「借地権って、そもそも売れるの?」と思っている方は多いはずです。相続で引き継いだ実家が借地権付きだった、住み替えを考えているが借地権の家をどう処分すればいいかわからない、そんな悩みを抱えて調べ始めた方に向けて、この記事では借地権の売却相場の目安と、実際の手残り金額の考え方をわかりやすく解説します。「相場は更地価格の何%か」「地主に売るのと第三者に売るのでどう違うか」「承諾料などの費用を引くといくら残るか」という3つの疑問に、順を追ってお答えします。
借地権とは何か、まず確認しておきましょう

借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利のことです。土地は地主のものですが、その上に建つ建物は借地人(あなた)のものです。この「土地を使う権利」自体にも価値があり、売買の対象になります。
借地権には大きく分けて「地上権(ちじょうけん)」と「土地賃借権(とちちんしゃくけん)」の2種類があります。地上権は原則として地主の承諾なしに売却できますが、土地賃借権を第三者に売る場合は地主の承諾が必要です(裁判所 東京地方裁判所 借地非訟の説明より)。多くの一般住宅は土地賃借権のケースが多いため、売却には地主との話し合いが欠かせません。
また、借地権には「普通借地権」と「定期借地権(一般定期借地権)」という区分もあります。一般定期借地権は借地期間が50年以上で、期間満了時に確定的に終了する契約です(国税庁 No.4612)。残存期間が短いほど売却価格に影響しやすいため、自分の契約がどちらかを確認しておくことが大切です。
ここまでのまとめ: 借地権は売れる権利ですが、種類によって地主の承諾が必要かどうかが変わります。
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売却相場の基本的な計算の仕組み

借地権の相場を考えるとき、まず「更地価格(土地が完全に自分のものだったら何円か)」を出発点にします。そこに「借地権割合」をかけ算するのが基本的な考え方です(国税庁 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利)。
借地権割合とは、土地の価値のうち借地権が占める割合のことです。国税庁が公表している路線価図(ろせんかず)に記載されており、A〜Gのアルファベットで示されています。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%という対応関係になっています(国税庁 路線価図の説明)。地域によって借地権割合は異なり、路線価図で確認することができます。
ただし、路線価は実勢価格(実際の取引価格)より低めに設定されているのが一般的です。路線価は実勢価格の8割程度を目安に設定されているとされており(アットホーム)、実際の取引価格に近い数字を知りたい場合は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で近隣の成約事例を確認することをおすすめします(国土交通省 不動産情報ライブラリ)。
ここまでのまとめ: 相場の出発点は「更地価格×借地権割合」ですが、路線価ベースの計算は実勢価格より低めに出やすい点に注意が必要です。
売り方によって相場はこれだけ変わる
借地権の売却相場は、誰に売るかによって更地価格に対する割合が変わります。この差を知らずに動くと、本来より低い金額で手放してしまうリスクがあります。
まず、地主に直接売却する場合の目安を見てみましょう。借地人側から地主に「買ってほしい」と持ちかける場合と、逆に地主側から「買い戻したい」と打診があった場合では、交渉上の有利不利が異なります(住友不動産ステップ)。地主側から声をかけてきたケースの方が、交渉上有利になりやすいのが実態です。
一方、第三者(一般の買い手)に売る場合は、仲介を通じた売却や買取業者への売却という選択肢があります(住友不動産ステップ)。また、地主と借地人が協力して底地(そこち:地主が持つ土地の権利)と借地権をまとめて売る「同時売却」では、所有権価格に近い金額になりやすく、さらに等価交換(とうかこうかん:借地権と底地を交換して完全な所有権にする方法)を経てから売れば、所有権価格での売却も可能とされています(住友不動産ステップ)。
地主に売る場合の大きなメリットは、第三者売却で必要になる「譲渡承諾料」が不要になる点です(長谷工の仲介)。この費用が不要になることで、手続きもシンプルになります。
ここまでのまとめ: 地主への売却は手続きが楽ですが価格は低め、第三者への仲介売却は高くなりやすい分、承諾料などの費用がかかります。
手残り金額の計算で見落としがちな費用
相場の%だけを見ていると、実際に手元に残る金額を見誤ることがあります。第三者に売る場合は、いくつかの費用を差し引いて考える必要があります。
まず「譲渡承諾料(じょうとしょうだくりょう)」です。国土交通省によると、譲渡承諾料(名義変更料)は発生例が少ないとされており、定率で売却価格の一定割合とする公式ルールは確認できません。承諾料の有無や額は契約・地域・個別交渉によって変わります(国土交通省)。別の資料では借地権価格の5〜15%程度という幅で示されており(SUUMO)、地主との関係や物件の状況によって変わります。
また、第三者に売る場合は、所有権物件と比べて買い手が見つかりにくいため、借地権価格からさらに10〜20%程度の減価がかかるという考え方もあります(アットホーム)。具体的なイメージとして、更地価格5,000万円・借地権割合70%の物件では計算上3,500万円になりますが、減価と承諾料を引くと実質的な手残りは2,500万〜3,000万円程度になるという例が示されています(アットホーム)。
税金の面でも注意が必要です。売買代金だけでなく、固定資産税の精算金なども譲渡価額(収入金額)に含まれます(国税庁 No.3214)。また、過去に支払った更新料は取得費として計算に入れられる場合があります(国税庁 借地権の譲渡所得の計算)。税金の計算は個別の事情によって異なるため、詳細は税理士や国税庁の公式サイトでご確認ください。
ここまでのまとめ: 手残りは「売却価格から承諾料・仲介手数料・税金を引いた金額」で考えることが大切です。
売却価格を左右する4つの要因
同じ借地権でも、物件によって価格が大きく変わることがあります。価格を動かす主な要因を理解しておくと、査定結果を正しく読み解けます。
実際の売買価格を強く動かす要因として、現在の地代の額、契約の残り期間、地主との関係性、建物の老朽化具合の4つが挙げられています(センチュリー21中央プロパティー)。地代が相場より低い物件は買い手にとって魅力的ですが、高すぎる地代は収益性を下げるため価格に悪影響を与えます。残存期間については、一般定期借地権の場合は特に残り年数が価格に直結しやすいため注意が必要です。
地主との関係性も見逃せないポイントです。地主が協力的で、承諾をスムーズに得られる見込みがある物件は、買い手にとってリスクが低く、価格が上がりやすくなります。逆に地主が承諾を拒否するケースでは、借地人は裁判所に「土地賃借権譲渡許可」を申し立てることができますが(裁判所 東京地方裁判所)、時間と費用がかかるため、売却の難易度が上がります。
借地権付き建物として売る場合の相場は、更地価格に対する割合が異なるという整理もあります(センチュリー21中央プロパティー)。権利だけの売却と建物込みの売却では計算の前提が違うため、混同しないよう注意してください。
ここまでのまとめ: 地代・残存期間・地主との関係・建物の状態の4つが、査定価格を大きく左右します。
まとめ
借地権の売却相場は、売り方によって更地価格に対する割合が異なります。地主への直接売却は手続きが楽な反面、価格は低めになりやすく、第三者への仲介売却は高くなりやすい分、譲渡承諾料などの費用がかかります。同時売却や等価交換を活用すると、所有権に近い価格での売却も視野に入ります。
大切なのは、相場の%だけを見るのではなく、承諾料・仲介手数料・税金を差し引いた「手残り金額」で比較することです。また、地代・残存期間・地主との関係・建物の状態という4つの要因が価格を左右するため、自分の物件がどの条件に当てはまるかを整理してから動くと、交渉をより有利に進められます。
ご自身の物件が実際にいくらになるかは、近隣の成約データと照らし合わせて確かめるのが早道です。
参考文献・出典
- 国税庁 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利 — https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/06.htm
- 国税庁 路線価図の説明 — https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
- 裁判所 東京地方裁判所 第1 借地非訟とは — https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html
- 国税庁 No.4612 一般定期借地権の目的となっている宅地の評価 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4612.htm
- 国税庁 No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm
- 国税庁 借地権の譲渡所得の計算 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/05/12.htm
- 国土交通省 借地借家制度に関する資料 — https://www.mlit.go.jp/common/001204001.pdf
- アットホーム 借地権の売却相場は?価格の計算シミュレーションと地主交渉のポイントを解説 — https://www.athome.co.jp/contents/for-sellers/sellers-knowhow/leasehold-selling-price/
- SUUMO 借地権は売却できる?売却方法や流れ、コツを紹介 — https://suumo.jp/baikyaku/guide/entry/bk_shakuchiken
- 長谷工の仲介 借地権の売却相場は?目安の計算方法や売却時の注意点を解説 — https://www.haseko-chukai.com/column/sell/leasehold-price.html
- 住友不動産ステップ 借地権は売却できる?売却方法や相場・地主の承諾から手続きの流れまで解説 — https://www.stepon.co.jp/uri/column/190/
- センチュリー21中央プロパティー 借地権付き建物の売却相場と地主に断られた時の対処法 — https://www.century21-sell.jp/reading/13675/
- センチュリー21中央プロパティー 借地権売却時の評価方法は?相続税評価額と実勢価格の違い・計算式を解説 — https://www.century21-sell.jp/reading/11757/
- 全宅連 Realpartner 2017年4月号 — https://www.zentaku.or.jp/wp-content/themes/zentaku/pdf/useful/realpartner/rp2017_04.pdf
一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。
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