賃貸契約の更新時期が近づくと、「更新料って本当に払わなければいけないの?」「そもそも何のためにあるの?」と疑問を感じる方は多いのではないでしょうか。更新料は決して安くない出費であるにもかかわらず、その仕組みや根拠について詳しく知らないまま支払っている方がほとんどです。この記事では、更新料の基本的な仕組みから地域ごとの相場、交渉の進め方、そして「断れるケース」まで、初心者にもわかりやすく解説します。読み終えるころには、次の更新時に自信を持って対応できるようになるはずです。
更新料の仕組みと法的な位置づけ

まず押さえておきたいのは、更新料には法令上の明確な根拠がないという事実です。国土交通省の資料によると、「更新料については、法令上根拠となる規定がなく、必ずしも全国的な慣習でもないことから、国土交通省の賃貸住宅標準契約書においては記載がありません」とされています(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。つまり、更新料はあくまでも契約書に定めがある場合にのみ発生するものであり、法律で一律に義務付けられたものではありません。
賃貸契約の更新には「合意更新」と「法定更新」の2種類があります。合意更新とは、貸主と借主が話し合いのうえで新たな条件に合意して契約を継続することです。一方、法定更新とは、貸主が正当な事由なく更新を拒絶できない場合に、従前と同じ条件で契約が自動的に継続されるしくみです(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。普通借家契約では、貸主に正当事由がない限り一方的に更新を断ることが難しいため、借主の立場は比較的守られています。
また、定期借家契約の場合は、そもそも「更新」という概念がありません。国土交通省によると、定期建物賃貸借は「契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度」です(国土交通省 定期建物賃貸借)。そのため、更新料の問題が生じるのは主に普通借家契約のケースとなります。
更新料条項が契約書に明記されている場合、その有効性については最高裁の判断が示されています。契約書に一義的かつ具体的に記載され、高額すぎるなどの特段の事情がなければ、更新料条項は有効と扱われます(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。逆に言えば、契約書に更新料の定めがない場合、貸主には更新料を請求する法律上の根拠はないとされています。
地域によって大きく異なる更新料の相場

更新料の相場は、住んでいる地域によって驚くほど差があります。全国平均で見ると、2019年の募集データ調査(東急住宅リース調べ)では平均0.35か月分であり、更新料が0円の物件の割合は全国で61.5%にのぼっています。つまり、全国的に見れば「更新料なし」の物件のほうが多数派とも言える状況です。
関東地方は他の地域と比べて更新料が高めに設定される傾向があります。同調査によると、関東地方の平均は0.65か月分で、更新料ゼロの物件割合は35.3%にとどまります。都道府県別では、各県で異なる更新料の水準が見られています(東急住宅リース 全国の賃貸マンションの一時金共同調査結果 2019年)。アットホームのデータでも、東京都では更新料あり物件の割合が65.0%で平均1.0か月分、神奈川では90.1%・0.8か月分、千葉では82.9%・1.0か月分という傾向が示されています。
一方、近畿地方では更新料を取らない物件が多く、地域によっては「更新料なし」が標準となっている傾向が見られています(UR賃貸住宅 へや学部)。ただし、京都府だけは例外で、同調査では0.57か月分と近畿の中では突出して高く、「1年に1度2か月分」のような事例も紹介されています。地域の慣習が色濃く反映されているため、引っ越し先の相場を事前に調べておくことが大切です。
実務的な目安として、首都圏では複数年ごと・家賃の一部月分が更新料として設定されることが多く、地域によって異なる慣行が見られています(アットホーム 賃貸完全マニュアル)。また、更新料だけでなく保証会社の更新保証料が別途かかるケースも多く、その相場は「1万円/年」または「賃料の10〜30%/年」程度とされています。更新時の実際の出費は、更新料だけで計算しないよう注意が必要です。
更新料は断れる?契約書の確認が最初のステップ
更新料を断れるかどうかは、まず契約書の内容を確認することが出発点です。前述のとおり、契約書に更新料の定めがない場合、貸主には更新料を請求する法律上の根拠はないとされています(京都第一法律事務所)。もし請求されても、「契約書のどこに記載されていますか?」と確認することは、借主として当然の権利です。
一方、契約書に更新料の記載がある場合は、最高裁の基準に照らして有効と判断される可能性が高いため、一方的に拒否することは難しいのが実情です。ただし、「合意更新」はあくまでも双方の合意が前提であるため、条件に納得できない場合は貸主とよく話し合う余地があります(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。交渉の余地がゼロというわけではありません。
注意したいのは、更新料を一方的に払わないことのリスクです。更新料を払わなくても直ちに契約解除されるわけではありませんが、不払いは貸主との信頼関係を損なう行為とみなされる可能性があります(アットホーム 賃貸完全マニュアル)。その後に家賃の滞納などが重なると、契約解除につながりやすくなるため、感情的に拒否するのではなく、まずは話し合いの場を設けることが賢明です。
交渉を成功させるための実践的なアプローチ
更新料の交渉を進めるうえで、実務的に効果的とされているのは「家賃の減額交渉」から入るアプローチです。借地借家法には賃料減額請求権という考え方があり、家賃が周辺相場と比べて高い場合には減額を求めることができます。まずは家賃の引き下げを交渉し、それが難しければ「では更新料を免除または減額していただけませんか」と続けるほうが、交渉全体として通りやすいとされています(アットホーム 賃貸完全マニュアル)。
交渉の際には、地域の慣習や相場と著しく乖離していないかを確認することも重要です。国土交通省の資料でも、「当該地域の慣習や更新料の相場と比べて著しく乖離していないか」を考慮しながら貸主と相談することが重要だと整理されています(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。相場データを手元に用意したうえで話し合いに臨むと、説得力が増します。
交渉のポイントをいくつか挙げると、まず長期入居の実績をアピールすることが有効です。長く住んでいる借主は貸主にとっても安定した収入源であるため、「これからも長く住み続けたい」という意思を示しながら交渉すると、相手も柔軟に対応しやすくなります。また、更新料の全額免除が難しければ、分割払いや減額を提案するのも一つの方法です。
どうしても折り合いがつかない場合は、調停などの手続きを利用することも選択肢の一つです(国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)。ただし、調停はあくまでも最終手段であり、まずは誠実な対話を重ねることが関係維持の観点からも大切です。
まとめ
更新料は法令上の義務ではなく、契約書に定めがある場合にのみ発生するものです。全国的に見れば更新料ゼロの物件も多く、地域によって相場は大きく異なります。地域の慣習によって更新料の有無や金額が大きく異なるため、引っ越し先の相場を事前に確認しておくことが重要です。
交渉は決して難しいことではありません。まず契約書を確認し、相場を調べ、誠実に話し合いの場を設けることが第一歩です。家賃の減額交渉とセットで進めると交渉がスムーズになることも多いため、ぜひ参考にしてみてください。更新のたびに「なんとなく払っている」状態から卒業し、自分の権利をしっかり理解したうえで賢く対応していきましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 賃貸住宅標準契約書(改訂版) — https://www.mlit.go.jp/common/001319685.pdf
- 国土交通省 民間賃貸住宅に関する相談対応事例集 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf
- 国土交通省 定期建物賃貸借 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000059.html
- 東急住宅リース 全国の賃貸マンションの一時金共同調査結果(2020年2月公表) — https://www.tokyu-housing-lease.co.jp/info/news/pdf/20200227-details.pdf
- アットホーム 更新料の注意点と契約時に押さえておきたいポイント — https://www.athome.co.jp/contents/manual/beginner/contractrenewal/point-of-rent/
- UR賃貸住宅 へや学部 賃貸物件の更新料とは?相場と契約更新時のポイント — https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/201912/000432.html
- 京都第一法律事務所 賃貸借契約更新のとき求められた更新料は — https://www.daiichi.gr.jp/services/residence/rent/p-4