不動産の税金

共有持分の売却相場、理論価格の30〜70%になる理由

この記事の結論

  • 共有持分の売却相場は、不動産全体の評価額×持分割合を基準に、売却先によって30〜100%の幅がある。
  • 買取業者への売却は理論価格より低く、第三者への売却はそれより高い傾向が見られる。
  • 相場を正確に知るには固定資産税評価額ではなく、実勢価格(実際の取引価格)を基準に査定を受けることが重要。

「相続した実家が兄弟と共有名義になっている」「離婚で夫婦共有の家をどうするか悩んでいる」——そんな状況で「共有持分 売却 相場」と検索してきた方は多いのではないでしょうか。共有持分(きょうゆうもちぶん)とは、複数の人が1つの不動産を共同で所有しているときの、それぞれの所有割合のことです。この持分だけを売ることは法律上できますが、「いくらで売れるのか」がわかりにくく、不安を感じている方も多いはずです。この記事では、共有持分の売却相場の考え方から、売却先ごとの価格の目安、相場が下がる理由まで、不動産の知識がなくても理解できるよう丁寧に解説します。

共有持分の売却相場の基本的な考え方

共有持分の売却相場の基本的な考え方のイメージ

まず押さえておきたいのは、共有持分の売却相場には「理論上の価値」と「実際に売れる価格」の2つがあるという点です。この2つは大きく異なることが多く、ここを理解しておくと相場感がつかみやすくなります。

理論上の価値は、「不動産全体の評価額×持分割合」で計算します。たとえば市場価格が4,000万円の物件で、あなたの持分が2分の1なら、理論上の価値は2,000万円です。国税庁の資料でも、税務上の評価は「共有地全体の価額に持分割合を乗じて算出する」と説明されています(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/01/01.htm)。

しかし実際の売却価格は、この理論値よりも大幅に低くなることがほとんどです。なぜなら、共有持分だけを買っても、その不動産を自由に使ったり売ったりするには他の共有者の同意が必要だからです。国土交通省の資料によると、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要とされています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001122953.pdf)。買い手にとってリスクが高い分、価格が下がるのは自然な流れです。

また、相場を調べる際には固定資産税評価額ではなく、実際の取引価格(実勢価格)を基準にすることが大切です。固定資産税評価額は実勢価格より低く設定されていることが多く、それを基準にすると相場を見誤る可能性があります。

ここまでのまとめ: 共有持分の相場は「全体評価額×持分割合」が出発点だが、実際の売却価格はそれより大幅に低くなることが多い。

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売却先によって相場はこれだけ変わる

売却先によって相場はこれだけ変わるのイメージ

共有持分の売却価格は、誰に売るかによって大きく変わります。これを知らずに動くと、本来より低い価格で売ってしまうリスクがあります。

長谷工の仲介が公開している情報によると、売却先ごとの目安は次のようになっています(長谷工の仲介 https://www.haseko-chukai.com/column/sell/sell-co-ownership.html)。他の共有者に売る場合は理論価格に近い満額相当、専門の買取業者に売る場合は理論価格より低い水準、第三者(一般の個人など)に売る場合はそれより高い水準が目安とされています。

具体的な数字で見てみましょう。HOMES(ホームズ)の解説では、市場価格4,000万円の物件の2分の1持分を第三者に売る場合、600万〜1,200万円になる計算例が示されています(HOMES https://www.homes.co.jp/satei/media/entry/202503/1101)。理論上の価値は2,000万円ですから、実際の売却価格はその3〜6割程度まで下がる可能性があるということです。

さらに、共有者との関係性も価格に影響します。イエコンの情報によると、共有者と関係が良好な場合と悪い場合では売却価格に大きな差が生じることもあるとされています(イエコン https://iekon.jp/column/coownership-interest/1420/)。相続でもめている、連絡が取れないといった状況では、価格がさらに厳しくなることを覚悟しておく必要があります。

ここまでのまとめ: 売却先は「他の共有者>第三者>買取業者」の順に高く売れる傾向があり、共有者との関係性も価格を左右する。

相場が下がる理由を知っておく

なぜ共有持分はこれほど安くなるのでしょうか。その理由を理解しておくと、売却交渉でも冷静に判断できます。

最大の理由は、共有持分だけを買っても「その不動産を自由に使えない」という点にあります。たとえば、あなたの持分を買った人が「この家に住みたい」と思っても、他の共有者が反対すれば自由に使うことはできません。また、物件全体を売ろうとしても、他の共有者全員の同意が必要です。東京都行政書士会のガイドブックでも、「共有者に一人でも売却に反対している人がいる場合、共有している不動産の全体を売却することはできない」と明記されています(東京都行政書士会 https://www.tokyo-gyosei.or.jp/conference/akiya-support/guidebook2024.pdf)。

日本不動産鑑定士協会連合会の説明では、ファミリーマンションの1室のような分割できない物件の場合、持分だけを売ると市場性減価(相場より安くなること)が生じることが一般的だとされています(日本不動産鑑定士協会連合会 https://jarea.org/request_consul/rea_mediation_center/index.html)。これは比較的条件が良いケースの話であり、状況によってはさらに大きく下がることもあります。

また、東京都不動産鑑定士協会の資料では、自分の持分だけを第三者に売ろうとする場合には、大幅な減価を余儀なくされると説明されています(東京都不動産鑑定士協会 https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/wp-content/themes/guest/assets/images/pdf/TAREA84.pdf)。一方、共有者全員が同時に1人に売る場合は、持分が単独所有になるため価格が上がりやすいとも述べられています。

ここまでのまとめ: 相場が下がる最大の理由は「買っても自由に使えない」というリスクで、これが価格に大きく反映される。

高く売るための3つの選択肢

相場が低いとわかっても、できるだけ高く売りたいのは当然です。実は、売り方を工夫することで受け取れる金額を大きく変えられる可能性があります。

最も高く売れる可能性があるのは、他の共有者に買い取ってもらう方法です。共有者にとっては、あなたの持分を買えば単独所有に近づくメリットがあるため、理論価格に近い金額での交渉が成立しやすくなります。ただし、共有者に資金力がない場合や、関係が悪化している場合は交渉が難しいこともあります。

次に検討したいのが、共有者全員で協力して物件全体を売る方法です。全員が同意して一括売却すれば、通常の不動産売却と同じ価格で売れます。売却後に持分割合に応じて代金を分け合うため、それぞれが受け取れる金額は最大化されます。東京都行政書士会のガイドブックでは、共有者間でまとまらない場合の出口として、共有物分割の調停や共有物分割請求訴訟という手段も挙げられています(東京都行政書士会 https://www.tokyo-gyosei.or.jp/conference/akiya-support/guidebook2024.pdf)。

どうしても他の共有者と話し合いができない場合は、専門の買取業者への売却が現実的な選択肢になります。買取業者への売却は相場が低くなりますが、早期に現金化できるという大きなメリットがあります。共有持分の窓口の情報によると、売却先によって受け取れる金額に大きな差が生じることが示されています(共有持分の窓口 https://wakegai.jp/knowledge/kyouyu-mochibun/buy-sell/co-ownership-market-price-2/)。

ここまでのまとめ: 高く売るには「共有者への売却」か「全員での一括売却」が有効で、急ぐなら買取業者という選択肢もある。

売却前に確認しておきたい費用と税金

売却価格が決まっても、手元に残る金額はそこから諸費用と税金を引いた額になります。事前に把握しておくと、資金計画が立てやすくなります。

売却にかかる主な費用として、仲介手数料・測量費・売買契約書に貼る収入印紙代などがあります。国税庁の資料によると、これらは「譲渡費用」として売却益の計算に含めることができます(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/pdf/O/O4.pdf)。一方、修繕費や固定資産税は譲渡費用には含まれないため、注意が必要です。

税金については、売却益(売った価格から取得費と譲渡費用を引いた額)に対して譲渡所得税がかかります。相続で取得した場合は取得費の計算が複雑になることもあるため、税理士に相談することをおすすめします。また、売却先が買取業者の場合は仲介手数料がかからないケースもあり、手取り額の計算が変わることもあります。

ここまでのまとめ: 手取り額は売却価格から仲介手数料・印紙代・税金を引いた額になるため、事前のシミュレーションが大切。

まとめ

共有持分の売却相場は、不動産全体の評価額×持分割合を基準に、売却先によって大きく変わります。他の共有者への売却なら理論価格に近い金額が期待できますが、専門の買取業者への売却では理論価格より低い水準になることが一般的です。相場が低くなる根本的な理由は、「買っても自由に使えない」という買い手側のリスクにあります。

大切なのは、固定資産税評価額ではなく実勢価格を基準に考えること、そして売却先の選択肢を複数比較することです。共有者との関係性や物件の状況によって最適な方法は異なるため、まずは専門家に相談しながら自分の状況に合った出口を探すことが、後悔しない売却への第一歩になります。

ご自身の物件がいくらになるかは、実際の成約データをもとにした査定で確かめるのが最も確実です。

参考文献・出典

  • 国税庁「共有地の評価」 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/01/01.htm
  • 国土交通省「共有物の処分・管理・共有持分売買の解説資料」 — https://www.mlit.go.jp/common/001122953.pdf
  • 国税庁「土地(共有)を売却して譲渡益が算出されるケース」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/pdf/O/O4.pdf
  • 日本不動産鑑定士協会連合会「不動産鑑定士調停センター」 — https://jarea.org/request_consul/rea_mediation_center/index.html
  • 公益社団法人 東京都不動産鑑定士協会「かんてい・TOKYO No.84」 — https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/wp-content/themes/guest/assets/images/pdf/TAREA84.pdf
  • 長谷工の仲介「共有持分・共有名義の不動産は売れない?売却方法やよくあるトラブル例と対処法を解説」 — https://www.haseko-chukai.com/column/sell/sell-co-ownership.html
  • HOMES「不動産の共有持分は売却できる?方法や相場・トラブル事例も紹介」 — https://www.homes.co.jp/satei/media/entry/202503/1101
  • イエコン「共有持分の売却相場は?相場目安の一覧表や売却価格のシミュレーションなど徹底解説」 — https://iekon.jp/column/coownership-interest/1420/
  • 共有持分の窓口「共有持分の売却相場はいくら?買取価格の決まり方と高く売る3つの方法とは」 — https://wakegai.jp/knowledge/kyouyu-mochibun/buy-sell/co-ownership-market-price-2/
  • 東京都行政書士会「『家』とくらしの未来 2024 改訂版」 — https://www.tokyo-gyosei.or.jp/conference/akiya-support/guidebook2024.pdf
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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