不動産物件購入・売却

相続した物件を売るときに、つまずきやすい6つのところ

相続した家や土地を売る。手順そのものは、ふつうの売却と大きくは変わりません。ところが実際には、相続の売却だけでつまずく場所があります。しかも、つまずいてから気づくと取り返しがつきにくい。この記事では、その場所を先に並べておきます。順番に確かめれば、たいていは避けられます。

いちばん多いのは、値段の付け方でのつまずきです。当社が独自に集計した首都圏の中古マンション122,718件では、途中で値下げをして決まったものが71.8%でした。中古戸建ては73.7%、土地は68.8%です。そして相続で売られる物件は築年数が進んでいることが多く、古いものほど下げ幅が広がります。築10年未満の部屋は4.8%ですが、築50年以上では12.5%でした。

まず、数字を見てみます

値下げをして決まったものの、下げ幅の中央値です。中央値とは、順番に並べたときに真ん中に来る数字のことです。

売れた時の築年数中古マンションの下げ幅中古戸建ての下げ幅
築10年未満4.8%7.7%
築10〜19年5.7%8.6%
築20〜29年7.7%10.4%
築30〜39年10.7%12.7%
築40〜49年11.2%14.3%
築50年以上12.5%15.3%
2023年9月〜2026年8月に成約した中古マンション122,718件(首都圏)・中古戸建て64,823件(東京都・神奈川県・千葉県)(当社が独自に集計)

古い物件ほど、値付けが外れやすいということです。理由は分かりやすくて、比べる相手が少ないからです。築5年のマンションなら、同じ建物の似た部屋がいくつも売れています。築45年の家には、そういう見本がありません。だから最初の値段が高すぎたり、逆に安すぎたりします。

時間の面でも差が出ます。同じ集計で、一度も値下げをせずに決まった部屋は全体の24.4%。その部屋が決まるまでは中央値37日でした。一度でも下げた部屋は120日、3回以上下げた部屋は266日かかっています。下げるほど早く決まるのではありません。下げることになる部屋ほど、長くかかります。

ここまでのまとめ:相続で売る物件は築年数が進んでいることが多く、値付けが外れやすい状態にあります。

つまずきやすいのは、この6つです

ここから先は、相続の売却でよく起きることです。税金の細かい計算は事情によって変わりますので、金額の判断は税理士に確かめてください。ここでは、公表されている制度のあらましと、気をつける場所だけをお伝えします。

1. 名義が亡くなった方のままだと、売れません。買い手が見つかっても契約に進めません。分け方が決まっていないうちは、名義も変えられません。売却を考えているなら、遺産分割の話し合いは「売るための手続き」でもあります。名義を変える申請は義務になっており、期限も決まっています。

2. 買ったときの値段が分からないと、税金が増えます。売ったときの税金は、売った金額から「買ったときの値段」と経費を引いた残りにかかります。この買ったときの値段を取得費といいます。相続では、亡くなった方が買ったときの金額をそのまま引き継ぎます。ところが、何十年も前の契約書は見つからないことが多いのです。

分からない場合は、売った金額の5%を取得費とみなす扱いがあります。3,000万円で売れば、取得費は150万円という計算です。実際には1,500万円で買っていたとしても、証明できなければ150万円として扱われます。証明できるかどうかで、税額は数百万円変わります。

ですから、家を片づける前に探してください。売買契約書、購入時の領収書、住宅ローンの書類、当時の通帳、確定申告の控え。建てた家なら工事の請負契約書です。捨ててしまうと、もう戻りません。計算の仕組みは不動産売却の譲渡所得税を正しく計算する方法で確かめられます。

3. 共有のままだと、全員の同意が要ります。相続人で分けずに、そのまま全員の共有にしてある場合です。売るには全員の署名と押印が必要になります。一人でも反対すれば止まります。連絡が取れない人がいても止まります。分け方には、売って現金で分ける方法(換価分割)と、一人が取って他の人にお金を払う方法(代償分割)があります。どちらも先に決めておいたほうが、あとが楽です。

4. 期限のある特例があります。相続税を納めた人が売る場合、納めた相続税の一部を取得費に足せる扱いがあります(取得費加算)。使えるのは、相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却です。亡くなってから数えると3年10か月になります。もうひとつ、空き家になった実家を売るときの3,000万円の控除は、今のところ2027年12月31日までの売却が対象とされています。要件は空き家の3,000万円特別控除にまとめてあります。

5. 高く出して様子を見る、が効きにくい物件です。最初の表のとおり、築年数の進んだ物件は下げ幅が広がります。しかも相続では、相続人が複数いると値付けが高くなりがちです。「安く売ったと言われたくない」という気持ちが働くためです。ですが、売り出した直後の2〜3週間は一度きりの見せ場です。ここを高すぎる価格で使い切ると、あとは静かに並んでいるだけになります。

6. 税金の申告は、売った人それぞれがします。共有で持っていた物件を売れば、持ち分に応じて全員に譲渡所得が発生します。申告は売った年の翌年です。一人がまとめてやってくれるわけではありません。特例を使うかどうかも、人によって条件が変わります。

ここまでのまとめ:名義・取得費・共有・期限・値付け・申告。この6つが、つまずきやすいところです。

もう二つ、起きやすいこと

ひとつは、相続人の誰かがその家に住んでいる場合です。同居していた子が、そのまま住み続けている。よくある形です。ここで「売って分けよう」という話になると、住んでいる人は出ていくことになります。感情の問題になりやすく、話が止まります。止まっている間も、期限は進みます。早い段階で、住み続ける案と売る案の両方を金額にして並べておくと、話が進みやすくなります。

もうひとつは、分け方が決まる前に売り出してしまうことです。買い手が現れてから「やっぱり売らない」となると、迷惑がかかります。それだけでなく、売主が誰なのか決まっていない物件は、不動産会社も自信を持って勧められません。結果として、扱いが後回しになります。売り出すのは、分け方と名義が固まってからにしてください。

ここまでのまとめ:住んでいる人がいるなら金額を先に並べる。売り出すのは、名義が固まってからです。

あなたはいま、どこにいますか

  • まだ家を片づけていない——2番を先に読んでください。片づけの前に、書類だけは別にしておいてください。取り返しがつかないのはここだけです。
  • 相続人が複数いて、話し合いの途中——3番が効いてきます。共有のままにする案が出たら、売るときに何が起きるかを共有してください。
  • 亡くなってから2年以上たっている——4番の期限を確かめてください。3年10か月は、思ったより早く来ます。
  • すでに売り出していて、反応がない——5番です。下げる前に、いくらで下げるかと、いつまでに決めるかを先に決めてください。

ここまでのまとめ:どこにいても、次にやることは一つに絞れます。上から順に確かめてください。

知っておくと有利になること

不利な話が続いたので、有利な話も一つ書いておきます。売ったときの税率は、その不動産を持っていた期間で変わります。5年を境に、長いほうが低くなります。相続の場合、この期間は亡くなった方が持っていた期間をそのまま引き継ぎます。親が30年住んだ家なら、相続した翌日に売っても長いほうで扱われます。

「相続してすぐ売ると税金が高い」と思い込んで、5年待つ方がいます。多くの場合、その必要はありません。むしろ待つと、この記事で見た値下がりと、特例の期限のほうが効いてきます。税金の全体像は相続した実家を売却したときの税金にまとめてあります。

ここまでのまとめ:持っていた期間は引き継がれます。税率のために待つ必要は、たいていありません。

当社では、こう見ています

当社は買取と仲介の両方を行っており、月に500件ほど売却のご相談やお持ち込みをいただいています。相続のご相談で最初にお聞きするのは、価格ではありません。相続人が何人か、名義がどうなっているか、亡くなってからどれくらい経っているか。この三つです。ここが分からないと、価格を出しても使えないためです。査定に使う数字は、いま広告に出ている売出価格ではなく、実際に売れた価格に置いています。売出価格は「売主がそう決めた金額」であって、買い手が納得した証拠ではないためです。

次の一歩

つまずきを避ける方法は、結局のところ二つです。書類を捨てないことと、早めに金額を知ることです。金額が一つ出れば、分け方も、特例を使うかどうかも、いつまでに売るかも決められます。マンションなら建物の名前と広さと部屋番号、戸建てや土地なら住所と広さが分かれば、実際に売れた価格をもとにした金額をその場で確かめられます。この記事の下にご案内があります。

そのうえで、税金の具体的な金額は税理士に確かめてください。この記事は、確かめるべき場所を先に知っておくためのものです。

まとめ

  • 値下げをして決まったのはマンション71.8%・戸建て73.7%・土地68.8%。築年数が進むほど下げ幅は広がる
  • 一度も下げずに決まった部屋は24.4%で、決まるまで37日。3回以上下げた部屋は266日
  • 買ったときの値段を証明できないと、売った金額の5%として扱われる。片づけの前に書類を探す
  • 共有のままだと全員の同意が要る。分け方は先に決めておく
  • 期限は3年10か月(取得費加算)と2027年12月31日(空き家の3,000万円控除)。持っていた期間は引き継ぐので、税率のために待つ必要はたいていない
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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