不動産を売却したとき、「税金はどのくらいかかるのだろう」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。特に譲渡所得税は計算の仕組みが複雑で、初めて売却する方にとっては何から調べればよいか分からないことも少なくありません。この記事では、国税庁の公式情報をもとに、譲渡所得税の計算方法を基礎からわかりやすく解説します。計算の流れを理解するだけでなく、使える特例や申告の手順まで丁寧にお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
譲渡所得税の基本的な仕組みを理解する

まず押さえておきたいのは、不動産売却で生じる譲渡所得は、給与所得や事業所得とは別に計算するという点です。国税庁の情報によると、土地・建物の譲渡所得は「分離課税」として扱われ、他の所得と合算せずに独立して税額を計算します(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm)。この仕組みを知らないまま計算すると、税額を大きく誤ってしまうことがあるため、最初に理解しておくことが大切です。
次に重要なのが、所有期間による税率の違いです。国税庁の情報によると、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。具体的には、令和8年(2026年)中の売却では、令和2年12月31日以前に取得した場合が「長期譲渡所得」、令和3年1月1日以後に取得した場合が「短期譲渡所得」として扱われます(国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm)。つまり、おおむね5年を境に税率が大きく変わるということです。
税率の差は非常に大きく、長期譲渡所得の場合は所得税15%・住民税5%であるのに対し、短期譲渡所得の場合は所得税30%・住民税9%となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。さらに、平成25年から令和19年までの間は復興特別所得税も所得税と併せて申告・納付する必要があります。売却のタイミングを検討する際には、この所有期間の違いが税負担に大きく影響することを念頭に置いておきましょう。
課税譲渡所得の計算方法と具体例

不動産売却の譲渡所得税を計算するうえで核心となるのが、課税譲渡所得金額の算出です。国税庁の情報によると、計算式は「譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額」となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。それぞれの項目を正確に把握することが、正しい税額計算への第一歩です。
取得費とは、売却した不動産を購入したときにかかった費用のことです。購入代金や建築代金はもちろん、購入時の仲介手数料、設備費、改良費なども含まれます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm)。ただし、建物については購入代金をそのまま取得費にすることはできません。所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があり、非業務用建物の場合は「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算します(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm)。償却率は建物の構造によって異なるため、詳細は国税庁の公式サイトでご確認ください。
取得費が分からない場合や、実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合は、「譲渡価額の5%」を概算取得費として使うことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)。古い物件で購入時の書類が手元にない場合でも、この概算取得費を活用することで計算を進められます。
譲渡費用については、売却のために直接かかった費用が対象です。具体的には、不動産会社への仲介手数料、売主が負担した印紙税、立退料、土地を売るために建物を取り壊した費用などが含まれます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)。一方、修繕費や固定資産税といった物件の維持・管理にかかった費用は譲渡費用に含められないため注意が必要です。また、売買代金とは別に受け取る固定資産税の精算金は、譲渡価額(収入金額)に算入されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm)。
具体的な計算例として、長期所有の物件を5,000万円で売却したケースを考えてみましょう。取得費が2,000万円(減価償却後)、譲渡費用が200万円だった場合、課税譲渡所得は「5,000万円 −(2,000万円+200万円)= 2,800万円」となります。この2,800万円に長期譲渡所得の税率(所得税15%+住民税5%)を掛けると、税額は合計560万円(復興特別所得税は別途)という計算になります。
マイホーム売却で使える3,000万円特別控除
実は、自宅(マイホーム)を売却する場合には、大きな節税効果をもたらす特例が用意されています。国税庁の情報によると、居住用財産を売ったときは、所有期間の長短に関係なく、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。先ほどの計算例に当てはめると、課税譲渡所得2,800万円から3,000万円を控除すると課税所得がゼロになり、税金がかからないことになります。
この特例は現在住んでいる家だけでなく、以前住んでいた家にも適用できる場合があります。ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが条件です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。引越し後も一定期間内であれば特例を使えるため、売却のタイミングを慎重に検討することが重要です。
一方で、この特例には適用できないケースもあります。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却や、別荘のように主として趣味・保養のために所有する家屋には適用されません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。また、共有名義のマイホームを売った場合、控除枠は共有者全員で3,000万円ではなく、適用できる共有者1人につき最高3,000万円となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm)。
10年超所有のマイホームに使える軽減税率
さらに有利な特例として、長期間住み続けた自宅を売る場合の軽減税率があります。売った年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えるマイホームを売却した場合、3,000万円特別控除後の課税長期譲渡所得金額について、6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%、6,000万円を超える部分は所得税15%・住民税5%という低い税率が適用されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)。
重要なのは、この軽減税率は3,000万円特別控除と重ねて受けることができるという点です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)。つまり、10年超所有のマイホームを売却した場合、まず3,000万円を控除したうえで、残った課税所得に対して通常より低い税率を適用できるという、非常に有利な仕組みになっています。長年住み続けた自宅を売却する予定がある方は、ぜひこの特例の活用を検討してみてください。
相続した不動産の取得費と申告の手順
相続や贈与で取得した不動産を売却する場合、取得費の計算方法が少し異なります。国税庁の情報によると、この場合の取得費は被相続人や贈与者が購入したときの代金等をもとに計算し、所有期間の判定も被相続人や贈与者の取得時から引き継ぎます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)。つまり、親が30年前に購入した不動産を相続して売却した場合、所有期間は30年超として長期譲渡所得の税率が適用されます。
また、相続税が課税された財産を一定期間内に売却した場合には、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できる特例があります。国税庁の情報によると、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合が対象です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)。相続した不動産の売却を検討している方は、この期間を意識しておくことが大切です。
申告の手順についても確認しておきましょう。譲渡所得の確定申告は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに行います(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。申告の際は、通常の確定申告書に加えて「申告書第三表(分離課税用)」と「譲渡所得の内訳書[土地・建物用]」を作成する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。3,000万円特別控除を受ける場合は、売却物件の所在地と住民票の住所が異なるときに戸籍の附票の写しなどの追加書類が必要になることもあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/B/B1.pdf)。
なお、不動産売却で損失が出た場合、原則として給与所得や事業所得など他の所得と損益通算することはできません。ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡損失については例外的な取り扱いがあります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm)。詳細は国税庁の公式サイトや税理士にご確認ください。
まとめ
不動産売却の譲渡所得税は、「課税譲渡所得=譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額」という計算式が基本です。所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わり、マイホームであれば3,000万円特別控除や10年超所有の軽減税率といった有利な特例も活用できます。相続した不動産には取得費の引き継ぎルールがあり、申告期限は売却翌年の3月15日です。税額を正確に把握するためには、取得費の証明書類を早めに整理しておくことが重要です。計算が複雑に感じる場合は、税理士や国税庁の相談窓口を積極的に活用し、適切な申告で安心して不動産売却を進めてください。
参考文献・出典
- 国税庁「土地や建物を売ったとき(令和8年度版)」 – https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
- 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁「No.3252 取得費となるもの」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁「No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- 国税庁「No.3102 譲渡所得の申告期限」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁「申告書添付書類一覧(譲渡所得・山林所得関係)」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/B/B1.pdf
- 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
- 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁「No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm