同じマンションの中でも、部屋によって値段はかなり違います。当社が独自に集計した成約データで測ると、上のほうと下のほうで約1.4倍の開きがありました。同じ立地、同じ築年数、同じ管理会社なのにです。
この1.4倍は、何で決まっているのでしょうか。階でしょうか。向きでしょうか。角部屋かどうかでしょうか。一つずつ測った結果を、この記事にまとめます。
使ったのは、2024年1月から2026年8月30日までに成約した中古マンション110,459件です。成約とは、売り出しの金額ではなく、実際に取引が成立した金額のことです。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の43,160棟が含まれます。
まず、1.4倍の中身を見ます
同じ建物で8件以上の成約があったマンション1,717棟、24,012件を取り出しました。その建物の真ん中の㎡単価を100として、部屋ごとの単価を並べます。㎡単価とは、1平方メートルあたりいくらか、という数字です。
| 同じ建物の中での位置 | ㎡単価(建物の真ん中を100) |
|---|---|
| 下から10%のあたり | 83.7 |
| 下から4分の1のあたり | 92.8 |
| ちょうど真ん中 | 100.0 |
| 上から4分の1のあたり | 107.8 |
| 上から10%のあたり | 119.3 |
119.3を83.7で割ると1.425。同じマンションの中で、部屋によって単価は約1.4倍違います。同じ広さの部屋で考えると、真ん中が4,080万円なら、下のほうは約3,420万円、上のほうは約4,870万円。1,400万円以上の開きです。
ここまでのまとめ:同じ建物の中でも、部屋ごとの単価は約1.4倍違います。
階・向き・角部屋を、順に測りました
この1.4倍を、部屋の条件で説明できるか試します。すべて同じ建物の中だけで比べた数字です。
| 部屋の条件 | 件数 | ㎡単価(建物の真ん中を100) |
|---|---|---|
| リフォーム済 | 2,689件 | 110.6 |
| 10階以上 | 12,369件 | 101.4 |
| 角部屋 | 5,344件 | 100.5 |
| 南向き | 10,116件 | 100.0 |
| リフォームなし | 39,108件 | 100.0 |
| 北向き | 1,244件 | 98.8 |
| 1階 | 2,999件 | 98.3 |
| 賃貸中のまま売る | 3,087件 | 94.4 |
ここで意外なことが分かります。よく話題になる階・向き・角部屋は、いずれも100の前後2ポイントの範囲に収まっています。いちばん動いているのは、リフォーム済の110.6と、賃貸中のまま売る94.4です。部屋の状態のほうが、階や向きよりずっと大きく効いています。
賃貸中のまま売るというのは、入居者が住んだままの状態で売ることです。買主は中を見られませんし、すぐには住めません。そのぶん安くなります。
ここまでのまとめ:階・向き・角部屋の差は2ポイント以内。部屋の状態のほうが大きく効きます。
階と広さで説明できるのは、わずか2.6%でした
もっとはっきりした数字を出します。同じ建物の中の単価のばらつきを、階と広さだけでどこまで説明できるかを計算しました。対象は91,142件、23,833棟です。
答えは2.6%。階だけなら2.2%、広さだけなら0.7%です。
言い換えると、同じマンションの中の価格差のうち、97%以上は階でも広さでも説明できていません。残りは部屋の状態、売り方、売り出した時期、そして売主と買主の事情です。
これは、査定の精度を考えるうえで大事な事実です。「10階で南向きの角部屋だから」という条件だけを積み上げても、金額はほとんど絞れません。同じ建物で実際にいくらで売れたかを見るほうが、はるかに近づけます。
ここまでのまとめ:建物内の価格差のうち、階と広さで説明できるのは2.6%だけです。
効き方を、大きい順に並べます
ここまでの集計を、金額の大きい順に並べ直しました。すべて4,080万円の部屋に当てはめた場合です。4,080万円は、今回の集計での成約価格の真ん中です。
| 条件 | 差 | 4,080万円ならいくら |
|---|---|---|
| 15階建て以上で、低層階か高層階か | 13.0% | 約530万円 |
| リフォーム済かどうか | 10.6% | 約433万円 |
| 15階建て以上の最上階かどうか | 7.4% | 約302万円 |
| 賃貸中のまま売るかどうか | 5.6% | 約228万円 |
| 1階か、2階以上か | 5.5% | 約224万円 |
| 南向きか、北向きか | 1.1〜2.5% | 約47〜102万円 |
| 角部屋かどうか | 0.3% | 約12万円 |
階は大きく効きます。ただしそれは、建物が高い場合に、低層階と高層階を比べたときの話です。1階ぶんずつで見れば0.59%、約24万円にすぎません。
一方、角部屋の差は約12万円。向きの差も100万円に届きません。広告で大きく書かれる条件ほど、金額への効き方は小さいという結果でした。
ここまでのまとめ:効くのは階の高低差と部屋の状態。向きと角部屋は100万円未満です。
売主として、どう動くか
ここまでの数字から、売るときにやるべきことは絞れます。
- まず同じ建物の成約を探す。階や向きの理屈より、同じ建物でいくら決まったかが一番強い材料です
- 比べる相手の階を確かめる。相手が3階でご自分が8階なら、5階ぶんで約3%です
- 1階なら5.5%引いて考える。売れるまでの日数も1か月ほど長くなります
- 向きと角部屋は、値付けの根拠にしない。100万円未満の要素です
- 賃貸中のまま売るかどうかは大きい。空にできるなら、そちらのほうが5.6%高く決まっています
そして最後に、いちばん大事なことを書きます。この記事の数字は全体の傾向です。ご自分の部屋がその傾向どおりに動く保証はありません。階が効かない建物は4棟に1棟ありました。
建物ごとの成約価格はマンション棟別の相場データで、駅ごとの相場は駅別の中古マンション相場データで確認できます。まずこの二つでご自分の建物を探してみてください。理屈より、実際に売れた金額のほうが強い材料です。
まとめ
- 同じマンションの中でも、部屋によって㎡単価は約1.4倍違う
- その差のうち、階と広さで説明できるのは2.6%だけ
- 効くのは階の高低差(13.0%)とリフォーム(10.6%)と賃貸中かどうか(5.6%)
- 向きは1.1〜2.5%、角部屋は0.3%。広告で目立つ条件ほど金額には効かない
- いちばん確かな材料は、同じ建物で実際にいくらで売れたか