[KETSURON]
- 再建築不可の土地だけを選んで放棄することはできず、相続放棄は全財産が対象になります。
- 相続放棄の期限は「相続開始を知った日から原則3か月以内」で、家庭裁判所への申述が必要です。
- 放棄以外にも「相続土地国庫帰属制度」という国に土地を引き取ってもらう手段があります。
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「再建築不可」と書かれた土地を相続することになり、どう対処すればいいか迷っていませんか。建て替えもできない土地を引き継いでも、固定資産税だけ払い続けることになるのでは、と不安に感じる方は少なくありません。この記事では、再建築不可の土地とは何か、相続放棄の仕組みと注意点、そして放棄以外の選択肢まで、不動産の知識がなくても理解できるよう順を追って説明します。あなたの状況に合った判断ができるよう、具体的な手続きや費用も含めてお伝えします。
再建築不可の土地とは何か

まず「再建築不可」という言葉の意味を押さえておきましょう。これは、今ある建物を壊した後に、同じ場所に新しい建物を建てられない土地のことです。なぜそうなるかというと、建築基準法という法律で「土地は幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」というルールが定められているからです(国土交通省)。このルールを「接道義務(せつどうぎむ)」といいます。
古い住宅地や路地の奥まった場所にある土地は、このルールを満たしていないことがあります。そのような土地は、今の建物が老朽化して取り壊した後、新しい建物を建てることができません。つまり、建て替えができないまま土地だけが残るという状態になります。
ただし、例外がまったくないわけではありません。建築基準法43条2項という規定により、自治体(特定行政庁)が個別に認定・許可した場合は、接道義務の例外が認められることがあります(国土交通省)。ただし、この判断は自治体ごとに異なるため、対象の土地がある市区町村の窓口で確認することが必要です。
ここまでのまとめ: 再建築不可とは「建て替えができない土地」のことで、道路への接し方が法律の基準を満たしていないことが主な原因です。
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相続放棄の基本的な仕組みと期限

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産を一切引き継がないことを、家庭裁判所に申し出る手続きです。「受け取らないと家族で決めた」だけでは正式な放棄にはなりません。家庭裁判所への申述(もうしのべ)という手続きを経て、はじめて法的に有効になります(裁判所)。
期限は、「自分が相続人になったことを知った日から原則3か月以内」です(裁判所)。多くの場合、被相続人が亡くなったことを知った日が起算点になります。3か月以内に財産の調査が終わらない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長(きかんのしんちょう)」を申し立てることができます。伸長とは、期限を延ばしてもらうことです(裁判所)。
申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(裁判所)。手続きに必要な書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人(放棄する方)の戸籍謄本などが基本となり、相続の順位によって追加書類が求められることがあります(裁判所)。
ここまでのまとめ: 相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、知った日から原則3か月以内に手続きをしなければなりません。
相続放棄で必ず知っておくべき「全部か無か」の原則
ここが最も重要なポイントです。再建築不可の土地だけを選んで放棄することはできません。相続放棄は、預貯金・不動産・借金など、被相続人のすべての財産をまとめて放棄するものです(裁判所)。たとえば「不便な土地は放棄して、預貯金だけ受け取る」ということは法律上できません。
また、相続放棄をした後でも注意が必要な点があります。放棄した時点で、その土地や建物を実際に管理・占有していた場合は、相続人または相続財産清算人(後述)に引き渡すまでの間、その財産を保存する義務が残ります(法務省)。ただし、この義務は「実際に占有していた財産」に限られます。被相続人が住んでいた家に自分は住んでいなかった、という場合は、この義務は生じないとされています(法務省)。
さらに、相続放棄をしても「みなし相続財産」には注意が必要です。被相続人が保険料を負担していた死亡保険金などは、相続放棄をしても受け取ることができますが、その場合は課税関係が生じる可能性があります(国税庁)。また、死亡保険金の非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます(国税庁)。
ここまでのまとめ: 相続放棄は「全財産が対象」であり、不要な土地だけを選んで放棄することはできません。
全員が放棄した後に起きること
相続人全員が相続放棄をした場合、その財産は宙に浮いた状態になります。この場合、家庭裁判所に申し立てることで「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」が選任されます(裁判所)。相続財産清算人とは、残された財産を整理・清算する専門家(弁護士など)のことです。
清算人は被相続人の借金などを支払い、残った財産を最終的に国庫(国の財産)に帰属させます(裁判所)。申立てには収入印紙や官報公告料などの費用がかかります。さらに、清算人の報酬などに充てるための「予納金(よのうきん)」を裁判所から求められることがあり、この金額は財産の状況によって変わります(裁判所)。
なお、相続放棄が受理された後、亡くなった方の財産を管理している場合は相続人に引き継ぐことになります。また、債権者から請求を受けている場合は、相続放棄の申述が受理されたことを連絡するのがよいとされています(裁判所)。
ここまでのまとめ: 全員が放棄すると財産は国に帰属しますが、その前に清算人の選任申立てと費用負担が必要になる場合があります。
相続放棄以外の選択肢「相続土地国庫帰属制度」
相続放棄をしなくても、土地を国に引き取ってもらえる制度があります。それが「相続土地国庫帰属制度(そうぞくとちこっこきぞくせいど)」です。相続または相続人への遺贈(いぞう)で土地を取得した方が対象で、相続登記(名義変更)が済んでいなくても申請できる場合があります(法務省)。
ただし、この制度には使えない条件があります。重要なのは、建物が建っている土地は申請できないという点です(法務省)。再建築不可の土地でも、古い建物が残っている場合は、まず建物を解体する必要があります。解体費用は別途かかりますので、事前に見積もりを取ることをお勧めします。
費用面では、審査手数料として土地1筆(ひとふで)あたり一定の金額がかかります(法務省)。承認された場合は、さらに10年分の標準的な管理費用を考慮した「負担金」を納付する必要があります。負担金の通知が届いた翌日から30日以内に納付しなければなりません(法務省)。相談は全国の法務局・地方法務局の本局で受け付けており、ウェブでの相談も利用できます(法務省)。
また、相続放棄をせずに土地を引き継ぐ場合は、相続登記の義務化にも注意が必要です。2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されており、それ以前の相続で未登記のものも、原則として2027年3月31日までに登記が必要です(法務省)。
ここまでのまとめ: 建物がない土地であれば、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう選択肢もあります。
まとめ
再建築不可の土地を相続することになったとき、選択肢は大きく3つあります。①相続放棄をして全財産を手放す、②相続土地国庫帰属制度を使って土地だけ国に引き取ってもらう、③そのまま相続して売却や活用を検討する、という流れです。どの選択肢が合っているかは、他の財産の状況、建物の有無、費用負担の大きさによって変わります。
最も大切なのは、相続放棄の期限(原則3か月)を過ぎないようにすることです。迷っている間に期限が来てしまうと、選択肢が大きく狭まります。まずは家庭裁判所や法務局、または弁護士・司法書士などの専門家に早めに相談することをお勧めします。
ご自身の土地がどのくらいの価値になるかは、実際の成約データで確認するのが一番の近道です。
参考文献・出典
- 裁判所 – 相続の放棄の申述 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 裁判所 – 裁判手続 家事事件Q&A — https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kazi/index.html
- 裁判所 – 相続財産清算人の選任 — https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
- 国土交通省 – 接道義務(建築基準法第43条第1項)/接道義務に係る特例認定・許可(建築基準法第43条第2項) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf
- 法務省 – 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要 — https://www.moj.go.jp/content/001372966.pdf
- 法務省 – 相続土地国庫帰属制度の概要 — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
- 法務省 – 相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件 — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html
- 法務省 – 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html
- 法務省 – 相続土地国庫帰属制度の負担金 — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
- 法務省 – 相続土地国庫帰属制度の相談対応について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00498.html
- 法務省 – 相続登記の申請義務化について — https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 国税庁 – No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
- 国税庁 – 第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》関係 — https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/02.htm
- 国税庁 – No.4132 相続人の範囲と法定相続分 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
- 旭川家庭裁判所 – 相続放棄申述手続説明(R6.10版) — https://www.courts.go.jp/asahikawa/vc-files/asahikawa/R610_kasai_tetudukiannai_kousin/0302_sasikae_R610_kotira_souzokuhoukisinjutu.pdf
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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