ただ、その先を数字で追うと、話は単純ではありませんでした。

この記事では、当社が独自に集計した首都圏の成約データを使います。2024年1月から2026年8月までに成約した中古マンション110,887件が対象です。

リフォーム済の部屋は、たしかに高い

まず、上がる分を確かめます。同じ建物の中の真ん中の㎡単価を100として比べました。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。同じ建物どうしなので、立地や築年数の差は入りません。

部屋件数㎡単価(同じ建物の真ん中を100)売れるまでの日数(中央値)
リフォームなし39,209件100.084日
リフォーム済として売られた部屋2,694件110.6185日
同じ建物で5件以上の成約があった部屋(当社が独自に集計)

リフォーム済の部屋は、同じ建物の真ん中より10.6%高い単価で売れています。4,000万円の部屋なら、およそ420万円ぶんです。数字だけ見れば、リフォームは報われているように見えます。

ただし、売れるまでの日数が185日です。リフォームしていない部屋の84日に対して、2.2倍かかっています。この差の意味は、あとで説明します。

ここまでのまとめ:リフォーム済の部屋は10.6%高く売れています。ただし売れるまで2倍の時間がかかっています。

ところが、売っているのはほとんど個人ではありません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。同じデータで、リフォーム済の部屋を「誰が売主だったか」で分けてみました。

売主が個人売主が不動産会社
リフォームなし97,726件4,109件
リフォーム済2件9,050件
2024年1月〜2026年8月に成約した首都圏の中古マンション110,887件(当社が独自に集計)

リフォーム済として売られた部屋は9,052件ありました。そのうち9,050件、99.98%は不動産会社が売主でした。個人の売主がリフォームしてから売った例は、11万件のなかで2件しかありません。

つまり、先ほどの10.6%は「個人がリフォームすると10.6%高く売れる」という意味ではありません。買い取った不動産会社が直して売り直した部屋が、10.6%高いという意味です。同じことのようで、まったく違います。

ここまでのまとめ:リフォーム済の部屋の99.98%は不動産会社が売主でした。個人の例はほとんどありません。

なぜ個人はやらないのか

個人が損をするようにできている、という話ではありません。条件が違うのです。四つあります。

1. 工事にかかる金額が違う

不動産会社は、年に何十件も工事を出しています。ですから工事会社への発注価格が下がります。個人が1件だけ頼む場合の見積もりとは、同じ工事でも金額が変わります。上がる分(10.6%)が同じでも、かかる費用が違えば、残る額は変わります。

2. 待てる時間が違う

リフォーム済の部屋は、売れるまで中央値185日でした。ここに工事の期間(1〜2か月ほど)が加わります。合わせると、売り出しを決めてから引き渡しまで、8か月から10か月ほどになる計算です。

不動産会社にとって、この期間は仕事の時間です。個人にとっては、住宅ローンの返済と管理費を払い続ける期間です。管理費と修繕積立金の合計は、集計では月に約25,200円が真ん中でした。半年なら約15万円。返済が残っていれば、さらに大きくなります。

3. 工事代金を先に払わなければならない

リフォーム代は、売れる前に出ていきます。売却代金が入るのは、そのずっとあとです。つまり、数百万円を先に用意する必要があります。売却理由が住み替えや資金の都合であるほど、この順番は重くなります。

4. 買主の好みは分からない

これがいちばん大きい理由かもしれません。売主が選んだ壁紙や床の色が、買主の好みと合うとは限りません。合わなければ、その工事代は価格に乗りません。それどころか「自分で直したいので、そのぶん安くしてほしい」と言われることもあります。近年は、自分で好きなように直したいという買主も増えています。

ここまでのまとめ:工事費・待てる時間・先払い・好みの読み。この四つが、会社と個人では違います。

あなたはどのケースですか

  • ふつうに使っていた部屋——リフォームは不要です。このあとに書く、費用の小さい準備だけで十分です。
  • 水回りが壊れている、雨漏りがある——これは直します。リフォームというより、修理です。壊れたままだと、買主は値引きを求める材料にします。
  • 長く空き家で、傷みが目立つ——迷うところです。まず、直さずに売った場合の見込み額を出してもらってください。その差額と工事費を比べます。
  • すでに工事の見積もりを取った——その金額が、上がる見込み額を超えていないかを確かめてください。超えているなら、やらないほうが手元に残ります。

ここまでのまとめ:直すのは「壊れているもの」だけ。見た目を新しくする工事は別の判断です。

代わりに、やる価値のあること

リフォームをしないとしても、何もしないという意味ではありません。費用が小さく、効き目のはっきりしたものがあります。

  • 荷物を減らす。部屋が広く見えます。写真の写り方が変わります
  • 水回りの専門清掃。キッチン・浴室・洗面・トイレ。買主がいちばん気にする場所です
  • においを取る。たばこ・ペット・締め切った部屋のにおいは、内見の印象を大きく下げます
  • 照明を明るいものに替える。数千円で、部屋の印象が変わります
  • 壊れた設備を直す。給湯器、コンロ、換気扇、網戸。金額を聞かれたときに答えられる状態にしておきます
  • 剥がれた壁紙の部分張り替え。全面ではなく、目につくところだけ

共通しているのは、買主の好みに踏み込まないことです。清掃も、においも、明るさも、誰にとっても良いことです。壁紙の色や床の材質のように、好みが分かれるところにお金をかけないのが要点になります。

もう一つ。工事をせずに売り、そのぶん価格を控えめにするという選び方もあります。「リフォーム前提の価格です」と伝えれば、自分で直したい買主に届きます。この買主層は、いま増えています。

ここまでのまとめ:清掃・におい・明るさ・故障の修理。好みが分かれないところにだけお金をかけます。

当社では、こう見ています

当社は買取も行っているので、買い取った部屋を直して売り直すこともあります。そのため、工事にいくらかかり、どこまで価格に乗るかは、自社の実績として持っています。そのうえで、仲介でお預かりする売主の方には、原則としてリフォームをおすすめしていません。個人が同じ工事をした場合、費用と期間の条件が違うためです。ご相談をいただいたときは、直した場合と直さない場合の見込み額を両方お出しして、差額と工事費を並べてご覧いただくようにしています。月に500件ほどの売却のご相談やお持ち込みのなかでも、この質問がいちばん多く出ます。

次の一歩

判断するには、まず「直さずに売った場合はいくらか」が必要です。それが分からないと、工事費と比べる相手がありません。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額をその場で確認できます。この記事の下にご案内がありますので、必要な方はそちらからどうぞ。

同じ建物でリフォーム済の部屋がいくらで売れたかは、マンション棟別の相場データでも確かめられます。自分の部屋の見込み額との差が、工事費を上回るかどうか。そこが分かれ目です。

まとめ

  • リフォーム済の部屋は同じ建物の真ん中より10.6%高い。ただし売れるまで185日(していない部屋は84日)
  • そのリフォーム済9,052件のうち9,050件は不動産会社が売主。個人の例は2件しかなかった
  • 会社と個人では、工事費・待てる期間・先払いの負担・好みの読みが違う
  • 直すのは壊れているものだけ。見た目を新しくする工事は、原則として費用が戻りにくい
  • 清掃・におい・明るさ・荷物を減らす。好みが分かれないところにお金をかける
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

プロフィール詳細 →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所