アパート経営を始めようと考えたとき、「どこから融資を受ければいいのか」「金利はどのくらいかかるのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。民間銀行のアパートローンは商品が多く、金利も変動するため、初心者には比較が難しいのが現実です。そこで有力な選択肢となるのが、住宅金融支援機構が提供する賃貸住宅建設融資です。長期の固定金利で資金計画を立てたい投資家にとって、検討する価値の高い融資といえます。この記事では、住宅金融支援機構のアパートローンの金利や特徴、金利引下げ制度、民間ローンとの違いまでを最新情報にもとづいて解説します。
住宅金融支援機構のアパートローンとは何か
住宅金融支援機構は、国が設立した政策金融機関であり、民間金融機関では対応しにくい長期・固定金利の融資を提供することを目的としています。個人向け住宅ローンの「フラット35」で知られていますが、賃貸住宅のオーナー向けにも融資商品を用意しています。ここでまず押さえておきたいのは、この商品が「機構 すまい・る賃貸ローン」と呼ばれ、アパートやマンションなどを建設するための資金を対象としている点です。機構の案内でも「アパート・マンション等を建設するためにご利用いただける賃貸住宅のオーナー様向けアパートローンです」と明記されています。
つまり、既存の一棟アパートを購入するための融資というよりも、新たに賃貸住宅を建てる建設資金ローンとして理解するのが正確です。この点は民間のアパートローンと大きく性格が異なるため、既存物件の取得を考えている方は自分の計画に合うかどうかを事前に確認する必要があります。
申込みは個人でも法人でも可能で、融資額は建築工事費など融資対象となる事業費の100%以内とされています。返済期間は最長40年と非常に長く設定されており、月々の返済負担を抑えながら経営を続けやすい点が魅力です。金利タイプは35年固定と15年固定の2種類が基本設計となっています。融資手数料や返済方法変更手数料、繰上返済手数料が不要である点も、コスト面での利点といえるでしょう。
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「全期間固定」は正確ではない点に注意
住宅金融支援機構の融資は「全期間固定金利」と紹介されることが多いのですが、実はこの表現をそのまま受け取ると誤解を招く場合があります。機構の資料によると、15年固定金利を選んだ場合や、返済期間が35年を超える35年固定金利を選んだ場合には、当初固定金利適用期間が経過した時点で適用利率が見直される仕組みになっています。
言い換えると、15年固定を選んだ場合、当初の15年間は金利が変わりませんが、その後は契約時点で定められた条件にもとづいて金利が見直されます。返済期間を40年に設定した35年固定でも、35年経過後に見直しが入ります。したがって「借入時の金利が返済終了まで一切変わらない」と考えるのは正確ではありません。長期の収支計画を立てる際は、この見直しの存在を前提に余裕を持たせておくことが重要です。
最新の参考金利と繰上返済制限制度の仕組み
次に、実際の金利水準を見ていきましょう。住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資には、35年固定と15年固定の2タイプがあり、さらに繰上返済制限制度を利用するかどうかで金利が変わります。そのため、合計4通りの金利設定が存在することになります。
参考金利を見ると、一般住宅型の賃貸住宅建設融資では、繰上返済制限制度を利用する場合と利用しない場合で異なる金利が設定されています。制限制度を選ぶと金利が低くなる仕組みで、一定期間は繰上返済を制限する代わりに有利な金利が適用されるわけです。
ただし、この制度には注意が必要です。繰上返済制限制度を選んだうえで、契約締結日から一定期間内に債務の全部または一部を繰上返済する場合には、利息とは別に違約金がかかる仕組みになっています。将来的に早期完済や売却を視野に入れているなら、金利の低さだけで安易に選ばず、この違約金の存在を踏まえて判断すべきです。
一方、サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資(施設共用型)では、一般型より高めに設定されています。施設の特性上、リスク評価が異なるためと考えられます。
ここで最も大切な点を押さえておきましょう。これらはあくまで「参考金利」であり、実際の借入金利は申込受付月の約2か月後の月末に、機構債券の利回りなどを勘案して決定されます。参考金利は毎月更新されるため、金融情勢によって申込時点の水準と異なる場合があります。資金計画を立てる際は、必ず機構の公式サイトで最新の金利を確認してください。
金利引下げ制度で借入コストを抑える
住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資には、一定の基準を満たすことで金利が引き下げられる優遇制度が用意されています。うまく活用すれば、返済初期の負担を大きく減らせる可能性があります。
具体的には、長期優良住宅の基準に適合する賃貸住宅、集合住宅版のゼロ・エネルギー・ハウスであるZEH-M、子育て配慮賃貸住宅など、一定の基準を満たす場合に当初一定期間の金利引下げが適用されます。
さらに、これらの引下げは組み合わせが可能です。複数の基準に適合すれば、より大きな引下げが受けられるとされています。当初の一定期間という限定的な期間ではありますが、返済初期のキャッシュフローに与える効果は非常に大きいといえます。省エネ性能や子育て対応といった社会的ニーズに応える物件づくりが、金利面でも入居者募集の面でも有利に働くため、長期の空室対策としても意義があります。
ただし、注意したい点もあります。子育て省エネ型やサービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資では、土地取得費を融資対象とする取扱いが原則として停止されています。そのため、原則として土地取得費に相当する額以上の手持金を事業費に充てる必要があり、想定以上の自己資金を求められるケースがあります。優遇を狙う場合は、この資金負担も含めて計画を立てることが欠かせません。
担保・保証など実務上の条件
融資を検討するうえで、金利以外の条件も丁寧に確認しておく必要があります。住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資では、融資対象となる建物と土地に機構のための第1順位の抵当権を設定することが求められます。すでに他の借入がある場合には制約となることがあるため、既存の債務は事前に整理しておくとよいでしょう。
また、保証能力のある法人または個人の連帯保証人をつける必要があり、申込人が法人の場合はその経営者が連帯保証人となります。返済終了まで機構が定める要件を満たす火災保険への加入も義務づけられています。物件検査も基本条件となっており、保証機関の保証を利用する場合には別途保証料が必要です。手数料が少ない一方で、こうした担保・保証面の要件は実務上決して軽くない点を理解しておきましょう。
民間アパートローン・他の公的融資との比較
住宅金融支援機構の融資の位置づけを理解するために、民間の不動産投資ローンと比べてみましょう。民間金融機関の金利は各行や審査結果によって幅があります。専門メディアの比較によると、民間銀行の変動金利帯は各行で異なる水準が示されています。数字だけを見ると、民間の変動金利のほうが低く感じられるかもしれません。
しかし、ここで重要なのは金利タイプの違いです。民間の変動金利は現時点では低く見えても、将来の金利上昇リスクを借り手が負う構造になっています。一方、機構の融資は当初固定期間中は金利が変わらないため、返済初期の収支を確実に見通せます。目先の金利水準だけでなく、リスクをどちらが負うかという観点で比較することが欠かせません。
対象エリアや利用条件も各行で異なります。同じ比較によれば、LTV(物件価格に対する融資割合)はオリックス銀行や静岡銀行が最大100%、千葉銀行が80%〜90%、横浜銀行が70%〜90%とされています。オリックス銀行の不動産投資ローンは商品説明書によると、対象を原則として首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市に限っており、全国一律ではありません。年収は原則500万円以上、同一勤務先3年以上などの目安があり、団信加入が前提です。スルガ銀行の資産活用ローン「スーパーアセットプラン」の参考金利は2026年8月3日時点で2.800%〜5.500%と公表されています。
また、民間には新規購入ではなく借り換え専用の商品もあります。東京スター銀行の投資用商品は、公式に「新規の投資用不動産の購入にはご利用いただけません」と明記されており、個人名義の借り換え専用として区分マンションや一棟アパート、戸建てに対応しています。このように、同じ「アパートローン」でも新規建設向け、購入向け、借り換え向けと役割が分かれている点を理解しておくと選びやすくなります。
手数料や繰上返済時のコストにも差があります。オリックス銀行では取扱事務手数料が借入金額の2.20%以内で、繰上返済時には解約金や手数料が発生する場合があります。SBJ銀行の資産管理法人代表者向け賃貸用不動産ローンは事務手数料1.65%、繰上返済手数料2.00%で、LTVは鑑定評価額か売買金額の低いほうの90%以内とされています。金利の高低だけでなく、こうした付随コストまで含めて総額で比較することが賢明です。
公的な選択肢としては、日本政策金融公庫も比較対象になります。国民生活事業では、一定の要件を満たす不動産賃貸業も制度融資の対象になりうるとされています。令和8年7月1日現在の基準利率は、国民生活事業の無担保で3.50%〜5.20%、有担保で2.50%〜4.80%です。アパート専用ローンではありませんが、公的な資金調達手段として住宅金融支援機構と合わせて検討する価値があります。
まとめ
住宅金融支援機構のアパートローンは、賃貸住宅を建設するオーナー向けに、当初固定金利と最長40年という長期の返済期間を組み合わせた融資です。参考金利では、一般住宅型で35年固定と15年固定の2タイプが設定されており、長期優良住宅やZEH-M、子育て配慮基準への適合によって当初期間の金利引下げも受けられます。
ただし、15年固定や返済期間35年超の35年固定では当初固定期間後に金利見直しがある点、繰上返済制限制度には一定期間内の繰上返済で違約金がかかる点、土地取得費が原則融資対象外となる商品がある点など、事前に理解しておくべき条件が少なくありません。民間ローンや日本政策金融公庫と比較する際は、金利水準だけでなく、固定か変動か、対象エリアや年収条件、手数料や担保条件まで含めて総合的に判断することが大切です。
不動産投資は長期にわたる取り組みです。参考金利は毎月更新されるため、実際の適用金利は申込後に決まる点を忘れず、焦らず複数の選択肢を比較しましょう。まずは住宅金融支援機構の公式サイトや最寄りの窓口で、最新の金利と条件を確認することをおすすめします。
参考文献・出典
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅経営に固定金利の安心『機構 すまい・る賃貸ローン』」 – https://www.jhf.go.jp/lp/rent-build/index.html
- 住宅金融支援機構「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資・まちづくり融資のご案内」 – https://www.jhf.go.jp/files/topics/6221_ext_99_2.pdf
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅を建設する場合 令和8年8月の参考金利のお知らせ」 – https://www.jhf.go.jp/files/topics/5378_ext_99_0.pdf
- 日本政策金融公庫「金利情報 小規模事業者/個人事業主の方」 – https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
- 日本政策金融公庫「融資制度一覧」 – https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_k_02.html
- オリックス銀行「不動産投資ローン 商品説明書」 – https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
- 東京スター銀行「投資用借り換えローン(スター不動産担保ローン)」 – https://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/mortgage_collateral/investment_refinance.html
- SBJ銀行「団体信用生命保険付き 賃貸用不動産ローン」 – https://www.sbjbank.co.jp/hojin/funding/real-estate-loans/
- スルガ銀行「ローン金利」 – https://www.surugabank.co.jp/suruga/pc/Rate?formNo=00204
- Wealth Agent「主要14銀行の不動産投資ローン比較|金利・融資期間・LTVを完全解説」 – https://www.agent-hp.com/real-estate-investment-loan-comparison/
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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