不動産物件購入・売却

一棟アパートと一棟マンション、売却はどこが違うか|買い手の母数が別物になる

一棟アパートと一棟マンション。どちらも「一棟もの」とひとくくりにされますが、売却の場面ではほとんど別の商品として扱われます。買い手の顔ぶれが違い、値がつく理屈が違い、価格を下げるときの下げ幅も違います。当社が独自に集計した統合データベースでは、売出中の一棟アパートが21,052件、一棟マンションが11,898件。この二つを同じ土俵で比べると、違いがはっきり出ます。

価格帯が三倍違う

まず基礎的な数字を並べます。

項目一棟アパート一棟マンション
件数21,052件11,898件
売出価格の中央値5,500万円1億5,000万円
表面利回りの中央値7.80%7.26%
総戸数の中央値8戸14戸
建築年の中央値1996年1991年
土地面積の中央値264㎡303㎡
延床面積の中央値222㎡507㎡
売出中の一棟収益物件(当社が独自に集計)

土地の広さはほとんど変わらないのに、延床は2.3倍、価格は2.7倍です。マンションは上に積んでいるので、同じ敷地から取れる賃料が多い。当たり前のようですが、この一点が買い手の顔ぶれを分けます。

売出価格帯一棟アパート一棟マンション
5,000万円未満46.4%10.6%
5,000万〜1億円28.4%23.0%
1億〜3億円23.3%44.8%
3億円以上1.8%21.6%
種別ごとの売出価格帯の分布(当社が独自に集計)

アパートは4分の3が1億円未満に収まります。個人がひとりの与信で買える範囲です。マンションは3分の2が1億円を超え、5分の1は3億円以上。ここまで来ると個人投資家の層は薄くなり、資産管理法人や事業法人が中心になります。同じ「一棟」でも、買い手の母数がまったく違うということです。売り出したあと反応が薄いと感じたとき、価格の問題なのか、そもそも見ている人が少ないのかは、この分布を知っているかどうかで判断が変わります。

構造が違うので、融資の年数が違う

構造の内訳を見ると、二つはほぼ裏返しの関係にあります。

構造一棟アパート一棟マンション
木造67.7%2.6%
鉄骨造15.7%34.6%
軽量鉄骨造11.7%0.8%
鉄筋コンクリート造4.8%59.5%
鉄骨鉄筋コンクリート造0.1%2.6%
種別ごとの構造の内訳(当社が独自に集計)

買い手が融資を使う場合、返済期間は構造ごとの基準年数から築年数を引く方式が一般的です。基準は木造22年、軽量鉄骨造19年、鉄骨造34年、鉄筋コンクリート造47年が出発点になります。アパートの7割弱が木造ということは、アパートの多くは築22年で残存年数がゼロになる時計を持っているということです。マンションの6割は47年の時計です。

建築年の中央値はアパート1996年、マンション1991年で、むしろマンションのほうが古い。それでも売却の緊急度が逆転するのは、時計の長さが倍以上違うからです。築30年のアパートと築30年のマンションは、市場での意味がまったく別物になります。

担保としての中身も違う

積算評価が売出価格の何割にあたるかを見ると、次のようになります。

項目一棟アパート一棟マンション
集計件数16,010件9,177件
積算が価格に占める割合(中央値)53.6%47.9%
積算が価格以上になる割合8.2%4.7%
建物の評価がゼロで計算される割合49.5%24.0%
売出中の一棟の積算評価(当社が独自に集計)

アパートは半分が建物ゼロで計算されます。木造22年の時計が早く切れるからです。ただし積算の絶対水準はアパートのほうが高く、価格の53.6%を土地でまかなえています。土地の比率が高い商品なので、建物が消えても価格の底が残りやすい。逆にマンションは建物がまだ残っているのに、価格に占める積算の割合は47.9%と低い。収益力で価格が組み立てられている分、担保評価が価格に追いつかない構図です。

売主から見ると、これは指値の入り方の違いとして現れます。アパートは「土地値ならいくら」という下限の議論になりやすく、マンションは「この利回りなら買える」という収益側の議論になりやすい。同じ言葉で交渉していても、相手が見ている数字が違います。

値下げの起こり方

当社が独自に集計した売出情報で、2026年5月末から8月末までの約3か月間の価格改定を追いました。

種別母数3か月で値下げした割合値下げ幅の中央値
一棟アパート38,418件9.3%5.7%
一棟マンション23,604件8.6%5.3%
約3か月の価格改定(当社が独自に集計)

差は思ったより小さく、割合で0.7ポイント、下げ幅で0.4ポイントです。値下げの起こりやすさそのものは種別で大きく変わらない、と読むのが正しい。分かれるのは値下げの頻度ではなく、下げたあとに誰が残っているかです。アパートは価格を下げれば買える層が厚くなりますが、マンションは1億円の壁を割らない限り母数が増えません。値下げの効き方が違うので、初値の置き方の重みも変わります。

戸数の分布が示すもの

総戸数一棟アパート一棟マンション
6戸以下44.6%11.9%
7〜12戸40.9%33.1%
13〜24戸12.6%37.0%
25戸以上1.9%18.0%
種別ごとの総戸数の分布(当社が独自に集計)

アパートの85%が12戸以下です。戸数が少ないほど、1戸の空室が利回りに与える影響は大きくなります。8戸のうち1戸が空けば12.5%の減収です。売却のタイミングで空室が重なると、数字が実力より悪く見える。マンションは14戸が中央値なので、1戸あたりの影響は薄まります。戸数が少ない物件ほど、売り出す時期の空室状況が価格に直結するという関係になります。

当社では、こう見ています

当社には月に500件ほど売却のご相談や物件のお持ち込みがあります。アパートのご相談では、まず土地の価値と残存年数を確認します。木造の時計が切れる前なのか後なのかで、買い手の顔ぶれが入れ替わるからです。マンションのご相談では、価格帯から先に見ます。1億円を超えるのか、3億円を超えるのか。そこで声をかけるべき相手が変わり、売却にかかる時間の見積もりも変わります。同じ「一棟の売却」という言葉でも、最初に確認する順序が違うということです。

次の一歩

ご自身の物件がどちらの型に近いかは、構造と総戸数と価格帯の三つで見当がつきます。木造・12戸以下・1億円未満ならアパート型、鉄筋コンクリート造・13戸以上・1億円超ならマンション型です。型が決まれば、次に見るべき数字も決まります。アパート型なら土地の評価と残存年数、マンション型なら収益還元で置いた価格と、その価格帯に買い手がどれだけいるかです。

その二つの数字は、所在地と構造・築年数・満室想定年収を置けば同時に出せます。エリアの実測利回りで割り戻した収益価格と、路線価をもとにした積算を並べて見ると、自分の物件がどちらの理屈で値づけされる商品なのかが分かります。一棟の簡易査定はこちら(お名前やご連絡先の入力は必要ありません)。

まとめ

  • 売出価格の中央値はアパート5,500万円、マンション1億5,000万円。アパートは46.4%が5,000万円未満、マンションは21.6%が3億円以上で、買い手の母数が別物になる
  • 構造はアパートが木造67.7%、マンションが鉄筋コンクリート造59.5%。融資年数の基準が22年と47年で、築年の進み方の意味が変わる
  • 積算が価格に占める割合はアパート53.6%、マンション47.9%。建物ゼロで計算される割合はアパート49.5%、マンション24.0%
  • 3か月の値下げ率はアパート9.3%・マンション8.6%と差が小さい。違うのは値下げの頻度ではなく、下げたときに増える買い手の厚み
  • アパートの85%は12戸以下。戸数が少ない物件ほど、売却時の空室が利回りに直接効く
詳しいガイド構造別に見る融資評価構造によって融資年数が変わる背景には、金融機関がアパートとマンションをどう評価しているかという実務があります。構造別の融資年数や入口で弾かれる条件を、次に見ておくと理由がつかめます。売却ガイド一覧を見る →

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