日本で暮らす外国人の数は年々増え続け、賃貸市場における外国人入居者のニーズも大きく多様化しています。多くの大家さんや不動産投資家は「外国人入居者を受け入れるべきか」「そもそもどんな物件が求められているのか」と迷っているのではないでしょうか。
実は、外国人向けの賃貸ニーズを正しく理解すれば、空室リスクを下げる有効な選択肢になります。この記事では、外国人入居者を対象とした調査結果や実際の成功物件をもとに、求められる物件条件と、オーナーが押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。読み終えるころには、自分の物件をどう改善すべきかの具体的なイメージが持てるはずです。
外国人居住者の増加と賃貸市場の変化
まず押さえておきたいのは、外国人向け賃貸がもはやニッチな市場ではないという事実です。出入国在留管理庁の発表によると、令和7年末の在留外国人数は412万5,395人となり、前年末比9.5%増で初めて400万人を超えました。この規模の需要母数がある以上、外国人入居者は空室対策を考えるうえで無視できない存在です。
しかも、外国人の多くは民間賃貸を実際に利用しています。国土交通省が紹介する国勢調査のデータでは、在留外国人の多くの世帯が賃貸住宅を住まいとしていることが示されています。つまり、外国人を受け入れることは特別な取り組みではなく、賃貸経営の自然な選択肢の一つになりつつあるのです。
入居者の属性も、かつての留学生や技能実習生中心から、高度人材や永住者、家族帯同者へと広がっています。安定した収入を持ち長期滞在を前提とする層が増えているため、賃貸市場における魅力的な入居者候補として捉えられるようになっています。地域を問わず、外国人の受け入れが賃貸需要の柱となるケースが着実に増えているといえるでしょう。
いまの家賃で、いくらのマンションが買えるのか 家賃から買える棟を見る
外国人入居者は何を重視して物件を選ぶのか
外国人向けの実態調査から見えてくる最大のポイントは、家賃と立地の重視です。ある実態調査によると、住んでいる部屋で最も重視したことは「家賃」が最多となり、次いで「学校や勤務先からの近さ」が上位を占めていました。来日直後は資金に余裕がないケースが多く、また自動車を持たない人も多いため、家賃の手頃さと通勤・通学のしやすさが選択の中心になります。
一方で、部屋探しそのものに苦労している実態も浮かび上がっています。同じ調査では、部屋探しで「特に困ったことがない」人は少数派にとどまり、多くが何らかの困りごとを経験していました。中でも最も多かったのは「物件情報が多すぎて、どう比較すべきかわからなかった」という声です。情報を母国語で比較できず、判断に迷う外国人が非常に多いことがわかります。
設備面では、無料インターネットと家具・家電付きが低コストでも効く訴求として知られています。ガイドラインでも、無料インターネットや家具・家電付きにするなど少額の負担でも工夫次第で多くの外国人入居希望者が見込めると指摘されています。来日時に大型の家具や家電を買いそろえるのは、言語や初期費用の面で負担が大きいためです。
参考までに、日本人も含めた一般の賃貸ニーズを見ると、次の引っ越しで絶対に欲しい設備の1位は「エアコン付き」、2位が「独立洗面台」で、いずれも半数以上が挙げていました。さらに満足度の高い設備には、24時間出せるゴミ置き場やTVモニター付きインターホン、宅配ボックス、無料インターネット完備が並びます。防犯面ではTVモニター付きインターホンとオートロックへのニーズが特に強く、これらは外国人入居者にとっても安心材料になります。
「外国人だから断られる」現実と初期費用の壁
外国人の部屋探しには、日本人にはない大きな障壁があります。実態調査では、外国人入居者の一定割合が希望していた部屋の入居を断られた経験があると回答し、その理由の多くが「外国人という理由で断られた」というものでした。「外国人 アパート 借りられない」という悩みが根強く語られる背景には、こうした実態があります。
裏を返せば、外国人を積極的に受け入れる姿勢を示すだけで、オーナーは競合との差別化ができます。断られ続けている入居希望者にとって、受け入れてくれる物件は非常に価値が高いからです。
契約前の不安も特徴的です。調査によると、不安だったことの内容としては「契約内容の理解」と「日本語能力」がそれぞれ5割以上と突出し、次いで「電気・ガス・水道の契約手続き」「連帯保証人の確保」が続きました。言語と手続きのハードルが、入居の直前まで大きな負担になっていることがわかります。
さらに見逃せないのが初期費用への不満です。入居時の不満として最も多いのは「初期費用が高いこと」で、次いで「敷金・礼金・更新料など母国の慣習にない費用を払う必要があること」が続き、初期費用関連が全体の大きな割合を占めました。費用項目別に見ると「礼金」への抵抗感が特に強いといえます。外国人向けに募集するなら、礼金ゼロの価値は非常に高いのです。実際、一般の賃貸市場でも初期費用が決め手になる割合は増加傾向にあり、費用訴求はもはや外せない要素になっています。
多言語対応とサポートが決め手になる
外国人入居者が最も求めているのは、契約から退去まで多言語で伴走してくれるサポートです。実態調査では、日本の賃貸住宅で暮らすうえで最もあれば良いサービスとして「多言語での契約時・入居中・退去時のサポート」が最多で挙げられました。また、母国の友人に紹介したい不動産会社としても「多言語対応してくれる会社」が高い割合で最重要とされ、次点の「初期費用が安い物件を紹介してくれる会社」を大きく上回っています。
契約書の説明方法も、理解度を大きく左右します。同じ調査では、母国語や英語の契約書を使って説明した場合は理解できた割合がほぼ100%だったのに対し、日本語の契約書を日本語だけで説明した場合は62.5%にとどまりました。トラブル予防のためにも、母国語・英語での契約説明は欠かせない取り組みだといえます。
こうした多言語対応は、決して理想論ではありません。国土交通省が整備する外国人の民間賃貸住宅入居に関するガイドラインでは、日本語・英語・中国語・韓国語・ベトナム語・ネパール語・タガログ語など14言語で、契約時に役立つチェックシートなどが用意されています。公的な書式がそろっているため、規模の小さいオーナーでも運用可能な状態が整っているのです。
実際に満室化した外国人向け物件の共通点
ここまでの調査結果を踏まえると、成功している物件には明確な共通点があります。ポイントは、費用のハードルを下げつつ、生活にすぐ必要なものをまとめて提供することです。
たとえば、14室のうち13室が空室だった築古アパートを、外国人向けシェアハウスとして再生させた事例があります。全室でインターネットを無料にし、各部屋に最低限の家具・家電を設置したうえで、初期費用ゼロ・保証人なしとして入居時の負担を大きく軽減しました。この大転換によって、今では常に満室に近い状態を維持しているといいます。断られる不安と初期費用の負担という二大障壁を同時に取り除いた点が奏功したといえるでしょう。
留学生向けでは、家具・家電付きにすること自体が強い差別化になったケースもあります。ほぼ身ひとつで来日した苦学生にとって、家具家電を用意する負担は大きいため、この工夫が大好評となり、口コミで入居が回るようになった事例が報告されています。短期間の滞在では家財を買いそろえるメリットが小さいため、家具家電付きの価値が際立つのです。
大規模物件では、あえて「外国人専用」を打ち出す戦略も有効です。積極的な受け入れ姿勢を示すことで、広告を出さなくても人材派遣会社の紹介や口コミ、現地の看板などから入居希望者が自然に集まる人気物件になった例があります。フィリピン、ブラジル、ペルー、インド、タイなど多国籍の入居者が集まっているといい、受け入れ姿勢そのものが集客力になることを示しています。
短期滞在ニーズとマンスリー型という選択肢
外国人ニーズを語るうえで、短期滞在向けの需要も重要なテーマです。日本の一般的な賃貸契約は2年契約かつ長期ビザを前提とすることが多く、短期で暮らしたい人やビザの状況が特殊な人には契約しづらい現実があります。そこで、1か月単位から選べる短期滞在特化の住まいが受け皿になっています。
「外国人 短期滞在 アパート」で求められる条件は、実際のサービスを見ると明確です。家具・家電・インターネット付きで即入居でき、最低契約期間は1か月から、仲介手数料・礼金・保証人が不要というパッケージが実在しています。別のサービスでも、WiFiや光熱費が月額に含まれ、保証人不要、海外からのオンライン契約、英語サポートが標準として打ち出されています。これらは、前述した「契約理解」「費用負担」「言語」の不安を一括で解消する設計になっています。
費用面でも、マンスリー型は普通賃貸より初期費用を大きく圧縮できる場合があります。家具家電や引っ越し費用を月額に吸収できるため、短期で暮らす人にとって合理的です。長期は普通賃貸、短期はマンスリーで吸収するという商品設計は、外国人向け市場で実際に使われている考え方です。契約形態としては、国土交通省が定期賃貸住宅標準契約書のひな形を公表しており、短期から中期の滞在に対応しやすい仕組みが公的にも用意されています。
在留資格の確認と適法な受け入れ
外国人入居者を受け入れる際は、在留カードによる本人確認が実務の基本になります。在留カードには氏名や国籍のほか、在留資格や在留期間が記載されているため、契約期間と在留期間の関係や更新予定を確認しておくと安心です。就労可否も記載されているため、収入の安定性を判断する材料にもなります。
契約手続きでは、前述した国土交通省の多言語ガイドラインや、定期賃貸住宅標準契約書などの公的な書式を活用するとよいでしょう。なお、国籍を理由に一律で入居を断ることは適切ではありません。審査は収入の安定性や保証の有無といった客観的な基準で行うことが求められます。個別の法的要件や最新の運用については、各公的機関の公式サイトで確認してください。
まとめ:受け入れ姿勢と費用・言語対応が成否を分ける
外国人向けの賃貸ニーズ調査から見えてきたのは、成功の鍵が特別な高級設備ではなく、入居のハードルをどれだけ下げられるかにあるという点です。家賃と立地を重視する層に対して、礼金ゼロや初期費用の軽減で費用の壁を取り除き、無料インターネットと家具・家電付きで生活の立ち上がりを支えることが、そのまま差別化につながります。
加えて、入居を断られている現実を踏まえれば、受け入れる姿勢を示すだけでも大きな価値があります。契約から退去まで多言語で伴走するサポートや、母国語・英語での契約説明を用意すれば、入居者の不安は着実に和らぎます。短期滞在ニーズにはマンスリー型という受け皿もあり、物件特性に応じて商品設計を選べます。
まずは自分の物件がどの層に向いているかを見極め、費用・言語・設備の三点から改善できるところを検討してみてはいかがでしょうか。人口減少が進むなかで、外国人入居者への対応力は、これからの賃貸経営で大きな競争優位になるはずです。
参考文献・出典
- 出入国在留管理庁 – 令和7年末現在における在留外国人数について – https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
- 国土交通省 – 外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000017.html
- 国土交通省 – 定期賃貸住宅標準契約書について – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000030.html
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 – 外国人入居円滑化支援 – https://www.jpm.jp/foreign/