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2025〜2030年の家賃予測|東京・北海道の動向と投資戦略

2025〜2030年、日本の家賃はどう動くのか

2025年以降の日本の賃貸市場は、静かではあるものの確実な変化の局面に入っています。日本総研の2025年3月公表レポートによると、全国の家賃は「上昇傾向が明確化」しており、「都市部・地方部ともに今後続く公算大」と整理されています。実際、2025年上期の全国CPI(消費者物価指数)家賃は前年比プラス0.3%と小幅ながら上昇を示しており、特に東京都区部での上昇幅が顕著です。こうした動向は、リモートワークの浸透や多拠点生活というライフスタイルの広がりと深く結びついており、不動産投資家にとって見逃せないシグナルとなっています。

家賃上昇の背景にある要因は、大きく三つに整理できます。日本総研は、第一に建築費・修繕費の高騰、第二に単身世帯数の増加、第三に住宅取得負担の高まりを挙げています。この三つの要因はいずれも、短期的に解消される見込みが薄い構造的な問題です。つまり、2025年から2030年にかけての家賃上昇圧力は、単なる景気変動ではなく、社会の仕組みそのものから生まれていると理解することが重要です。

単身世帯の増加が賃貸需要を押し上げる

家賃上昇を語るうえで欠かせないのが、世帯構造の変化です。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計によると、全国の一般世帯数は2020年の55,705千世帯から2030年には57,732千世帯へと増加します。注目すべきは、そのなかでも単独世帯の伸びが際立っている点です。2020年に21,151千世帯だった単独世帯は、2030年には24,036千世帯へと拡大する見通しです。日本総研もこの動向を踏まえ、2030年代半ばまで都市部・地方部ともに単身世帯数は増加が続くと予測しています。

単身世帯の増加は、賃貸需要の底上げに直結します。特に高齢の単身世帯については、国土交通省の資料において2030年に900万世帯に迫る見通しが示されており、持家率の低下とあわせて賃貸住宅への入居ニーズが高まると指摘されています。若年層だけでなく、シニア層も賃貸市場の重要な需要者として台頭してくる、という点は投資計画を立てるうえで大切な視点です。賃貸市場は今後、幅広い年齢層を対象に需要が広がっていく構造へと変化しています。

東京23区:上昇が止まらない都市部の家賃動向

東京の賃貸市場は、全国の中でも特に力強い上昇圧力にさらされています。アットホームラボの調査では、東京23区のシングル向きマンションが募集家賃の最高値を更新し続けていることが明らかになっています。大型ファミリー向きの平均家賃は高い水準に達しており、都心部における家賃水準の高騰は数値としても鮮明です。

こうした上昇の背景には、東京への人口集中と住宅価格の高騰という二つの圧力があります。新築マンション価格が上昇するなかで、購入を断念して賃貸に留まる層が増えており、これが賃貸需要を押し上げています。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、東京の一般世帯数は2020年の7,217千世帯から2030年には7,710千世帯へと増加し、平均世帯人員は1.92人から1.83人へと低下する見通しです。一人ひとりが別々に住む傾向が強まることで、物件の数が同じでも需要は増えやすい構造になっています。

多拠点生活者の視点から東京を見ると、都心は「平日の仕事拠点」としての需要が中心を占めます。駅から徒歩10分以内のコンパクトな1K〜1LDK物件への需要は根強く、特に山手線沿線や地下鉄主要駅周辺では空室期間の短さと安定した収益が見込めます。物件価格の高騰により表面利回りは以前ほど高くないものの、継続的な家賃上昇が実質的な収益を下支えする構図が続くでしょう。

北海道:世帯数は微減でも、家賃は底堅い動き

北海道の賃貸市場は、東京とは対照的な人口動態を背景に持ちながらも、家賃は底堅い動きを示しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、北海道の一般世帯数は2020年の2,469千世帯から2030年には2,435千世帯へとわずかに減少します。しかし平均世帯人員は2.04人から1.88人へと低下しており、単独世帯化の波は北海道にも確実に及んでいます。

アットホームラボの調査では、札幌市のマンション募集家賃が全面積帯で前年同月を上回った事実が確認されています。世帯数が微減する環境でも家賃が上昇している理由の一つは、やはり建築費・修繕費の高騰です。新規供給が増えにくいなかで既存物件への需要が集中し、賃料水準が維持・上昇しやすい状況が生まれています。また、多拠点生活者が夏季の避暑や冬季のウィンタースポーツを目的に北海道を選ぶ動きも、短期的な需要の底上げに寄与しています。

北海道への投資を検討する際は、厳しい冬季の気候に伴う除雪コストや設備の維持管理費用を確実に織り込む必要があります。また、季節によって需要が変動しやすいという特性を踏まえ、年間を通じた平均稼働率を保守的に想定した収支計画を立てることが重要です。世帯数の微減というマクロ動向だけを見て敬遠するのではなく、単身世帯化という構造変化に着目することで、投資機会を正確に評価できます。

多拠点生活者が求める物件とは何か

リモートワークの浸透を背景に、都市と地方を行き来しながら暮らす多拠点生活者が増えています。この層が賃貸物件に求めるのは、単に「住む場所」ではなく、「働く」「くつろぐ」「移動する」という複数の行動を支える機能です。従来の賃貸住宅の評価軸とは異なる視点で物件を捉えることが、この市場で成果を上げるための第一歩となります。

最優先される条件は、安定した高速インターネット環境です。光回線が使えない物件は、多拠点生活者の選択肢から即座に外れます。また、Web会議に対応できる静かなワークスペースの確保も欠かせません。1LDK以上の間取りで、リビングとは独立した仕事専用のスペースを持てる物件が強く好まれます。設備面では、ベッドや冷蔵庫・洗濯機といった基本的な家具・家電が揃った物件が選ばれやすく、スーツケース一つで移動できる「身軽さ」が高く評価されています。

契約形態の柔軟性も、この層特有の重要なニーズです。季節や仕事の状況に応じて各拠点の滞在期間を変えたい多拠点生活者にとって、2年縛りの固定契約は不便です。1〜3ヶ月単位での契約が可能な物件や、定期借家契約を活用した短期対応型物件への需要が高まっています。投資家の立場からは、契約の回転を管理コストと天秤にかけながら、入退去に伴うクリーニング費用やメンテナンス費用を適切に見込むことが求められます。

エリア特性を踏まえた投資戦略の考え方

多拠点生活者向け賃貸投資を成功させるには、エリアごとの特性を正確に理解したうえで戦略を組み立てることが不可欠です。都市部と地方では、求められる物件の条件も収益構造も大きく異なります。一律の方針で複数エリアに投資するアプローチは、この市場では機能しにくいと考えておくべきでしょう。

都市部、とりわけ東京23区では、継続的な家賃上昇が見込まれる一方で、物件価格も高水準にあります。コンパクトな1K〜1LDKの駅近物件を選び、単身世帯の増加という構造的な需要増を長期的に取り込む戦略が基本です。短期的な高利回りを追うよりも、空室リスクが低く安定した収益が積み上がる物件を選ぶことが東京投資の要諦です。表面利回りだけでなく、実質利回りで評価する習慣を持つことが欠かせません。

地方都市では、東京や大阪から新幹線・特急で2〜3時間以内でアクセスできる立地が多拠点生活者の拠点として選ばれやすい傾向にあります。2LDK〜3LDKの広めの物件で、駐車場が確保できることが重要な条件となります。リゾートエリアについては、季節変動を保守的に見積もった収支計画が必須です。夏季や大型連休の高稼働を前提にした楽観的な計画は、後の資金繰り悪化を招くリスクがあります。年間の平均稼働率を60〜70%程度と想定し、それでも収益が出る物件を選ぶことが安全な投資の基本です。

設備投資の優先順位を明確にすることも成功のポイントです。光回線・エアコン・基本的な家具家電の整備は多拠点生活者向け物件の必須条件であり、これらなくして入居者を集めることは難しいでしょう。一方、高級家具や最新家電への過剰投資は回収期間を長引かせ、収益性を圧迫します。費用対効果を常に意識し、本当に必要な設備に絞って投資することが、長期的な収益確保につながります。

家賃上昇時代に押さえておくべき視点

日本総研の分析が示すように、2025〜2030年の家賃動向を左右する要因は、建築費の高止まり、単身世帯の増加、住宅購入コストの上昇という三つの構造的な力です。これらはいずれも短期間で解消される性質のものではなく、都市部・地方部を問わず家賃水準を押し上げる方向に作用し続けると考えられます。

重要なのは、こうしたマクロのトレンドを踏まえながら、個別物件の収益性を実質利回りで冷静に評価することです。家賃が上昇するエリアでも、物件価格の上昇が利回りを圧迫するケースは少なくありません。また、空室リスクや管理コストを適切に見込まなければ、帳簿上の利回りと実際の手取りが大きく乖離してしまいます。多拠点生活者向けの物件は通常の賃貸よりも管理コストが高くなる傾向があるため、実質利回りで5%以上を確保できる物件を選ぶことを一つの目安としてください。

最後に、多拠点生活者だけをターゲットにするのではなく、通常の単身賃貸需要にも対応できる汎用性の高い物件を選ぶことが、市場変化へのリスクヘッジとして有効です。高速インターネット環境や独立したワークスペースといった設備は、多拠点生活者に限らず幅広い入居者に歓迎されます。需要の変化に柔軟に対応できる物件を選ぶことが、2025〜2030年という転換期を乗り越えるための投資判断の核心となるでしょう。

参考資料・出典

  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」— https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/t-page.asp
  • 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2026 表7-12 家族類型別一般世帯数の将来推計」— https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Data/Popular2026/T07-12.files/sheet001.htm
  • 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2026 表12-47 都道府県別一般世帯数および平均世帯人員の将来推計」— https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Data/Popular2026/T12-47.files/sheet001.htm
  • 日本総研「都市部・地方部ともに家賃上昇の動きは継続」— https://www.jri.co.jp/report/research/detail/15609/
  • 日本総研「突出する東京都区部の家賃上昇」— https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=112939
  • 国土交通省「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する資料」— https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001969956.pdf
  • アットホームラボ株式会社「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(2025年12月)」— https://www.athomelab.co.jp/report/detail.php?id=556

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