この記事の結論
- 経年劣化・寿命による故障は原則として貸主(大家・管理会社)の費用負担になります。
- 投入禁止物や不適切な使い方が原因の故障は、借主の費用負担になる場合があります。
- 故障に気づいたらまず管理会社か大家に連絡し、自己判断で修理業者を呼んではいけません。
賃貸マンションに備え付けのディスポーザーが突然動かなくなったとき、「修理費用は自分が払うのだろうか」と不安になる方は多いはずです。ディスポーザーは便利な設備である一方、故障したときの費用負担の判断が難しく、大家や管理会社とのトラブルに発展するケースも少なくありません。この記事では、民法や国土交通省の標準契約書をもとに、費用負担の基本的な考え方を整理します。さらに、故障時の正しい連絡手順や、修理・交換にかかる費用の目安まで、初心者にも分かりやすく解説します。
費用負担の大原則:民法と国交省ガイドラインで確認する

まず押さえておきたいのは、賃貸設備の修繕費用を誰が負担するかは、民法と国土交通省の標準契約書によって基本的な方向性が示されているという点です。
民法第606条では、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」と定められています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001399558.pdf)。つまり、設備の修繕は原則として貸主の義務であり、借主の行為が原因でない限り費用は貸主が負担するというのが法律上の大原則です。
この原則をさらに具体化しているのが、国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月改定)です。同契約書では、「建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については賃貸人が負担すべき費用となる」と明示されています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001319685.pdf)。一方で、「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、賃借人が負担すべき費用となる」とも定められています。
ディスポーザーに当てはめると、経年劣化や寿命による故障は貸主負担、不適切な使い方や投入禁止物を入れたことによる故障は借主負担という整理になります。東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドライン概要版(2022年11月)でも、「設備機器の破損、使用不能(機器の耐用年数到来のもの)は貸主負担、日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損は借主負担」と同様の考え方が示されています(東京都住宅政策本部 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/310-23-00-jyuutaku)。
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借主負担になるケースと投入禁止物の注意点

では、具体的にどのような状況が「借主の責任」と判断されるのでしょうか。ポイントは、メーカーが定める投入禁止物を入れたかどうかが大きな判断基準になります。
メーカーの公式マニュアルによると、牛・豚の大骨、サザエ・牡蠣・あわびなどの大きな貝殻、大きなカニの殻といった非常に固い骨や殻は故障・排水管のつまりの原因になる投入禁止物として明記されています(InSinkErator公式 https://www.insinkerator.jp/disposer/manual.html)。さらに、金属・プラスチック・ガラス・陶器・紙・木類・輪ゴムなど食品くず以外のものも同様に禁止されています。これらを誤って投入して故障させた場合は、通常の使用方法を超えた使い方と判断され、借主が修理費用を負担することになる可能性が高くなります。
一方で、長年使用した結果としてモーターが劣化したり、部品が摩耗したりして動かなくなった場合は、経年劣化による故障と判断されるのが一般的です。また、一般的な寿命を超えた設備の故障は貸主負担と判断されやすいといえます。
また、もう一つ注意が必要なのが「残置物」の扱いです。前の入居者が設置したディスポーザーがそのまま残っている場合、貸主の所有物ではないため、故障時の修理義務が貸主にはないとされる場合があります(アットホーム https://www.athome.co.jp/contents/for-lessees/chintai-kurashi/the-air-conditioner-broke/)。入居時に設備として契約書に記載されているかどうかを確認しておくことが大切です。
故障したときの正しい対処手順
ディスポーザーが故障したとき、多くの方が「すぐに業者を呼ぼう」と考えがちですが、賃貸では自己判断で修理業者を手配することがトラブルの原因になります。正しい手順を理解しておきましょう。
まず最初にすべきことは、管理会社または大家への連絡です。民法では、賃借人が賃借物の修繕が必要なことに気づいた場合、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならないと定められています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001399558.pdf)。東京都のガイドラインでも「修繕等が必要となった時は、速やかに貸主や管理会社に連絡をして、対応について相談しましょう」と案内されています(東京都住宅政策本部 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/310-23-00-jyuutaku)。
国民生活センターも、「エアコンや給湯器などの入居時に設置されていた機器に不具合や故障が起こった場合には、すぐに貸主側に連絡して相談しましょう。賃貸住宅の使用のために必要な修繕は、原則として貸主側に修繕の義務があります」と注意喚起しています(国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260217_1.html)。また、ディスポーザーメーカーのマックス社も、「賃貸住宅にお住まいの方は直接依頼をお受けできませんので、お手数ですが住宅の管理会社様へお問合せください」と公式FAQで明記しており(マックス https://faq.max-ltd.co.jp/faq/show/757?site_domain=default)、メーカーへの直接連絡も基本的には受け付けていません。
連絡後は、貸主または管理会社が指定する業者が修理対応を行うのが原則です。東京都のモデル説明書でも「入居中の設備修繕の連絡先は、原則として賃貸人又は賃貸人の指定する業者」とされています(東京都住宅政策本部 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/310-23-00-jyuutaku)。なお、貸主に通知したにもかかわらず相当期間内に修繕が行われない場合や急迫の事情がある場合は、民法第607条の2により借主が自ら修繕できる余地もありますが、これはあくまで例外的な対応です。
修理・交換にかかる費用の目安
費用負担の判断とあわせて、実際にどの程度の費用がかかるのかを把握しておくと、貸主との話し合いがスムーズになります。
修理費用については、業者によって異なりますが、点検・修理・分解修理・排水つまり解除・ディスポーザー取外しなど、対応内容に応じて数万円程度の費用がかかるのが一般的です(日本ディスポーザー協会 https://nihondimp-ky.com/wp-content/uploads/2023/09/81b22598d254c57e4c9cca9c781d2f84.pdf)。また、アットホームの記事では、異物による噛み込み除去の費用目安として、本体を分解せずに除去した場合で約1万1,000円、分解して除去した場合には約1万7,000円という数字が示されています(アットホーム https://www.athome.co.jp/contents/for-buyers/buyers-kiso/disposer/)。
本体の交換が必要になった場合は、さらに費用が大きくなります。マックス社の公式FAQによると、ディスポーザーの交換費用は現場の状況によりますが、1台あたり13万円(税抜)からとされています(マックス https://faq.max-ltd.co.jp/faq/show/2349?site_domain=default)。また、東京ガスの水回り修理サービスでは、ディスポーザー撤去・トラップ設置が38,500円(税込)+部品代とされており、製品本体の修理は対応不可と明記されています(東京ガス https://home.tokyo-gas.co.jp/service/equipment/water_repair/kitchen.html)。これらの数字はあくまで目安であり、実際の費用は現場の状況や業者によって異なります。
なお、設備の不具合が長期間放置されて生活に支障が出た場合、賃料の減額交渉が可能なケースもあります。日本賃貸住宅管理協会の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」では、水が使えない状態の場合の目安として30%・免責2日という数字が示されていますが、入居者の善管注意義務違反に基づく不具合は除外されると明記されています(日本賃貸住宅管理協会 https://login-kanri-wp.jpm.jp/wp-content/uploads/2024/10/031818.pdf)。
まとめ
賃貸のディスポーザー故障における費用負担は、「経年劣化・寿命による故障は貸主負担、不適切な使い方や投入禁止物による故障は借主負担」という大原則で判断します。民法や国土交通省の標準契約書がその根拠となっており、どちらの責任かが曖昧な場合は契約書の特約条項も必ず確認してください。故障に気づいたら、まず速やかに管理会社または大家に連絡することが最優先です。自己判断で業者を手配したり、メーカーに直接連絡したりすると、費用負担をめぐるトラブルに発展する可能性があります。費用の目安を事前に知っておくことで、貸主との話し合いも落ち着いて進められます。不明な点は各公的機関の公式サイトや国民生活センターにも相談窓口がありますので、ぜひ活用してください。
参考文献・出典
- 国土交通省「賃貸人による修繕等(民法条文)」 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001399558.pdf
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(原状回復条件・修繕分担表)」 – https://www.mlit.go.jp/common/001319685.pdf
- 東京都住宅政策本部「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(モデル)」 – https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/310-6-jyuutaku_ex
- 東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 概要版」 – https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/juutakuseisaku/310-23-00-jyuutaku
- 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」 – https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260217_1.html
- 日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」 – https://login-kanri-wp.jpm.jp/wp-content/uploads/2024/10/031818.pdf
- 日本ディスポーザー協会「メンテナンスサービス価格表」 – https://nihondimp-ky.com/wp-content/uploads/2023/09/81b22598d254c57e4c9cca9c781d2f84.pdf
- マックス株式会社「ディスポーザの修理・交換費用FAQ」 – https://faq.max-ltd.co.jp/faq/show/757?site_domain=default / https://faq.max-ltd.co.jp/faq/show/2349?site_domain=default
- アットホーム「ディスポーザーとは?メリット・デメリットや使い方、掃除方法など徹底解説!」 – https://www.athome.co.jp/contents/for-buyers/buyers-kiso/disposer/
- 東京ガス「キッチン修理の費用や業者の選び方について」 – https://home.tokyo-gas.co.jp/service/equipment/water_repair/kitchen.html