不動産の税金

空室率・家賃下落をエクセルでシミュレーションする方法

不動産投資を始めたばかりの方が最初につまずくのが、「どうやって収益を計算すればいいのか」という疑問です。物件の利回りだけを見て購入を決めてしまい、後から空室や家賃下落に悩まされるケースは少なくありません。この記事では、空室率や家賃下落リスクをエクセルのシミュレーションに組み込む方法を、初心者にもわかりやすく解説します。正しい収支シミュレーションを身につけることで、リスクを事前に把握し、長期的に安定した投資判断ができるようになります。

表面利回りだけでは危険な理由

表面利回りだけでは危険な理由のイメージ

不動産投資の情報を調べると、「利回り○%」という数字が目に飛び込んできます。しかし、この表面的な利回りだけを見て投資判断をするのは非常に危険です。物件価格・借入条件・賃料収入・運営経費・売却想定を総合的に数字で検証する収支シミュレーションこそが、投資判断の根拠になります(tson.co.jp)。

表面利回りは「年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100」で計算されますが、この数字には空室期間中の損失も、管理費や修繕費などの経費も含まれていません。つまり、実際に手元に残るお金とは大きくかけ離れた数字になりがちです。たとえば利回り8%の物件でも、空室が続いたり家賃が下落したりすれば、実質的な収益はその半分以下になることもあります。

重要なのは、「最悪の場合でも耐えられるか」を事前に確認しておくことです。楽観的な前提だけでシミュレーションを組むと、想定外の事態が起きたときに対応できなくなります。保守的な数字で計算しても収益が出るかどうかを確かめることが、不動産投資で失敗しないための第一歩です。

シミュレーションに組み込むべき前提条件

シミュレーションに組み込むべき前提条件のイメージ

収支シミュレーションを作る際は、いくつかの重要な前提条件を設定する必要があります。空室率・家賃下落率・修繕費・入退去件数・売却金額などの前提を置くべきで、楽観・保守の前提を混同しないことが大切です(nomu.com)。

まず空室率については、シミュレーション上の家賃収入を一定の空室損を見込んで減額して計算することが重要です。新築物件でも入居者の入れ替わりが必ず発生しますし、築年数が経つにつれて空室期間は長くなる傾向があります。「常に満室」という前提は現実的ではないため、最初から一定の空室損を見込んでおくことが大切です。

次に家賃下落率も必ず織り込む必要があります。「5年後には3%、10年後には8%下落する」など、長期的な視点で家賃の下落リスクを組み込む方法が参考になります(東急リバブル)。物件は築年数が経つほど競争力が落ち、周辺相場に合わせて家賃を下げざるを得ない状況が生まれます。10年・20年という長期保有を前提にするなら、この下落分を無視したシミュレーションは現実から大きくずれてしまいます。

さらに、運営経費として固定資産税・都市計画税、管理会社への管理費・清掃作業費、テナント募集の広告費、退去後の原状回復費用、修繕工事費なども忘れずに計上してください(agent-hp.com)。これらの経費を合計すると、家賃収入の20〜30%程度になることも珍しくありません。

キャッシュフローツリーで収支を整理する

シミュレーションを正確に組むためには、収支の流れを体系的に整理する「キャッシュフローツリー」という考え方が役立ちます。GPI・EGI・OPEX・NOI・ADS・BTCFo・ATCFoの順で収支を整理するのが実務的な方法です(agent-hp.com)。

最初のGPI(総潜在賃料収入)は、すべての部屋が満室だった場合の年間家賃収入の合計です。ここから空室損・滞納損を差し引き、さらに雑収入を加えた金額がEGI(実効総収入)と呼ばれます(agent-hp.com)。先ほど説明した空室率や家賃下落率は、このGPIからEGIを計算する段階で反映させます。

EGIからOPEX(運営費)を差し引いた数字がNOI(純営業収益)です。NOIはローン返済前の純粋な収益力を示す指標で、物件の実力を評価するときによく使われます。さらにNOIからADS(年間ローン返済額)を引いたものがBTCFo(税引前キャッシュフロー)、そこから税金を引いた最終的な手取りがATCFo(税引後キャッシュフロー)です。この流れを一本の計算式としてエクセルに落とし込むことで、収支の全体像が一目でわかるようになります。

エクセルでシミュレーションを作る具体的な方法

実際にエクセルでシミュレーションを作る際は、空室率・空室期間・家賃下落率などを設定して試算できるテンプレートを活用すると効率的です。条件を変えた複数パターンのシミュレーションにも対応しやすいため、楽観的な条件だけではなく、空室が長引いた場合や家賃が下がった場合も検証できます(エスリード)。

エクセルの基本的な構成としては、まず「前提条件シート」を作り、物件価格・借入金額・金利・返済期間・初期家賃・空室率・家賃下落率・経費率などを一箇所にまとめます。次に「年次収支シート」を作り、1年目から保有期間の最終年まで、前提条件を参照しながら自動計算される仕組みにします。こうすることで、空室率を変更するだけで全体の収支がどう変わるかを瞬時に確認できます。

また、アットホームのような不動産情報サービスでは、推計空室率や賃料変更発生率などを活用し、町丁目単位の賃料下落率・空室率を加味した賃料収入シミュレーションをPDFまたはエクセル形式で提供しているサービスもあります(アットホーム)。自分でゼロからシートを作るのが難しい場合は、こうした既存のテンプレートやサービスを活用するのも一つの方法です。

複数のシナリオを並べて比較することも大切です。「楽観シナリオ」「標準シナリオ」「悲観シナリオ」の複数パターンを作り、どのシナリオでも最低限のキャッシュフローが確保できるかを確認しましょう。

長期保有を見据えたシミュレーションのポイント

不動産投資は10年・20年という長期にわたる投資です。そのため、短期的な収支だけでなく、長期的な視点でシミュレーションを組むことが欠かせません。特に家賃下落は時間をかけてじわじわと進むため、初年度の収支が良くても10年後に赤字転落するケースがあります。

シミュレーションには売却時の収支も含めることが重要です。不動産は最終的に売却することで投資が完結するため、売却価格の想定が甘いと全体の収益計算が狂ってしまいます。一般的には、築年数が経つほど物件価格は下落する傾向があるため、保守的な売却価格を設定しておくことが賢明です。

また、修繕費は築年数が経つにつれて増加する傾向があります。築10年を超えると外壁塗装や給排水設備の更新が必要になることも多く、数百万円単位の出費が発生することもあります。こうした大規模修繕の費用も年次収支シートに組み込んでおくと、より現実に近いシミュレーションになります。

まとめ

不動産投資で長期的に安定した収益を得るためには、空室率や家賃下落リスクを正直に織り込んだ収支シミュレーションが不可欠です。表面利回りだけに頼らず、GPI・EGI・NOI・キャッシュフローという流れで収支を整理し、楽観・標準・悲観の複数シナリオをエクセルで比較検討することが成功への近道です。最初は難しく感じるかもしれませんが、一度テンプレートを作ってしまえば、物件ごとに数字を入れ替えるだけで素早く判断できるようになります。まずは手元の候補物件で試しにシミュレーションを作ってみることから始めてみてください。

参考文献・出典

  • tson.co.jp(収支シミュレーションのやり方〖不動産投資〗) — https://www.tson.co.jp/media/rei/429/
  • nomu.com(不動産投資で失敗しないためのシミュレーション) — https://www.nomu.com/pro/contents/knowhow/20150929.html
  • 東急リバブル(不動産投資シミュレーションの作り方と使い方) — https://www.livable.co.jp/fudosan-toushi/knowledge/basic/pro067/
  • エスリード(不動産投資の利回り・収支計算に使える無料Excelテンプレート・アプリ7選) — https://www.eslead.co.jp/media/real-estate-investment-basics/useful-for-calculating-real-estate-investment-yields-and-cash-flow/
  • アットホーム(賃料・空室率推計サービス│不動産調査サービス) — https://business.athome.jp/service/chinryokushitsuritsu/
  • e-Stat(空き家実態調査) — https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?fileKind=2&statInfId=000031340016
  • agent-hp.com(不動産投資は儲かるの?キャッシュフローツリーを学ぼう!) — https://www.agent-hp.com/real-estate-cashflow-tree-basics/

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