この記事の結論
- 医師は高属性ゆえに過剰融資を受けやすく、キャッシュフロー悪化で失敗するケースが多い。
- サブリース契約の賃料減額・解除費用リスクを理解せずに契約すると大きな損失につながる。
- 売却時に残債超過が発生しても譲渡損失は給与所得と損益通算できないため注意が必要。
医師として高収入を得ながら、節税や資産形成を目的に不動産投資を始めたものの、思わぬ失敗に直面してしまう——そんな事例は決して珍しくありません。「高収入だから融資が通りやすい」「節税になると聞いた」という理由で物件を購入したものの、数年後に多額の損失を抱えてしまうケースが後を絶ちません。この記事では、医師が不動産投資で失敗しやすい具体的なパターンと、その背景にある構造的な問題を整理します。さらに、失敗を回避するための考え方や確認すべきポイントまで、初心者にも分かりやすく解説します。
医師が不動産投資のターゲットになりやすい理由

まず押さえておきたいのは、医師という職業が不動産業者や金融機関から特別に注目される存在であるという現実です。安定した高収入と社会的信用度の高さから、金融機関の融資審査を通りやすく、業者にとっては「売りやすい顧客」として映ります。
実際、医師向けの不動産投資ローンには、一般的な投資家向けとは異なる条件が設定されている場合があります。たとえば、金融機関によっては高い属性を持つ顧客を対象にした商品が存在し、一般的な融資よりも大きな融資枠が設定されることがあります。こうした融資枠の大きさが、かえって過剰な借入を招く要因になることがあります。
また、多忙な医師は物件調査や契約内容の精査に十分な時間を割けないことが多く、営業担当者の説明をそのまま信じてしまいがちです。「節税効果がある」「手間がかからない」といったセールストークに乗って購入を決断した結果、後になって想定外のリスクが次々と顕在化するというパターンが繰り返されています。
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サブリース契約が引き起こすトラブルの実態

不動産投資の失敗事例で特に多いのが、サブリース契約に関するトラブルです。サブリースとは、不動産管理会社がオーナーから物件を一括借り上げし、入居者に転貸する仕組みのことです。「空室でも家賃が保証される」という点が魅力として強調されますが、実際にはさまざまなリスクが潜んでいます。
消費者庁は、サブリース契約について「近年、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。サブリース契約をする場合は、契約の相手方から説明を受け、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してから契約してください」と注意を呼びかけています(消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_011)。
さらに国土交通省は、サブリース勧誘における問題行為の具体例として、「将来の家賃減額リスクがあること、契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があることや借地借家法の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること、オーナーの維持保全・原状回復・大規模修繕等の費用負担があること等について」説明を行わない行為を挙げています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/sublease.html)。
ある医師の失敗事例では、複数の物件を購入後にサブリース契約の解除を試みたところ、「解除が不可能な契約もあれば、解除には半年分のサブリース賃料を求められるなど、当初想定していた条件とかけ離れた現実が待っていた」というケースが報告されています(Doctor’sライフ https://magazine.shinryo.jp/doctorslife/dslf-vol-09/post-377/)。「家賃保証」という言葉の裏に潜る解除費用と賃料減額リスクを、契約前に必ず確認することが不可欠です。
売却時に発覚する「持ち出し」の衝撃
不動産投資の失敗が決定的になるのは、多くの場合「売却しようとしたとき」です。購入時には将来の売却価格を楽観的に見積もっていても、実際に査定を依頼すると残債(ローン残高)を大きく下回る価格しかつかないケースがあります。
実際の失敗事例として、12件の物件を売却しようとした際に「諸経費やローン残高を賄うために1,000万円以上の持ち出し金が必要であることが判明した」という報告があります(Doctor’sライフ https://magazine.shinryo.jp/doctorslife/dslf-vol-09/post-377/)。これは決して極端な例ではなく、新築プレミアムが剥落した区分マンションや、需要の薄いエリアの物件では同様の事態が起こりやすいと一般的に言われています。
さらに重要なのは、売却時に損失が出た場合の税務上の扱いです。国税庁によると、土地や建物の譲渡所得の損失は、給与所得など他の所得との損益通算ができません(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/fudousan.htm)。つまり、売却で大きな損失を出しても、高収入の医師としての給与所得から差し引いて税負担を減らすことはできないのです。この点を知らずに「最悪売れば損を取り戻せる」と考えていると、大きな誤算につながります。
節税目的の落とし穴と税務の基本知識
医師が不動産投資を始める動機として「節税」を挙げるケースは非常に多いです。確かに、不動産所得に赤字が生じた場合、一定の条件のもとで他の所得と損益通算できる仕組みがあります。国税庁によると、「不動産所得の損失(赤字)の金額があるときは、他の黒字の所得金額から差し引くことができます(損益通算)」とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm)。
しかし、この仕組みには重要な例外があります。同じく国税庁の情報によれば、「土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」は損益通算の対象外とされています。つまり、土地購入のための借入金利息は節税効果を計算する際に除外されるため、「節税になる」という説明を鵜呑みにせず、税理士に個別確認することが必須です。
また、節税の仕組みとして活用される減価償却(建物の取得費用を耐用年数にわたって費用計上する方法)は、あくまで帳簿上の費用であり、実際の現金支出を伴いません。減価償却期間が終了すると帳簿上の赤字がなくなり、節税効果が消えるにもかかわらず、ローン返済は続くという状況が生まれます。このタイミングで初めて「思っていた節税効果がなくなった」と気づく医師も少なくありません。
失敗を防ぐために医師が実践すべき3つの確認
不動産投資で失敗しないためには、購入前の段階でいくつかの重要な確認を怠らないことが大切です。多忙な医師だからこそ、専門家への相談と自分自身での基礎知識の習得を組み合わせることが効果的です。
第一に、キャッシュフローを保守的に試算することです。満室想定ではなく、空室率や管理費・修繕積立金・ローン返済を差し引いた実質的な手残りを計算します。一般的には、表面利回りから実質利回りを算出し、さらに空室期間を加味した手取り収入を確認することが基本とされています。
第二に、サブリース契約の内容を契約書レベルで精査することです。「家賃保証」という言葉だけで判断せず、賃料改定の条件・解除に必要な費用・修繕費の負担範囲を必ず確認してください。不明点は契約前に書面で回答を求めることが重要です。
第三に、出口戦略(売却時のシナリオ)を購入前に検討することです。「いつ・いくらで売れるか」を購入時点で複数のシナリオで試算する習慣が、将来の持ち出しリスクを大幅に減らします。特に、ローン残高と想定売却価格の差(含み損)が生じた場合に自己資金で補填できるかどうかを事前に確認しておくことが不可欠です。
まとめ
医師が不動産投資で失敗する背景には、高属性ゆえの過剰融資・サブリース契約のリスク軽視・節税効果の誤解という3つの共通パターンがあります。「忙しくて調べる時間がない」という状況が、業者主導の意思決定を招きやすくしている点も見逃せません。
不動産投資は正しく理解すれば有効な資産形成手段になり得ますが、その前提として基礎知識の習得と専門家(税理士・ファイナンシャルプランナーなど)への相談が欠かせません。サブリース契約の内容確認・売却時の税務ルール・損益通算の限界を事前に把握したうえで、冷静に判断することが成功への第一歩です。まずは一つひとつの情報を公的機関の公式サイトで確認する習慣から始めてみてください。
参考文献・出典
- Doctor’sライフ(シンリョウ)「本当にあった”医師が語る不動産投資の怖い話”」 – https://magazine.shinryo.jp/doctorslife/dslf-vol-09/post-377/
- 消費者庁「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」 – https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_011
- 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「適正化のための措置(サブリース)」 – https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/sublease.html
- 国税庁「不動産等を売却した方へ|令和7年分 確定申告特集」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/fudousan.htm
- 国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 金融庁「スルガ銀行株式会社に対する行政処分について」 – https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20181005/20181005.html