「REITと現物不動産、どちらが本当に儲かるのか?」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。どちらも不動産を活用した投資ですが、仕組みや収益の性質がまったく異なるため、単純に利回りだけで比べることはできません。この記事では、2026年8月時点の最新データをもとに、REITと現物不動産それぞれの収益構造をわかりやすく解説します。さらに、無料のエクセルを使った収益シミュレーションの作り方まで丁寧にご紹介しますので、投資初心者の方でも自分に合った選択肢を見つけるヒントが得られるはずです。
REITと現物不動産、そもそも何が違うのか

まず押さえておきたいのは、REITと現物不動産は「不動産に投資する」という点では同じでも、その仕組みは根本的に異なるということです。この違いを理解することが、収益比較の第一歩になります。
REIT(不動産投資信託)とは、多くの投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に分配する商品です。日本取引所グループの説明によると、J-REITは東京証券取引所で株式のように売買できるため、少額から投資でき、売りたいときにすぐ換金できる高い流動性が特徴です。一方、現物不動産は実際に土地や建物を購入して賃貸収入を得る投資で、物件の管理や入居者対応など、オーナーとしての責任が伴います。
収益の受け取り方にも大きな違いがあります。REITは証券口座を通じて分配金を受け取るだけで済みますが、現物不動産は家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税などを差し引いた手取りが実際の収益となります。また、REITは複数の物件に分散投資されているため、1棟の空室リスクが直接収益に影響しにくい構造になっています。
流動性の観点でも両者は大きく異なります。REITは市場が開いている時間であれば数分で売却できますが、現物不動産の売却には数ヶ月単位の時間がかかるのが一般的です。このように、REITは手軽さと流動性を重視する投資家に向いており、現物不動産はレバレッジを活用して大きな資産を築きたい投資家に向いているといえます。
最新データで見る利回りの実態

実は、REITと現物不動産の利回りを比較すると、2026年現在では興味深い数字が見えてきます。それぞれの最新データを確認しながら、収益力の実態を把握しましょう。
不動産証券化協会(ARES)のマンスリーレポート(2026年1月)によると、J-REIT平均分配金利回りと平均NAV倍率は市場の状況を反映した水準にあります。参考として国債利回りとの比較を踏まえると、REITが国債に対して一定の上乗せ収益を提供していることがわかります。
一方、現物不動産の利回りについては、日本不動産研究所の第54回不動産投資家調査(2026年4月)が参考になります。東京都心の賃貸住宅一棟の期待利回りは、物件タイプや立地によって異なる水準にあります。オフィス系では都心部が相対的に低利回りで、物流施設や商業施設では用途や立地によって利回りの幅が大きいことが確認されています。
これらのデータを見ると、J-REITの平均分配金利回りは、東京都心の現物不動産の期待利回りと比べて同等かやや高い水準にあります。ただし、現物不動産はローンを活用したレバレッジ効果により、自己資金に対するリターンを大きく高められる点が異なります。単純な利回り比較だけでなく、自己資金の使い方まで含めて考えることが重要です。
エクセルで収益シミュレーションを作る方法
ポイントは、シミュレーションを「楽観ケース」だけでなく「悲観ケース」も含めて複数のシナリオで作ることです。無料のエクセルを使えば、REITと現物不動産の収益を同じ条件で比較できる自分だけのツールを作れます。
まず、REITのシミュレーションシートを作りましょう。不動産証券化協会(ARES)は「ARES J-REIT Databook」(2026年7月版)を無料のエクセルファイルとして公開しており、J-REIT市場の各種データを収録しています。また、ARES Japan Property Index(AJPI)のサイトでは、J-REITデータのみで算出した年次収益率・平均稼働率・平均賃料・キャップレートのエクセルデータも2026年7月30日付で更新されています。これらの公式データを活用することで、信頼性の高い比較ベースを作ることができます。
現物不動産のシミュレーションシートでは、以下の項目を入力欄として設けると実用的です。年間家賃収入(満室想定)から空室損・管理費・修繕費・固定資産税などを差し引いて純収益(NOI)を算出し、そこから年間ローン返済額を引いた数字がキャッシュフローになります。ローン返済のシミュレーションについては、オリックス銀行の公式シミュレーターが借入額・返済期間・金利・想定年数経過後の残債を試算できる仕組みを参考にすると、エクセルの入力項目が整理しやすくなります。ただし、同シミュレーターは「金利一定」を前提としているため、エクセルでは金利上昇ケース(例:現状金利+1%、+2%)を別シートで作成しておくことを強くおすすめします。
悲観ケースの設定には、湘南信用金庫(Wealth Agent調べ、2026年7月5日)の収益還元評価が参考になります。同行の収支シミュレーションでは、空室損として1〜5年目に▲2%、5〜10年目に▲5%のストレスをかけるとされており、このような保守的な前提を自分のエクセルにも取り入れると、より現実的なシミュレーションになります。
税金と融資条件も比較に組み込もう
収益比較を正確に行うには、税引き前の利回りだけでなく、税金や融資コストまで含めた「手取り収益」で比べることが不可欠です。
REITの分配金に関する税制については、国税庁の情報(No.1331)によると、上場REITの分配金を申告分離課税で申告する場合、所得税15.315%・地方税5%が課税されます。また、投資法人からの分配金は配当控除の対象外となる点も覚えておく必要があります。一方、現物不動産の収益は不動産所得として総合課税の対象となり、給与所得などと合算されるため、高所得者ほど税負担が重くなる傾向があります。ただし、減価償却費を経費として計上できるなど、節税効果を活用できる場面もあります。税務上の取り扱いは個別の状況によって大きく異なるため、詳細は税理士などの専門家にご確認ください。
融資条件についても、エクセルのシミュレーションに反映させることが大切です。住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資では、固定金利型と変動金利型の複数の選択肢が用意されており、借入期間や返済方法によって適用される金利が異なります(最長40年・第1順位抵当権設定が前提)。民間銀行では、オリックス銀行の不動産投資ローン(2026年8月3日現在)が借入限度額2,000万円以上2億円以内、借入期間1年以上35年以内、変動金利型で取扱事務手数料は借入額の2.20%以内という条件を公式サイトで公開しています。なお、実際の適用金利は個別の審査結果によって異なるため、最新情報は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
出口戦略(売却時の価格)の前提設定にも注意が必要です。国土交通省が公表した不動産価格指数(2025年12月・2025年第4四半期分)によると、全国の住宅総合は148.0、オフィスは168.7、マンション・アパート(一棟)は176.1という水準です。エクセルのシミュレーションでは、この指数の推移を参考に、売却価格が上昇するケース・横ばいのケース・下落するケースを想定しておくと、より堅実な投資判断ができます。
まとめ
REITと現物不動産はどちらが優れているという話ではなく、投資家それぞれの資金力・リスク許容度・目的に応じて使い分けるものです。REITは少額から始められる手軽さと流動性が魅力で、市場の状況に応じた分配金利回りが期待できます。現物不動産はレバレッジを活用した資産形成が可能ですが、空室リスクや管理コスト、融資条件まで含めた総合的な収益計算が欠かせません。
エクセルを使った無料シミュレーションは、こうした複雑な比較を自分の条件に合わせて行うための強力なツールです。ARESが公開するJ-REITデータブックや国土交通省の不動産価格指数などの公式データを活用しながら、楽観・標準・悲観の3シナリオを作成することを強くおすすめします。まずは小さな一歩として、今日からエクセルを開いて自分だけの収益比較シートを作ってみてください。
参考文献・出典
- 不動産証券化協会(ARES)Jリート統計情報 — https://www.ares.or.jp/action/jreit/
- ARES Japan Property Index(AJPI-J-REIT) — https://index.ares.or.jp/ja/former/
- ARESマンスリーレポート(2026年1月) — https://www.ares.or.jp/action/monthly/ares_monthly_report_202601.pdf
- 日本取引所グループ「概要(REIT)」 — https://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/outline/index.html
- 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
- 日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)」 — https://www.reinet.or.jp/pdf/REIS/published-document_main_the-japanese-real-estate-investor-survey_202604.pdf
- 国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)」 — https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00256.html
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合 令和8年8月の参考金利のお知らせ」 — https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf
- オリックス銀行「不動産投資ローン 商品説明書」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
- オリックス銀行「投資用不動産ローン・住宅ローン返済シミュレーション」 — https://www.orixbank.co.jp/personal/house/simulation.html