不動産物件購入・売却

マンションを売って、手元にいくら残るのか|引かれるものを順に数える

「4,000万円で売れれば、次の家の頭金は足りる」。売却を考え始めた方の多くが、こういう計算をされます。ところが、実際に手元に残るのはその金額ではありません。売り出した価格から成約までに下がる分があり、そこからさらに費用が引かれるからです。

この記事では、引かれるものを順番に並べていきます。数字には、当社が独自に集計した首都圏の成約データを使います。2024年1月から2026年8月までに成約した中古マンション110,887件が対象です。

まず、売り出した価格では売れません

いちばん最初に外れるのが、ここです。集計では、売り出した価格と実際に売れた価格の差は、中央値で4.49%ありました。値下げをしてから売れた部屋は71.5%です。一度も下げずに売れた部屋は23.7%しかありません。

中央値とは、全部を順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。4,000万円で売り出したなら、成約は3,820万円あたりが真ん中という計算になります。180万円の違いです。

手取りの計算は、この3,820万円から始めます。4,000万円から始めてはいけません。ここを間違えると、あとの計算が全部ずれます。

ここまでのまとめ:計算の出発点は売り出し価格ではありません。値下げ後の成約価格です。

引かれるものを、順に並べます

4,000万円で売り出し、中央値どおり3,820万円で成約した場合で見ていきます。

項目金額中身
成約価格3,820万円売出4,000万円から中央値4.49%下がった額
仲介手数料約133万円(成約価格×3%+6万円)×1.1
印紙税1万円売買契約書に貼る。1,000万円超5,000万円以下の場合(軽減後)
抵当権を消す費用約3万円登記の税金と司法書士への報酬。住宅ローンが残っている場合
引き渡しまでの管理費など約13万円管理費と修繕積立金の合計は月に約25,200円が中央値。5か月ぶん
手元に残る額約3,670万円成約価格から約150万円が引かれた額
管理費・修繕積立金は成約93,148件の中央値(当社が独自に集計)。ほかの項目は制度上の金額から計算

売り出したときに思い浮かべた4,000万円と、実際に残る3,670万円。差は約330万円です。割合にすると8.2%になります。

それぞれ簡単に説明します。

仲介手数料

いちばん大きい費用です。法律で上限が決まっていて、400万円を超える売買では「売買価格の3%+6万円」に消費税を足した額が上限になります。上限なので、これより低くすることは可能です。ただ、実際にはこの上限で契約されるのが一般的です。支払うのは、売買契約のときと引き渡しのときに半分ずつ、というのが多いやり方です。

印紙税と、登記の費用

印紙税は、売買契約書に貼る収入印紙の代金です。金額は売買価格で決まります。1,000万円を超えて5,000万円以下なら1万円です(軽減措置が続いている場合)。

住宅ローンが残っている場合は、抵当権を消す手続きが必要です。抵当権とは、返済できなくなったときに銀行が家を処分できるようにしておく権利のことです。これを消す登記の税金は不動産1個につき1,000円で、マンションなら建物と土地で2,000円ほど。司法書士に頼むと報酬が2万円前後かかります。

売れるまで払い続けるもの

見落とされやすいのがここです。売り出してから引き渡しまで、管理費と修繕積立金は毎月かかります。集計では、管理費が月12,560円、修繕積立金が月12,651円が中央値でした。合わせて約25,200円です。

売れるまでの日数は中央値91日、およそ3か月。契約から引き渡しまでにさらに1〜2か月かかります。合わせて5か月ほどなので、約13万円になります。1年売れなければ、約30万円です。住宅ローンの返済と固定資産税も、その間ずっと続きます。

ここまでのまとめ:4,000万円で売り出しても、手元に残るのは約3,670万円。差は約330万円です。

税金がかかるかどうかは、人によります

上の表には、売却の税金を入れていません。かかる人とかからない人がいるからです。ここだけは、ご自分の状況で分かれます。

まず、税金がかかるのは「売った金額」にではありません。買ったときより高く売れた場合の、その差の部分にかかります。3,000万円で買った部屋を3,820万円で売ったなら、差は820万円。ここが対象です。逆に、買ったときより安く売れたなら、税金はかかりません。

そして、自分が住んでいた家(マイホーム)を売る場合には、この差から3,000万円を引ける制度があります。3,000万円特別控除といいます。差が3,000万円を超えることは多くありません。ですから、住んでいた家なら、税金はかからないことが多いです。

注意が必要なのは、次のような場合です。

  • 賃貸に出していた部屋を売る場合。マイホームではないので、3,000万円の控除は使えません
  • 住まなくなってから3年を超えた場合。年末を基準に3年を過ぎると、控除が使えなくなります
  • 相続で受け取った家。買ったときの金額が分からないと、売却額の5%で買ったものとみなされ、税金が大きくなることがあります
  • 所有していた期間が5年以下の場合。税率が高いほうが適用されます。5年の数え方は「売った年の1月1日時点」なので、実際には6年目に入ってから売るのが安全です

この四つのどれかに当てはまるなら、売る前に税理士か税務署に確認してください。金額が大きく変わることがあります。当てはまらないなら、あまり心配は要りません。

ここまでのまとめ:住んでいた家なら税金はかからないことが多い。賃貸中・空き家3年超・相続・所有5年以下は要確認です。

あなたの場合は、どこから引きますか

手取りを出す目的は、人によって違います。目的が違うと、見る場所も変わります。

  • 住み替えの頭金にする——引き渡しの日と、次の家の決済日がずれないかを先に見ます。ずれると、つなぎの資金が必要になります
  • 住宅ローンを完済したい——残債(残っている借入額)を銀行に確認してください。成約価格が残債を下回ると、差額を現金で用意しないと引き渡せません
  • 相続した部屋を現金化する——名義が複数人なら、全員の合意がいります。手取りをどう分けるかも先に決めておくと、あとがもめません
  • 売るかどうか迷っている——貸した場合と比べる段階です。その比較にも、まず正しい手取り額が要ります

とくに二つめは大事です。残債が3,700万円で、手取りが3,670万円なら、30万円足りません。この確認は、売り出す前にしておいてください。

ここまでのまとめ:残債の確認だけは、売り出す前に必ず済ませてください。

当社では、こう見ています

当社が査定額をお出しするときは、その金額の下に、手数料と費用を引いた手取りの見込みも並べて書いています。売主の方が実際に使うのはそちらの数字だからです。値下げの見込みには、この記事で使った成約データをそのまま当てています。月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただきますが、住み替えの計画が途中で崩れる原因は、ほとんどが「売り出し価格で手取りを計算していた」ことでした。

次の一歩

手取りを出すには、まず成約価格の見込みが必要です。マンション名・専有面積・部屋番号が分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額をその場で確認できます。この記事の下にご案内がありますので、必要な方はそちらからどうぞ。その金額から、この記事の表のとおりに引いていけば、手取りが出ます。

建物ごとの成約価格はマンション棟別の相場データでも確認できます。あわせて、銀行に残債の証明書を頼んでおくと、計算が一度で終わります。

まとめ

  • 計算の出発点は売り出し価格ではなく成約価格。差は中央値4.49%(4,000万円なら約180万円)
  • 4,000万円で売り出した場合、手元に残るのは約3,670万円。差は約330万円(8.2%)
  • 引かれるのは、仲介手数料(約133万円)・印紙税・抵当権を消す費用・引き渡しまでの管理費など
  • 管理費と修繕積立金は月に約25,200円が中央値。5か月で約13万円、1年なら約30万円
  • 住んでいた家なら税金はかからないことが多い。賃貸中・空き家3年超・相続・所有5年以下は要確認
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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