不動産の税金

不動産投資で相続税を節税できる仕組みとは?基礎から解説

「相続税が心配だけど、何から始めればいいのかわからない」という方は多いのではないでしょうか。実は、不動産投資には相続税の節税効果があることが広く知られていますが、その仕組みを正確に理解している人は意外と少ないものです。この記事では、不動産投資が相続税の節税につながる理由を基礎から丁寧に解説します。評価額の計算方法から、活用できる特例、さらには注意すべきリスクまで、初心者の方でも理解できるよう順を追って説明していきます。

不動産の相続税評価額はなぜ低くなるのか

不動産の相続税評価額はなぜ低くなるのかのイメージ

まず押さえておきたいのは、相続税の計算に使われる「評価額」と、実際の市場価格(実勢価格)は異なるという点です。この差こそが、不動産投資による節税の根本的な仕組みになっています。

国税庁の情報(No.4602 土地家屋の評価)によると、土地の評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、建物については固定資産税評価額に1.0を乗じた金額が相続税評価額となります。つまり、建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるわけです。一方、現金や預貯金は額面そのものが評価額になるため、同じ金額でも不動産に換えることで評価額が下がりやすい構造があります。

土地の評価に使われる路線価は、国税庁が毎年1月1日を評価時点として公表しています。この路線価は、地価公示価格等をもとにした価格の80%程度を目途に定められているため、一般的に実勢価格よりも低く算出されます(国税庁 令和6年分の路線価等について)。たとえば、市場で1億円で売れる土地であっても、路線価ベースの相続税評価額は8,000万円程度になることがあるわけです。

このように、不動産は現金と比べて相続税評価額が低くなりやすい性質を持っています。ただし、これはあくまでも一般的な傾向であり、物件の所在地や種類によって圧縮率は大きく異なります。実際の節税効果を把握するには、個別の物件ごとに専門家へ相談することが重要です。

賃貸物件にすることでさらに評価額が下がる仕組み

賃貸物件にすることでさらに評価額が下がる仕組みのイメージ

不動産投資の節税効果がより大きくなるのは、その物件を賃貸に出している場合です。賃貸中の建物と土地は、自分で使っている場合(自用地・自用家屋)よりもさらに評価額が低くなる仕組みがあります。

建物については、国税庁の情報(No.4602 土地家屋の評価)によると、貸家の評価は「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で計算されます。借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合、評価額は固定資産税評価額の70%になります。つまり、賃貸に出しているだけで建物の評価額が3割引になるということです。

土地についても同様の効果があります。国税庁の情報(No.4614 貸家建付地の評価)によると、賃貸用建物が建っている土地は「貸家建付地」として評価され、自用地としての価額から借地権割合・借家権割合・賃貸割合に応じた減額が行われます。この減額によって、土地の評価額もさらに圧縮されます。

ただし、重要な注意点があります。相続が発生した時点で実際に賃貸されていない家屋の敷地は、原則として貸家建付地ではなく自用地として評価されます(国税庁 貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価)。空室が続いている物件は節税効果を失うリスクがあるため、賃貸経営の管理状況が節税効果に直結することを覚えておきましょう。

なお、一時的な空室については例外的な取り扱いがあります。継続的な賃貸実績があり、退去後すみやかに入居者を募集していて、空室期間が1か月程度であるなどの条件を満たす場合は、相続時点でも賃貸中として扱える余地があります(国税庁 令和7年4月1日現在法令等)。

小規模宅地等の特例で評価額をさらに圧縮する

不動産投資と相続税の節税を語るうえで欠かせないのが「小規模宅地等の特例」です。この特例を活用すると、一定の要件を満たした土地の相続税評価額をさらに大幅に下げることができます。

国税庁の情報(相続税の申告のしかた 令和8年分用)によると、貸付事業に使われている土地(貸付事業用宅地等)については、200㎡までの部分について評価額を50%減額できます。たとえば、貸家建付地として評価された土地が200㎡以内であれば、その評価額をさらに半分にできるわけです。路線価による評価の圧縮と、貸家建付地による評価の引き下げ、そしてこの特例による50%減額が重なることで、実勢価格と比べて大幅に低い評価額になるケースがあります。

ただし、この特例を受けるには厳格な要件があります。被相続人(亡くなった方)の貸付事業を相続人が相続税の申告期限まで引き継ぎ、その期限まで土地を保有し続けていることが必要です。また、特例を適用するには相続税申告書への記載と所定の書類の添付が必要で、手続きを怠ると適用を受けられません(国税庁 相続税の申告のしかた 令和8年分用)。

さらに注意が必要なのは、相続開始前3年以内に新たに貸付事業に供した宅地等は、原則としてこの特例の対象から除外されるという点です(国税庁 相続税の申告のしかた 令和8年分用)。ただし、被相続人等が相続開始日まで3年を超えて特定貸付事業を継続していた場合には、例外的に除外されないケースもあります。相続が近づいてから急いで不動産を購入しても、特例が使えない可能性があるため、長期的な視点での計画が不可欠です。

相続税の基本的な仕組みと債務控除

節税の話をする前に、そもそも相続税がかかるかどうかを確認することが大前提です。国税庁の情報(財産を相続したとき)によると、相続税は取得財産の合計が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を超える場合に初めて課税対象となります。たとえば法定相続人が3人いれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となり、遺産総額がこれを下回れば相続税はかかりません。

また、不動産投資で融資(ローン)を活用している場合、その借入金は相続財産から控除できます。国税庁の情報(No.4126 相続財産から控除できる債務)によると、被相続人の借入金や未払金など、死亡時に現に存在し確実と認められる債務は遺産総額から差し引くことができます。つまり、不動産の評価額が下がるうえに、ローン残高を債務として控除できるため、課税対象となる遺産総額を大きく圧縮できる可能性があります。

相続税の申告期限についても把握しておきましょう。国税庁の情報(No.4205 相続税の申告と納税)によると、申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限を過ぎると加算税や延滞税が発生する可能性があるため、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。申告の準備には固定資産税評価証明書、登記事項証明書、賃貸借契約書、実測図などの書類が必要になります(国税庁 相続税の申告のためのチェックシート)。

過度な節税には大きなリスクがある

不動産投資による相続税の節税は有効な手段ですが、行き過ぎた節税には重大なリスクが伴います。この点を正確に理解しておくことが、長期的に安全な資産形成につながります。

まず、マンションの区分所有物件(分譲マンションの一室など)については、評価ルールが変わっています。国税庁の情報(No.4667 居住用の区分所有財産の評価)によると、令和6年1月1日以後に相続等で取得した居住用の区分所有財産には新しい区分所有補正率ルールが適用されるようになりました。いわゆる「マンション節税」の前提は見直しが必要であり、以前と同じ感覚で節税効果を期待することはできません。なお、この新ルールは区分所有登記のない一棟所有の賃貸マンションなどには適用がないとされています。

さらに深刻なのは、相続直前に多額の借入れで不動産を購入し、相続税をゼロにしようとするような行為です。最高裁判所の令和4年4月19日判決(令和2(行ヒ)283 相続税更正処分等取消請求事件)では、購入と借入れによって相続税の総額が0円になる事案において、通達による評価額を上回る価額で課税しても平等原則に反しないと判断されました。つまり、極端な節税スキームは税務当局に否認されるリスクがあるということです。節税は合法的な範囲で計画的に行うことが大原則であり、専門家の助言なしに過度な節税策を実行することは避けるべきです。

まとめ

不動産投資による相続税の節税は、評価額の仕組みを正しく理解したうえで、長期的な視点で取り組むことが重要です。路線価による評価の圧縮、貸家建付地としての評価引き下げ、小規模宅地等の特例の活用、そして債務控除の組み合わせによって、相続税の負担を合法的に軽減できる可能性があります。一方で、空室リスクや過度な節税スキームへの税務否認リスクなど、注意すべき点も少なくありません。

不動産投資と相続税の節税は、個別の状況によって効果が大きく異なります。まずは相続税がかかるかどうかの基礎控除の確認から始め、税理士や不動産の専門家に相談しながら計画を立てることをおすすめします。疑問点は国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901、音声ガイダンス「3」が相続税・贈与税・財産評価)を活用することもできます。正確な知識をもとに、焦らず着実に準備を進めていきましょう。

参考文献・出典

  • 国税庁 No.4602 土地家屋の評価 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
  • 国税庁 No.4602 土地家屋の評価(Q&A) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602_qa.htm
  • 国税庁 令和6年分の路線価等について — https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/rosenka/index.htm
  • 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
  • 国税庁 貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/04/11.htm
  • 国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
  • 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)小規模宅地等の特例 — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/pdf/shikata04.pdf
  • 国税庁 相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用) — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/2023/pdf/r05-01.pdf
  • 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
  • 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
  • 国税庁 財産を相続したとき — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_5.htm
  • 国税庁 国税に関するご相談について — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm
  • 最高裁判所 令和2(行ヒ)283 相続税更正処分等取消請求事件 — https://www.courts.go.jp/hanrei/91105/detail2/index.html

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