この記事の結論
- 自然劣化・通常使用による網戸の破れは、国交省ガイドラインで貸主(大家)負担が原則です。
- 故意・過失・ペット・子どもの引っ張りなど借主の行為が原因なら、借主負担になります。
- まず管理会社へ連絡し、契約書の特約を確認してから修理を進めるのが安全な手順です。
賃貸住宅に住んでいると、ある日気づいたら網戸に穴が開いていた、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。「これって自分で直さないといけないの?」「退去時に請求されるの?」と不安になる気持ちはよく分かります。実は、網戸の費用負担については国土交通省がガイドラインやQ&Aで明確な考え方を示しており、知っているかどうかで結果が大きく変わることがあります。この記事では、費用負担の判断基準から修理の進め方、費用の相場まで、初心者にも分かりやすく解説します。
費用負担の大原則:国交省ガイドラインが示す考え方

まず押さえておきたいのは、賃貸の原状回復に関するルールの出発点です。民法では、「通常の使用による損耗および経年変化」は借主の原状回復義務から除外されると定められています(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。つまり、普通に生活していて自然に傷んだものは、借主が直す必要はないというのが法律の基本的な考え方です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf)では、さらに具体的に網戸について言及しています。破損していない網戸の張替えは「入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題」として、貸主(大家)の負担とすることが妥当と例示されています。また、同ガイドラインのQ&A(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf)でも、破損等のない網戸を張り替えるだけなら次の入居者確保のための化粧直し・グレードアップにあたり、借主は原状回復費用を支払わなくてよいと整理されています。
これらを踏まえると、「網戸が古くなって自然に傷んできた」「いつの間にか小さな穴が開いていた」というケースは、原則として貸主負担と考えてよいでしょう。ただし、あくまでこれは「原則」であり、契約内容や破損の経緯によって結論が変わることもあります。
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借主負担になるケースとは

一方で、借主の行為が原因の場合は話が変わります。国土交通省の賃貸住宅標準契約書(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun.pdf)では、「借主の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用方法を超える使い方」による損傷は借主負担が原則と定められています。
具体的にどんなケースが該当するかというと、子どもが網戸を強く引っ張って破った、家具の移動中に引っかけて穴を開けた、ペットが爪を立てて破いた、といった場面が典型例です。これらは「通常の使用」とは言いにくく、借主の不注意や行為が直接の原因となっているため、修繕費用を負担する可能性が高くなります。
また、見落としがちな点として、小さなほつれを放置して破れを広げてしまった場合も、借主負担に寄りやすくなります。東京都住宅政策本部の賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/fudosan/tintai/310-3)でも、放置したことにより損傷が発生・拡大した場合は借主負担になりうると示されています。気になる傷みを見つけたら、早めに管理会社へ連絡することが大切です。
修理を進める前に必ずすべきこと
網戸の破れに気づいたとき、「自分でホームセンターで直してしまおう」と思う方もいるかもしれません。しかし、入居期間中の修繕は貸主が行うのが原則であるため、まず管理会社や大家さんへ連絡するのが安全な手順です。無断で修理を進めると、費用負担の問題だけでなく、施工品質をめぐってトラブルになることもあります。
連絡する際は、破れた状況(いつ気づいたか、どのような状態か)を写真に撮って記録しておくと、後々の話し合いがスムーズになります。また、契約書に「貸主指定業者条項」がある場合は、その業者に依頼する必要がありますので、契約書を事前に確認しておきましょう。自分で別の業者を手配しても、同等の材質・仕上がりでないとやり直しを請求される可能性があるため注意が必要です。
さらに、契約書の特約欄も必ず確認してください。「通常損耗まで借主負担とする」という特約が有効になるためには、契約条項に負担範囲が具体的に明記されているか、少なくとも口頭説明で借主が明確に認識して合意していることが必要です(国交省Q&A https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf)。「修理費は全部借主負担」のような大ざっぱな文言だけでは、特約として認められにくいとされています。
修理費用の相場を知っておこう
費用負担の話し合いをするうえで、修理費用の相場を知っておくことは非常に役立ちます。相場感を持っていれば、管理会社からの見積もりが適正かどうかを判断する基準になるからです。
ホームセンターの料金を参考にすると、各店舗では網の張替え作業が複数のサイズに対応しており、出張料や脱着作業が別途かかる場合があります。単純な網の交換であれば、1万円未満から1万円台前半で収まることもあります。
一方、メーカー修理の場合は費用が上がります。YKK AP株式会社の修理料金目安(https://www.ykkap.co.jp/consumer/support/tec/price/window/screen/)によると、スライド網戸の網張替えは腰窓で19,800〜31,900円、掃き出し窓・テラス窓で36,300〜50,600円、本体交換になると20,900〜78,100円(2024年7月時点)とされています。管理会社の指定業者から見積もりが届いたとき、これらの数字を比較の目安にするとよいでしょう。
退去時・トラブル時の対処法
退去立会いの際に、経年劣化による網戸の傷みまで費用を請求されるケースがあります。しかし、国交省Q&Aでは、特約がなく借主の故意・過失でない損傷分まで負担する必要はないと示されており、退去時にサインしてしまった後でも、その旨を主張できる余地があります。その場でサインを求められても、内容に納得できなければ「確認してから回答します」と伝えることが大切です。
費用負担の区分や見積額に納得できないときは、消費者ホットライン(電話番号:188)に相談することができます(国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/map/)。最寄りの消費生活センターにつながらない場合は、国民生活センターのバックアップ相談(03-3446-0999)が案内されます。一人で抱え込まず、専門機関に相談することも選択肢のひとつです。
なお、国交省の賃貸住宅標準契約書はあくまでひな形であり、法令上の義務書式ではありません(国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html)。実際の負担判断は個別の賃貸借契約書・特約の内容が優先されるため、自分の契約書をしっかり確認することが何より重要です。
まとめ
賃貸の網戸が破れたときの費用負担は、「誰の行為が原因か」によって大きく変わります。自然劣化や通常使用による破れは貸主負担が原則ですが、故意・過失・放置による拡大は借主負担になりやすいというのが、国交省ガイドラインが示す基本的な考え方です。まず管理会社へ連絡し、契約書の特約を確認してから修理を進めることで、不要なトラブルを防ぐことができます。費用の相場感を持っておくことも、適正な交渉につながります。もし納得できない請求を受けたときは、消費者ホットライン(188)への相談も積極的に活用してください。正しい知識を持つことが、賃貸生活を安心して送るための一番の武器になります。
参考文献・出典
- 民法 | e-Gov法令検索 — https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省) — https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf
- 『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(再改訂版)のQ&A(国土交通省) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001493363.pdf
- 賃貸住宅標準契約書(国土交通省) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun.pdf
- 『賃貸住宅標準契約書』について(国土交通省) — https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html
- 賃貸住宅トラブル防止ガイドライン~概要~(東京都住宅政策本部) — https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/fudosan/tintai/310-3
- 網戸 修理料金の目安(YKK AP株式会社) — https://www.ykkap.co.jp/consumer/support/tec/price/window/screen/
- 全国の消費生活センター等(国民生活センター) — https://www.kokusen.go.jp/map/