この記事の結論
- ワンルームマンション売却の譲渡損失は、原則として給与所得や事業所得との損益通算はできません。
- 減価償却で建物の取得費が下がるため、売値が購入額より低くても税務上は利益になる場合があります。
- 申告期限は売却した翌年の2月16日〜3月15日で、分離課税として確定申告が必要です。
ワンルームマンション投資を売却したとき、「損失が出たから税金はかからないはず」と思っていたら、実際には思わぬ税負担が発生した——そんなケースが少なくありません。売却損と税金の関係は、一般的なイメージとは大きく異なる仕組みになっているからです。この記事では、国税庁の情報をもとに、売却時の損失がどう扱われるのか、税金の計算方法、申告の手順まで、初心者にもわかりやすく解説します。売却を検討している方も、すでに売却を終えた方も、ぜひ最後まで読んで正確な知識を身につけてください。
損失が出ても税金がかかる?その仕組みを理解する

まず押さえておきたいのは、不動産売却の税金は「申告分離課税」という仕組みで計算されるという点です。国税庁によると、土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離して計算することになっています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm)。つまり、給与収入がいくらあっても、不動産の売却損益はそれとは別の計算式で処理されます。
さらに重要なのは、売却損が出ても給与所得や事業所得と損益通算できないという原則です。国税庁の情報によれば、土地や建物の譲渡損失が生じた場合、その損失は他の土地・建物の譲渡所得の金額から控除できますが、控除しきれない損失は事業所得や給与所得などとは通算できないとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm)。同じ年に別の不動産を売って利益が出ていれば、その範囲で損失を充てることは可能ですが、それ以外の所得には影響しません。
なお、例外として「居住用財産の譲渡損失」については、一定の要件を満たす場合に限り、給与所得などとの損益通算が認められています。しかし、賃貸運用中の投資用ワンルームは「現に自分が住んでいる家屋」などの要件を通常は満たさないため、この特例の対象外になりやすい点に注意が必要です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm)。
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「売却損」と思っていても税務上は利益になる理由

実際に売却してみると、「購入額より安く売ったのに税金が発生した」という状況が起こりえます。その原因が、建物の減価償却による取得費の減少です。
国税庁によると、建物の取得費は購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額になります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm)。賃貸用ワンルームのように業務用として扱う建物では、取得から売却までの毎年の減価償却費の合計額が取得費から差し引かれます。仮に毎年の減価償却費を必要経費として計上していない年があったとしても、合計額で計算することに変わりはないとされています。
譲渡所得の計算式は「売却代金 − 取得費 − 譲渡費用」です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm)。たとえば、1,500万円で購入したワンルームを1,200万円で売却した場合でも、長年の減価償却で建物の取得費が大幅に下がっていれば、計算上は利益が出ることがあります。購入額より安く売っても税務上は利益になる可能性があるという点は、多くの投資家が見落としやすい落とし穴です。
取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却代金の5%未満の場合は、売却代金の5%を概算取得費として使うことができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm)。ただし、この方法を使うと取得費がさらに低くなり、課税額が増える場合もあるため、購入時の契約書や領収書はできる限り保管しておくことが大切です。
譲渡費用として認められるものと認められないもの
譲渡損益の計算では、売却にかかった費用を「譲渡費用」として差し引くことができます。何が対象になるかを正確に把握しておくと、課税額を適切に計算できます。
国税庁によると、譲渡費用として認められる主なものは、土地や建物を売るために支払った仲介手数料、売主が負担した印紙税、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料、土地などを売るためにその上の建物を取り壊した費用や損失、既に締結していた売買契約を解除して別の契約を結ぶために支払った違約金などです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)。
一方で、修繕費や固定資産税などの維持管理費は譲渡費用にはなりません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)。日常的な管理コストは運用期間中の必要経費として処理するものであり、売却時の計算には含められない点を覚えておきましょう。また、売買代金とは別に、譲渡日から年末までの未経過固定資産税等に相当する額を買主から受け取った場合は、その額が譲渡価額に算入されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf)。
売却益が出た場合の税率と所有期間の関係
売却して利益が出た場合、税率は所有期間によって大きく変わります。国税庁によると、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば「長期譲渡所得」、5年以下なら「短期譲渡所得」に区分されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm)。
税率の差は非常に大きく、長期譲渡所得の場合は所得税15%・住民税5%であるのに対し、短期譲渡所得の場合は所得税30%・住民税9%となります。さらにどちらの場合も、所得税額に対して復興特別所得税(2.1%)が加算されます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm)。短期と長期では税率が約2倍異なるため、売却のタイミングは所有期間を意識して判断することが重要です。
たとえば、課税譲渡所得が500万円だった場合、長期なら所得税75万円+住民税25万円(合計100万円程度)ですが、短期なら所得税150万円+住民税45万円(合計195万円程度)と、大きな差が生じます。売却を急ぐ場合でも、1月1日時点の所有期間を確認してから動くことで、税負担を大幅に抑えられる可能性があります。
確定申告の手順と消費税の注意点
売却後の申告手続きについても、正確に理解しておく必要があります。国税庁によると、譲渡所得の申告期限は、資産を譲渡した年の翌年の2月16日から3月15日までです(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。損失が出た場合でも、同年に他の不動産売却益がある場合などは申告が必要になるケースがあります。
申告の際に必要な書類は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書」「申告書第三表(分離課税用)」「譲渡所得の内訳書(土地・建物用)」です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm)。これらを揃えて提出すれば、住民税や事業税の申告書を別途提出する必要はありません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf)。
消費税についても注意が必要です。国税庁によると、住宅賃貸用の建物を売却した場合は消費税の課税対象となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3240.htm)。ただし、消費税の納税義務は別途判定が必要で、基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業者は、課税事業者を選択していない限り原則として免税となります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6121.htm)。土地部分は消費税の課税対象外ですが、建物・土地の按分計算など詳細な実務については、税理士や税務署に個別に確認することをおすすめします。
まとめ
ワンルームマンションの売却で損失が出た場合、給与所得などとの損益通算は原則としてできません。また、減価償却によって建物の取得費が下がっているため、売値が購入額を下回っていても税務上は利益が生じるケースがある点は特に注意が必要です。売却益が出た場合の税率は、所有期間5年超の長期か5年以下の短期かで大きく異なり、売却タイミングの判断が税負担に直結します。申告期限は売却翌年の2月16日〜3月15日で、必要書類を揃えて確定申告を行う必要があります。税務上の判断は個別の事情によって異なるため、具体的な計算や申告については税理士や最寄りの税務署に相談することを強くおすすめします。正確な知識を持って売却に臨むことが、不動産投資の成功につながります。
参考文献・出典
- 国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税) — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁 No.3252 取得費となるもの — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
- 国税庁 No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3240.htm
- 国税庁 No.6121 納税義務者 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6121.htm
- 国税庁 令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/O/O10.pdf