不動産投資を本格的に始めようとしたとき、「税金がどのくらいかかるのか」「法人化すると本当に得なのか」という疑問を持つ方は多いはずです。実際、税金の仕組みを理解せずに投資を進めると、想定外のコストが発生して収益計画が大きく狂うことがあります。この記事では、不動産投資にかかる主な税金の種類から、法人化した場合のシミュレーションの考え方まで、初心者でも理解しやすいよう丁寧に解説します。税金の全体像を把握することで、より精度の高い収支計画を立てられるようになります。
不動産投資にかかる税金の全体像

不動産投資では、物件を「買うとき」「持っているとき」「売るとき」の3つのタイミングそれぞれで異なる税金が発生します。この全体像を最初に把握しておくことが、正確なシミュレーションの出発点となります。
まず物件を取得する際には、登録免許税と不動産取得税がかかります。登録免許税は登記手続きに伴う税金で、国税庁の税額表(令和7年4月1日現在法令等)によると、土地の売買による所有権移転登記は原則2.0%ですが、令和8年3月31日までは1.5%に軽減されています。建物の売買による所有権移転登記は2.0%です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)。不動産取得税については、国土交通省の情報によると住宅を取得した場合の税率は本則4%のところ3%に軽減されており、この特例の適用期限は令和9年3月31日とされています(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000020.html)。
物件を保有している期間中は、固定資産税と都市計画税が毎年かかります。東京都主税局の案内によると、毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者に課税される仕組みです(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/real_estate)。東京都主税局の計算例では、固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%の税率で計算されています。小規模住宅用地の場合は固定資産税の課税標準が価格の6分の1、都市計画税が3分の1に軽減される特例もあります(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/keisanrei1_1)。
さらに、賃貸収入に対しては所得税・住民税(個人の場合)または法人税等(法人の場合)がかかります。消費税については、住宅用の建物の賃貸は非課税とされており、国税庁の情報によると賃借人が自ら使用しない場合でも、契約上住宅として転貸することが明らかであれば非課税扱いになります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm)。
法人化したときの税率と計算の基本

法人化を検討する際に最初に確認すべきなのが、法人にかかる税率の構造です。個人の所得税は累進課税で最高税率が高くなる一方、法人税は一定の税率が適用されるため、所得が一定水準を超えると法人の方が税負担を抑えられる可能性があります。
国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、資本金1億円以下の普通法人などは、法人税の所得800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%で計算するのが基本線です(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm)。ただし、これは法人税単体の税率であり、実際には地方税も加算されます。
東京都の場合、法人都民税の法人税割は7.0%(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji)、法人事業税の所得割は年400万円以下の所得が3.5%、400万円超800万円以下が5.3%、800万円超が7.0%の段階税率が適用されます(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji)。さらに特別法人事業税も加算されます。東京都主税局の情報によると、外形標準課税法人・特別法人以外の法人は基準法人所得割額の37%が特別法人事業税として課されます(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/tokubetsu_houjin)。
これらを合算した実効税率は、所得水準や所在地によって変わります。東京都以外の地域では法人住民税・法人事業税の税率が異なるため、投資物件の所在地や法人の所在地に応じて各自治体の公式情報を確認することが重要です。シミュレーションを行う際は、法人税単体だけでなく地方税・特別法人事業税まで含めた総合的な税負担で比較することが欠かせません。
減価償却を活用した税金シミュレーションの考え方
法人で不動産を保有する大きなメリットのひとつが、減価償却費を損金として計上できることです。減価償却とは、建物の取得費用を耐用年数にわたって分割して費用計上する仕組みで、実際の現金支出がなくても帳簿上の利益を圧縮できます。
国税庁の情報(令和7年8月1日現在の法令・通達等)によると、平成19年4月1日以後に取得した建物の減価償却の方法は定額法によって計算することとされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/10.htm)。耐用年数については、国税庁の耐用年数表によると、住宅用建物は木造が22年、木骨モルタル造が20年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造が47年とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/037.pdf)。
たとえば鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを取得した場合、建物部分の取得費を47年間にわたって毎年均等に費用計上できます。この減価償却費が大きいほど課税所得を抑えられるため、特に取得直後の数年間は節税効果が高くなる傾向があります。シミュレーションでは、年間の賃料収入から管理費・修繕費・ローン利息・減価償却費などを差し引いた課税所得を算出し、そこに法人税等の税率を掛けて税負担を試算するのが基本的な流れです。
また、法人が支払う税金のうち、不動産取得税・固定資産税・都市計画税などの賦課課税方式による租税は、賦課決定のあった事業年度に損金算入できます。一方で法人税・地方法人税・都道府県民税・市町村民税の本税は損金不算入となる点も、シミュレーション上で正確に把握しておく必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5300.htm)。
法人化の初期コストと手続きを把握する
法人化の節税メリットを正確に評価するには、設立にかかる初期コストも忘れずに試算に含める必要があります。設立コストを見落とすと、節税効果の計算が過大になってしまうからです。
会社設立登記の登録免許税については、国税庁の税額表(令和7年4月1日現在法令等)によると、株式会社は資本金の0.7%で最低15万円、合同会社は資本金の0.7%で最低6万円とされています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)。合同会社は設立コストを抑えられる点で不動産投資の法人化に活用されることがありますが、株式会社と合同会社の違いについては税務・法務の専門家に相談しながら選択することをおすすめします。
設立後の手続きも重要です。国税庁の情報によると、法人を設立した場合は設立登記日以後2か月以内に「法人設立届出書」に定款等の写しを添付して所轄税務署に提出する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm)。東京都では、事業を開始した日から15日以内に法人設立・設置届出書を所管の都税事務所等に提出することも求められています(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/work/a1)。
なお、「資本金を1億円以下にすれば外形標準課税を外せる」という考え方には注意が必要です。東京都主税局の情報(令和8年2月)によると、令和7年4月1日以後開始事業年度では、前事業年度が外形標準課税対象であり、期末資本金1億円以下かつ払込資本10億円超の法人は外形標準課税の対象となる改正が行われています(東京都主税局 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji/gaikei_kaisei)。法人設計の段階から税理士などの専門家に相談することが不可欠です。
消費税と法人化の注意点
法人化を検討する際、消費税の取り扱いについても正確に理解しておくことが大切です。特に「法人で居住用賃貸建物を購入して消費税還付を受ける」という手法については、重要な制限があります。
国税庁の情報によると、高額特定資産等に該当する居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除ができないとする規定が設けられています(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6502.htm)。つまり、住宅用の賃貸物件を法人で取得した場合、消費税の還付を期待した節税スキームは原則として機能しない点を理解しておく必要があります。
また、土地と建物を一括で売却・購入する場合、消費税は土地部分には課税されず建物部分のみに課税されます。国税庁の情報(令和7年4月1日現在法令等)によると、この場合は譲渡代金を合理的な方法で土地と建物に区分して計算する必要があります(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6301_qa.htm)。さらに、不動産売買の際に買主が売主へ精算する未経過固定資産税・都市計画税の分担金は、税金そのものではなく不動産の譲渡対価の一部として消費税の課税対象となる点も見落としがちなポイントです(国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/33.htm)。
消費税の課税事業者の判定基準や簡易課税の選択など、消費税に関する詳細な取り扱いは個別の状況によって大きく異なります。法人設立後の消費税の取り扱いについては、必ず税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
まとめ
不動産投資における税金のシミュレーションは、取得・保有・売却の各フェーズで発生するコストを正確に把握することから始まります。法人化には法人税率の活用や減価償却の損金計上といったメリットがある一方、設立コストや地方税・特別法人事業税まで含めた総合的な税負担の比較が欠かせません。また、外形標準課税の改正や居住用賃貸建物の消費税制限など、見落としやすい落とし穴も存在します。税金の仕組みを正しく理解したうえで、税理士などの専門家と連携しながら自分に合った投資スキームを設計することが、長期的な不動産投資の成功につながります。まずはこの記事で紹介した各税目の基本を押さえ、具体的な物件検討の際には専門家への相談を積極的に活用してください。
参考文献・出典
- 国税庁 No.5759 法人税の税率 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税 — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji
- 東京都主税局 特別法人事業税 — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/tokubetsu_houjin
- 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 国土交通省 住宅:不動産取得税に係る特例措置 — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000020.html
- 東京都主税局 不動産取得税 — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/real_estate/f
- 東京都主税局 不動産を買ったとき — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/real_estate
- 東京都主税局 固定資産税・都市計画税の相当税額算出 — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/keisanrei1_1
- 国税庁 No.6226 住宅の貸付け — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm
- 国税庁 No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6502.htm
- 国税庁 No.6301 課税標準 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6301_qa.htm
- 国税庁 未経過固定資産税等の取扱い — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/33.htm
- 国税庁 No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5300.htm
- 国税庁 他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法 — https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/10.htm
- 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/037.pdf
- 国税庁 No.5100 新設法人の届出書類 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm
- 国税庁 C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告 — https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/01.htm
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税 FAQ — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/work/a1
- 東京都主税局 外形標準課税の対象法人の見直し及び中間申告義務判定に関する改正について — https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji/gaikei_kaisei