土地・戸建て売却

解体・更地渡しの特約例文と書き方を徹底解説

古家付きの土地を売買するとき、「更地にして引き渡してほしい」という条件が付くことは珍しくありません。しかし解体や更地渡しの取り決めを口頭で済ませると、引き渡し後に「解体費用はどちらの負担か」「地中から古い基礎が出てきた」といったトラブルに発展しがちです。こうした問題を防ぐ鍵が、売買契約書に盛り込む「特約」です。この記事では更地渡しの基本から、実際に条項設計の叩き台に使える特約の例文まで、初心者にもわかりやすく解説します。

更地渡しとは何か、なぜ特約が欠かせないのか

更地渡しとは、建物が建っている土地を売買する際に、売主が建物を解体・撤去してから買主に引き渡す方法のことです。買主は更地の状態で土地を受け取れるため、すぐに新築工事や活用に取りかかれる利点があります。一方で売主には解体費用と工事期間が必要になるため、事前の計画が欠かせません。

不動産売買契約では、標準的な条項とは別に、個別の事情に応じた「特約事項」を定めます。特約は売主と買主の認識のずれを防ぎ、引き渡し後のトラブルを避ける役割を担います。更地渡しの場合は特に、解体範囲・費用負担・工事の時期・完了の基準を明確に文書化しておくことが不可欠です。実務では「本売買契約が更地渡しであること」に加え、解体・撤去の具体的な範囲や内容、確認方法、さらに残すものまで特約に明記するのが基本とされています。

口頭の合意だけでは、後から「そんな約束はしていない」という争いになりかねません。法的効力を持つ売買契約書に特約として書き込むことで、双方が安心して取引を進められます。特に解体には相応の時間がかかります。実務記事の目安では、解体工事に数週間から1か月、その後の滅失登記に約2週間を見込み、引き渡しは最短でも2か月以上先に設定するのが現実的とされています。スケジュールを含めた取り決めを契約書に落とし込むことが、失敗を防ぐ第一歩です。

お持ちのマンションは、いま売るといくらか 無料のAI査定で確かめる

解体範囲を具体的に書くための特約例文

更地渡しでもっとも揉めやすいのが「どこまで解体・撤去するのか」という範囲の問題です。抽象的に「更地にして引き渡す」とだけ書くと、地中の基礎や埋設物の扱いをめぐって解釈が食い違います。そこで、除去対象を具体的に列挙しておくことが重要になります。

実務で参照される条文例では、次のように地中部分まで踏み込んで記載されています。「売主は、自己の費用と責任において、建物(地下室、建物の基礎、杭を含む)をすべて解体撤去し、建物滅失登記を行う。あわせて庭石や植栽、塀等の工作物、浄化槽、給排水管等の埋設物の一切を除去し、本物件を更地として買主に引き渡す。」このように基礎・杭・地下室・浄化槽・給排水管・庭石・植栽まで固有名詞で挙げておけば、後日の解釈違いを大幅に減らせます。

逆に、あえて残すものがある場合は除外対象を明記します。実務例では「工作物(外構ブロック塀の基礎および本物件南側隣接地とのブロック塀は除く)」のように、共有塀や隣地側のブロック塀を固有名詞で除外しています。植栽についても「擁壁間際の植栽については一部抜根しないものがある」と承諾する例があり、解体範囲を建物・基礎・カーポート・門柱までと限定した文例も見られます。残すものを明確にすることは、撤去する対象を明確にすることと同じくらい大切です。

条文だけで工事内容を細かく詰めきれないときは、工事項目を別紙や覚書に落とし込む運用が有効です。実際に更地工事の具体的内容について覚書を別途作成した実務例もあり、契約書本体はシンプルに保ちつつ、工事仕様は別紙で補完する形が現場では扱いやすくなります。

費用負担・支払いタイミングと工事スケジュールの決め方

解体費用をどちらが負担するかは、売買価格の交渉のなかで決まることが多い項目です。曖昧なまま契約を締結すると費用をめぐる争いになりやすいため、特約に明確に記載します。神奈川県の宅建協会の文例には「売主は買主の融資条件決定後、売主の費用で建物を解体し、更地にて引き渡すこととする」という条項例があり、買主の融資が確定してから着工する流れが示されています。

支払いのタイミングにはいくつかのパターンがあります。売主が先行して費用を負担し完成後に引き渡す方法のほか、決済実務では売買代金の一部を解体業者へ直接支払う運用もあります。テンプレートには「決済日に売買代金のうち□□万円を解体業者□□社へ直接振込する」といった条項例もあり、売主の立替負担を軽くしつつ確実に工事費を精算できます。自分たちの資金繰りに合った方法を、あらかじめ特約で決めておくとよいでしょう。

工事の期限も具体的な日付で定めます。「引き渡し日の○日前までに解体工事を完了する」といった形にしておくと安心です。ここで併せて意識したいのが法定の手続きです。建設リサイクル法では、床面積80㎡以上の建物解体は工事着手の7日前までに発注者から都道府県知事へ届け出る義務があり、請負契約書に解体費用や再資源化費用を明記することも求められます。また建物滅失登記は、建物が滅失した日から1か月以内に申請しなければなりません。これらの日数を逆算して、無理のないスケジュールを組むことが大切です。

石綿(アスベスト)への対応を特約に盛り込む

古い建物を解体する際に見落とせないのが石綿(アスベスト)への対応です。令和5年10月1日以降に着工する工事から、施工業者である元請事業者は、有資格者による石綿の事前調査を実施することが義務付けられています。建物解体で対象部分の床面積合計が80㎡以上になる場合などは、着工前に事前調査結果の報告を行う必要があります。

さらに、レベル1やレベル2の石綿含有建材が使われている場合は、工事開始の14日前までに計画の届出が必要です。発注者側にも、一定の石綿解体作業では作業開始の14日前までに、地方公共団体へ特定粉じん排出等作業実施届出書を提出する義務があります。売主が発注者となる更地渡しでは、この届出義務を負う可能性がある点に注意が必要です。

問題は、調査の結果、想定外の石綿が見つかって費用が跳ね上がるケースです。この場合に備えた特約例として「石綿が使用され、本契約時に想定されている建物解体費用では建物の解体工事が行えない場合、売主は本契約を解除することができる」という解除条項があります。調査の実施時期も契約条件に連動させ、「検査は買主の融資承認の通知が売主に到達後2週間以内に行う」といった形で定めておくと、手戻りを防げます。想定外の費用リスクをどちらが負うのかを、あらかじめ文言で明確にしておくことが重要です。

完了基準と地中埋設物の責任分担

「更地渡しが完了した」といえる状態を、あらかじめ客観的な基準で定めておくとトラブルを避けられます。実務テンプレートでは、完了基準を「現地立会い+写真帳+滅失登記完了」とする例があります。売主・買主が現地に立ち会い、工事の記録写真をまとめた写真帳を確認し、建物滅失登記が完了したことをもって更地渡し完了とする、という考え方です。何をもって完了とするかを共有しておけば、引き渡し直前の認識のずれを防げます。

地中埋設物の責任分担も重要な論点です。建物を解体すると、地中に古い基礎や過去の建物の残置物が見つかることがあります。責任範囲を狭めたい場合には、地中障害がある場合に限り売主が負担するとした文例があるほか、弁護士監修の記事では「解体する建物に関係のない地中埋設物については責任を負わない旨を売買契約書に明記しておく」対応が勧められています。対象建物と無関係な埋設物まで際限なく売主が負うのか、それとも一定範囲に限定するのかを、文言で切り分けておくことが望まれます。

あわせて、引き渡し時までに売主が隣地との境界を明示する条項も一般的です。更地渡しでは工事の過程で境界標に影響が出ることもあるため、境界明示の有無を契約で確認しておきましょう。

契約不適合責任と宅建業法上の注意点

特約を設けるうえで見落としがちなのが、契約不適合責任との関係です。契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことをいいます。更地渡しでは、解体後の土地の状態が契約内容と異なるときにこの責任が問われます。免責の範囲を検討する際は、引き渡し前に発見された不適合まで免責するのかどうかを意識する必要があり、研修資料では「本物件引渡し前に契約不適合が発見された場合を含む」と明示する特約例が示されています。一般的な免責条項だけで足りるとは限らない点に注意しましょう。

宅地建物取引業法では、宅建業者が売主となる売買契約において、引き渡しの日から2年以上とする特約を除き、買主に不利な契約不適合責任の特約をしてはならず、これに反する特約は無効とされています。つまり売主が宅建業者の場合、買主の権利を不当に制限する特約は法律上認められません。一方、売主が個人の場合は、当事者間の合意によって責任の範囲を調整できます。ただし買主にあまりに不利な内容は後のトラブルの原因になるため、不動産会社や司法書士に相談しながら決めることをおすすめします。

税務上の注意点と空き家特例の公式特約例

更地渡しの契約では税務上の取り扱いにも注意が必要です。印紙税については、老朽建物などを解体撤去することを条件とする売買契約書で、売買価額が解体により生じる素材価額相当額以下であるなど、構成素材の売買であることが明らかなものは、課税文書に該当しない取り扱いがあります。ただし適用の可否は個別事情によりますので、詳細は税理士や国税庁の公式サイトでご確認ください。

次に、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除です。令和6年1月1日以降の譲渡については、譲渡の時からその翌年の2月15日までに家屋を取り壊した場合でも、この特例の適用を受けられる可能性があります。これは、売買契約後に買主が建物を解体するケースでも特例を活用できることを意味します。ただし買主の協力が不可欠であり、協力が得られず特例を適用できないトラブルを防ぐため、取り壊しに関する合意を特約として明記しておくことが推奨されています。

この点について国土交通省は公式の特約例を示しています。そこでは、買主が本件建物の全部の取壊しまたは除却工事を期限までに完了し、必要書類を期日までに売主へ交付する義務まで定められています。さらに、買主がこれを履行せず売主が特別控除を受けられなかった場合、売主は買主に対し、特別控除によって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を請求できる例になっています。税制上のメリットを確実に活用するには、こうした具体的な文言を参考に特約を組み立てることが有効です。

もう一つ意識したいのが固定資産税です。住宅用地特例では、小規模住宅用地の200㎡までは固定資産税の課税標準が価格の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。この特例は、固定資産税が課税される年の1月1日時点で住宅の敷地として利用されている土地が対象です。つまり、1月1日をまたいで建物を解体すると、翌年度の税負担が重くなる場合があります。年またぎの売却では、解体のタイミングと引き渡し時期を税負担も踏まえて検討するとよいでしょう。

まとめ

更地渡しの売買契約では、解体範囲・費用負担・支払いタイミング・完了基準・地中埋設物の扱い・石綿対応など、通常の土地売買より多くの事項を特約として明記する必要があります。とりわけ「更地渡しであること」だけでなく、基礎や杭、埋設物まで具体的に列挙し、残すものは固有名詞で除外する書き方が実務の基本です。あわせて宅建業法上の契約不適合責任のルールや、印紙税・空き家特例・固定資産税といった税務上の取り扱いも取引内容によって異なります。

もっとも大切なのは、口頭の合意に頼らず、すべての取り決めを売買契約書の特約として文書化することです。内容が不明確なまま契約を進めると、引き渡し後に費用や責任をめぐるトラブルに発展しかねません。本記事で紹介した例文はあくまで叩き台であり、実際の条項は物件ごとに調整が必要です。不動産会社や司法書士、税理士などの専門家に相談しながら、双方が納得できる特約を丁寧に作り上げましょう。制度の詳細や最新情報は、各公的機関の公式サイトで必ずご確認ください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 – 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
  • 国土交通省 –「空き家の発生を抑制するための特例措置」における特約等の例 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001633561.pdf
  • 国土交通省 – 空き家対策 特設サイト(法改正・住宅用地特例) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html
  • 国土交通省 – 土地の保有に係る税制 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000073.html
  • 厚生労働省 – 小規模工事等の着工前に必要な手続きについて https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/procedures/
  • 厚生労働省 – 発注者・施主向け情報 https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/customer/
  • 環境省 – 建設リサイクル法の概要 https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html
  • e-Gov法令検索 – 不動産登記法 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
  • e-Gov法令検索 – 宅地建物取引業法 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
  • 国税庁 – 第1号の1文書 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/betsu01/01.htm
詳しいガイド古家のまま売るか更地にするか解体費用や更地渡しの負担を契約書で明確にしておくとしても、そもそも古家を解体してから売るべきかどうかは別に検討する余地がある。実際の成約データで価格と売却期間を比べた結果も参考になる。売却ガイド一覧を見る →

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所