相続・空き家

借地権の譲渡承諾料、相場は借地権価格の10%が基準

この記事の結論

  • 借地権の譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%前後が実務上の基準です。
  • 借地権価格は「土地の更地価格×借地権割合」で計算し、地域によって大きく異なります。
  • 地主が「所有権価格の10%」を要求してきても、実務基準とは異なるため交渉の余地があります。

借地権が付いた建物を売りたいと思ったとき、「地主に承諾料を払わなければならない」と聞いて、金額の見当がつかず困っている方は多いのではないでしょうか。相続した実家を売ろうとして初めて借地権の存在を知った、という方も少なくありません。この記事では、譲渡承諾料の相場がどのように決まるのか、地主から高額を要求されたときにどう対応すればよいのかを、できるだけわかりやすく説明します。手続きの流れや注意点も含めてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

借地権の譲渡承諾料とは何か

借地権の譲渡承諾料とは何かのイメージ

まず「借地権」と「譲渡承諾料」という言葉を整理しておきましょう。借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利のことです。土地は地主のものですが、その上に建っている建物はあなたのものという状態です。

この借地権を第三者(買主)に売る場合、原則として地主の承諾が必要になります。これは借地借家法という法律に基づくルールです。そして地主が承諾する際に、売主(借地権者)から受け取るお金が「譲渡承諾料」です。「名義書換料」と呼ばれることもあります。

あなたが今置かれている状況によって、この承諾料の扱いが変わります。建物を売って借地権ごと手放すなら承諾料が必要です。一方、相続で引き継ぐ場合や、離婚の財産分与で配偶者に移す場合は、承諾料が不要なケースもあります。大阪港湾局の公有地ルールでも、相続による承継や推定相続人への贈与などは承諾料の適用除外とされており、民間の地主との交渉でも参考になる考え方です。

ここまでのまとめ: 借地権を第三者に売るときだけ承諾料が必要で、相続や親族内の移転は不要なケースが多いです。

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譲渡承諾料の相場はどう計算するか

承諾料の計算:基準と方法(図解)

承諾料の実務上の基準は「借地権価格の10%前後」です。東京地方裁判所の実務説明でも、名義書換料は「借地権価格の10%相当額」を基準に個別事情で増減されると説明されています(東京都不動産鑑定士協会)。

では「借地権価格」はどうやって計算するのでしょうか。計算式はシンプルです。

借地権価格 = 土地の更地価格 × 借地権割合

「借地権割合」とは、その土地の価値のうち借地権が占める割合のことです。国税庁の路線価図に記載されており、地域によってA(90%)からG(30%)まで7段階に分かれています(国税庁 路線価図の説明)。都心部ほど割合が高く、地方や取引慣行のない地域では低くなる傾向があります。

具体的な数字で見てみましょう。東京都不動産鑑定士協会の例示では、更地価格が1億円で借地権割合が70%(C)の場合、借地権価格は7,000万円となります。その10%ですから、譲渡承諾料は700万円が目安です。つまり、あなたの物件の更地価格と借地権割合がわかれば、おおよその承諾料の目安を自分で計算できます。

裁判所の決定例を分析した資料によると、借地権価格が把握できた事例の多くで承諾料は借地権価格の8%〜13%の範囲に収まっていたとされています。10%はあくまで目安であり、個別の事情によって上下することを覚えておいてください。

ここまでのまとめ: 承諾料の目安は「更地価格×借地権割合×10%」で計算でき、都心部では数百万円規模になることが多いです。

地主から高額を要求されたときの対処法

地主の高額要求への対処法(図解)

地主から「土地の所有権価格の10%を払え」と言われるケースがあります。しかし、承諾料の基準は「土地所有権価額ではなく、借地権価額」とされており、これは実務上・裁判実務上の共通認識です(不動産鑑定士向け実務資料より)。所有権価格を基準にすると、借地権価格を基準にした場合より大幅に高額になるため、要求をそのまま受け入れる必要はありません。

まず冷静に、相手の計算根拠を確認しましょう。「どの価格を基準にしているか」「なぜその割合なのか」を聞くだけで、交渉の糸口が見えてきます。また、日本不動産鑑定士協会連合会のQ&Aでは、譲受予定者が推定相続人などの場合は0〜8%への減額例もあると紹介されています。買主が誰かによっても、交渉の余地が変わるわけです。

地主との交渉がまとまらない場合は、「借地非訟(しゃくちひしょう)」という裁判所の手続きを使う方法があります。借地非訟とは、地主が承諾しない場合に裁判所が代わりに許可を出してくれる制度です(借地借家法19条)。東京地方裁判所の説明によると、この手続きでは裁判所が金銭の支払いを条件に付けることもできます。ただし、申立てから決定まで7〜9か月程度かかるケースが多いとされており(日本不動産鑑定士協会連合会)、時間的な余裕が必要です。

さらに注意が必要なのは「介入権」です。借地非訟を申し立てると、地主には建物と借地権を優先的に買い取れる権利(介入権)が発生します(東京地方裁判所)。つまり、裁判所に申し立てたからといって、必ずしも希望の買主に売れるとは限りません。この点は事前に理解しておくことが大切です。

ここまでのまとめ: 地主の要求額が高すぎると感じたら、計算根拠を確認し、必要なら専門家に相談して交渉するのが現実的な対応です。

承諾料を払う前に確認すべきこと

承諾料確定前のチェック項目(図解)

承諾料の金額が決まったら、口約束で終わらせないことが非常に重要です。承諾料の額・支払い時期・条件を明記した「借地権譲渡承諾書」を必ず書面で取り交わしてください。口頭で「いいよ」と言われても、後から「そんな話はしていない」「金額が違う」というトラブルになるケースがあります。

また、承諾料以外にも確認しておくべき点があります。まず、既存の借地契約書の内容です。契約書に承諾料の取り決めがすでに書かれている場合は、その内容が優先されます。次に、買主が住宅ローンを使う場合は、金融機関が借地物件に融資するかどうか、また地主が抵当権設定に同意するかどうかも確認が必要です。これが難航すると、買主がローンを組めず売買が成立しないことがあります。

承諾料は売主(あなた)が負担するのが一般的です。不動産鑑定評価基準に関する実務指針(日本不動産鑑定士協会)でも、譲渡承諾料は借地権者(売主)側が承諾を得るための費用と整理されており、売却の手取り額はその分だけ減ることになります。たとえば借地権付き建物が3,000万円で売れても、承諾料が300万円なら手元に残るのは2,700万円(その他の費用を除く)です。売却価格を決める前に、承諾料の見込み額を差し引いた手取りを確認しておきましょう。

さらに、今回の売却に関係する「譲渡承諾料」と、混同しやすい費用が2つあります。「建替承諾料」は建物を建て替える際に払うもの、「更新料」は借地契約を更新する際に払うものです。これらは別の費用ですので、地主から複数の費用を同時に求められた場合は、それぞれの根拠を個別に確認してください。

ここまでのまとめ: 承諾料の金額が決まったら必ず書面にし、手取り額を計算した上で売却価格を設定することが大切です。

地域や条件によって承諾料が変わるケース

地域・条件別の承諾料の特徴(図解)

承諾料の10%という目安は、あくまで一般的な基準です。実際には地域や物件の条件によって大きく変わることがあります。

まず、地域による違いがあります。国税庁の路線価図で借地権割合を確認すると、都市部ではA(90%)やB(80%)の地域もある一方、地方では取引慣行がない地域も多く、その場合は借地権割合を20%として扱うとされています(国税庁)。借地権割合が低ければ借地権価格も低くなり、承諾料も少なくなります。

次に、公有地(市区町村や港湾局などが所有する土地)の場合は、承諾料の計算方法が明文化されているケースがあります。大阪港湾局の承諾料算定要綱では「借地権相当額×10%」と定められており、借地権相当額は「相続税路線価×借地権割合(当分50%)」で計算するとされています(大阪市港湾局)。栃木市の定期借地募集要項でも同様に「借地権相当額の10%相当額」と定められています(栃木市)。公有地の場合はルールが明確なため、交渉の余地は民間地主より少ない傾向があります。

一方、民間の地主(個人・寺社・不動産会社など)との取引では、公開された承諾料テーブルがほとんど存在しません。地主の考え方や過去の慣行、物件の特殊性(再建築不可など)によって、10%を大きく上回る要求がされることもあります。こうした場合は、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

ここまでのまとめ: 公有地は計算ルールが明確ですが、民間地主との交渉は個別対応が必要で、専門家のサポートが有効です。

まとめ

借地権の譲渡承諾料は、「借地権価格の10%前後」が実務上の基準です。借地権価格は「更地価格×借地権割合」で計算でき、国税庁の路線価図で借地権割合を確認することができます。地主から所有権価格を基準にした高額な要求があっても、実務上の基準とは異なるため、根拠を確認した上で交渉することが大切です。

承諾料の金額が決まったら、必ず書面(借地権譲渡承諾書)で取り交わし、売却の手取り額を事前に計算しておきましょう。地主との交渉が難航する場合は、借地非訟という裁判所の手続きも選択肢になりますが、7〜9か月程度の時間がかかることと、地主に介入権が発生することを念頭に置いてください。

借地権付き物件の売却は、通常の不動産売却より複雑な手続きが伴います。ご自身の物件の借地権価格や承諾料の目安がいくらになるかは、実際の成約データや専門家の査定で確かめるのが早道です。

参考文献・出典

  • 国土交通省「定期借地権の法的性質」 — https://www.mlit.go.jp/common/001204001.pdf
  • 東京地方裁判所「借地非訟とは」 — https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html
  • 国税庁「No.4613 貸宅地の評価」 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm
  • 国税庁「路線価図の説明」 — https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
  • 大阪市港湾局「大阪港湾局所管の普通財産(雑種地)の借地条件の変更等に係る承諾料算定要綱」 — https://www.city.osaka.lg.jp/port/cmsfiles/contents/0000671/671377/kanzai_youkou_02.pdf
  • 栃木市「栃木市所有土地貸付事業募集要項」 — https://www.city.tochigi.lg.jp/uploaded/attachment/8120.pdf
  • 東京都不動産鑑定士協会「借地や借家の問題を解決したい」 — https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/consultation/case002
  • 日本不動産鑑定士協会連合会「不動産鑑定士調停センター」 — https://jarea.org/request_consul/rea_mediation_center/index.html
  • 日本不動産鑑定士協会「不動産鑑定評価基準に関する実務指針(令和3年11月一部改正)」 — https://www.fudousan-kanteishi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/jitsumushishin_20221219.pdf
  • 牛島総合法律事務所「借地権譲渡許可の裁判」(2025年2月21日) — https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/20250221land_lease_transfer/
  • SUUMO「旧借地権は買ってはいけない?購入しても後悔しないためのプロが教えるポイント」 — https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/ms_chuko/mc_knowhow/kyuusyakuchiken_dontbu/
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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